ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode8

 

 

「―――と、そう言うわけだお前ら。今からグレイプニルを作ってくれ」

 

『分かった!』

 

「そんじゃ、始めるぞ!」

 

ゲルダンの言葉に呼応するかのように集まったドワーフたちが腕を上げて気合の声を上げた。

それから各々と作業に取り掛かり始めた。

 

「―――エイリン、ユーミル。こっちに来い」

 

女のドワーフ二人がゲルダンの声に反応してこっちに近づいてきた。

 

「二人はこの者と一緒にグレイプニルの製造をするのだ」

 

「・・・・・父上、この者は人間ですぞ?」

 

「それを承知の上で言っておるのだ。それに、覚えてはいないのか?」

 

そう言われ、二人の女のドワーフは怪訝に首を傾げた。

何に対して覚えていないのか理解できていないようだ。

 

「この者は十年前、ここへ来て遊びにやってきた人間の親子の子供だぞ?」

 

「・・・・・なんじゃと?」

 

「あー、これが子供の俺だ」

 

これで何度目か、まるで通行書みたいになりつつある父さんと母さんと一緒に写っている

子供の時の俺の写真を二人に見せると、

 

「おお!お主じゃったのか!?」

 

「全然気付かなかった。いやー、懐かしいのぉ」

 

思い出したようで一気に二人の疑問が消えた。

 

「改めて自己紹介だ。俺は兵藤一誠だ。短い間だけどよろしくな」

 

「わしはユーミルじゃ。久しいの」

 

「わちはエイリン。よろしくな」

 

二人の女のドワーフ。二人とも金髪に青い瞳。髪型だけが違い見分けがつく。

 

「さて、わしらは鉱山に向かって必要な材料を採取してこようかの」

 

「懐かしいな。俺もちょっとは手伝ったよな?」

 

「うむ。実に可愛らしかったの。一生懸命、鉱石を運ぶ姿が愛くるしかったわい」

 

そう思われていたのか。というか、そんな風に見ていたのかこの二人は。

 

「一誠、暇だから私も手伝うぞ」

 

「私は力仕事なんて苦手だから猫になって見守るにゃん」

 

片や協力、片や無気力で猫の姿になって俺の頭の上に乗っかりだした。

 

「それじゃ、ピッケルと台車を用意して鉱山へ行くぞ!」

 

ユーミルの発言に俺たちは頷き、いざ、鉱山へ向かった。

 

―――鉱山―――

 

「って、森林ばっかりの中でどうやって鉱山を見つけているんだ?」

 

ガラガラと台車もといリアカー・・・・・というより、

トラックに似た物を運転するエイリンに尋ねる。

これ、動力が魔力らしく、地面から少しだけ浮いて前進しているんだ。

 

「その上、この乗り物ってドワーフとダークエルフが作ったものか?

前は何にも気にしていなかったから聞かなかったけど」

 

「父上の話じゃと、お主の両親が提供してくれた物じゃ。

他にも幾つも作ってはわちらドワーフにくれるのじゃ。これを貰ってからというものの、

スムーズに鉱山の発掘と運搬ができてかなり大助かりじゃ」

 

父さんと母さん・・・・・息子の俺が知らない間に何時の間にこんな物を作っていたんだ?

改めて二人に驚かせられました。

 

「それで、最初の質問に答えると、山の麓に鉱石が掘れる洞窟があるんじゃよ。

わちらはそこに向かっておる」

 

「ああ、そう言えばそうだったな。洞窟の中で一生懸命掘っていたんだよな」

 

「うむ、そうじゃよ。他にも宝石も採掘できるからわちにとっては嬉しい限りじゃ」

 

エイリンは宝石が好きそうだ。掘れたらあげよう。

 

「のう、お主のことを名前で呼んでよいか?」

 

「別に構わないぞ」

 

「ならばイッセー。両親は元気にしておるか?

お主がここにいるのは両親が教えてくれたからなのじゃろう?」

 

「・・・・・」

 

純粋に訊いているんだと分かる。

が、俺にとって未だに引き摺っている事だから複雑極まりない質問だ。

 

「む?どうしたのじゃ?」

 

「・・・・・いや、父さんと母さんは死んでいるんだよ。それも十年前に」

 

「―――な、なんじゃと・・・・・!?」

 

前に向いていた顔をこっちに向けていた。勿論、そんなことをすれば―――。

 

「ちょっ、前!前を見ろエイリン!」

 

「のわっ!?」

 

とある巨木に向かって接近してしまった。慌ててエイリンの方へ体を寄せて、

ハンドルを掴み、巨木から回避しようと操作した。

 

ガンッ!

