ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode5

 

「・・・・・俺が、子供に成って数日間も過ごしていたとはな・・・・・」

 

「うん、とっても可愛かったわ!」

 

「至福の時でした」

 

「ふふっ、今の一誠さんじゃ絶対にしないこと、有り得ないことをたくさん言動をしましたしね」

 

数日間の記憶がない。なので、皆にこの数日間をどう過ごしていたのか聞いていた。

しかし、聞けば聞くほど、羞恥な思いになる一方だった。

 

「リアス・グレモリーに抱きついたり、ソーナ・シトリーに食べさせられたり、

小猫と銀華と一緒に猫の真似したり、桜に甘えたり・・・子供の俺は一体何をしていたんだよ」

 

「シアたちにも甘えていたわよ」

 

「・・・・・俺、悶え死にそうだよ。自分がいた言動に対してさ」

 

「もう、あなたをフォローするのも大変だったのよ?

十年前の子供の時のイッセーが十年後の現在を知らす訳にはいかなかったし、

そのため色々と苦労したわ」

 

・・・・・そうか、確かにそうかもしれないな。

十年後、それも父さんと母さんが死んでいるだなんて知ったら、

子供の時の俺はどうなっていたのか俺も含め皆も分からない。

 

「悪いな。迷惑を掛けた」

 

「―――まあ、その分の元を取れたから良いわ♪」

 

そう言って俺に一枚の写真を見せてくれた。

―――リアス・グレモリーと笑顔で映っている俺の子供の時の写真だった。

 

「ふふっ、永遠の宝物だわ♪」

 

「くっ・・・・・!まだ、アザゼルをお仕置きする必要があるようだな・・・・・!」

 

ドスッ!と何かを思いっきり踏んだ。俺の足元には春巻き状態のアザゼルがいる。

 

「痛っ!おい、イッセー!?もう、いいだろう!俺が悪かったと反省しているんじゃねぇか!」

 

「俺が許さない気が済まない。朱乃と一緒にお前をしばいてやるからな。

十字架に張り付けて鞭で叩いてやる」

 

「マジかよ!?そこまでされなきゃなんねぇのかよ!冗談じゃねぇ!バラキエル、助けてくれ!」

 

もう一人の堕天使に助けを請うアザゼルだが。

・・・何故だろうか、羨望の眼差しを向けてくるのは。

 

「それで、オー爺ちゃんとヴァーリ一行がここにいるのはどうしてなんだ?」

 

「はい、オーディンさまは日本の神々と会談をしに、

ヴァーリは何やらオーディンさま・・・というより、

オーディンさまを非難する者が現れると言うことなので、その者に用があるとのことです」

 

ソーナ・シトリーが説明してくれた。

 

「日本の神々ね・・・・・天照さんとスサノオの叔父さん、

ツクヨミさん、イザナミさんとイザナギさん、他の神さまも元気にしているかな?」

 

『・・・・・』

 

俺の一言に場が静まり返った。

 

「やっぱり、イッセーは凄いわね」

 

「誰も彼も日本で有名な神ばかりですよ

。国産みと神産みと謳われているイザナギとイザナミの名前まで出てくるなんて・・・・・」

 

「サプライズの宝庫だぞ、あいつは。誠と一香の奴も

そんな奴らと出会っていたなんて驚かせやがる」

 

「・・・・・兵藤家の一族の人間でもイザナギとイザナミと会うことは滅多にないのに」

 

「それが子供時代の一誠さまが会っていただなんて・・・・・」

 

何故にか皆に恐れ戦かれる俺。

でも、オー爺ちゃんが伸びた白いヒゲを擦りながら愉快そうに言う。

 

「ほっほっほっ、当然じゃわい。誠と一香が全世界に存在する神々と交流しておるからのぉ。

当然、孫も一緒にじゃ」

 

「・・・・・人間を嫌う神もいるはずなんだがな。そいつらも会っているとなると、

あいつらの魅力と性格と行動力が不動だということになるのか」

 

「喧嘩して仲良くなったって話は聞いたことあるぞ?向こうが

『高が人間が神の領域に土足で踏み込んでくるとは気に食わない』とか言って

攻撃を仕掛けたらしいけど、父さんと母さんが笑顔で勝って友達になったと聞かされた」

 

そう言ったら、アザゼルが額に冷や汗を流し始めた。

 

