ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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夏祭りのヒューマン
Episode1


夏となり、高校生活も夏休みに突入した。学校に行かない分、

俺たち高校生は家にいることが多い。

それは俺も例外ではなかった。目を覚めれば、俺のベッドには俺以外の者が就寝していた。

ガイア、オーフィス、クロウ・クルワッハ、リーラが俺の体に全裸でしがみつき、

覆い被さっている。こんな光景を成神一成が見たら、血の涙を流しながら

禁手(バランス・ブレイカー)になりそうだ。

 

「動けん・・・・・」

 

柔らかい弾力に包まれるのは気持ちいけど、そろそろ起きたい。

あの時間が迫っているし・・・・・。

 

ガチャッ、

 

部屋の扉が勝手に開いた。首だけ動かして視線を向ければ、銀の髪に青と金の瞳、

銀色の着物を着た女性が入ってきた。

 

「わお、女体盛り?お盛んだにゃん♪」

 

「開口一番にその発言はどうかと思う。説得力と言うより、

俺の発言もし辛いが皆は添い寝のつもりだ」

 

「そんな状態で言われても、ねぇ・・・?」

 

面白可笑しそうに笑む女性こと銀華。そして彼女は猫の妖怪の上位種、猫魈だ。

 

「ほら、そろそろ修行の時間よ?邪魔者は―――ポイっとしちゃうにゃん」

 

彼女は躊躇いもなく、寝ている四人を俺から引っぺがしてベッドから床に放り出す。

 

ドサドサドサドサッ!

 

その光景を見て俺は思わず冷や汗を流した。

 

「お、お前・・・・・いい度胸しているよな。俺、そんなことできないぞ」

 

「そう?まあ、どうでもいいから起きなさい?って、あなたは服を着ていたんだ?」

 

「添い寝するだけでどうして俺は全裸でなきゃならないんだよ」

 

呆れ顔で溜息を吐いた最中に一瞬で運動用の服を着替えた。

 

「さ、さっさと外に行くにゃん。時間は有限、効果的に使わないと。

イッセーが長期間休んでいるこの時こそ最大限に使わないと損にゃん」

 

腕を掴んで来て俺を引っ張る銀華。

 

「で、何故俺を抱きしめる?」

 

「にゃはは♪温かいにゃん♪」

 

ギューっと俺を抱きしめる銀華に尋ねても頬を擦りつけたり、

ザラザラとした感触がする彼女の舌によって首筋やら顔、そして―――唇までも舐めてきた。

 

「ん・・・・・銀華」

 

「ふふふ・・・・・んん♪」

 

口の中に舌を入れて来て深いキスをしてくる。永遠に続くかと思ったが、銀華が自分から離れた。

 

「ごちそうさま♪さて、そろっと行くにゃん。

何よりも、こわーいドラゴンたちが睨んでいるしね」

 

「・・・・・」

 

その時になって背後からとんでもないプレッシャーを感じた。後ろを見たくない。

絶対にだ。見た瞬間、俺は死ぬ。

 

「・・・・・行こうか、銀華」

 

この場から逃げるように部屋を後にした。

 

―――銀華side

 

自然に溢れる場所で私、猫魈の銀華は無理矢理眷属にしようとした悪魔から助けてくれた人間、

兵藤一誠に仙術を伝授している最中。

 

「・・・・・」

 

私に背を向け、胡坐を掻いて精神を集中させている。とても、いえ、かなりの集中力。

例え、小石が額に当たっても彼は何の反応もせずにい続ける。

 

『一誠さま、一つのことを集中すると、水を吸う乾いたスポンジのようにマスターするまで、

吸収し続ける才能がございます。料理、勉強、裁縫、掃除、そして、戦闘。何でも、全てです。

ですので、一誠さまは仙術を習得する可能性が高いはずです』

 

メイドのリーラの言葉が頭に過った。

ええ・・・・・あなたの言う通り、彼はもう気を扱える段階まで成長しているわ。

正直、仙術すら知らなかった人間が自力で仙術を扱えるまでに成長するなんて思いもしなかった。

 

「・・・・・」

 

だけど、リーラ。あなたはどこまで知っているのかしら・・・。本人すら気付いていない力を

この子は秘めている。本来、人間が持つはずがない力をこの子は持っている。それは―――妖力。

その証拠に・・・・・。彼の腰辺りに―――狐の尾があるのだから。

 

「(イッセー、あなたは一体何者・・・・・?)」

 

自然から気を取り込む最中、今でも世界に漂う邪気や悪意を長時間取り込んでも

平気でいられるなんて信じられない・・・・・。私はあなたを心のどこかで恐れ戦いている。

 

「―――妾が怖いか?猫よ」

 

「っ!?」

 

イッセーの口が動いた。声は彼の。でも、喋り方が独特で何かが違うと私の中で

うるさく警報の鐘が鳴る。

 

「イッセー・・・・・じゃないわね」

 

「そうじゃ、妾はこの者に魂だけ宿っているに過ぎない」

 

「魂だけ・・・・・あなた何者なの」

 

警戒をの色を濃くし、臨戦態勢になるけど、イッセーは胡坐を掻いたまま口を開く。

 

「警戒するではない。妾は退屈で仕方なかったのでな、中にいるドラゴンどもに

気付かれないようにこの者の意識を乗っ取らせている。お前と話すためにな」

 

「・・・・・」

 

「妾の名は九尾の狐、羽衣狐じゃ」

 

羽衣狐・・・・・。―――っ!?

