Boss×Boss
「サーゼクス、どうするんだ?リアスから聞いたんだろ?
ディオドラ・アスタロトがテロリストと通じていると」
「聞いたさ。だが、何の証拠も無しに動くことはできない。
調査してからだとどうしても我々は後手になる」
「たくっ、なんだって次期アスタロト家当主の若造がテロリストと手を組んだのか
理解できねぇよ」
「だから、今は情報を収集させてもらっている」
「ん?誰にだよ?」
「―――駒王学園一、情報収集に長けた生徒にだよ」
「ふーん。だが、あいつらと一戦交えるとは思えないがな。次期人王決定戦で見せてくれた
あいつらの実力を見てどいつもこいつも戦う気が失せたんじゃねぇか?」
「それはそれで構わない。何かしらのトラブルが起きない方が私は好ましい」
「そいつについては同感だ。しかし、ヴァーリもヴァーリだ。
好きな男に情報を提供するなんてどういうことだよ」
「ふふっ、彼女がイッセーくんを愛しているからではないか?
アザゼルもそろそろ身を固めたらどうだ?」
「嫌だね。俺は趣味に生きる男だ。・・・・・お、女なんていくらでもいる!」
「そうだな。そういうことにしておこう。
―――さて、情報が入り次第、こちらも動くとしようか」
「ああ、証拠が上がったら根掘り葉掘り吐いてもらうぜ」
―――二年S組
「清楚、俺たちの授業の相手は受ける気でいるのか?」
「まだ分からない。体育の授業が始まる前に棄権宣言をしないといけないから」
「そうか、相手が相手だからな。どんな手を使ってくるか分かったもんじゃない」
「そうですね。彼女の話を聞いたら警戒せずにはいられません」
「でも、本当なのかな。あの話は」
「ヴァーリは嘘は吐かないわ!だから、あの話は本当だと私は思うの!」
うん、俺もそう思っているからこそ、龍牙のように警戒せずにはいられない。
「体育の授業は三限目か。意外と早いな」
ゼノヴィアが顎に手をやって時刻表を見て呟く。
「相手が棄権することを願うわ」
ウンウンとイリナが無意味な争いは避けたいと願った。それについては同意だな。
「まっ、相手が授業を受ける気なら俺たちは倒すまでだ」
ガラッ。
「葉桜清楚さんはいますか?」
「はい?」
不意に清楚を呼ぶ声が聞こえた。清楚も反応して体ごと声がした方へ向いた。
俺も声がした方向に振り向けば、見知らぬ男子生徒がいた。
「―――ディオドラ・アスタロト」
「・・・・・あいつがか?」
一見、優しげな表情の少年だ。しかし、和樹が目元を細めて悪魔であることを告げた。
「あの、私に何か用ですか?それに上級生とはいえ、Sクラスに訪れてはいけませんよ?
校則を守ってください」
「申し訳ない。どうしても伝えたいことがあったので規則を破る承知の上で来ました」
ディオドラ・アスタロトは笑みを浮かべたまま教室に入って来て俺たちに近づいてきた。
「伝えたいこととはなんででしょうか?」
「ええ、体育の授業の件です」
「・・・それなら、体育の授業の時に仰ればいいのではないでしょうか?」
「いえ、それだと遅れてしまうので早めにお伝えしたかったのです。単刀直入に言います。
―――体育の授業を棄権してください」
・・・・・へぇ、棄権を言いに来たってことか。俺たちに棄権するよう言いに・・・・・。
「いきなり何を言い出すんですか?それを決めるのはこのクラスの委員長である私の意志です」
「でも、真龍と龍神の使用を禁じられて戦力が激減したんだよね?」
「それでも、私たちは棄権する気は毛頭もないです」
というより、あの二人がいなくても大抵の奴らを倒せる。
「棄権をする気はないんだね?」
「ありません」
キッパリと言い放った清楚。彼女だけじゃない。
他の皆も棄権する気はないと、視線で伝えている。
「そう・・・・・僕は戦いは好きじゃないから警告しに来たんだけどね。分かった。
それがキミの意志と言うなら、僕はキミたちを殺すつもりで挑むよ?
何せ、そのぐらいの気持ちでやらないと勝てない相手だからね」
笑みを浮かべたまま踵を返した。・・・・・そう言えば、リアス・グレモリーが気になることを
言っていたな。―――ちょいと、揺らしてみるか?
