「それじゃな、イッセー!また何時でもここに来い!」
「たまに出もいいから連絡をしてくれ」
百人連続相撲を終えてしばらく。俺とヴァーリ、黒歌は洞窟の前でゲルダンとグローリィを筆頭に
ダークエルフとドワーフたちに出迎えられている。
「―――エイリン、ユーミル。人間たちが住んでいる町はきっと危険があるだろう。
だが、俺たちの代わりにお前たちの目と耳で外の世界を見聞してこい。
そして、たまにでも構わん。ここに戻ってこい」
「はい、分かりました父上」
「外での生活のお許しをいただいてありがとうなのじゃ」
最後の別れとばかり、エイリンとユーミルはゲルダンと抱擁を交わす。
エイリンとユーミル、二人は俺たちと一緒に来ることになった。理由はドワーフの技術の伝授と
ドワーフが生産する装飾や武器と防具を人間界、俺の町で広げるため。
「―――では、行ってきます」
「行ってくるのじゃ皆!」
『行ってらっしゃいッ!』
大声で歓声を上げて二人と別れの言葉を放つドワーフとダークエルフたち。
二人が踵を返して俺たちの横に並ぶ。首を振って「行こう」と視線を送って。
俺たちはその視線を応えて脚を前に出し、一歩、一歩、また一歩と歩を進める。
尻目で見れば未だにこっちに向かって腕を上げて振るうドワーフとダークエルフたち、
ゲルダンとグローリィ。後ろに振り向かず、前に進みながらそれに応え、腕を上げて振る。
「外の世界は楽しみなのじゃ」
「イッセー、案内をよろしく頼むぞい」
「任せろ。甘い食べ物もあるからな。二人に食べさせたやるよ」
「「うむ!」」
元気良く頷くユーミルとエイリン。数日前と変わらず森林の中を歩き続ける。
今回は森の妖精とエルフがいない。昔は帰りも送ってくれていたはずなんだがな・・・・・。
まあ、別に問題ないけどな。道なんて覚えているし。
「向こうはどうなっているのかにゃん」
「何時も通りじゃないか?襲われている報告はないんだし」
「だと私も思うがな」
日本にいる皆。もう少しで戻るから待っていろよ。
「・・・・・しかし、その小動物も連れていくのか?」
「だって、可愛いんだもん」
「キュイ」
俺の両肩に雌と雄のコロが三匹ずついる。家に持ち帰ってペットにする!
そう決めたんだからね!
「うむ、わしらの店の看板にするのも悪くないの。
それにコロは種族間での生体通信機能を有し、
鳴き声の届かない長距離間での外敵情報のやり取りが出来る」
「へぇ、コロにそんな能力があったんだ。凄いな」
「まあ、コロの敵は主に大型の獣ぐらいじゃがな。そうそうに警報は鳴らんじゃろう」
いやぁ・・・・・俺が住んでいる町は色んな意味で敵だらけです。
心の中で苦笑を浮かべる俺だった。
しばらくして、森林の中を進んで歩くと、数日前にこの地に到着した場所へ辿り着いた。
「・・・・・」
一人のエルフの女性もいた。
「むっ、エルフじゃと?」
「どうしてここにおるのじゃろうか・・・・・?」
ユーミルとエイリンが疑問とばかり首を傾げた。
「・・・・・兵藤一誠」
「ん?俺に用か?」
「私と一勝負をしろ」
・・・・・いきなり勝負を吹っかけられました。
「理由は?はいそうですかって勝負をする気ないんだけど」
「・・・・・覚えていないのか?」
「「「「・・・・・」」」」
覚えていないか?そう言われてヴァーリたちから視線を向けられてくる。
「・・・・・ごめん、もしも約束を交わしているならば、俺はこの十年間。
十年間も修業に明け呉れているから記憶が曖昧なんだ。多分、忘れていると思う」
「―――『何時か、僕に戦い方を教えてください』。小さい頃のお前に言われた言葉だ」
「・・・・・」
・・・・・なんか、言った覚えがあるような気がする・・・・・。
「その約束は果たせずにいる。兵藤一誠。私にそう乞うたことを忘れて、
強くなった貴様は0点だ」
「0点・・・・・?」
「お前の強さ―――計らせてもらうぞ!」
エルフは物凄い勢いでこっちに飛び出してきた。
コロたちがエイリンたちの方へ避難し、ヴァーリたちは
俺から離れる。避けられない戦いのようだった。
「ふっ!」
拳を前に突きだした。エルフはそんな俺の拳を紙一重で、最小限の動きでかわし、
一瞬で杖を突き出してきた。
ドッ!