 

「嘘でしょ・・・・・だって、あの妖怪は滅ぼされたはず・・・・・!」

 

「ああ、確かに妾は滅ぼされた。肉体と魂を離別させられて、

肉体はどこぞの家の地下深く封印されているがな。

それからというものの、肉体を切り離された妾は、何度も人間の子供に取り憑き、

世界の邪気と悪意を吸収して成長し、それが頂点へ達した所で依代の体を完全に支配していた」

 

「・・・・・今度は、イッセーを支配するというのあなたは・・・・・!」

 

「それ以前に、皮肉にも妾を滅ぼした人間の一族に憑依してしまったことが失態じゃった」

 

瞑目したままイッセーは口の端を吊り上げて小さく笑う。

 

「しかし、妾はこの者を支配する気はない。

―――もうすぐ、妾は本来の肉体に戻れるのだからな」

 

「まさか・・・・・!?」

 

「妾を肉体から切り離した人間の一族のもとに行けるのじゃ。これほど愉快なことはない」

 

笑むイッセーの体が横に倒れた。・・・・・どうしたと言うの。

時折、痙攣を起こしているし・・・・・。彼の口から忌々しそうに発した。

 

「ちっ、ドラゴンどもが妾を気付いたか。猫よ。

今日のことはこの者のためにも秘密にするのじゃな。

いや、すでにあの人間は妾の存在に気付いておったな。だからなのかもしれないな。

魂と肉体が揃う危険を冒してまでこの者を―――」

 

それだけ言いかけて、狐の尾が消失した。私はすぐにイッセーの体を起こして状態を確かめる。

 

「・・・・・」

 

大丈夫・・・・・寝息を立てている。眠っているだけ・・・・・。

 

「(羽衣狐)」

 

史上最強の妖怪の一匹と数えられた最悪の九尾の狐。

話でしか聞いた事がない伝説の妖怪がまさか、こんな形で会話することになるなんて・・・・・。

 

―――○●○―――

 

「さーてと、勉強でもしましょうかね」

 

「えっ?まだ初日なのに?」

 

「最終日に勉強したいと思うか?絶対に地獄を見て味わうぞ」

 

「ははは・・・・・それは確かに嫌だね」

 

和樹が苦笑する余所に、リビングキッチンで学校から出された教科の課題、

テストをテーブルに広げる。

 

「時間はまだあるんだ。2、3ぐらいテストを終えて余裕を得たい」

 

「そう、頑張ってね」

 

「おう」

 

ポキポキと指の関節を鳴らして、やる気を出す。それじゃ、やるとするか。

 

―――5分後

 

「一誠、我と地下のプールに行こう」

 

「・・・・・」

 

「一誠?」

 

「・・・・・」

 

―――15分後

 

「一誠くん、ちょっと・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「あ、勉強をしていたんだね。それじゃ、また後で」

 

―――30分後

 

「イッセー、我と寝る」

 

「・・・・・」

 

「イッセー」

 

「・・・・・」

 

「イッセー、隣で寝る」

 

―――45分後

 

「一誠さん、カリンさんが遊びに来ていますよ?」

 

「・・・・・」

 

「って、勉強に夢中のようです・・・・・」

 

「いいさ、そもそもそのつもりで来たんだ。私も勉強をする」

 

「そうですか。では、僕も少ししましょうかね」

 

―――1時間後

 

「一誠さま、お昼でございますよ」

 

「ん?ああ、もうそんな時間か・・・・・」

 

リーラに声を掛けられてやっと筆を置いた。っていうか、

何時の間にオーフィスと銀華が俺の傍に寝ていたし。

 

「あれ、カリン。何時の間に?」

 

「―――気付いていなかったのか!?」

 

目の前に座っていた驚愕の発言をするカリン。うん、全然気付きもしなかった。

テーブルに教科書とノートが広がっていた。ああ、宿題をしていたのか。

 

「一誠さまは集中をし出すと、周りの音が一切聞こえないようなのです。

なので、用がある時は一誠さまの肩に触れてください」

 

「悪いな。どうも気付きにくいんだよ。良い意味でも悪い意味でも集中しだすと」

 

「物凄い集中力ですね」

 

「感嘆するぞ」

 

龍牙とカリンがそう言う。

 

「俺にとって悪い癖だがな。終わるまで永遠に集中してしまう」

 

「それで、どこまで進んだんですか?」

 

「2、3教科の宿題を終わらせた」

 

「まだ初日なのに・・・・・」

 

「和樹と同じことを言おうか。夏休み最終日に溜まった宿題をしたいか?地獄を見て味わうぞ」

 

そう言うと二人は「嫌だ」と風に首を横に振った。

 

「それに初日で全部終わらすつもりはないさ」

 

広げた教科書とノートを片付けながら言う。

 

「今は七月二十一日(火)。まだまだ夏休み期間がありますねぇー」

 

「そうだな。いっそのことカリンも夏休みの間にここに泊れば?」

 

と、カリンに問うた。しばらくして彼女は、「はっ!?」と目を丸くした。そんなに驚くか?