 

巨木と掠りながらも俺たちが乗っている乗り物は、なんとか大破せずに済み、

真っ直ぐ鉱山へ向かっていく。

 

「こらエイリン!操作中に余所見するなと言っておろうが!」

 

「す、すまんのじゃユーミル姉」

 

後部座席からユーミルが叱咤の言葉を放ってきた。そこで俺と彼女は溜息を吐いた。

 

「すまんの。あまりの驚きさで・・・・・」

 

「いや、しょうがないことだ」

 

「・・・・・ところで、わちはいつまでお主の脚の上に乗っていればいいのじゃ?」

 

はい、今の俺の現状は、操縦席にいてエイリンを脚の上に乗せている状態です。

 

「鉱山が着くまでだ。また、操作ミスしたら堪ったもんじゃない」

 

「・・・・・申し訳ないのじゃ。じゃが、本当なのか?お主の両親が死んだと言う話しは」

 

「死んだ・・・・・というよりは殺されたんだよ」

 

事実を告げる。エイリンが上目づかいで丸くした目を俺に覗かせる。

 

「イッセー・・・・・おぬしはどうやって生きておったのじゃ?」

 

「父さんと母さんを知っているヒトのもとで暮らしていた。

鍛えてもらいながら生活を送っていた。今でも一緒に住んでいるよ。

血は繋がっていないけど家族と一緒に暮らしている」

 

「・・・・・そうか。イッセー、お主は幸せなのじゃな?」

 

彼女の言葉に「ああ」と返事をした。ポンと頭に手を乗せて撫でた。

 

「そうだな。後ろにいる幼馴染や頭の上にいる黒猫もいるんだ。寂しくはないさ」

 

「・・・・・ふふっ、そうか。・・・・・ところで、何時までわちの頭を撫でるのじゃ?」

 

「いや、撫で心地が良いからもう少しだけ」

 

「むぅ、わちの方がお姉さんなのにな」

 

・・・・・え?お姉さん?

 

「あれ、エイリンって俺と同い年じゃないのか?」

 

「何を言うか。ドワーフは永遠ではないが永く生きる種族なのじゃぞ」

 

「・・・・・年上なのか?」

 

「うむ。それにわちは成人を迎えたから大人なのじゃ」

 

お、大人・・・・・。ドワーフは身長が小さいとは聞いていたけど、

この身長で大人・・・・・。

子供の時は俺とほぼ変わらなかった慎重だったから、

同じ年代なのかと思っていたんだが違ったのか。

 

「ユーミル姉もそうじゃぞ?一つ年上じゃがな」

 

そ、そうか・・・・・歳はいくつなんだ・・・・・?気になるな。

 

「イッセー、あそこじゃ」

 

エイリンが声を掛けてきた。指さす方に運転、操作して近づく。

そこは洞窟でドワーフたちが掘っただろう痕跡がハッキリとあった。

乗り物を停止させて、エイリンを抱えて降りた。

 

「で、何時までわちを抱えるのじゃ?」

 

「すまん、抱き心地が良かったからな」

 

「むぅ、絶対に子供扱いをしておるなお主」

 

さあ、何のことだろう?俺には分からないんだけどな。荷台からピッケルを人数分取り出して、

三人に配ってUの字のように梯子状に組みあがった線路を踏み越えて進む。

 

「どのぐらいの量の鉱石を掘るんだ?」

 

「満タンになるまでじゃ」

 

「了解、ヴァーリ。疲れたら休んでいいからな?手に傷がついたら俺が治すから」

 

「分かった」

 

コクリとピッケルを持ったまま頷く彼女を余所にエイリンとユーミルは真っ直ぐ洞窟の中を進む。

その度に洞窟に設置されている梯子状に組みあがった線路が奥へと続いている。

しばらくして俺たちは広い空洞、空間に出た。中央部分に枝分かれている梯子状に組みあがった

線路が視界に飛び込んできた。トロッコも枝分かれている数の分も静かに鎮座している。

 

「ここが鉱石が掘れる場所じゃ」

 

そう言って地面に落ちている一つの石を掴んで俺とヴァーリに見せた。

一見ただの石しか見えないが・・・・・。

 

「こうして割ると―――」

 

ガキィンッ!