杖は見事に俺の体に突き刺さった。体がくの字になって前のめりになると―――。
「・・・・・受けた振りをしても私の目はごまかせないぞ」
「あっ、やっぱり?」
ケロリと前のめりになった体を起こしてエルフに問うた。
エルフの槍はしっかりと手の平で掴んで防いでいた。
「まあ、こうするためにそうしたんだけど・・・・・なっ!」
一閃。エルフの杖を叩き割って、武器を破壊した。
一瞬、エルフの目が見開いたがすぐに正気に戻り、
投擲武器のボーラが複数放ってきた。逆に素早くボーラを掴んで投げ返す。彼女はボーラを避け、
鋭く拳を突き出す。身体を最小限に動かしかわしてエルフの腕を掴んで上空へ放り投げた。
「虚空瞬動」
爆発的な脚力で空を蹴り続け宙に駆け、エルフのもとへ。空中で身動きとれないエルフは、
拳を突き出す俺に対して両腕をガードする体勢になっていた。
―――でも、そんな彼女を一瞬で背後に回って後ろから拘束した。
「っ!?」
「おっと、動かない方が良いぞ」
青白い六対十二枚の翼を展開し、翼の先を刃物状にして、エルフに突きだした。
「終わりだ」
「・・・・・」
エルフの全身から力がなくなった。それは降参の意味だと理解し、
地上に着地してからゆっくり離れた。
「兵藤一誠。その強さになるまで誰に鍛えてもらた?」
「『
まあ、殆ど修行の場に放り投げられて一人で強くなったようなもんだったな。
「真龍か・・・・・なるほどな。どうりで野性的な動きだったわけだ。
敵を油断させ、背後から獲物を襲うその行動は獣と同じだ」
「・・・・・できれば、戦略と言って欲しいかな」
頬を掻きながら俺は言った。
「今までのお前の戦闘は78点だ」
「微妙な点数だな・・・・・」
「体術は問題ない。相手の武器を破壊して攻撃を無効化させたその行動も悪くない。
だが、少し無駄な動きがある。真龍に鍛えてもらったとはいえ、ちゃんとした指導とは思えない。
大方、我流で会得した力なのだろう?」
うん・・・・・まあ、大半はそうかな?殆どは冥界で修行していたし、
ガイアと体術の勝負をしていたぐらいだ。
それと
「でも、それだから今の俺がいるようなもんだ。
それに俺の戦い方は何もこれだけじゃない。言い訳に聞こえるだろうけどね」
カッ!