 

「あっ、もしそうなったら何時ものメンバーが揃いますね。

学校のように一誠さんの家で顔を合わせれます。カリンさん、そうしたらどうですか?」

 

「いやいや、無理だ。なにより、両親がダメだしする」

 

「もしかして、うるさいのですか?」

 

「・・・・・うん、まあ・・・・・同じ異性同士ならともかく、

男の家に泊ったって聞いたら父上たちは魔法をぶっ放してくることは間違いない」

 

・・・・・どんな家だよ。魔法を娘に放つ親って・・・・・。

 

「そうか、残念だな。逆に俺たちがお前の家に泊ってもいいか?」

 

「うん、それなら大丈夫だ。あ・・・・・そうだ」

 

カリンが何か思い出したかのように改めて俺を見る。ん、なんだ?

 

「イッセー。『熾天使変化(セラフ・プロモーション)』でクラスメートたちの疲労を回復させたことがあったな」

 

「ああ、試験の時だったな。それが?」

 

「もしかして、傷とか治す能力もあるのか?」

 

「ん、あるぞ」

 

誰かが傷ついているのかな?主に俺が傷つくから自分で自分を

治している感じでやっているし・・・・。

 

「じゃあ・・・・・病気、病を治せるか・・・・・?」

 

「病気か・・・・・」

 

分からないな。いままで病気になったことすらないから・・・・・。

カリンに首を横に振ると、彼女は「そうか」と息を吐いて落ち込んだ。

 

「なぜ落ち込む?」

 

「・・・・・いや、実はな・・・・・私は四姉妹の末っ子なんだ」

 

「四姉妹?初めて聞きましたよ」

 

俺も同意と首を縦に振る。あのカリンの姉よりまだ二人の姉がいるとはな。

 

「次女の姉が・・・・・魔法でも治せない病を患っているんだ。不治の病と言う」

 

「・・・・・」

 

「このままでは、数年足らずで死んでしまうと診断された。

それこそ、神の奇跡が起きない限り治せない病だそうだ」

 

なるほど、だから俺に訊いてきたのか。不治の病を治せるかどうかを・・・・・。

 

「そうだったんですか・・・・・」

 

「優しい姉なんだ。純粋で優しく、怪我した動物を拾って傷の手当てをするほどに・・・・・」

 

・・・・・カリン。

 

「・・・すまない。夏休みなのに暗い話しをしてしまった」

 

「いえ、大丈夫ですよ」

 

何とかしてやりたいな・・・・・・。―――訊いて見るか。

携帯を操作し、とある人物に通信を入れる。直ぐに通じた。

 

『やあ、兵藤くん。どうしたのかな?』

 

「ああ、お願いがあるんだ。仲介してほしい人物がいる」

 

サーゼクス・グレモリー。駒王学園の理事長を務めている悪魔だ。

 

『誰とかね?』

 

「アザゼルだ。できれば今すぐにできるか?」

 

『アザゼルか・・・・・それは重要な話かな?』

 

「俺にとってはそうだ」

 

携帯の向こうでサーゼクス・グレモリーはしばらく沈黙した。

 

『分かった。キミの番号を教えて彼から連絡してもらうよ』

 

「ありがとう」と言い残して通信を切った。

 

「一誠さん・・・・・どうしてアザゼル先生と?」

 

「俺でも『熾天使変化(セラフ・プロモーション)』の力の使い方が分からないなら、

神器(セイクリッド・ギア)に詳しいマニアに訊けば、分かるかも知れない」

 

サーゼクス・グレモリーと話し合ってから数十秒後、携帯が鳴り響いた。

通信を入れて耳元に寄せる。

 

『よう、俺に話しって何だ?』

 

堕天使の総督アザゼル。ありがとうな。

 

「アザゼル、アザゼルはどこまで『熾天使変化(セラフ・プロモーション)』を知っている?」

 

『ん?なんだ、お前は知っているんじゃないのか?』

 

「いや、思いもしないこと訊かれて分からないんだ。実際、やったことすらないし、」

 

『ふーん・・・で、お前さんの神器(セイクリッド・ギア)の何を知りたい?」

 

俺はその言葉を聞き、カリンに一瞥してから口を開いた。

 

「『熾天使変化(セラフ・プロモーション)』は不治の病を、病気を治せれることができるか?」

 

『・・・・・』

 

アザゼルは、沈黙した。俺もアザゼルに釣られて沈黙する。

 

『兵藤、いや、イッセー』

 

「なんだ?」

 

『俺から言えるのは神器(セイクリッド・ギア)は宿主の想いを応え進化する。

それだけだ。なによりも、あいつ、一香もそうしたように

その神器(セイクリッド・ギア)で人々を救っていたそうだ』

 