「・・・・・お前、とんでもねぇ人間の二人の間に生まれたな。正直、お前が怖いぜ。

あの二人の子供だと今改めて思えばよ」

 

「わしの場合はすぐに仲良くなったのじゃがな。

アースガルズの神族も様々じゃが哀愁的にあの二人と友好的になったおったわい」

 

へぇ、そうなんだ。オー爺ちゃんは優しいからすぐに友達になれたのも当然だったかも。

 

「さて孫よ。晴れてお主は元に戻った。お爺ちゃんと一緒に日本を旅行、観光しないかのぉ?」

 

「ん?会談は大丈夫なの?」

 

「ああ、まだ先の話じゃからの。時間はたっぷりあるわい」

 

「そっか。だったら行こうか。

オー爺ちゃんと一緒にどこかへ行くのは海の神さまが住んでいる海底の宮殿以来だね」

 

「ほっほっほっ。そうじゃの」とオー爺ちゃんは笑みを浮かべながら首を縦に振った。

 

「・・・・・お前ら、驚かされる意味で色々と覚悟した方がいいかもしれないぞ」

 

「ええ・・・私もそう思うわ」

 

「ははは、一誠は凄いね。この場にいる僕たちの中で逸脱しているよ」

 

「いっくんは凄い。ね、楼羅」

 

「はい。私たちの夫は色々な意味で凄いですからね。・・・・・夜の営みも」

 

「うん、私もそう思うよ。一誠くん、凄いんだから・・・・・」

 

何やら怪しい雰囲気の話題が出てきたような・・・・・気のせいだと思いたい。

 

―――○●○―――

 

次の日、俺は魔王主催で冥界のイベントに主役として参加していた。

理由は聞かないででくれ。あれは俺にとって黒歴史だ。

 

「はい、ありがとうございます」

 

握手とサイン会だった。俺の前に長蛇の列ができ、悪魔の子供だけじゃなく、

女性一人一人にサイン色式を渡して握手していく。子供と女性たちは俺が悪魔文字で

書いたサインを嬉しそうに受け取り、握手をし上げると満面の笑みで、

 

「真龍!がんばって!」

 

「ディーディー!」

 

「一誠さま、頑張ってくださいね」

 

と、声を掛けてくれる。現在俺は『D×D(ドラゴン・オブ・ドラゴン)』の鎧を装着している。

 

「はくりゅうこう!ありがとう!」

 

「おっぱいドラゴン!がんばってね!」

 

俺の横で同じくサインと握手をしていた白い全身鎧を着込んでいるヴァーリ、

赤い全身鎧を着込んでいる成神一成。

本来、テロリストのこいつ、ヴァーリがここにいるはずがないんだが・・・・・。

赤龍帝と白龍皇、成神一成とヴァーリが鎧を着た時に冥界全土のお茶の間に流れていたところ

子供たちが興奮して、絶賛。

テロリストのヴァーリのことは一般の悪魔には知られていないようだ。

知っているとすれば当然、軍と上層部。

魔王ルシファーはヴァーリのテロリスト加担には対して気にもしていなかった。逆に―――。

 

『ヴァーリが逆にスパイとして「禍の団(カオス・ブリゲード)」の情報を提供してくれれば

テロリスト扱いなんてしないわ』

 

と、大胆にもヴァーリを許した。それを聞いたヴァーリも苦笑していたな。

まあ、テロリストの懐に潜り込んで、スパイ活動をしているということなら、冥界と天界、

他の神話体系の上層部たちは不承不承で納得しざるを得ないだろうな。

ヴァーリもこれで思う存分に行動できると言うわけだが、

 

「(あいつらも会えてヴァーリの行動を許していると言うことは、

気にするほどのことでもないと言うことか?)」

 

特に曹操、『英雄派』は『真魔王派』より厄介だ。曹操がヴァーリを野放しにするとは思えない。

何か対抗策の一つや二つしてくるはずだ。今この瞬間でもそうしているはず。

 

「ディーディー!がんばってください!」

 

「ああ、ありがとう」

 

取り敢えず、このサインと握手会を集中だ。考えるのは後だ。

 

―――数十分後。

 

「だー、疲れたー」

 

「そんなこと言うなら、邪龍たちを出して命を掛けた鬼ごっこでもするか?」

 

「何を言うのかな!?俺は全然疲れていないぞ!あーっはっはっはっ!」

 