俺の足元に魔方陣が展開した。いや、俺が展開したんだ。
ヴァーリと黒歌が俺の足元の魔方陣を見るや否や、
近づいてきた。ユーミルとエイリンを引き連れ。
そして、エルフに別れを告げようとしたその時だった。
どこからともかく一人のエルフが現れた。
「イッセーくん、もう少しだけ時間をくれ」
「・・・・・」
魔方陣を展開したまま、現れた一人の男子エルフの言葉を耳に傾ける。
「私はエルフの長、シャールだ。キミの話しは訊いたよ。
オーディン殿が危険な目に遭っているとね。同族の者に狙われているとは」
「そうだな。だからオーディンさまを助けようと思っている。俺の大事な家族の一人だから」
「そうか、ならば、キミに頼みたい。アレインも連れて行って欲しい。きっとキミの力になる」
アレイン・・・・・?誰のことだと思ったが、この場にいるエルフは一人しかいない。
「本人の意思に尊重する」
アレインという名のエルフ、彼女に視線を向けた。
「一緒に来てくれるか?来てくれるならこの魔方陣の中に入ってくれ」
嫌ならそのままいてくれと暗に問うた。彼女は―――。魔方陣の中に入ってきた。
「お前を100点にするまで指導する。それまではお前の傍にいる」
「じゃあ、100点にならないようにしないとな。100点になったら帰っちゃいそうだし」
意地の悪い笑みを浮かべる。それからシャールに視線を向けた。
「またここに来たらエルフが住んでいる集落に遊びに来るよ」
「ああ、楽しみにしているよ。イッセーくん」
朗らかに笑うシャール。魔方陣の光の輝きが強さを増し、俺の視界は白く塗りつぶされた。
―――○●○―――
「なんだ、また新しい女を作って帰ってきたのか」
「独身男に開口一番にそれだけは言われたくなかったなぁっ!」
「って、その鎖を取り出して何しようと―――。ぎゃあああああああああああああああっ!?」
ギュッ!と憎き堕天使を亀甲縛りにして宙にぶら下げた
「アザゼル、口は災いのもとだって知らないのか?」
「くっ、こんな縄なんぞに俺が―――!」
「ああ、それ。俺専用のグレイプニルだから。
勿論、ダークエルフの強化魔法も掛かっているから
フェンリルでも脱せないなら、アザゼルでも脱出は無理だろ?」
「おまっ!あっちで一体数日間何をしていたんだよっ!?」
目を大きく見開いたアザゼル。勿論、グレイプニルを作っていたからに決まっているじゃん。
「ふふふっ、ただの鎖や縄じゃアザゼルに逃げられるからな。
ドワーフたちと一緒にグレイプニルを作りながら学んで、こっそり一人で
別のグレイプニル作っていたんだ。強化はもちろんダークエルフの長老にしてもらった」
「それと―――」とポケットから赤い結晶状の魔石を取り出してアザゼルに見せた。
「アザゼル、これ何だか分かるか?」
「ん?・・・・・こいつは魔力が籠っているな。どこで見つけた?」
「ドワーフの鉱山から。これと同じものはもう一つある。
アジ・ダハーカに調べてもらっているけど、
未だに返事がないからアザゼルなら分かるんじゃないか?」
鎖を解いてアザゼルを解放する。解放されたアザゼルは俺から赤い結晶を摘まみ取り、
顎に手をやった。
「ふむ・・・・・俺が今まで感じた魔力とはまるで違う。何て言えば良いだろうか、
例えるなら似似て非なる・・・・・だな」
「似て非なる・・・・・?魔力であって魔力じゃないってことか?」
「魔力なのはまず間違いない。だが・・・・・調べてみない限りなんとも言えないな。
イッセー、こいつを借りていいか?」
その問いに肯定と頷いた。小型の魔方陣を展開して赤い結晶をどこかへ転送した。
「まあ、強化したグレイプニルとレプリカのミョルニルを手に入れたんならいい。
こっちも収穫はあった」
アザゼルはロスヴァイセに顔を向けたら、
「はい、雷神トールさまが喜んでこれをお貸しするそうです。どうぞ」
ロスヴァイセから渡されたのは―――ミョルニルだった。
うわ、これオリジナルのミョルニルかよ。
「この場でオリジナルとレプリカのミョルニルを持つ男を見るのは、
これで最初で最後かもしれないな」
「試しにオーラを流してみてください」
彼女に言われて、俺は魔力をハンマーに―――。カッ!一瞬の閃光。
そのあと、二つのハンマーがぐんぐんと大きくなって―――。
「あれ、意外と軽い」
一応、俺の身の丈を超す巨大なハンマーとなっているんだけど・・・どうなっている?