「・・・・・」

 

『お前はならできると思うぜ。じゃあな』

 

通信を切られた。結局、曖昧な答えを聞かされただけで話が終わってしまった。

 

「(母さんもそうしていた・・・・・この力で人々を・・・・・)」

 

自分の手の平を見下ろして、心の中で母さんのことを思った。

 

「―――カリン」

 

「な、なんだ?」

 

「お前の姉さんはお前の家にいるか?」

 

「あ、ああ・・・いる。元々私たちは外国で生まれたんだが、

姉の病を治すためにこの地に訪れたんだ」

 

なるほどな。でも、日本でも病を治せないと判断されたのか・・・・・。

 

「それで・・・・・どうだったんだ?アザゼル先生は何て言ったんだ?」

 

不安げに尋ねてくるカリン。俺はカリンの肩に手を置いて言った。

 

「カリン、俺を信じてくれ」

 

「え・・・・・?」

 

「お前が俺を信じてくれるのなら、俺はその気持ちに応えれる。

だから、俺のことを信じて欲しいんだ」

 

「イッセー・・・・・」

 

真摯にカリンの瞳を覗きこむように見据えた。カリンは俺の眼差しに耐えきれなかったのか、

顔を赤くして逸らされた。

 

「・・・・・うん、お前を信じる」

 

「ありがとう・・・・・」

 

ポツリと信用してくれる発言を述べてくれた。そんな彼女の気持ちに俺は応えよう―――!

 

―――○●○―――

 

あれから俺は、カリンの家に赴くため翼を広げて空を飛んでいた。

下を見下ろせば、駒王学園が通り過ぎた。

 

「イッセー、あっちだ」

 

背に乗っているカリンが案内してくれる。

 

「快適」

 

当然とばかり、オーフィスも空の飛行を満喫している。

カリンの家はそう遠くない場所にあると訊くが・・・・・。

 

「あっ、見えた。あれが私の家だ」

 

「・・・・・あれかよ」

 

思わず目を疑った。この町に似合わない洋風の城が肉眼で捉えた。ここ、日本だよな。

外国の貴族の考えることはよくわからない。

 

「あの家は元々、日本に移り住む前に住んでいた家なんだ。

土地を買い取って家ごとこの国まで転移して持ってきた」

 

「どんだけなんだよ。カリンの親は・・・・・」

 

「うん、そう思うよな・・・・・」

 

翼を動かしてカリンの家の門前に降り立ち、カリンを下ろす。

彼女に視線を向けたら、コクリと頷き自分の足で動いて門に触れた。

 

ガチャ・・・。

 

「さあ、入ってくれ」

 

「ん、お邪魔します」

 

「お邪魔する」

 

オーフィスと共に初めてカリンの家に足を踏み入れた。中庭はとても広く、

中央に大きな噴水があった。花壇や木々が生えていて、清楚な庭だと思った。

 

「そう言えば、この国に移り住む前はどこの国にいたんだ?」

 

「ハルケギニアのトリステインだ」

 

「へぇ、あの国か」

 

ガチャリと玄関の扉を開けるカリンに続く。―――うん、外もそうなら、

中も洋風の作りで作られた家だった。

 

「私の部屋に案内しよう。そこで姉さまを呼ぶ」

 

「いきなりお前の部屋に入って良いのか?」

 

「ふん、何を言っているんだ」

 

鼻を鳴らして俺に体を向けて両腕を広げた。

 

「私はお前を信じているんだ。だから、私はお前を部屋に入れる。心からお前を信じているから」

 

「・・・・・」

 

満面の笑みを浮かべるカリン。そんな彼女に俺はときめいてしまった。

 

「・・・やっぱりカリンは恰好好いな・・・・・」

 

そう漏らせばやっぱり案の定。

 

「ふふ、そうか・・・・・私は恰好好いか・・・・・」

 

嬉しそうに両手を頬に添えて体をくねらした。久し振りに照れる彼女を見たな。

 

「―――カリン、帰っていたのか」

 

「っ!」

 

カリンの目が見開いた。まるで兵隊のように体を真っ直ぐにして声が聞こえた方へ振り向いた。

 

「はっ、はい、父上」

 

「・・・・・お前の後ろにいるのは友達か?」

 

レッドカーペットに敷かれた階段を踏んで下りてくる厳格な顔つきの中年男性。

金髪に片目にモノクルが特徴の人だった。カリンの父親が俺とオーフィスを見詰める。

そんな父親にカリンが口を開いて紹介してくれる。

 

「はい、そうです。同じクラスメートの友達と友達の家に住んでいる子です」

 

「なるほどな。私はカリンの父親、サンドリオンと言う。

学校では何時もカリンが世話になっているだろう。なにか、失礼なことをしていないかね?」

 

「ち、父上!」

 

「いえ、とんでもないですよ。寧ろ、彼女のおかげで期末試験で俺たちはSクラスになれました。

彼女がいなかったらSクラスになれなかったでしょう」

 