あからさまな空元気。俺たちのために設けられたテントの中で成神一成の笑い声が響く。

そこへスタッフが近づいてくる。

 

「兵藤様、お二人とも。お疲れさまですわ」

 

タオルを持って来てくれたのは―――縦ロールヘアーの少女でライザーの妹、

レイヴェル・フェニックスだった。

 

「レイヴェル。ありがとう」

 

汗を掻いただろう俺たちにタオルを持って来てくれた彼女に礼を言う。レイヴェルは俺たちが

冥界でイベントをすると聞きアシスタントとして、協力してくれていた。

 

「こ、これも修行の一環ですわ!それに冥界の子供たちに夢を与える立派なお仕事だと

思えるからこそ、お手伝いをしているのです!」

 

「(なんの修行の一環なのか聞きたいんだが・・・・・)まあ、ありがとうなレイヴェル」

 

ポンとレイヴェルの頭に手を置いて髪を撫でた。うん、撫で心地が良い。

そうすると、レイヴェルが顔を紅潮させていた。人に頭を撫でられるのは慣れていないのかな?

 

「それはそうと、レイヴェル」

 

「はい?」

 

「―――おっぱいドラゴンと『D×D(ドラゴン・オブ・ドラゴン)』。どっち派だ?」

 

今現在、冥界全土のお茶の間に流れている放送番組の中でとある二つの番組が大人気。

一つは『おっぱいドラゴンと愉快な仲間たち』。一つは『愛を司る「D×D(ドラゴン・オブ・ドラゴン)」の物語』。

どちらも悪を倒していく話だが、ゲームな感じで言えば、成神はパーティで俺はソロで活動する。

だから、この二つの番組を見る子供たちは水面下で激論しているようで、

二つの派閥ができつつある。

おっぱいドラゴンと『D×D(ドラゴン・オブ・ドラゴン)』。この二つの派閥だ。

 

「えっと・・・・・私は・・・・・」

 

チラチラと目を泳がせるが、俺に何度も視線を向けてくる。なるほどね。

 

「分かった。お前の気持ちは十分理解したよ」

 

ははは、と笑みを浮かべながら頭を撫で続けたところ。

 

「やっほー、兵藤くんたち。そろそろ人間界に帰還する時間だよ」

 

―――現五大魔王の一人、レヴィアタンが楽屋のテントに入ってくる。あー、そうだった。

今日はこの後、オー爺ちゃんと一緒に観光するんだったな。

 

「レイヴェルちゃんだったね?アシスタントありがとう」

 

「い、いえ、勉強の為ですから」

 

レヴィアタンのお礼の人頃にレイヴェルは緊張した面持ちで一礼した。

 

「ヴァーリちゃん。あんまりはしゃいじゃダメよ?一応、あなたも立場的に危なっかしいからね」

 

「一応は気をつけます」

 

ヴァーリはそれだけ言ったら俺に視線を向けてくる。

 

「まあ、一誠に関する事ならはしゃぐかもしれないがな」

 

「それだったら問題ないわね」

 

おい、そこはいいんかい。心の中でツッコミをしたら、レヴィアタンがこっちに顔を向けてきた。

 

「兵藤くん、また冥界に来た時には私の家に来てくれないかな?

ちょっと、妹のことでね・・・・・」

 

「・・・・・何となく嫌な予感がするのは気のせい?」

 

俺のその問いに彼女は苦笑いを浮かべるだけだった。

 

 

―――人間界―――

 

 

ドカッ!ガッ!ドンッ!ゴッ!ガンッ!

 

腕や拳、足と脚、己の体を武器に変えて相手を叩き潰さんとばかり思いっきり振り続ける。

相手も思いは一緒で一瞬の刹那で拳や足を繰り出してくる。

 

「「―――瞬間回復―――」」

 

俺と相手は疲労と意図的に細胞を活性化させて全身に傷付いた傷を治しては、

さらに殴り合い、蹴り合っていく。しばらくして―――。

 

「そこまでじゃ!」

 

ピタッ!