「ああ、そのぐらいの気持ちで来てくれ。
じゃないと―――俺の愛しいアーシアが一生懸命応援するし甲斐がないからな」
『え?』
「・・・・・」
皆が唖然とする余所にディオドラ・アスタロトの足が停まった。
「アーシアも俺の家族の一員だ。だから、あの綺麗な声で応援されると俄然やる気が
出てくるというもんだ。可愛い俺のアーシアは俺の体に傷を付けるぐらいの実力を持った
男じゃないと渡す気がない。今は赤龍帝のところに預けてもらっているけど、
いずれは俺の家に住まわせて可愛がってやろう。まだ、彼女は処女だしな
。―――調教という名の行いをヤリ甲斐があるというもんだぜ?」
不敵の笑みを浮かべたままディオドラ・アスタロトにそう言ってやった。
対してあいつはクルリとこっちに振り返って歩を運びだしては俺の前に佇んだ。
「その話は本当かな?」
「どの辺りの話かな?まあ、あながち嘘じゃないけどな」
「・・・・・なるほど・・・・・僕のアーシアを狙う輩はここにいたということか。
なら、キミを倒してアーシアを貰おう」
「負ける気はないからよろしくな」
俺がそう言うとまた踵を返して今度こそ教室から出て言ったディオドラ・アスタロト。
―――そんなあいつに溜息を吐いて一言。
「―――あいつ、バカだろう。嘘なのに」
『嘘だったの!?』
皆に突っ込まれた。え、お前ら信じていたのかよ?そんな気持ちを抱き皆を見渡せば。
「本当にそうなのかと思った」
「ええ、一誠さんですから本当のことかと思いましたよ」
「また、ライバルが増えたのかと思った」
「イッセーは女たらし―――って、痛い痛い!頭をグリグリすんのは止めてくれ!」
うん、お前ら・・・俺のことを心の中でどう思っていたのか何となく理解したぞ。
カリンの頭に何度もねじり込むように動かしていた拳を放して言った。
「アーシア・アルジェントを狙っているって話をリアス・グレモリーから聞いていた。
だから本当なのか確かめただけだ。案の定、あいつは反応してきた。本当に狙っていたんだな」
「・・・・・というと、彼女が処女って話も嘘だってこと?」
「それは本当なんじゃないか?成神のやつが彼女を襲う度胸なんてなさそうだし、
甲斐性がなさそうだから襲うなんてことはしないだろうよ」
「うわ・・・・・相手を心から本当だと思わせるなんて、
キミは詐欺師に向いているんじゃないの?」
「あいつがただ単純だったから嘘だと気付かずに反応してきただけだ」
呆れているとばかり息を吐く。まあ、でも。
これで向こうは授業を受けるという事実を知った。後は相手を倒すだけが俺たちの仕事だ。
―――○●○―――
それから体育の授業の時間に近づいた。何時も通り体育館にやって来て教師の介入によって、
俺たちは相手の委員長ことディオドラ・アスタロトと十五人の上級生と同時に転移用魔方陣で
専用のフィールド、異空間に転移された。
「・・・・・着いたのか?」
魔方陣の眩い輝きから視力が回復し、目を開けて見ると―――。そこは
だだっ広い場所だった。一定間隔で太い柱が立って並んでいる。床は石造りだ。
周囲を見渡すと、後方に巨大な神殿の入口。ギリシャ辺りにありそうな神殿風景だな。
・・・・・だが、
「え・・・?学校じゃない?」
「体育の授業は学校を模した異空間でしかやらないと聞いていましたが」
「今までの体育の授業とは違う・・・・・」
学校側が新しく変えたのか?と、俺たちの中で疑問が尽きないでいたら―――。
カッ!
神殿と逆方向に魔方陣が出現する。・・・・・ディオドラか?まさか、今度は間近で合戦か?
と思ったが―――違った。魔方陣は一つだけじゃなく、
さらに次々と俺たちを囲むように魔方陣が出現していく。
「―――おいおい、こいつは、どういうことだよ?」
「―――まさか!?」
「―――そんな・・・・・!」
魔方陣すべて共通性はない。様々な紋様の魔方陣が出現して、魔方陣の光と共に
現れたのは―――大勢の悪魔たち。全員、敵意、殺意を漂わせながらのご登場だった。
俺たちを囲んで激しく睨んでくる。その数はざっと軽く百は超えている。
辺り一面悪魔の団体さまのご到着状態だった。
「兵藤家と式森家の者、兵藤一誠、兵藤悠璃、兵藤楼羅、式森和樹。
ここで貴様らを殺してくれる」
囲む悪魔の一人が俺たち四人に挑戦的な物言いをする。
やっぱり、三大勢力戦争に割り込んで人間たちによって通と半端な形で戦争を終わらせたことが
不満のようだ。その原因が兵藤家と式森家というわけだけどさ。
「和樹、どうするよ?俺たちってはた迷惑な状況下にいるようだぞ」
「本当だね。僕たちが兵藤家と式森家に生まれた存在だからって、
あの時の戦争に関与していない僕たち自身に八つ当たりみたいに攻撃してくる人ははた迷惑だよ」
「というか、こいつらが現れた時点で授業は中止だな」
「そうだね。招かざる客が来たんじゃ、しょうがないよ
和樹と共に肩を竦め、苦笑を浮かべる。
「―――テロリストなら、思う存分に殺してもいいよな?」
敵意と殺意を瞳に宿し、臨戦態勢に入る。
―――と、俺たちの目の前に新たな魔方陣が複数も出現した。魔方陣から現れたのは―――。
ディオドラ・アスタロトと上級生の先輩たちだった。―――捕まっていたのかよ。
「この者たちを死なせたくなければ、大人しくしているんだな」
「・・・・・最悪・・・・・」
嘲笑の笑みを浮かべる一人の悪魔。うん、よくある王道的なシーンじゃないか。
「・・・・・一誠くん、どうしよう」
「ディオドラの奴はどうでもいいとして、他の上級生の先輩方は何とか助けたいところだなぁ」
声を殺して皆と会話する。
「でも、仲間ではないんですか?」
「私たちを油断させる罠か、それとも利用されているだけかの二つの選択だと思う」
「ええ、私もそう思うわ」
視界に悪魔たちが幾重の魔方陣を展開した。おおう、マジで俺たちを殺す気か。
「―――ここで散れ!」
刹那―――。何千という魔力弾が俺たちに迫った。
まるで、流星のようだと思わず「綺麗だな」と呟いた。
パチンッ!
