ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

70 / 157
Episode11

ドガッ!バキッ!ゴンッ!

 

『真魔王派』と交戦し、戦闘は終わりつつあった。殆どの悪魔が倒され、

残党は三分の一まで減っていた。それでも、ヴァン、シャガ、シャーリ、ヴァルヴィは

戦闘を続ける姿勢だった。ヴァルヴィの使い魔と相手しながらヴァルヴィと攻撃を交わしている。

 

「おい、俺たちも相手になってもらわないと困るぜ」

 

っ!

 

横からシャーリが高密度の魔力を散弾銃のように放ってきた。

―――腰に生えた九本の狐の尾の内の一本で弾き消し、

尾の先から火を灯し―――渦巻く奔流と化とした炎をシャーリに放つ。

 

神器(セイクリッド・ギア)聖なる壁と鏡の波動(セイント・バリア・ミラーフォース)』!」

 

カッ!と、あいつの周囲に聖なる輝きを発するオーラが出現して俺の攻撃を受け止めたかと思えば

炎を撥ね返してくる。―――カウンター系統の神器(セイクリッド・ギア)か。

二本の尾で迫りくる炎を掻き消しながらも一体の精霊を地にひれ伏した。

 

「くそっ!よくもライラを!」

 

ヴァルヴィが怒りを露わにし、ライラと呼ばれた精霊を魔方陣で戦場から離脱させた。

 

「おい、こいつらもここから遠ざけた方が良いぜ?」

 

と、ティアが何かを放り投げてきた。―――ヴァルヴィの使い魔たちだった。

 

「なっ・・・・・」

 

「いやー、強くなっていた。まあ、まだまだ私を倒すには及んでいないけどな」

 

ティア・・・・・戦ったことがあったのか。ちょっと意外だったな。

 

「―――で、お前らはいつまで戦うんだ?」

 

「あ?どういうことだ?」

 

「お前ら以外の奴らは倒されたか逃げているぞ」

 

彼女が意味深なことを告げた。・・・・・確かに。四人以外誰もいなかった。

ヴァンもそれに対して溜息を吐いた。

 

「んだよ、弱ぇー奴らばっかだな。何が『真魔王派』なんだよ。やっぱ、ただの烏合の衆か」

 

「どうする?ついでにロキと狼の奴も相手するか?」

 

「いや、帰ろう。元々俺たちはこの状況を楽しむために襲撃したんだからな」

 

カッ!とヴァンたちの足元に転移式魔方陣が展開した。

 

「ガキ!今回はヴァルヴィと戦わせたが、今度は俺が相手にしてやるからな。

その時は全力で俺を殺しに来い。―――お前の両親を殺したのは俺たちだからなぁ?」

 

「・・・・・っ」

 

「はははっ!じゃあなっ!」

 

笑いながら俺の前から姿を消すあいつとあいつら。

 

「・・・・・」

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!

 

思いっきり地面を踏んだ。その衝撃に地面が激しく抉れる。

 

「・・・・・当たり前だ。必ず俺はお前らを殺す」

 

どこまでも低く、俺は呟く。必ずだ・・・・・お前らを殺す。それが俺の存在理由なんだから。

 

「さて・・・・・残りはロキとフェンリルか」

 

振り返って見ると・・・・・こちら側の優勢だった。

何時の間にか三匹に増えていたフェンリルが、

 

『まずは子のフェンリルを喰らってやろうかっ!』

 

一匹のフェンリルの足元に巨大な魔方陣が展開していて、身動きが取れない状態でいる。

そのフェンリルに近づくアジ・ダハーカに襲いかかる二匹のフェンリルに気にもせず―――。

 

ギャオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォンッ!

 

三つの口を大きく開けて捕食し始めた。うわ、スプラッタ、グロテスク。生々しいぞ。

グチャグチャとかバキバキとかここからでも聞こえる。さて、ロキの方は―――?

 

「ちぃっ!厄介極まりない!」

 

多勢に無勢。二天龍の他にも英雄の子孫、伝説の妖怪の力を受け継いだ妖怪、大勢の悪魔と人間。

流石にロキでも数の暴力には抗えないでいた。

・・・・・もしかして、ミョルニルは必要なかったか?