「あなたは純粋な心の持ち主のようですね」
ん?どういうこと?
「ミョルニルは、力強く、そして純粋な心の持ち主にしか扱えない。
だからあなたはミョルニルを振るう資格があると言うことだ」
セルベリア・ブレスが小さく笑んで、俺にそう言う。
「ふーん、そうなんだ」
ミョルニル同士をコツンと小突く。―――バチッ!と電撃が生んだ。
「おい、無暗に振るうな。この辺り一帯、膨大な雷のエネルギーで衝動と化とするぞ」
「・・・・・神族の扱う武器ってとんでもない代物なんだな」
「それを普通に扱えるお前の方がよっぽど異常だ。―――ヴァーリ、お前もオーディンの爺さんに
ねだってみたらどうだ?今なら特別に何かくれるかもしれない」
アザゼルが愉快そうに言う。いや、こいつの場合、欲しいものなんてあるのか・・・・・?
「いらないさ、私は天龍の元々の力のみを極めるつもりだから。追加装備はいらない。
欲しいものは他にもあるから」
ヴァーリは顔をこっちに向けてきた。
「その内の一つは―――一誠の愛と子供かな?」
―――っ。
・・・・・今の一言。お前はこの場にいる全員を敵に回す言い方だったぞ。
ほら、皆の視線が敵意になり変わって―――。
「いっくんの子供は・・・私が先に産む」
「子供か・・・・・ふふっ、きっと強い子供が生まれるだろうな」
「例え、幼馴染でも負けられないことはあると思うの!」
「イッセーと私の子供・・・私、イッセーのように格好良く、
私に似て優しい子供に育ててみたいわ」
「知的な私とイッセーくんの子供も悪くないでしょう」
あれ・・・・・真逆な反応だな・・・・・?他の皆もそうだし・・・・・。
「ちっ!これから大事な戦いが控えているってのに、随分とお気楽な奴らだな」
「羨ましいか?」
「う、羨ましくなんて・・・・・ない!」
いや、舌打ちした時点で羨ましさを感じただろう。
「・・・・・匙」
アザゼルが匙元士郎を呼ぶ。
「なんですか、アザゼル先生」
「お前も作戦で重要だ。ヴリトラの
アザゼルの一言に匙元士郎は目玉が飛び出るほど驚いていた。
「ちょ、ちょっと待って下さいよ!お、俺、成神や白龍皇、
兵藤たちみたいなバカげた力なんてないっスよ!?とてもじゃないけど、
神さまやフェンリル相手に戦うのは!て、てっきち会長たちと一緒に皆を転移させるだけだと
思っていましたよ!」
かなり狼狽している。そう言えば、ヴリトラの力って五大龍王の中でどのぐらいの強さを
誇っている?クロウ・クルワッハ先生。
『五大龍王の中ではティアマットが一番なのは知っているだろう。
だが、ヴリトラは直接的な攻撃よりも多彩な特異な特殊能力での攻撃が長けている。
パワーは龍王の中では弱い方かもしれないが、こと技の多彩さ、異質さは龍王随一だ。
俺たち邪龍の中でヴリトラは可愛い方だがな』
邪龍の中でヴリトラの方が可愛いって・・・・・。
まあ、その特異な能力で神相手に少なからず対抗できるだろうな。
「あー、作戦の確認だ。まず、会談の会場で奴が来るのを待ち、
そこから式森和樹の力でお前たちをロキとフェンリルごと違う場所に転移させる。
転移先はとある採石場跡地だ。広く頑丈なので存分に暴れろ。
ロキ対策の主軸はWイッセーとヴァーリ。二天龍と兵藤一誠で相対する。
フェンリルの相手は他のメンバー―――グレモリー眷属とシトリー眷属とヴァーリチーム。
それと駒王学園二年S組の葉桜清楚、神城龍牙、カリン、ゼノヴィア、イリナ。
それと銀華とグレイフィアで鎖を使い、捕縛。そのあと撃破してもらう。
絶対にフェンリルをオーディンのもとに行かせるわけにはいかない。あの狼の牙は神を砕く。
主神オーディンといえど、あの木場に噛まれれば死ぬ。なんとしても未然に防ぐ」
和樹は今回戦いには出れないのか。というか、シトリー眷属って大丈夫なのか?