「ふむ、そうか。これからも娘をよろしく頼む。・・・・・名はなんというかね?」

 

そう言えば名乗っていなかったな。一度お辞儀をしてから名を名乗った。

 

「自分は兵藤一誠です。この子は―――」

 

「―――兵藤だと?」

 

「ん?」

 

カリンの父親、サンドリオンが一瞬だけ目を丸くした。

顎に手をやって険しい顔つきで俺の顔を覗きこむ。

 

「兵藤・・・・・懐かしい名前だな。久しく訊いた」

 

「父上・・・・・?」

 

「いや、何でもない。カリン、友達と遊ぶなら静かにな」

 

それだけ言ってサンドリオンが踵を返して俺たちから離れようとした。

さっきのあの反応・・・まさかな。

 

「兵藤誠と兵藤一香をご存じですか?」

 

言った瞬間、サンドリオンの足が停まった。

 

「いま、何と言ったかね?」

 

「兵藤誠と兵藤一香をご存じかと訊きました。俺の両親を」

 

「・・・・・なんだと」

 

踵を返したサンドリオンがこっちに振り向いた。その顔と瞳は驚愕の色が浮かんでいる。

 

「キミは・・・・・誠殿と一香殿の子供だと、そう言ったのか?」

 

「はい、ハッキリと。その証拠に・・・・・」

 

魔方陣を展開して、リアス・グレモリーのアルバムを取り出す。

そのアルバムから一枚の写真を取り出してサンドリオンに見せつける。

 

「・・・・・・」

 

赤ん坊の頃の俺と両親の写真。サンドリオンは俺から写真を取って懐かしそうに眺める。

 

「よもや・・・・・この極東の地であの二人の子供と出会えるとはな・・・・・」

 

「父上、イッセーのご両親とお知り合いだったのですか?」

 

サンドリオンに尋ねるカリン。その問いに「うむ」と肯定したサンドリオン。

 

「昔馴染みだ。儂と妻が若い頃、誠殿と一香殿も魔法騎士隊に所属していたのだよ。

言わば、戦友と言うべき存在だ」

 

「そんなことが・・・・・それで、それからどうしたのですか?」

 

「二年ぐらい経った頃だろうか、あの二人は突然、自ら除隊し儂たちの前から立ち去った。

それから音信不通の状態が続きいまに至る」

 

父さんと母さん、あんたらは一体なにをしていたんだよ・・・・・俺より驚くこと

ばかりじゃないか。

 

「キミ、いや・・・・・一誠くんと呼んでいいかね?」

 

「はい、勿論です」

 

「あの二人は元気かね?この町に住んでいるのかな?」

 

「・・・・・」

 

その質問に俺は沈黙した。でも、言わないといけない。真っ直ぐサンドリオンの顔を見て言った。

 

「亡くなりました」

 

「・・・・・」

 

「両親は殺されて死んでしまいました。

俺と従者が出掛けている間に・・・・・殺されていました」

 

バサッ!

 

「母と父の形見を人知れずに受け継がれて俺は―――」

 

翼を展開して、そう言いかけた時だった。どうしてだろうか、

俺はサンドリオンに抱きしめられた。

 

「もう言わんでいい」

 

「・・・・・」

 

「父上・・・・・」

 

カリンが呼ぶが、サンドリオンは未だに俺を抱きしめる。

 

「一誠くん、両親の死を受け止めた時は辛かっただろう・・・・・」

 

「―――――」

 

初めてそんなことを言われた。誰も、父さんと母さんを知るヒトたちは、

俺の存在に嬉しがっていたけど、こんな風に抱きしめられて

慰められたことが一度もなかった・・・・・。

 

「どれだけ苦労して、辛い思いをして生きていたのか儂には分からない。

だが、これだけ言わせておくれ。あの二人の代わりに言わせて欲しい」

 

―――頑張ったな。お帰り息子よ・・・・・。

 

・・・・・・・・・・。

 

・・・・・なんだよ・・・・・それ・・・・・・。

 

「・・・・・なんだよ、それ・・・・・おかしいだろ・・・・・なんで、

なんであんたがそんなことを」

 

渇いた心があっという間に潤い始めた感じで、心の底に隠していたものが湧き上がった。

抑えることができず、何時しか俺の目から涙が流れ始めだした。

 

「なんで、あんたがいままで誰一人言わなかったことを言うんだよ・・・っ!」

 

「イッセー・・・・・・」

 

「ふざけんな・・・・・っ、本当に、本当にふざけるなよ・・・・・!俺のこと、何一つ知らない

くせに、そんなこと言うなよ・・・・・!くそ・・・放せ・・・・・!」

 

無理矢理、サンドリオンから離れて俺は睨んだ。

 

「あんたは俺の父親かよ!?俺は今まで復讐のために生きていたんだ!