和樹が指を弾き、鳴らすまでは。
バシュンッ!と音がしたかと思えば、俺たちに迫る魔力弾全てが消失した。
「あれ、指を弾いたら魔力が消えちゃった。―――弱いね。あなたたちの魔力は」
「な、なんだと・・・・・!」
「それと悠長に僕たちを囲む暇があったらさっさと攻撃すれば良かったのに。
もう、あなたたちは魔力は使えないよ?」
カッ!
俺たちの足元に魔方陣が展開した。とても、とても大きく巨大で広大な魔方陣。
『真魔王派』全員の足元にまで広がっているんじゃないか?と思うほど
大きい魔方陣が出現して『真魔王派』の全身に光が包んだ。
「おのれ!」
一人の悪魔が倒される前に攻撃しようと俺たちに腕を伸ばして手の平を向けてきた。
―――それだけだ。魔力が放たれる様子はなく、自分から魔力が出ないことに悪魔が目を見開いた。
「こ、これは・・・!?」
「この魔方陣はね?この魔方陣の光に触れて全身に包まれたら最後、
僕を倒さない限りあなたたちは一生、魔力が使えない状態になるんだ」
『っ!?』
「いまのあなたたちの状態は魔法、魔力が使えないただの人間に等しい存在でしか無い。
つまり―――あなたたちは詰んだ状態だよ」
ニッコリと和樹は笑みを浮かべた。こいつ・・・こんな魔法の力を・・・・・。
「さて、先輩方を放してもらいましょうか?いや、この際だ。―――全員纏めて僕が倒すよ」
その瞬間、俺たちの上空にまたもや巨大な魔方陣が展開した。あの魔方陣は―――!
「あの魔方陣は相手が持つ魔力に反応する。
そう、僕が指定した者の魔力を激しく乱して魔力を暴発させてね♪」
一拍して、ディオドラ・アスタロトと十五人の上級生たちを除いて
『真魔王派』だけが激しく乱れた魔力に堪えかね―――内側から暴発した。
「お前・・・・・俺より強いんじゃないのか?」
「僕の魔法は魔力に関しての攻撃。だから、魔力がない人には絶対に効かないんだ。
例を上げれば、川神百代さんのような人には効かないってことだよ」
それでも、俺には通用する魔法だぞそれ。地面と上空に出現している魔方陣は消え、
俺たちは警戒を解いた。ディオドラ・アスタロトたちを見れば、こっちに近づいてきた。
「ありがとう、おかげで助かったよ」
「どう致しまして。それにしても災難でしたね、テロリストに捕まってしまうなんて」
「相手の方が数が多くて抵抗のしようにも数の暴力では勝てなかった」
無謀にも等しい。誰もが当然だと感じるだろう。
「でもま、終わったことだ。学校に戻ろう。和樹、できるか?」
「うん、ちょっと待ってて・・・・・」
と、和樹が言った直後。顔の表情が険しくなった。
「・・・・・かなり強力な結界に僕たちは閉じ込められているみたいだね。このフィールド」
「なんだと?」
「学校に戻せても精々10人がやっとだ。こんな強力な結界を作り出す魔法使いは一体誰だ?」
あの和樹でさえも困難な結界に覆われているってか。―――一人だけこんなことできる奴がいるけどな。
「・・・・・『英雄派』のゲオルグだろう。
あいつの『
「ああ、彼か。なるほどね。納得できるよ」
和樹も納得した。和樹も認めるほどの魔法使いということだ。
それに、強くしちゃったからな・・・。
「取り敢えず、和樹に力の譲渡すればもっと増えるんだろ?」
左手に赤い籠手を装着して能力を発動する。
「うん、多分ね」
コクリと頷いて足元に転移用魔方陣を展開した。しばらくして溜めた力を和樹に譲渡した。
「どうだ?」
「・・・・・うん、いける。全員ってわけにはいかないけど、
僕とあと二、三人ぐらい残して殆どの皆を転移できる」
「そうか、なら俺は次元の狭間に出て学校に向か―――」
―――ドスッ!
「・・・・・」
「え・・・・・・」
俺の体に衝撃が走った。目の前にいる和樹の目が丸くなっていた。
下に目線を向ければ、俺の血で濡れた刃が胸から顔を出していた。
「―――これで、アーシアは僕の物だ。そう認識していいよね?」
背後にいたディオドラ・アスタロトの声を聞いた瞬間に、
ドサッ・・・・・。
体から力が入らなくなって地面に倒れてしまった。