 

「―――一誠!グレイプニルを親のフェンリルに!」

 

俺に向かって叫んだ。・・・・・あの状況なのに必要なのか?怪訝に思いながらも

周囲に魔方陣を展開すれば、巨大な鎖、グレイプニルが出現してくる。

 

「ティア、鎖を投げるぞ」

 

「分かった。しかし、アジ・ダハーカが倒しそうな勢いだがな」

 

今さら必要なのかと、ティアも不思議でいたようだ。

二人掛かり、いやバラキエルも協力してくれて三人で鎖を親のフェンリルに向かって投げ放った。

鎖は意思を持っているかのように親のフェンリルの全身に纏わりつき、拘束した。

 

オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!

 

フェンリルが苦しそうな悲鳴を辺り一帯に響かせるその時だった。

 

「黒歌!私とフェンリルを予定のポイントに転送しろッ!」

 

縛られたフェンリルに寄ったヴァーリは黒歌にそう叫ぶ。黒歌もそれを聞いて、

にんまり笑うと、手をヴァーリに向けて宙で指を動かしていた。

 

デュウウウウウウウウウウンッ!

 

巨大な光と化したヴァーリとフェンリルを魔力の帯らしきものが幾重にも包みだした。

 

『欲しいものは他にもある』

 

ああ・・・・・なるほどな。今になってようやく分かった。―――そういうことだったか。

お前が欲しかった物はなんとまあ、凶悪な物だな。

次第にヴァーリとフェンリルが夜の風景に溶け込み、この場から消えていく。

―――と、俺のもとに叫び声が聞こえてきた。

 

「朱乃!」

 

リアス・グレモリーの悲鳴だ。視線を向けると、

いままさにフェンリルに噛まれようとしている朱乃の姿が、

―――やばい!気を抜いていたか!六対十二枚の翼を展開して、光速で朱乃を救おうと向かう。

 

「間に合った―――っ!」

 

子フェンリルの牙に貫かれそうになった朱乃を間一髪、突き飛ばして救えた。

 

―――ガシュッ!

 

代償は俺と言う一つの存在だ。現在俺はフェンリルの牙に貫かれている状態でいる。

うわっ、マジで痛い。

 

「イッセーくんッ!」

 

「おのれッ!」

 

悲鳴を上げる朱乃。バラキエルが牙に貫かれている状態の俺を救おうと迫ってきた。

でも、フェンリルが前足を振るってバラキエルの体を引き裂いた。

 

「くっ・・・・・ただではやらせん・・・・・っ!」

 

巨大な槍を発現して、バラキエルは何故か上に向かって投げ放った。

フェンリルはそんな槍を目も呉れず、

今度は朱乃に向かってまた前足を振るおうと動かした次の瞬間だった。

 

ドスッ!

 

光る巨大な槍がフェンリルの背中に突き刺さる。

―――さっきの行動はこういうことの為だったか。

背中に貫かれたフェンリルが苦痛が籠った悲鳴をした際に俺はフェンリルの牙から抜け、

放り投げ出された。そんな俺を重症のはずのバラキエルに抱きかかえられた。

 

「大丈夫か」

 

「いや、それは俺のセリフでもあるんだけど・・・・・」

 

「貴殿を死なせたら、俺はアザゼルや貴殿の亡き両親に顔を向けれないからな」

 

そうかい。まあ、ありがとうな。金色の光を発現して、

俺とバラキエルを中心に広げて傷を癒していく。

 

「・・・・・」

 

複雑極まりないといった感じの朱乃。朱乃の過去を聞いているから何となく理解した。

 

「なあ・・・・・バラキエル」

 

「なんだ」

 

「お前、今でも朱乃のこと愛しているか?」

 

質問してみた。朱乃を見ていると、目を丸くしていた。

なんでそんなことを聞くのかって全身から伝わってくるぞ。

 