 

ユーミルが石を割った瞬間。割れた石から綺麗な青白い光が生じた。

 

「ほう・・・・・その石は魔力が込められているのだな?」

 

興味深いとヴァーリが口を開いた。ユーミルは「うむ」と肯定の言葉を言う。

 

「わしらはこの鉱石のことを『魔石』と呼んでおる。

こうして割ると鉱石に籠っていた魔力は、外に放出してただの石になってしまうから掘る時には

気を付けてくれ。魔力が籠ったままの鉱石を掘るんじゃ」

 

「見分けつくのか?」

 

「ドワーフはこう言ったものを掘るのが長けておるからの。

どれがそうでどれがそうじゃないのか、呼吸するような感じで分かるのじゃ」

 

俺たち人間とハーフと悪魔なんだけど・・・・・。

 

「その鉱石って外部から放つ魔力に反応するのか?」

 

「そうじゃの。大小様々じゃが、魔力を感知すると青く光るらしい。

わちらはそんなことしなくても掘れるからしたことはないんじゃが」

 

なるほど・・・・・そういうことならば―――。俺は背中に青白い六対十二枚の翼を展開して魔力を

洞窟全体に放出してみた。すると、魔力の波動に感知した石が至るところに青く浮かび上がった。

 

「イッセー・・・・・お主・・・・・」

 

「この十年間、俺も色々と遭ったんだ。まあ、皮肉にもそのおかげで今の俺がいるんだけどな」

 

「「・・・・・」」

 

「そんじゃ、鉱石を掘るとしようか」

 

散らばって鉱石を掘る俺たち。魔力を感知して未だに青く浮かぶところに掘ると

青白く光る石が顔を出す。割らないように鉱石を掘り出しては鉱石とそうではない石と分けて

魔石はトロッコの中に入れ、掘り続ける。

 

「・・・・・ん?」

 

掘り続けていると青く光る鉱石に混じって、赤い結晶状の宝石を見つけた。

その上、宝石から魔力を感じる。

 

「これも魔石なのか?」

 

その宝石を掴み取って眺めていると、

 

『強力な魔力が秘められているな。その宝石は』

 

内からドラゴンが喋り出した。どういうことだ?

 

『そのままの意味だ。その宝石に強力な魔力が込められている。実に興味深いな』

 

ふーん、そうなんだ。これ、あいつらに渡した方がいいか?

 

『たかがドワーフに持たせても宝の持ち腐れだ。それに手に負えない代物だろう。

お前が持っていろ』

 

お前がそう言うならそうしよう。赤い結晶状の宝石をポケットの中に入れ、

再びピッケルを持って振るった。

 

―――一時間後

 

「ふぅー、大量じゃのぉ」

 

「これぐらいあれば足りるじゃろ」

 

乗ってきた乗り物の荷台には魔石が大量に積まれている。

すでに青く光っていないただの石に戻っている。

 

「それじゃ、帰るとしようかの」

 

「じゃな。空も朱に染まっておるし、お腹空いたわい」

 

エイリンとユーミルが疲れた体で乗り物に乗り込む。

ヴァーリも乗り出すと俺もエイリンの隣に座る。

 

「よし、出発じゃ」

 

彼女が運転を始める。乗り物は動き出し、

エイリンの操作によって乗り物は巨大な木に向かって移動する。

 

「グレイプニルはどのぐらいの期間で完成する?」

 

「数日は掛かるの」

 

そのぐらいなら間に合うか。浮遊し移動する乗り物に乗る中、

ポケットに手を突っ込んで赤い結晶を触れる。

 

「(これはなんなのか、和樹かアザゼルに相談してみよう)」

 

あれから掘り続けていたらもう一つ同じ結晶が発掘した。

内一つは俺の内にいるドラゴンに渡して調べさせているが、まだ判明していないようだ。

まあ、今はこの結晶のことよりも、グレイプニル。鎖の方だ。そっちを集中しないといけない。

 

―――○●○―――

 

夕食はドワーフとダークエルフと交じっての食事だった。

材料は俺が採ってきた野生の植物と狩った動物も混じっている。

特にダークエルフは白いキノコが調理に混じっていることに歓喜の雄叫びをあげていた。

本当、あのキノコが好きなんだな。

 

「賑やかだな」

 

「ああ、そうだな」

 

「うみゃい!このキノコのソテー、うみゃいにゃん!」

 

黒歌に至っては調理した白いキノコを美味しそうに食べていた。

逆にドワーフは一切口にしようとしない。エイリンとユーミルに訊いたら、

 