「ソーナ、こいつを少しの間借りるぞ」
ソーナ・シトリーに訊くアザゼル。
「よろしいですが、どちらへ?」
「転移魔方陣で冥界の堕天使領―――グリゴリの研究施設まで連れていく」
楽しげなアザゼルの顔。もしかして、本気で匙元士郎を・・・・・?
あっ、嫌がる匙元士郎の襟首を掴んで、そのまま魔方陣を展開した。
魔方陣が光り輝き、なんか泣き喚く匙元士郎をアザゼルごと包んでいく。
「あいつ、生きて戻ってこれるかな」
「ははは・・・・・どうでしょうね」
龍牙が苦笑いを浮かべる。ふと、俺は気になった。
「ヴァーリ、アルビオンはドライグとは話さないのか?」
二天龍がこの場にいる。夏休みの時もそうだったけど、
アルビオンはドライグと話そうとはしなかったよな。
「アルビオン。一誠は言っているが、どうなんだ?」
ヴァーリも背中に青い翼を展開して、尋ねてみた。―――アルビオンの言葉は。
『・・・・・私の宿敵に乳龍帝などいない』
冷やかなものだった。ああ・・・・・なるほどね。
『ま、待て!ご、誤解だ!乳龍帝と呼ばれているのは宿主の成神一成であって!』
成神一成の左手の甲に緑の宝玉が浮かび、俺たちに聞こえるように弁解しようとしていた。
すると、今度は―――。
『はははっ!乳龍帝ドライグ!今度から私はお前にそう呼ばせてもらうぜ!』
『ティアマット!俺は赤い龍帝ドライグ、赤龍帝と周りから称され、恐れ戦かれる天龍だぞ!
決して俺は乳龍帝ドライグなんかじゃない!』
『くははははっ!いいじゃないか、ドライグ。新たな名で称される気分はどんな気分だ?』
『この際だ。赤龍帝だけじゃなく、白龍皇も何かあだ名でもつけるか?』
『『いいな!』』
あ、この感じ、いじめっ子といじめられっ子の感じだ。ティアたちが名前を考え始めた。
『赤龍帝は女の乳房を求めているが、白龍皇は女だ』
『乳龍皇・・・・・では、面白みがないな』
『兵藤一誠に訊くか?』
矛先がこっちに向いた!?
『そうだな。おい、兵藤一誠。白龍皇のどこが好きだ?答えろ』
「・・・・・」
なんで、こうなる。ヴァーリの方に視線を向けると・・・・・。
「一誠、私のどこが好きだ?」
尋ねるように問うてくるヴァーリ。ヴァーリだけじゃない。
他の皆も俺が女の体で好きな部分を聞こうと耳に傾けている。
ガチャ。
「おお、孫よ。帰っておったのか」
―――天から救いの手がやってきた!
「オー爺ちゃん!」
北欧の主神オーディンことオー爺ちゃんに抱きついて難を逃れる!