「・・・・・朱乃だけじゃない。今でも朱璃のことも愛し続けている。

朱璃のことを・・・・・朱乃のことを・・・・・一日たりとも、忘れたことなどない」

 

ポツリと呟いたバラキエル。徐に朱乃に顔を向けた。

 

「今さら俺の言葉など聞いても、お前は何も思わないだろう。

だが・・・俺は朱璃を助けれなかったことを今でも悔やんでいる。

娘のお前を辛い思いをさせたことも・・・・・すまなかった」

 

「・・・・・」

 

バラキエルの謝罪に朱乃は沈黙で返した。

それからしばらくして―――俺の目に巨大化したミョルニルが雷を纏わせ、

迸らせた状態でロキに振り下ろした。ロキは特大の一撃に直撃したことで―――倒れた。

この戦いは、俺たちの勝利と幕を閉じたのだった。

 

―――数分後。

 

「お前・・・・・凄いな。ロキを倒すなんて」

 

「いえいえいえっ!イッセーさんの赤龍帝の力とイッセーさんが渡してくれたこのハンマーの

おかげです!私自身の力ではありません!」

 

激しく首を横に振るアーシア・アルジェント。聞けば、ディオドラ・アスタロトもこの場にいて

彼女が倒したそうだ。こいつ、見かけによらずやるな・・・・・。ロキは捕らわれた後、

ロスヴァイセとセルベリア・ブレスに北欧の魔術で色々と術封じを掛けられていた。

 

「お前、今回なにもしていなかったな」

 

成神一成にそう指摘される。うん、そうだな。今回は何もしていない。

 

「否定しない。寧ろ後手に回った気がしたな。まあ、たまにはこんなこともあっていいだろう。

今回の主役はアーシア・アルジェントみたいだし」

 

「そ、そんな私は何もしていませんって!」

 

「この機に彼女が中級悪魔の昇格の権利も与えられたりしてな」

 

「あら、もし本当にそうなら私はとても誇らしいことだわ」

 

リアス・グレモリーが嬉しそうに笑みを浮かべた。パチンと指を弾くと戦場一帯に光が生じ、

包まれた。しばらくすれば、戦闘の痕跡が全て消えていた。

つまり、元通りになったということだ。

 

「さて、こんな感じに戦後の処理を終えたから帰ろうか」

 

と、皆に問うたその時だった。俺の視界に黒が映り込んだ。

 

ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!

 

黒い炎らしきものが地面から巻き起こり、地面に現れた巨大な魔方陣から出ているのが分かった。

その中心から黒い炎がドラゴンの形となって生み出されていく。

 

『なんだ、ヴリトラか』

 

内にいるアジ・ダハーカが漏らした。え、ヴリトラ?つまり・・・・・あいつは匙元士郎かよ?

 

『えっと・・・兵藤一誠くん。聞こえますか?私はグリゴリの副総督シェムハザです』

 

緊急用に耳に付けていたイヤホンから、聞き覚えのない声が。アザゼルの同僚か。

 

「もしかしなくても、匙+ヴリトラを送ってきたのはあんたか?』

 

『ええ。アザゼルに匙くんのトレーニングが終わったら、

こちらに転送するよう言われましたから』

 

「ああ、そうなんだ」

 

目の前のドラゴンはまるで炎のドラゴン。真っ黒だな。黒い炎がドラゴンを形作っている感じだ。

 

『ええ、アザゼルが少々計算ミスをしてしまったようでして。トレーニングを開始したのですが、

そのままこの状態になってしまいまして。時間が来たので、

この状態のまま送ってみることにしたのです。・・・・・すでに戦後のご様子ですがね』

 

ああ、もう戦いは終わった後だよ。

ほら、目の前のドラゴンがどうすればいいのか頭を周囲に見渡しているよ。

 

「なあ。アザゼルに伝えてもらって良いか?」

 

『なんでしょう?』

 

「―――帰ったら縛って火炙りしてやる。このダメ堕天使の総督」

 

―――○●○―――

 

―――newLife―――

 

「オー爺ちゃん。良かったね。何事もなく無事に会談が終えて」

 