そんな俺にそんな優しい言葉で・・・・・言葉で・・・・・!」

 

涙が収まる気配がない。なんでだよ、何で止まらないんだよ・・・・・!拭おうにもダムが

決壊したかのように涙が流れ続ける。そんな俺にカリンが寄り添って来て

俺をどこかへと連れていく。

 

「イッセー・・・・・」

 

「なんなんだよ・・・・・なんなんだよ・・・・・」

 

訳も分からないまま、涙が流れ続ける。どうすれば止まるのか今の俺には分からない―――。

 

―――○●○―――

 

―――カリンside

 

イッセーが突然に泣きだした。あんなイッセーは初めて見た。

 

「・・・・・」

 

私の部屋に連れて来た今でも、イッセーは涙を流し続けている。

オーフィスはそんなイッセーを上目づかいで見ているだけだった。

私はあいつをここに連れて来てしまったのが間違いだったのか自問自答に悩まされている。

 

「(そういえば私って・・・・・泣いた事が一度もなかったな)」

 

生まれて十数年間。憧れの母のようになりたいと修行に明け暮れていた。

泣く暇なんてないのも当然か。

泣くってどんな気持ちなんだろうか・・・・・どうやって慰めればいいのか、私は分からない。

何時も泣くのはルイズ姉で、どこかに行ったかと思えば、

もう一人の姉と手を繋いで帰ってきたり、

ルイズ姉の婚約者と手をつないで帰ってきたりしていた。

 

「(あれ・・・・・私って誰にも慰められたことはない・・・・・?)」

 

いま思えば・・・・・思い出せば・・・・・一度もない。

これは、いいのか?私、何か大切なことを学んでいないような気がしてきたぞ・・・・・。

 

「・・・・・悪い、カリン」

 

っ・・・!

 

「みっともない姿を見せてしまった」

 

落ち着いたのか、オーフィスを抱きかかえていたイッセーが顔を俯かせたまま私に話しかける。

 

「もう・・・大丈夫なのか?」

 

「ああ・・・・・平気だ」

 

手で顔を擦った。上から下へとずらすように動かせば、イッセーの顔は泣く前の頃になった。

 

「まったく・・・・・不意を突かれたよ。思いもしなかった言葉に涙を流してしまった。

もう、泣かないつもりでいたのにさ」

 

「そんな・・・・・泣いても恥ずかしくはないと思うぞ」

 

「そういう理由じゃない。俺は復讐を果たすまで泣くつもりはなかったんだよ。

だから自分でも驚いたんだ」

 

嘆息するイッセーは、オーフィスをギュッと抱きしめた。

 

「もう、どんな言葉でも泣かない。ショックを受けようが、俺は泣かない・・・・・」

 

自分に戒めとばかり呟く。しばらくして、イッセーは私を見る。

 

「カリン、姉を呼んで来てくれるか?」

 

「あ、うん・・・分かった」

 

目的を忘れていた。頷いて部屋から出る。あの人は・・・・・きっと裏庭にいるだろう。

動物と戯れているだろうし・・・。

 

「あら、カリン。帰っていたのね」

 

「ルイズ姉」

 

廊下の向こうから私の姉、ルイズ姉が歩いてきた。彼女の後ろに一人の男の子もいる。

 

「ふん、Sに戻れてどうかしら?」

 

「別に・・・変わりはないけど」

 

「そう?あなた、婚約の話が出た途端に嫌そうな顔をしていたじゃないの。

嬉しかったんじゃないの?良い成績じゃなかったら

花嫁修業させられるって言われていたしねぇ?」

 

それは・・・確かにそうだけど、

 

「ルイズ姉、どうして最近突っ掛かるんだ?私、何かルイズ姉にした?」

 

期末の最終試験が終わってからと言うものの、ルイズ姉の態度が可笑しい。

私がSになり、ルイズ姉はAクラスになってお互い優秀な成績で終了した。

父上と母上も大して怒りもせず褒められただけだ。喧嘩もしたことがない。

普通に仲がいいのに・・・・・どうしてなんだ?

 

「あなた、幸せそうな顔をしているじゃないの」

 

「・・・・・私が?」

 

「ええ、そうよ。Sクラスにいた頃より楽しそうな顔をしているわよ。自覚ないのかしら?」

 

・・・・・何時も通りだと思うんだけどな・・・・・。自分ではわからない。

 

「いいわねぇ?Fクラスに行った妹が晴れてSクラスに戻れたんだもの。

姉としては褒めてあげたいけど・・・・・嫌だわ」

 

「え・・・?」

 

なぜ・・・?とそんな風にルイズ姉を見ていたら―――いきなり拳を突き出された。

私はすぐに反応してルイズ姉の拳を掴んで防いだ。その状態のまま、姉は語りだした。

 

「優秀すぎるのって考え物よね?あなたがいなくなったおかげで、私はクラスメートたちから

影で馬鹿にされ続けることが多くなっているわ。あの時の最終試験だってそう」

 

『あーあー、俺たちがAクラスかよ。成績と戦闘能力はいい方だけど、勘というか発想というか、

ルイズ。お前はそういうところが妹に負けているよな』

 

『どうしてお前がSになれたのか不思議でしょうがないぜ。運動が鈍い癖によ』

 

『言うだけ言って自分は何もしないってどうだと思うぞ。正直、お前にはついていけね』

 

『お前の魔法は爆発ばっかで他は何の取り柄のない役立たずだ。お前、委員長の資格ないって。

まだ妹の方がよかったなぁ』

 

ルイズ姉・・・・・そんなことが。

 

「私は・・・・・あのクラスの中じゃ一人ぼっちよ・・・・・誰も慰めてくれない。

私なりに頑張っているのにだれも褒めてくれない。なのに、なのに、なのに!」

 

怒りに満ちた瞳が私に向けられる。

 

「私の生まれ持った才能は『爆発』!?その魔法しか使えないで何がメイジよ!