 

俺と相手の拳が目の前に止まった。互いの顔を殴ろうとした生んだ結果だ。

俺たちは構えを解いて息を零した。

 

「はぁー、やっぱりお前は強いな」

 

「それはこっちのセリフだぞ?サイラオーグ以外の男がまだいるんだからな」

 

「あいつもあいつで過酷なトレーニングをしていたはずだ。当然の実力だと思うぞ」

 

「ははは、それもそうだろうな。でも、お前もそうなんだろう?―――一誠」

 

相手、腰まで伸びた艶がある黒い髪に赤い双眸を俺に向けてくる少女、

川神百代は口の端を吊り上げた。

 

「・・・・・三途の川を何度も見た」

 

「・・・・・お前、私の思っているようなトレーニングをしていなかったようだな」

 

川神百代が顔を引き攣らせた。誰だって何度も三途の川を見るわけじゃない。

でも、俺は何度も見たんだ。川の向こうで父さんと母さんがこっちに手を招いて

近寄ってみた途端に蹴り飛ばされる体験もしてだ。

 

「急に呼んで悪かったな。そっちは大変な状況なんだろ?」

 

「俺たちは別に大したことはない。問題は学校の方らしいけどな。

テロリストに襲撃されて世間から色々な意味で注目されているし」

 

あれからすでに一週間以上経過している。

未だに、俺たちを向かい入れてくれる学校は見つからない様子。

 

「お前たちの学校のことは私たちの方にも届いている。

私たちの学校にも神器(セイクリッド・ギア)の所有者がいるから他人事じゃない」

 

「へぇ、そうなんだ?」

 

「その一人があそこにいるジジイだけどな」

 

彼女が視線を一人の老人に向けた。白いヒゲを生やして白い袴を身に付けている老人だ。

 

「こらモモ。儂に対してジジイというでないわい」

 

川神鉄心。夏休みにテレビで一度だけ見た老人その人だ。

 

「こうしてあんたと会うのは初めてだな」

 

「うむ、そうじゃの次期人王殿」

 

「普通に呼んでくれていいよ。今は百代の友達としているんだしさ」

 

苦笑を浮かべる。次期人王と呼ばれる時あるが真っ直ぐ言われるとあんまり慣れはしない。

気にはしないけどやっぱりな。

 

「では、一誠殿と呼ばせてもらうぞぃ。それと、モモの相手をしてくれてありがとうの。

モモの相手に務まる者は少ないからのぉ」

 

「俺の方が少ないと思うだけど?」

 

自分自身に指せば、川神鉄心は朗らかに笑った。生身のままならともかく、

あの鎧を着たら俺の相手になる奴は極端に少なくなる。

 

「なぁ、一誠。今度はあの鎧を着てくれよ。その状態で私は戦ってみたい」

 

「悪い、あの鎧は二人がいないと装着できないんだ。

つーか、あの鎧を着て百代と勝負したら勝負にならないって」

 

「それを聞いてますます勝負したくなったぞ」

 

余計なことを言ってしまった。と俺は全身から迸らせる彼女を見て少しだけ後悔した。

 

「それにしても、川神家って兵藤家の親戚の関係とは本当なのか?」

 

「うむ。その昔、川神家に婿入りした兵藤家の者がいての。

それにより川神家は兵藤家の傘下になったわけじゃ。兵藤家から様々な武術、格闘技、体術、

武器の心得を伝授されてワシら川神家が武道の総本山と称されるまで成長した」

 

「へぇ、そうなんだ。じゃあ、俺と百代も遠い親戚同士ってわけか」

 

「そうじゃな。それに二人は一度だけ会っておるぞ?

まあ、赤子の時のことだから覚えてはいないだろうがの」

 

マジで?じゃあ、覚えていないのは無理もないか。

 

「一誠殿。今度ワシの家に遊びにこんか?歓迎するぞぃ」

 

「ああ、次の機会に必ず」

 

それが別れの合図だとばかり俺は背中に青白い六対十二枚の翼を展開した。

 

「じゃあな、百代。またここで決闘しよう」

 

「ああ、お前との戦いは楽しかった。またしよう」

 

コクリと彼女の発言に同意と首を縦に振って、翼を羽ばたかせて一気に空へ飛翔する。

今は夜だ。眼下は家やらビルやら、建物から発する光が幻想的で、

それを眺めながら俺は暗い空の中を飛び続ける。

 

「さーて、オー爺ちゃんたちと合流をしなくちゃな。どこにいるんだ?」

 