「あのキノコだけはどうしてもダメじゃ。他のキノコなら食べれるんじゃがな」

 

「口に合わんのじゃ。あのキノコだけは」

 

それはドワーフ全体、総意の言葉だと理解した。

まあ、その分ダークエルフたちの腹の中に行くから満足するんだろうけどさ。

 

「はははっ、今日は何時もより皆が賑やかだな。

これもイッセーくんがくれた材料のおかげかな?」

 

「そうかな。普通に探したら見つけた奴ばかりなんだけど」

 

「あのキノコは中々見つけれないものでな、だから滅多に料理に出されることはないのだ」

 

「そんなものなのか?」

 

グローリィは頷く。普通に見つけたんだけどな・・・・・。

集団で生えていた白いキノコもあったし。

 

「がはははっ!おうイッセー!飲んでいるかぁ!?」

 

ゲルダンが顔を真っ赤に染めて笑いながら近付いてきた。酒臭い!?

 

「俺、未成年だから飲めないって」

 

「なんだと?酒を飲めなきゃ成人にはなれんぞ!」

 

ドンッ!と置かれた木で作られたコップ。その中に透明な液体が入っていた。

 

「これ、酒なのか?」

 

「ああ、俺たちドワーフにしたら水みたいなもんだがな」

 

顔を赤くしている時点で水じゃないんじゃ・・・・・。

 

「・・・・・」

 

機嫌を損なわせるわけもいかない。と、内心しぶしぶと酒を飲んだ。

 

「ん?意外とあっさりして飲めやすいな」

 

「がははっ!そうかそうか!」

 

ゲルダンが愉快そうに笑う。だけど、これ以上は飲まない方がーーー。

 

「イッセーくん。ダークエルフが作る酒もいいぞ?」

 

笑みを浮かべ俺に酒を勧めるグローリィがいた。

 

ーーー数十分後

 

「しっかりせぃ、イッセー」

 

「き、気持ち悪い」

 

「すまんのぅ、父上は酒を飲むのとあんな感じではしゃぐのじゃ」

 

ユーミルとエイリン、二人に介護される俺がいた。場所は二人の家。

ゲルダンの家でもあるため、俺はエイリンのベッドで横たわっている。

ヴァーリと黒歌は用意された別の部屋で寝ている頃だと思う。

 

「悪いな。迷惑を掛けた」

 

「気にするな。寧ろ、外の世界の人間と話す機会が増えたと思えば楽しいぞ」

 

「外の世界に行こうとは思わないのか?」

 

「行く宛も住む場所もないからの、人間界は危険性もあるしの」

 

そっか。ドワーフって外の世界とは交流を果たしていないのか。

 

「・・・・・二人って、外の世界に興味あるか?」

 

「む?それはあるが・・・・・」

 

「じゃあ、少しだけど俺が住んでいる人間界の町のことを話そうか」

 

そう言うと二人の顔が輝き、首を縦に振った。それから俺は語り出す。外の世界のことを―――。

 

 

 

 

 

 

「ふむ・・・・・いい雰囲気だな、あの三人は」

 

「そうだな。イッセーくんは不思議な魅力を感じさせる」

 

「・・・・・グレイプニルが完成させたら頼んでみるとしよう」

 

「なんだ、ゲルダン。娘と従妹をイッセーくんに任せるのか?」

 

「ふん、そんなことしようと考えればドワーフ伝統のあれで俺に勝たないと話にならん」

 

「では、するのだな?」

 

「くくっ、さてな。まあ、密かに準備はしておこうか」

 

 

―――数日後―――

 

 

「・・・・・これで完成なのか?」

 

「ああ、これで完成だ」

 

俺の目の前に巨大で極太な鎖が置かれている。今はダークエルフの長老、

グローリィが強化魔法をグレイプニルに施している最中だった。

 

「ドワーフの技術も学べて来て良かったよ。家に戻ったら工房でも作ろうかな」

 

「おいおい、あんな技術はほんの一端だぜ?ドワーフの技術を習得しないなら師匠が必要だろ」

 

「・・・・・師匠?」

 

「ああ、だが、そんな簡単に俺たちの技術を他の奴らに使わせる訳にはいかない」

 

ゲルダンがドワーフたちに目を配らせた。

すると、一人のドワーフが平べったい岩を担いで傍に置きだした。

 

「ゲルダン?」

 

「帰る前に一丁、ドワーフ伝統の行事をしようじゃねぇかイッセー」

 

笑みを浮かべるゲルダンを余所に、

岩を持ってきたドワーフが肘を岩について―――腕相撲の姿勢に入った。

 

「腕相撲・・・か?」

 

「そうだ。ドワーフ伝統の行事、その名も『百人連続腕相撲勝負』。

この伝統は文字通り百人のドワーフたちと連続で腕相撲して勝ち進む行事だ。

そして、百人連続腕相撲で勝ったドワーフは王となるんだ」

 

「・・・・・はい?」

 

思わず間抜けな返事をしてしまった。何故いきなりそんな事になるんだ?