魔法使いよ!ふざけんじゃないわよ!?」

 

「・・・・・」

 

「私はあなたが羨ましくてしょうがないわ!優秀な妹に比べられる気持ちも知らないあなたに!

私がどれだけ努力しても無化にされ、誰も私を認めてくれないのが悔しい!

カリン、私はあんたのことを酷く憎いわ!」

 

あんたなんて―――生まれてこなくて欲しかったわよ!

 

・・・・・ルイズ・・・・・姉・・・・・。

 

「ふん、行くわよ才人」

 

私の横を通る姉に顔を向けることすらできなかった。

姉がいなくなっても私はしばらく佇んでいた。

姉は、私のことをそう思っていただなんて・・・・・全然知らなかった。

 

「・・・・・あれ?」

 

頬に熱い何かが伝わった。手で触れてみると指が濡れた。これは・・・・・涙?

 

「・・・・・・はは」

 

なんだ・・・・・私も泣けたじゃないか。初めて泣いたのが姉の憎悪の言葉か・・・・・。

もっとロマンチックなことで泣きたかったな・・・・・。

 

「・・・・・イッセー、なんとなくお前の気持ちは分かったよ」

 

歩を進める。何時までもイッセーを待たせる訳にはいかない。

 

「―――そうか」

 

「っ!?」

 

背後にイッセーの声が聞こえた。後ろに振り返ると、

オーフィスを肩に乗せたイッセーが佇んでいた。

 

「聞こえていた。姉妹の会話のやりとりをな」

 

「そうか・・・・・」

 

「ルイズの気持ちも分からなくはない。俺だって認められて欲しいと思う時もある。

だけど自分より凄い奴がいたら必然的にそいつを褒め称え、自分は蔑ろになる」

 

うん・・・・・そうだろうな。私も、気持ちは分かる。けど・・・・・。

 

「かなり、ショックだったな・・・・・・」

 

「ああ、そうだな・・・・・」

 

イッセーの腕が私の背中に回されて、抱きしめられた。

 

「俺たち、今日は泣くことが多いな」

 

「うん、そうだね・・・・・」

 

「明日から何時も通りになろう」

 

「・・・・・分かった」

 

ギュッとイッセーの背中に腕を回して顔を埋める。声を殺して私は嗚咽を漏らす。

 

「イッセー・・・・・私、あなたの家に住みたい」

 

初めて家族以外に女言葉で話した。きっとイッセーは驚いているだろうな。

でも、なんでだろうか。

 

「ああ・・・・・一緒に暮らそう。カリン」

 

「うん・・・・・」

 

彼の前だと私の本心が曝け出されるんだ。

 

―――○●○―――

 

―――一誠side

 

カリンと共に裏庭へやってきた。カリンがここにいると言う可能性に信じて赴いた。

そして、裏庭に足を踏み入れた。

 

「おおう・・・・・」

 

キャンキャン、ニャーニャー、チュンチュン、シャァァァ、クマクマ、ガオオオオォォン、

 

裏庭は動物園と化となっていた。様々な動物が思い思いに裏庭を駆け走ったり

のんびりと寛いでいたりしていた。というか、この空間に弱肉強食などとそんな過酷な環境は

存在すらしていなかった。食うはずの、食われるはずの存在がいるというのに、

両者は仲良く傍にいる。さらに動物たちに紛れている一人の女性がいた。

 

「カリン、あの人がそうなのか?」

 

「カトレア・イヴェット・ラ・ボーム・ル・ブラン・ド・ラ・フォンティーヌ。

それが私とルイズ姉の姉の名前だ」

 

相変わらず・・・・・長い名前だ。カリンの姉の名前と動物たちを唖然としていると、

桃色がかったブロンドの女性が俺たちに気付いた。視線をこっちに向けているからだ。

腰を上げて立ち上がり、ゆっくりとを歩み寄ってくる。

 

「あら、カリン。お帰りなさい」

 

「ただいま戻りました、カトレア姉」

 

姉妹は抱擁し合う。どちらからでもなく離れて俺に視線を向けてくる。

 

「姉さま、紹介します。彼は私の―――」

 

「彼氏かしら?」

 

おっとりとカリンの姉がとんでもないことを言いだした。

カリンは顔を最大に真っ赤に染めて首を激しく横に振った。

 

「ち、違います!私のクラスメートの兵藤一誠です!」

 

「そうなの?てっきりそうだと思ったのにね。カリンが男の子を連れてくるなんて

初めてのことだし」

 