『(あっ、逃げた)』
「ほっほっほっ、成長しても甘えん坊じゃな孫よ。うむうむ。いいのぅ。可愛いのぉ」
俺の頭を撫でてくれるオー爺ちゃんが成神一成とヴァーリに視線を向けた。
「ふむ・・・・・。赤龍帝は女の乳が好きじゃったな。
白龍皇は・・・・・うむ、良いケツをしておるから赤は乳龍帝。白はケツ龍皇じゃな」
刹那―――。
『『それだっ!』』
『白龍皇がケツ龍皇か・・・・・。憐れだな』
『・・・・・・ぬ、ぬおおおおおおん・・・・・・』
ティア、アジ・ダハーカが面白そうに同意し、クロウ・クルワッハが同情、
アルビオンが無念の涙を流している様子だった。
「アルビオン泣くな。相談ならいつでも聞いてやる」
「すまん、アルビオン」
取り敢えず、アルビオンに謝る俺。二天龍は繊細な時期に突入している。
―――○●○―――
あれからオー爺ちゃんとちょっとだけ話し合い、今は自室でとある鎧を纏っていた。
「―――っ。はぁぁぁ・・・・・」
パキィィィィン・・・・・。
全身鎧に罅が生じたと同時にガラスのように割れて消失した。
『ダメだな。力が相反しあっている』
内からクロウ・クルワッハが声を掛けてくる。
「相反する力を何とか融合させて膨大な力を―――と思っているんだけど、まだまだダメだな」
『そもそも相反する力を無理強いに合わせること自体が無謀に等しい。
一歩間違えれば相反する力が暴走し、
お前の体がただでは済まなくなる』
「本来、相反するはずの二つの力を木場は奇跡的に融合してみせた。
有り得ない現象を見せてくれたあいつのおかげで可能性が出ているんだ。
なら、俺だってその奇跡を起こせる可能性がある」
でも・・・・・何かが足りないんだよな。何か不完全なものを繋ぎ止める何かが・・・・・。
『取り敢えず、横になって寝ていろ。精神的な負荷が蓄積している。
これ以上続けると悪神ロキとの戦いに支障が出る』
「・・・・・心配してくれるんだな」
『当たり前だ。少し・・・・・愛というものを理解しているつもりだからな』
・・変わったよ。最強の邪龍が本来、知ろうとしなかった感情を分かりつつあるんだからな。
クロウ・クルワッハの言う通りにし、ベッドへ横になる。
そして、瞑目して少しばかり寝ようとした。
ガチャ・・・・・。
部屋のドアが不意に開いた。誰かが入ってきたと瞑目したまま、
誰の気なのか探知すると―――姫島朱乃の気だった。
なんだ?俺に何か用なのか―――?
カチッ。・・・・・鍵を閉める音・・・・・?なに?朱乃は一体、なにを・・・・・?
「・・・・・イッセーくん、起きてください」
「・・・・・」
ゆっくりと目を開けて朱乃に視線を向けると―――白装束の姿の朱乃は髪をおろしている。
心なしか、表情に艶がある。ベッドの傍らに佇んでいた朱乃は帯を―――しゅるしゅると解き、
するっと白装束を、
ぱさっ。
床に白装束が落ちる。―――っ!?なぜ、全裸になる姫島朱乃ッ!?彼女の行動に絶句し、
思わず体を起こそうとした矢先、彼女が起き上がろうとする俺の肩を両手で掴み、
ベッドに押し戻されてしまった俺に覆い被さってきた朱乃。
そのまま俺に抱きついてきて全身を押し付けてくる。
「なっ、朱乃―――!」
「―――抱いて」
「はっ―――!?」
耳元で呟かれ、呟いた言葉を耳の中へ届き、脳がその言葉の理由を理解したら、
動揺の気持ちが湧いた。
「な、お前・・・・・」
「イッセーくん・・・・・」
「―――――」
彼女の、朱乃の顔を覗き込んだ瞬間。俺は冷静でいられるようになった。
―――朱乃の瞳の奥には、悲しみの色が浮かんでいる。
「朱乃、どうしたんだ?いつものお前じゃない。
今のお前は、何かから逃れるような気持でいるぞ。