そう呟きながら小型の魔方陣を展開した。その魔方陣にコンパスのように針が浮かび、

俺が求めている場所へと指してくれる。その針が指す方へ飛行の速度を上げて進んでいく。

飛ぶ際に受ける空気抵抗を感じながら飛び続けることしばらくして、俺の視界の端に夜空の中を

移動している一つの影を見つけた。その影の正体は、八本足の巨大な馬と

馬が引いている大きな馬車。もっとその影に近づけば―――その周りに馬車を警護している

複数の影が見えた。いたいた、あいつらだ。

 

ヒュンッ。

 

空を切る音と共に馬車に近づいた。複数の影の一つ、木場祐斗に話しかけた。

 

「よっ」

 

「やあ、来たんだね」

 

「相手を満足させるのに時間が掛かった。オー爺ちゃんは中にいるんだろう?」

 

俺の質問にこいつはコクリと頷いた。じゃあ、このまま俺も混ざって警護するか。

そう思ってしばらく空を掛ける馬車を引く馬と飛んでいると―――目の前の空間が歪みだした。

その歪んだ空間から突如、言い様のない力を感じ、

馬も目の前から強大な力を感じたようで急停止し、鳴いたのだった。

 

「来て早々敵さんと出くわすなんて俺は運がいいと言うべきか?」

 

「できれば、運が悪いなと言ってくれるかな。いまの戦闘狂の発言だよ?」

 

むっ、そう聞こえるか。木場祐斗に向けていた視線を前方に向け直した。俺たちの前方には

歪んだ空間から出てきた若い男らしき者が浮遊している。

身につけているものはオー爺ちゃんが着ている

ローブと似ている、色は黒がメインだ。さて・・・・・誰だ?男はマントをバッと

広げると口の端を吊り上げて高らかに喋り出した。

 

「はっじめまして、諸君!我こそは北欧の悪神、ロキだ!」

 

北欧の悪神・・・・・ロキだと・・・・・?

馬車から出て、男を確認した足元に魔方陣を展開してオー爺ちゃんを乗せている

ロスヴァイセとセルベリア・ブレスが心底驚いたような表情になり、

同じく馬車から出てきた六対十二枚の翼を展開しているアザゼルは舌打ちもしていた。

 

「これはロキ殿。こんなところで奇遇ですな。何か用ですかな?この馬車には

北欧の主神オーディン殿が乗られている。それを周知の上での行動だろうか?」

 

アザゼルが冷静に問いかける。ロキは腕を組みながら口を開いた。

 

「いやなに、我らが主神殿が、我らが神話体系を抜けて出て、我ら以外の神話体系に

接触していくのが耐えがたい苦痛でね。我慢できずに邪魔をしに来たのだ」

 

流石は悪神と名乗る神。悪意全開の宣言で凄い物言いだ。

 

「堂々と言ってくれるじゃねぇか、ロキ」

 

ロキの言葉を聞きアザゼルは口調を変え声音もかなり怒気が含まれているのが分かった。

うん、丁寧語を使うアザゼルは似合わない。アザゼルの一言を聞いて、

ロキは楽しそうに笑う。

 

「ふはははは、これは堕天使の総督殿。本来。貴殿や悪魔たちと会いたくはなかったのだが、

致し方あるまい。―――オーディン共々我が粛清を受けるがいい」

 

「お前が他の神話体系に接触するのは良いってのか?矛盾しているな」

 

「他の神話体系を滅ぼすのならばいいのだ。和平をするのが納得できないのだよ。

我々の領域に土足で踏み込み、そこで聖書を広げたのはそちらの神話なのだから」

 

「・・・・・それを俺に言われてもな。その辺はミカエルか、聖書の神に言ってくれ」

 

アザゼルは頭をボリボリ掻きながら呟く。

 

「どちらにしても主神オーディン自らが極東の神々と和議をするのが問題だ。

これでは我らが迎えるべき『神々の黄昏ラグナロク』がじょうじゅできないではないか。

―――ユグドラシルの情報と交換条件で得たいものは何なのだ」

 

アザゼルは指を突きつけて訊いた。

 

「一つ訊く!おまえの行動は『禍の団(カオス・ブリゲード)』と繋がっているのか?