 

「だが、イッセーは人間だ。ドワーフではないから王にはなれぬが、

一種の信仰を深めるためと思って腕相撲をしようじゃないか。

お前の力をここにいる百人のドワーフたちと勝負して俺たちを認めさせてみろ。

―――兵藤誠もそうして俺たちと信仰を深めていたんだぜ?」

 

「―――――」

 

「ちなみにあいつは九十九人連続で倒した。さて、お前は一体何人連続で勝つかな?」

 

父さんは九十九人・・・・・。多分最後はゲルダンで終わったんだろう。

 

「じゃあ、百人連続で勝てば父さんを越えるってことか」

 

待機して待ち構えているドワーフの手を掴んだ。・・・・・身長差が大きく離れているな。

 

「ちょっとタンマ」

 

「どうした?」

 

「台が低すぎる。準備をするからちょいと待っててくれ」

 

腕を上に翳す。すると、足元と真上に魔方陣が展開して光り輝く。

その時、俺は光に包まれて体がどんどん小さくなる。

―――そう、俺は体を小さくして子供の状態になっている。

 

「・・・・・ほう」

 

・・・なんだろう、ヴァーリの俺を見る目が得物を狙う目だったぞ。

 

「がはははっ!ドワーフと同じ身長でしようってことか!対等で勝負しようとするところは

誠と似ているな!あいつも体を小さくして勝負に挑んでいた。親も親なら子も子か!」

 

「そうか、それは良いこと訊いたよ。―――さあ、やろうか」

 

「おう、全力でいくからな」

 

ガシッ!と相手の手を強く掴んだ。審判はゲルダンだ。

 

「それでは、始めるぞ?用意は良いな?」

 

俺と相手が互いに掴んでいる手の上にゲルダンは自分の手を置いた。相手と一緒に頷く。

 

「―――始めッ!」

 

刹那―――。ドゴンッ!と鈍い音を立てて手の甲が平らな岩の表面についた。

 

「・・・・・・」

 

相手のドワーフの手の甲が。

 

「よし、まず一勝。―――次!」

 

「よっしゃ、今度は俺だ!」

 

今度は別のドワーフが一歩前に出てきた。

そして、腕相撲を開始してわずか一秒で相手を倒した俺だった。

 

―――○●○―――

 

―――ヴァーリside

 

ドゴンッ!

 

「つ、つぇ・・・・・」

 

「あの人間、やるじゃねぇか」

 

「流石はあの二人の子供だ。血は受け継いでいるってことか」

 

ふふっ、私の一誠が負けるわけがない。ドワーフたちの会話を聞き、

私は自分のことのように嬉しがっていた。

 

「にゃー、ドワーフって力が自慢の種族だったよね?」

 

「ああ、私もそう認識している」

 

「イッセーってもしかしてドワーフの力より上かにゃん?」

 

・・・・・いや、そうではないだろうな。純粋に力比べをしたらドワーフの方が少し上のはずだ。

それに今の一誠は子供になっている。子供の腕を折るぐらいドワーフは朝飯前。

私の男はきっと何かしているはずだ。

子供になってもドワーフを倒し続けている何か秘策を・・・・・。

 

「ふんっ!」

 

ゴンッ!

 

「ぐっ・・・くそ、負けちまった!」

 

「今度は俺だ!」

 

「こい」

 

一誠は構える。腰の重心を少し下げ、右足を少し開いて前に突き出し、

左足を後にずらして肘を岩の表面に突く。そして―――。

 

「はっ!」

 

一瞬で相手のドワーフの手の甲を岩の表面に押し付けた。

―――その時、私は見た。一誠の体の動き力の流れを。

 

「・・・・・ふっ、そういうことか」

 

「にゃ?」

 

「そう言えば・・・・・私が子供のころ、男だと偽っていた時、一誠と腕相撲をしていたな。

その時は何度も負けた。悪魔と人間のハーフの私が人間の子供に何度も負けるなんておかしいとは

思っていた。だが、その理由がようやく分かったよ」

 

やはり、一誠は凄いや。だからキミを追いかけたくなるんだ。

その背に、キミの前を追い越したいと思って―――。

 

―――一誠side

 

「これで・・・・・九十九人ッ!」

 

ドゴンッ!