何時も一緒にドS的な会話をしている時に笑っている時がとても楽しそうだった。
でも、今のお前は悲しみに包まれている。朱乃、お前を悲しませるものは一体何なんだ?」
「・・・・・」
俺の問いに彼女は沈黙する。だけど、俺はそっと起き上がって朱乃の頭を撫でる。
「今のお前の気持ちには応えられない。でも、こうして抱きしめるだけなら・・・・・」
ギュッと、優しく彼女の体を抱きしめる。頭を撫でることを忘れない。
「俺は朱乃のことをまだ知らないから、何に対して悲しんでいるのか分からない。―――ごめんな」
「・・・・・おかしな人、謝る立場じゃないのに・・・・・」
「そう言いたくなるんだよ。―――この家に住む同じ家族として、謝りたいんだ」
「・・・・・私、あなたの家族なの?」
朱乃は上目づかいで俺に問いかける。そんな彼女に俺は小さく言った。
「俺、誰かと一緒にいないと寂しがったり不安になっちゃうんだ。
子供のころ、父さんと母さんがいなくなることが多いから、それが寂しくてずっとリーラを
母親代わりにするかのようにずっと傍にいたんだ。じっと両親を帰ってくる日まで待ってさ。
結局、両親が死んでも親離れというか、人離れが今でもできないでいる。
誰かに触れたり抱きしめたりしないと、安心できなくなっている。
それが唯一の弱点とも言える俺がダメなところだよ」
「・・・・・」
「だからなんだろうな。俺が子供に戻っていた時も誰かと一緒にいたのは、
寂しさを紛らわしていたんだと思う。ははっ、周りから恐れ戦かれているだろうけど、
実際は人一倍心が弱い人間なんだよ俺って」
苦笑を浮かべて自嘲気味に話すと同時に笑んだ。もう、あんな思いはしたくない。
二度と、絶対にだ。
「・・・・・なんだか、私が励ませられているのかと思ったら、
私があなたを励ましたくなっちゃいましたわ」
俺の首に両腕が回されて朱乃の顔が接近してくる。
「初めてね、あなたが弱いところを見せてくれたのは。他の人は知っているのかしら?」
「気付いている人がいる。でも、俺から言ったのは朱乃が初めてだ」
「あら・・・・・そうですの。それはとても光栄なことですわ」
俺の胸に頬を寄せる朱乃。その間にも俺は彼女の黒髪を撫で続ける。
「―――イッセーくん。あなたの過去に辛いことがあるように他のヒトも辛い過去を経験し、
成長した今でもその過去を抱いて生きている人がいますの。その一人がこの私・・・・・」
「朱乃・・・・・」
「バラキエルという堕天使の幹部がいますわね?あの堕天使は―――私の父親なんですの」
なに・・・・・?
「母親は、母さまは私が小さい頃に死んでしまいましたわ。・・・・・堕天使に関係した理由で、
私の母は死んでしまったの・・・・・」
「―――っ!」
「私とイッセーくんは似ているけどどこか違う。あなたは堕天使と悪魔に両親を殺され、
私は堕天使に恨みを持った者たちに母親を殺された。でも、私には父親がいる」
朱乃はポツポツと呟いた。それから数年後、堕天使とハーフである朱乃は住む家も追われ、
天涯孤独な身となって各地を放浪し、リアス・グレモリーと出会った過去の話を聞かされる。
「・・・・・確かに、俺と朱乃は似ているけど違うな。
お互い苦労していたことは同じだったようだがな」
「ふふっ、そうね・・・・・祐斗くんもそう、小猫ちゃんもそうだったように、
ヒトは必ずしも一度は悲しい経験をしている、遭っている。
それがどれだけ深く悲しいものだったのか、
他人が計りしれないけど思いを通じ合うのはできるわ」
「俺、悪魔と堕天使が嫌いだ」
「知っている」と朱乃は呟いた。
「こんな俺でも悪魔と堕天使と通じ合えるのか?」
「それは、あなたの心次第・・・・・でしょ?」