「うむ。孫たちのおかげじゃ。ありがとうの」

 

「今度はいつ来れるかな?プライベートで」

 

「さぁな。じゃが、遊びに行く時は連絡するわい」

 

「うん、楽しみにしている。ところで、ロスヴァイセとセルベリアは?連れて行かないのか?」

 

「ふむ・・・・・孫よ。あの二人をどう思っている?」

 

「ん?まあ、綺麗だし、強いんじゃないかな。

まだそんなに接していないからよく分からないけど」

 

「ほっほっほっ、そうか。ならばほれ、わしからのプレゼントじゃ」

 

「・・・・・封筒?」

 

「しばらく日が経った頃にそれを二人の前に開けて読んでみるんじゃ。

ロスヴァイセはともかくセルベリアは喜ぶだろう」

 

「なんで?」

 

「それは開けて読んでからのお楽しみじゃよ。ではな、孫よ」

 

―――newLife.2―――

 

「やあ、お邪魔するよ」

 

家にサーゼクス・グレモリーが訪問してきた。オー爺ちゃんは本国に帰っている。

その際、オリジナルとレプリカのミョルニルをオー爺ちゃんに返した。

ヴァーリは・・・・・フェンリルを仲間に加えることが目的だったのが後に理解した。

俺たちはさほど問題視はしていない。ヴァーリだからな。

 

「どうしたんだ?サーゼクス」

 

「ああ、後日。全校生徒と教師にも伝える予定だけど先にキミたちに伝えようかと思ってね。

―――キミたちが通う学校が決まったよ」

 

『っ!?』

 

ここにきてようやくか。サーゼクス・グレモリーの発言に俺たちは反応する。

 

「それで、僕たちが通う学校はどこなんですか?」

 

「とても駒王学園と変わらない学校があるのでね。駒王学園に在籍する生徒たちは全員、

準備が終わるまではその学校に生活してもらうことになっている」

 

学校と変わらない他の学校?実力主義の学校が他の学校にも存在していたのか?

サーゼクスは俺たちを見渡して口を開いた。

 

「―――武神・川神百代がいる学校。川神学園だ」

 

―――っ!

 

彼女の学校かよ!?うわ・・・・・毎日、あいつと決闘する想像が真っ先に思い浮かんだぞ。

 

「川神学園って・・・・・確か、神奈川県にありますよね?

僕たちは神奈川県に移り住まなきゃならないのですか?」

 

「引越しに掛かる費用と人材、それと神奈川県に住む場所の確保は私たち悪魔と天使、堕天使、

人間。冥界と天界、兵藤家が請け負うから他の生徒のご家族には何の負担もない」

 

うーん、親御さんにとっては嬉しいことなんだろうけど。

この町に暮らし慣れた家族にとってはどう思っているんだろうか?

 

「あの、お兄さま。私たちはこれからどうなるのですか?」

 

「ふむ・・・まだ何とも言えないと言うべきだろう。

この町は異様な力によって渦巻いていて力を呼んでしまうからね。

その対処と三大勢力と兵藤家、

式森家のトップが集い、会談をしないといけない。

それも決まるまでは川神学園で過ごしてもらう」

 

「・・・・・『禍の団(カオス・ブリゲード)』が襲撃してくる恐れがありますが」

 

塔城小猫の指摘にサーゼクス・グレモリーが重々しく頷く。

 

「ああ、きっと襲撃してくるだろう。そこで、この場にいるキミたちに頼みたいことがある。

川神学園に在籍している間、キミたちが学校を守ってもらいたい」

 

「俺たちが?」

 

「そうだ。川神学園にも実力主義のシステムがあるが、

駒王学園に在籍している生徒たちほど強くはない。その学校に在籍しているキミたちにまたもや

襲撃されては元も子もない。

―――襲撃されることを前提にキミたちが川神学園を守ってもらいたい」

 

俺たちに真っ直ぐ言う。襲撃されることを前提にか・・・・・。

 

「まあ、あの学校に世話になるんだったらそれぐらいのことをしなくちゃな」

 