 

相手のドワーフの手の甲を岩に押し付けた。さ、流石に右腕の力が辛くなった。

 

「・・・・・」

 

手がフルフルと震える。長時間同じ力の具合でやり続けていると痙攣もするか・・・・・。

 

「ふふふっ、よもや・・・あいつと同じことをするんだな。

お前を見ていると誠と腕相撲していたあの頃がハッキリと脳裏に思い浮かんだぞ」

 

「はっ、そうか・・・・・」

 

「さて、百人目は当然、この俺だ」

 

おいおい・・・・・全身から闘気が漲っているぞ。

今までのドワーフより格段にプレッシャーが違う。

 

「外の世界の者と腕相撲をしたのはお前で二人目だ。―――俺を楽しませろよ?」

 

右の肘を岩の表面に突けるゲルダン。そこで俺は待ったを掛けた。

 

「あっ、ゲルダン。今度は左手でいいか?」

 

「左手だと?」

 

「俺、本来は左利きなんでね。それに、右手はもう使えない。力を籠め辛くなっているから、

いま腕相撲したら敗北が目に見える」

 

そう言って俺は左肘を岩の表面に突ける。さて、乗ってくれるか?

 

「―――奇遇だな。俺も左利きなんだ」

 

ゲルダンは不敵の笑みを浮かべ、俺の左手を左手で掴んできた。

 

「誠とは右手でやったが、息子は左手か。この勝負で俺は勝ったら兵藤親子を制することになる。

くくくっ、そう思うと速く倒したくて仕方がない」

 

「俺は父さんとは違う。それをいま、ここで証明してやる」

 

「ならば、俺に証明してみろ」

 

俺とゲルダンは睨み合う。闘気を迸らせ、相手を全力で倒そうとする意気込みと思いが固く掴む

互いの手から伝わってくる。

 

「では―――いいな?」

 

と、俺とゲルダンの手の上にグローリィが手を置いた。疑問は一瞬で消える。

今は、目の前の相手を倒すことだけ考えているからだ。

 

「―――始め―――」

 

グローリィの静かな試合開始宣言の次の瞬間。

全身に力を籠めてゲルダンの左手を右に倒そうとした。

 

が―――。

 

「―――っ!?」

 

あっという間に俺はゲルダンの左手に左の方へ押された。な、何てバカ力―――ッ!

左腕に力を籠め、岩の表面とわずか一㎝の差で留めた。

 

「ぐっ・・・・・強い・・・・・!」

 

「がはははっ!一瞬で終わらなかったことを褒めてやる!

だが、何時まで保ていられるだろうな!?」

 

「っ・・・・・!」

 

グググ、と俺の左手と腕が左に押し付けられる。やば、このままじゃ―――!

 

「―――一誠」

 

「っ!?」

 

背後からヴァーリの声が聞こえた。なんだろう・・・・・!

 

「お前の力はそんなものじゃないと私は信じている。

私が好いている男は負けるわけ無いと想っている。

だから―――私の前で負けたら許さないぞ。

私の男は、私の目の前で勝ってこそ兵藤一誠とあり続けるのだから」

 

「・・・・・」

 

「だから勝て、一誠。お前は敗北なんて似合わない」

 

ヴァーリからの応援・・・・・なんて初めてだな。

そう思ったら自然と口の端がつり上がったのが自覚する。

 

グググググ・・・・・ッ!

 

「・・・・・なんだと・・・・・?」

 

「・・・・・・悪いな。ゲルダン。俺の力はただのパワーじゃないんだ」

 

左手がゆっくりと右へ上がる。

 

「俺の力は―――」

 

真っ直ぐゲルダンの腕と垂直になった。

 

「―――皆を守る想いと愛しい彼女たちからの応援の声から来る力だっ!」

 

「―――――っ!?」

 

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっっ!」

 

ドッガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!

 

ゲルダンの左手と腕と共に右へ押し付けただけじゃなく、

台となっていた岩すらも粉々にし、地面まで抉れた中で俺は―――ドワーフ王に勝った!

 

「左手で制する者は世界を制する・・・・・か」

 

いや、グローリィ?あなたは何を言っているんだ?

 

 

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