って、それを律儀に答える悪神さまでもないか」

 

ロキは面白くなさそうに言葉を返す。

 

「愚者たるテロリストと我が想いを一緒にされると不愉快極まりないところだ。

 

―――己の意思でここに参上している」

 

その答えを聞いて、アザゼルは身体の力が抜けていた。

 

「・・・・・『禍の団(カオス・ブリゲード)』じゃねぇのか。だが、これはこれで

また厄介な問題だ。なるほど、爺さん。これが北が抱える問題点か」

 

アザゼルがオー爺ちゃんに顔を向けると、

 

「ふむ。どうにもの、頭の固い者がまだいるのが現状じゃ。こういう風に自ら出向く

阿呆まで登場するのでな」

 

オー爺ちゃんは顎の長い白ヒゲを擦りながらそう言った。

 

「ロキさま!これは越権行為です!主神に牙をむくなどと!許される事ではありません!

然るべき公式な場で異を唱えるべきです!」

 

ロスヴァイセは瞬時でスーツ姿から鎧に変わり、ロキに物申していた。セルベリア・ブレスもだ。

へぇ、あれがヴァルキリーの鎧姿か・・・・・・。防御が薄そうだなー。

 

「一介の戦乙女ごときが我が邪魔をしないでくれたまえ。オーディンに訊いているのだ。

まだこのような北欧神話を超えた行いを続けるおつもりなのか?」

 

返答を迫れたオー爺ちゃんは平然と答えた。

 

「そうじゃよ。少なくともお主よりもサーゼクスとアザゼルと話していた方が万倍も

楽しいわい。日本の神道を知りたくての。あちらもこちらのユグドラシルに興味を持っていた

ようでな。和議を果たしたらお互い大使を招いて、異文化交流をしようと思っただけじゃよ」

それを聞き、ロキは苦笑した。

 

「・・・・・認識した。なんと愚かな事か。―――ここで黄昏を行おうではないか」

 

おー、凄まじい敵意だ。本気でオー爺ちゃんを殺そうとしているようだ。

そうはさせないがな。

 

「それは、抗戦の宣言と受け取っていいんだな?」

 

アザゼルの最後の確認にもロキは不敵に笑む。

 

「いかようにも」

 

ドガァァァァァァアアンッ!

 

突如、ロキに波動が襲いかかった。

何事かと目を配れば―――馬車の上に乗っているゼノヴィアがデュランダルを

振るったようだった。聖剣から大質量のオーラが立ち上がっている。

 

「先手必勝だと思ったのだが」

 

ゼノヴィア・・・・・。先手必勝にも完全にフライングだろう。

 

「どうやら、効いてないようだ。さすがは北欧の神か」

 

俺の隣に近寄りながら言うヴァーリは楽しそうに笑みを浮かんでいた。

ヴァーリの言葉に視線を戻せば―――何事もなかったように空に浮くロキがいた。

 

「聖剣か・良い威力だが、神を相手にするにはまだまだ。そよ風に等しい」

 

木場祐斗も剣を作りだし、ゼノヴィアの隣にいたイリナも腕に巻いていた聖剣を

刀状に変えて構えた。それを見てロキは笑う。

 

「ふはははっ!無駄だだ!これでも神なんでね、高が悪魔や人間の攻撃ではな」

 

ロキガ左手を前にゆっくりと突き出す。その手に得体の知れないプレッシャーが集まるのが

本能的に理解できる。なので―――両手をポケットの中に突っ込んだ。

 

「神相手にこれ(・・)は感知できるかな?」

 

「なに?」

 

ヴァーリが疑問を俺にぶつけたその時だった。

ロキが勝手に誰かに殴られたかのように吹っ飛んで行った。

 

『・・・・・』

 

唖然と皆がロキを見据える最中、吹っ飛んだロキは体勢を立て直して、

理解ができないとばかり眉間を寄せた。

 

「いまの衝撃・・・・・誰―――」

 

と言いかけたロキはまた誰かに殴られた態勢になった。

 

「なんだ、ロキに何が起きている?」

 

アザゼルが怪訝な面持でロキに対して呟く声が耳に届く。

まあ、こいつは見えない攻撃だから感知するにしてもかなり難しいものだ。

 

「くっ、一度ならず二度までも・・・!」

 

じゃあ、今度は連続だ。

 

ドンドンドンドンドンドンドンドンッ!

 

ロキは何度も透明人間に殴られているかのように体が激しく動く。―――しばらくして、

 

「おのれ、なんなのだ!?堕天使の総督か赤龍帝の攻撃か!?」

 

「「ええええええええええええ!?」」

 

憤怒の形相でロキがアザゼルと成神一成に睨んで言うが、当の二人は身に覚えのないことに

驚きの声音を発する。うん、完全に勘違いしているなあいつ。

―――と、ロキの奴が徐にマントを広げ、高らかに叫ぶ。

 

「出てこいッ!我が愛しき息子よッッ!」

 

ロキの叫びに一拍空けて―――宙に歪みが生じる。なんだ?何かを呼んだのか?