うん、と首を縦に振ると他の皆も頷いた。

 

「そうか、引き受けてくれるのだね?」

 

「あそこには友達もいるしな。引き受けるよ」

 

「ありがとう。そう言ってくれると信じていた」

 

引き受けなかったらどうなっていただろうか。

 

「それで、いつ俺たちは川神学園に通うんだ?」

 

「一週間後だ。それと駒王学園に属していたクラスとクラスメートたちは変わらず

自分のクラスで授業を学んでもらう。本来ある川神学園のクラスとは別のクラスでね」

 

「というと、二つの同じクラスがあるってことか?紛らわしいな」

 

「でも、他校のクラスの生徒と一緒だと、線を引いて学校生活を送る可能性があるよ?」

 

「馬が合わない同士や、駒王学園とは違い異種族と慣れていない生徒たちがいるでしょうし・・・・・最善のことだと思います」

 

清楚と龍牙がそう言う。他の皆にも視線を配ると納得した面持ちでいた。

 

「もう、終わりだわ!」

 

不意に悲鳴を上げる女性の声。部屋の隅からだ。

見れば銀髪の女性―――ロスヴァイセが困った顔をするセルベリア・ブレスの胸に泣きついて

号泣していた。

 

「うぅぅぅぅぅっ!酷い!オーディンさまったら、酷い!私たちを置いていくなんて!」

 

うん。オー爺ちゃんに普通に置いて帰られちゃったな。

でも、どうしてオー爺ちゃんは二人を置いて帰ったんだろうか?

 

「リストラ!これ、リストラよね!あんなにオーディンさまの為に頑張ったのに日本に置いて

行かれるなんて!どうせ、私は仕事がデキない女よ!処女よ!彼氏いない歴=年齢ですよ!」

 

もう、やけっぱちになっているな。なんだか可哀想だ。

んー、オー爺ちゃんに言われたんだけどいま開けようかな。

 

「ロスヴァイセとセルベリア。ちょっとおいで」

 

「・・・?分かりました」

 

セルベリア・ブレスが返事をし、泣くロスヴァイセを引き連れてきた。懐から封筒を取り出す。

 

「イッセー、それは何なのかしら?」

 

「オー爺ちゃんが帰る際に渡されたんだよ。

しばらく日が経った頃に開けてみろって言われてたんだけど」

 

「ぐすっ・・・オーディンさまが?」

 

「うん、何だろうな。セルベリアが喜ぶとか言っていたんだよな」

 

彼女、セルベリア・ブレスを見ながら言うと「私が?」と首を傾げた。

封筒を開いて、中身を取り出す。中に入っていたのは数枚の紙だった。

 

「・・・・・ん?二人の履歴書?と・・・・・なんだこれ?」

 

「・・・・・すまない。見せてくれるか?」

 

俺から数枚の紙を取って、瞳を紙に記されている文字を追うように見続けるセルベリア・ブレス。

少しして、目を丸くした。

 

「これは・・・・・ヴァルキリーが勇者に仕えるための契約書の書状だ」

 

「な、なんですって!?」

 

バッ!とロスヴァイセが彼女から一枚の紙を奪って紙に記された文字を凝視した。

 

「ほ、本当ですね。でも、何時の間に・・・・・?」

 

「えーと、どういうこと?」

 

訳が分からんと俺が尋ねる。二人は顔を見合わせて、俺に顔を向けてきた。

セルベリア・ブレスが持っていた一枚の紙を俺に見せてくる。

・・・・・何故に俺の顔の写真が張られているんでしょうか?

 

「これは勇者に仕える認定のようなものだ。つまり、あなたは私たちの勇者となっているのだ。

私たちの場合、あなたの戦乙女、ヴァルキリーとなっている」

 

「・・・・・へ?」

 

『ゆ、勇者ぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああっ!?』

 

皆も驚愕の声を上げていた。あれ・・・何時の間に勇者になってんの俺?