「そ、それはそうですけど・・・・・!」

 

「もしそうなら、私は歓迎するわ。ナイトさん、この子をよろしくお願いするわ♪」

 

「ね、姉さまぁっ!?」

 

・・・・・からかっているのか本気で言っているのか判断がしにくいな。

 

「それで、どうしたのかしら?私に彼を会したかったの?」

 

「あっ、はい。実はそうなんです。姉さまのご病気を治せる可能性が彼にあるので・・・・・」

 

「私の病気を?」

 

カトレアが目を丸くした。俺は肯定と頷き、『熾天使変化(セラフ・プロモーション)』の状態となった。

 

「そういうことです。だから、そのままじっと立っていてください」

 

彼女の返答を聞かず、翼を動かしてカトレアの全身を包んだ。

 

神器(セイクリッド・ギア)は宿主の想いを応え進化する』

 

アザゼルの言葉が頭に過った。俺の想い・・・・・。

 

「(頼む、この人の病を治したい。だから、俺の気持ちに応えてくれ・・・・・!)」

 

神器(セイクリッド・ギア)に力強く願いを籠め、癒しの能力を発動させた。

 

「俺の気持ちに応えてくれ!神器(セイクリッド・ギア)ァ!」

 

カッ!

 

翼が神々しく輝きを放った。目を腕で覆うほど眩しく、カリンも光を腕で遮っている。

 

「治ってくれ・・・・・あんたはまだ生きる資格があるんだからな!

世界中に旅行をして自分の目で世界を見るためにも!

家族と何時までも仲良く暮らすためにもだ!」

 

光は周囲を照らし―――一瞬の閃光が俺の視界を白く塗り替えたのだった。

視界が回復する頃には光は消失していた。翼を動かし、

彼女を解放すると瞑目してその場で佇んでいた。

 

「「・・・・・」」

 

カリンと共に緊張した面持ちで彼女を見守る。しばらくして・・・彼女が目を開いた。

 

「・・・・・」

 

表情は変わらない。自然体でいる。上手くいったのかどうかは・・・・・彼女しか分からない。

 

「姉さま・・・・・ご気分はどうですか?」

 

「ええ・・・・・」

 

カトレアの答えは―――。

 

「凄く軽いわ。あんなに体が重かったのに、彼のおかげでなんだか体が羽のように軽いの」

 

「―――っ!」

 

「カリン、ちょっとだけ一緒に走ってもらえるかしら?私、走れるような気分なの」

 

「は・・・はい!」

 

彼女の願いを聞き入れたカリン。カリンはカトレアの手を取って、最初はゆっくりと走った。

動物たちも一緒に走るとばかり、姉妹を追い掛けて行った。どうやら・・・・・、

 

「成功した・・・・・ようだな」

 

ふぅ・・・・・と、疲れた感じで息を吐いた。家の壁に寄り掛かってまだ走る二人を眺める。

 

「楽しそうに走るな」

 

「ん、我もそう思う」

 

オーフィスも肯定と頷く。だよな、そう思うよな。と、思っていると二人が戻ってきた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・走るって気持ちいいのね。でも、疲れちゃったわ」

 

「姉さまは体が弱かったのですから当然ですよ。イッセー、姉さまの病は完全に治っている。

ありがとう、イッセー」

 

深くお辞儀をするカリン。俺は気にするなと、手を振る。

 

「俺も新しい能力を発見できた。だから、気にするな」

 

「だけど、お前は一人の命を救ったんだ。もっと感謝されるべきだと私は思うぞ」

 

「はい、妹の言う通りですよ。兵藤一誠くん、ありがとうございます」

 

「・・・・・どういたしまして」

 

気恥ずかしくなり、頬を掻く。

 

「・・・それじゃ、俺は帰らせてもらうぞ」

 

「帰る?なんでだ」

 

「俺もやることができたんだ。それをやるために俺は帰る」

 

「・・・・・そうか、イッセーがそう言うのなら仕方がない」

 

カリン、残念そうに息を吐かないでくれよ。

 

「兵藤一誠くん、ありがとうございます。

何かお礼をしたいのですが・・・なにがよろしいでしょうか?

私ができることならなんでもいたしますわ」

 

「何でも・・・・・じゃあ、一つ良いかな?」

 

「はい、なんなりと」

 

「カリンをフォローしてくれるか?きっとあなたの力を必要となるだろうし」

 

この提案にカトレアはニッコリと笑んで、首を縦に振った。快諾と意志を示して。

 

「わかりました。妹のことは任せてください」

 

「お願いしますよ。それじゃ、カリン。またな」

 

「ああ、またな!」

 

翼を強く羽ばたかせて空を飛んだ。このまま一気に家へと戻る俺とオーフィス。

 

「オーフィス」

 

「ん?」

 

「ヒトを助けるのって気持ちいいんだな」

 

って、言ってもオーフィスには分からないか。当のオーフィスも首を傾げているし・・・・・。

でも、今の俺は清々しい気持ちだ。こんな気分は初めてなのかもしれない。

さて、帰ったら修行だ!

 

 

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