敢えてハッキリとした答えを言ってくれない彼女。
だが、それで良かったかもしれない。全ては俺自身が決める事だから、
他人に否か応と言われたら・・・・・俺は前に進めないかもしれない。
「・・・・・朱乃。俺なんかで良かったら、俺はずっとお前の傍にいるよ」
「・・・え?」
「だから、何時もの朱乃に戻ってくれ。何時も笑っている顔の朱乃の顔が見たい」
「・・・・・」
朱乃はジッと俺を見据える。
「私・・・・・あなたが嫌う堕天使なのよ?」
「俺の心次第、何だろう?それに、悪魔と堕天使が嫌いと言っても、
俺は両親を殺した悪魔と堕天使を嫌い憎んでいて、他の悪魔と堕天使を嫌っているわけじゃない。
―――あの三人に対する想いと感情を忘れないために言っているようなもんだ。
だから、悪魔と堕天使の翼を持つ朱乃は嫌いじゃない。寧ろ好感を抱いている」
素直に告げた。朱乃は少しの間、呆然としていたが、口元が笑んだ。
「・・・・・私も、あなたに対する好感度が高いですわ」
「そうか?」
「ええ、そうですわ。―――うふふ♪」
あっ、いつもの笑顔だ。良かった。笑ってくれた。それが一番似合うぞ、朱乃。
―――○●○―――
その日の夜。
俺はとある家に住んでいる奴と出会っている。玄関の光で俺の姿はハッキリと浮かんで、
目の前にいる人物に不思議そうな顔で問われていた。
「あの・・・・・私に何かご用でしょうか?」
アーシア・アルジェント。リアス・グレモリーの『
「ああ、お前にこいつを渡しておきたくてな」
「それは・・・・・」
「ミョルニルのレプリカ。これをお前に持たせようと思ってお前を呼びだした」
グローリィから受け取ったレプリカのミョルニル。アーシア・アルジェントは目を丸くして、
「どうして?」と言いたげな顔で俺を見詰める。
「俺はオリジナルのミョルニルがあるからそっちの方を使う。俺が二つも使っていたらメンバーの
バランスが偏ってしまう。それに、お前は回復だけが取り柄で攻撃という魔法は一切使えない」
「ですが、私も皆さんのお役にたてるよう努力しています!」
「知っている。だからだ。お前を守ってくれる奴はいなくなったら誰がお前を守る?
自分の身は自分で守らないといけない時だってある。
そのためにこれをお前に渡そうと思っているんだ」
ミョルニルのレプリカをアーシア・アルジェントに渡した。しかし、彼女から疑問を問われた。
「でも・・・・・私なんかが扱えるのでしょうか?」
と、北欧の最強の神が使う神具を自分が扱えるかどうかを。俺は頷いてから言った。
「アザゼルに頼んで一時的に悪魔でも使えるように設定してもらってある。
それに純粋な心の持ち主だったら仕えるものだ。グレモリー眷属の中で一番純粋な心の持ち主の
お前ならきっとミョルニルを振るえる。使い方は魔力の多さに比例してミョルニルは大きくなる。
純粋な心の持ち主ならば、
羽のようにミョルニルを振るえるからアーシア・アルジェントでも振るえるはずだ」
「そうなんですか?」
「でも、無暗に振るわないでくれよ。振るうなら、戦場で思いっきり振ってくれ」
それだけ言い残し、俺は踵を返して去ろうとした。
「あの」
「ん?」
声を掛けられ足を停めた。振り返ると、何故か深くお辞儀をしていた。
「ありがとうございました!」
「・・・・・」
何に対してお礼を言われている?理解ができないまま手を振って彼女から離れ、家に戻った。
『お前は甘いな』
「二つもいらない。一つで十分だ。戦力の補充にもなれるだろうし、問題ないだろう」
『あくまで悪神ロキとの戦いに備えてしたことだと?』
「俺はそのつもりだ」
全ては、オー爺ちゃんのためだ。相手に勝てる確率を上げるためなら打てる手を尽くす。
―――それだけさ。