 

「戦乙女の業界では勇者、または英雄の付き人となるのはこれ以上のない光栄的なことだ。

勇者と英雄の数が減って経費削減でヴァルキリー部署が縮小傾向の中、

私たちが勇者の付き人となるとはな」

 

「はい!これで私は勝ち組になれましたわ!」

 

「・・・・・えっと、彼の意見とかそういうのは全く無視なのですか?」

 

恐る恐ると龍牙が挙手をして質問をした。他の皆は何度か首を縦に振って頷いている。

 

「本来、勇者でも英雄でもないただの人間に私たち戦乙女が付き従うことはない。

だが、逆に言えば英雄、または、勇者となるに相応しい功績や戦果を挙げた人間ならば位の低い

戦乙女でも問題ない」

 

「俺・・・・・何かそうなるようなことをしたか?」

 

今回のロキとの戦いだって殆ど俺は何もしていない。

だが、セルベリア・ブレスは真っ直ぐ言った。

 

「次期人王決定戦」

 

・・・・・なんですと?

 

「オーディンさまも認める勇者だ。例え、北欧にいる周囲の者が認めなくてもオーディンさまが

認めた人間ならば、おいそれと文句さえも言えない。それにだ」

 

「うん」

 

「―――私はお前のヴァルキリーとなりたかった」

 

彼女が、セルベリア・ブレスが俺の足元に跪いた。

 

「次期人王決定戦で見せてくれたお前の戦いぶりを見て、私の勇者に相応しい男だと確信した」

 

「・・・・・他にもいるだろう。神話に出てくる勇者や英雄が世界のどこかにいるんだろ?

ヴァーリチームのアーサーとか、『英雄派』の曹操、ジークフリートとかさ」

 

「当たり前のように存在する勇者と英雄には興味がない」

 

うわ、バッサリと切り捨てたよ。というか当たり前のようにって・・・・・実際、

太古に凄いことをした英雄と勇者なんだから当たり前のようにいて当然だと思うんだけどな。

 

「私は根本的な新しい英雄、勇者の付き人に成りたかった。

神話体系の書物に出てくる英雄、勇者ではなく現代の新しい者に。

―――二人の姫を救った兵藤一誠こそが現代の勇者だと私は思っている。

だから、私は今まで勇者や英雄の付き人の話しを蹴ってロスヴァイセとずっと一緒にいたのだ」

 

二人の姫・・・。悠璃と楼羅のことか。

 

「兵藤一誠さま。このセルベリア・ブレス。身をもってあなたを守り、

この魂は未来永劫あなたさまのものであります。あなたの剣となり盾となりましょう」

 

跪いた状態で頭を垂らして契約の言葉・・・みたいなことを言う。

―――と、未だに佇んでいるロスヴァイセまでもが慌ててセルベリア・ブレスの隣に跪いては、

彼女と同じことを呟いたのだった。

 

「・・・・・俺、お前らの勇者でいいのか?」

 

「一生後悔はしません。我が人生はあなたさまの思いのままに」

 

「で、できれば・・・・・安定した衣食住の生活と仕事を送らせてください」

 

ロスヴァイセェ・・・・・。

 

「仕事のことならお任せください」

 

ここで我らがメイド、リーラ・シャルンホルストが現れた。

 

「一誠さまが卒業なさられるまで、御二方は希望通り、学園の女性教諭として働いてもらいます。

よろしいですね?」

 

「もちろんです・・・・・。私、セルベリアもそうですけど、

これでも飛び級で祖国の学び舎を卒業しているもの。歳は若いけれど、教員として教えられます」

 

マジで?歳は俺とあまり変わらないと思うんだけど、教師の道を選ぶとは。

 

「分かりました。ならばその後、一誠さまが卒業成されたら御二方には、

メイドとして一誠さまの身の回りのお世話をしてもらいます。

勿論、しばらくは私の指導のもとでですが」

 

「メ、メイドですか!?ヴァルキリーなのに!?」

 

「一誠さまに仕えるなら当然のことです。それにこの家に住むのであれば

 『郷に入っては郷に従え』という日本の諺があります。メイドとして、ヴァルキリーとして、

 一誠さまの世話をしてもらいますよ」

 