 

ヌゥゥゥゥッ。

 

空間の歪みから姿を現したのは―――灰色の狼。十メートルぐらいはありそうな

巨大な灰色の狼が

俺たちの前に出てきた。

 

「こいつは・・・・・」

 

「ただの狼じゃなさそうだな・・・・・」

 

こいつはロキ以上の強さだと俺は認識した。俺は気を引き締めて狼を睨むように見詰める。

とうの狼も威嚇する動作すら見せず、ただただ俺たちを視線だけで射貫いていた。

 

『気をつけろ。こいつはお前にとって危険な存在だ』

 

珍しくクロウ・クルワッハが俺に警告した。俺にとって=人間にとって危険な存在だと

言いたいのだろう。

 

「マズい・・・・・。おまえら、あのデカい狼には手を出すなッ!イッセー、距離を置け!」

 

アザゼルの言葉に振り向く。アザゼルの表情はいままでに無いほど、緊張に包まれていた。

 

「先生!あの狼、何なんですか?」

 

成神の問いにアザゼルは絞り出すように言葉を発した。

 

「―――神喰狼、通称フェンリルだ」

 

『―――ッ!?』

 

・・・・・マジで?俺は静かに驚愕するが百代は首を傾げていて分からないようだ。

 

「フェンリル!まさか、こんなところに!」

 

「・・・・・確かにマズいわね」

 

「ええ・・・・・」

 

木場祐斗もリアス・グレモリーもソーナ・シトリーも相手を把握し、警戒態勢になっていた。

昔、色々な本を読んでいたから分かる。神喰狼(フェンリル)。神を噛み殺すことができる牙を持つ魔物。

 

「イッセー!そいつは最悪最大の魔物の一匹だ!神を確実に殺せる牙を持っている!

そいつに噛まれたら、いくらお前でもかなり危険だ!」

 

・・・・・アザゼル、俺と成神一成、どっちに言っているのかハッキリ分かるように言ってくれ。

間違って反応しちまうからさ。

 

「そうそう。気をつけたまえ。こいつは我が開発した魔物のなかでトップクラスに最悪の部類だ。

何せ、こいつの牙はどの神でも殺せるって代物なのでね。試した事はないが、

他の神話体系の神仏でも有効だろう。

上級悪魔でも伝説のドラゴンでも余裕で致命傷を与えられる」

 

すーっ。

 

ロキの指先が俺に向けられる。

 

「本来、北欧の者以外に我がフェンリルの牙を使いたくはないのだが・・・・・。

 まあ、この子に北欧の者以外の血を覚えさせるのも良い経験となるかも知れない」

 

・・・・・まさか・・・・・ね?

 

「―――兵藤の血を舐めるのもフェンリルの糧となるだろう。―――やれ」

 

オオオオオオオオォォォォォォォォォォオオオオオンッ!

 

止みの夜空でフェンリルが透き通るほど見事な遠吠えをしてみせた。その鳴き声は、

俺たちの全身を震え上がらせるには十分すぎて、さらに聞き惚れてしまうほどの美声だった。

 

ドンッ!

 

が、フェンリルが見えない打撃によって遠くに吹っ飛んだ。

 

「・・・・・なに?」

 

ロキは信じられないと顔に驚愕の色を浮かばせる。速そうだから先に攻撃させてもらったぞ。

密かに。

 

「―――今日は一旦引き下がろう」

 

未知なる攻撃に対処ができないと苦渋に満ちた顔で

フェンリルを自身のもとに引き上げさせるロキ。

マントを翻すと、空間が大きく歪みだして、ロキとフェンリルを包んでいった。

 

「だが、この国の神々との会談の日!またお邪魔させてもらおう!オーディン!

次こそ我と我が子フェンリルが、主神の喉笛を噛み切ってみせよう!」

 

ロキとフェンリルがこの場から姿を消したと同時に、

ポケットに入れていた両手を抜き取って―――。

 

「はぁ、疲れたぁ」

 

『お前の仕業だったのかァッ!?』

 

溜息を吐いたら、皆に突っ込まれた俺であった。

 

 

 

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