「勿論、タダとは言いません」とリーラが何やら書類を取り出して見せた。

その書類に目を通したロスヴァイセが驚愕の表情になった。

 

「ウソ!保険金がこんなに・・・・・。こっちのは掛け捨てじゃない!」

 

「一誠さまは次期人王。人王となれば、人王に仕える者たちはそれなりの優遇が

与えられるのです。人王は世界中の人間の王。現人王の兵藤源氏さまが抱えている会社や土地、

海では海域、空では空域など全て支配、管理しておられます。人王となった一誠さまがそれらが

全て受け継がれるので―――基本資金もヴァルハラと比べてもかなりの好条件ばかりだと思います」

 

「・・・・・」

 

呆然と書類に目を通しているロスヴァイセの耳にリーラの言葉が届いているのか

些か怪しいが・・・・・。彼女の返事は?

 

「・・・・・そうですね。兵藤一誠くん・・・いえ、イッセーさまのヴァルキリーとなるならば、

身の回りのお世話もしなくてはなりませんよね」

 

「よければ、ヴァルキリー部署にいる同僚の方々にもお話だけでも良いですので御声を

掛けてください。悪いようにはしませんので」

 

コクリとロスヴァイセが頷いた。何だろう、戦うメイドさんの集団が集まりつつあるような・・・・・。

 

「一誠さまを御守りするためならば、私はどんな手を使ってでも御守りしますよ」

 

「・・・・・心を読まれた」

 

当然のことだと風に言う俺のメイド。そこに・・・・・朱乃が近づいてきた。

 

「イッセーくん、そろそろ・・・・・」

 

「朱乃?イッセー?どこか出掛けるの?」

 

リアス・グレモリーに尋ねられる。

 

「ああ、彼女の母親の墓参りだ」

 

―――○●○―――

 

―――Dad.―――

 

事件も終わり、俺―――アザゼルは日本の土産を買う予定のバラキエルの買い物に付き合っていた。

他のバカどもがバラキエルに、帰ってくるついでにと頼んだらしい。ったく、

どいつもこいつも・・・。ま、総督の俺がこれだから仕方ねぇか。

デパート内のベンチで休んでいると、買い物袋を幾つも手に持つバラキエルが帰ってきた。

 

「・・・・・うむ。頼まれていたものはこれで全部か」

 

「お疲れ」

 

俺の横にバラキエルが座る。クタクタっぽいな。

こういう無骨な武人に買い物はしんどいものだろう。

しかし、一度頼まれたことは完遂しちまうんだよな。

 

「バラキエル、ほれ、これ」

 

「なんだ、この包みは?」

 

「いいから、開けてみろよ」

 

バラキエルが開けると、そこにはひとつの弁当箱。

 

「・・・・・弁当?」

 

「いいから、開けてみろよ」

 

ここにくる途中、朱乃に渡されたものだ。無言で渡されたものだが、

誰に渡せばいいかなんてことは聞かなくても―――。

 

『・・・・・イッセーくんを助けようとしたあの方に渡してください。一応・・・お礼ですわ』

 

と、思っていたんだがな。そん時は思わず俺は苦笑を浮かべちまったぜ。

 

「これは―――」

 

弁当箱を開けると―――色彩豊かで見事な和の料理が入っていた。

バラキエルは俺のほうに視線を向ける。俺は苦笑しながらうなずいて「食えよ」と手で促した。

箸を取り、おそるおそる煮物の芋を口に運ぶ。その瞬間―――バラキエルの頬から涙が一筋伝った。

 

「・・・・・肉じゃが・・・・・朱璃の味だ」

 

夢中でそれをがっつき始めた。無言で、ただただ箸を進める。涙をボロボロ流しながら、

ひたすら夢中で。俺は親友に言ってやった。

 

「朱乃のこと、俺やリアスたちに任せろよ。問題ないさ。

あいつが気に入った男は女に対しては誠実で、

家族を守るためなら何でもするいい奴だからよ」

 

バラキエルは箸を止め、目元を手で覆う。涙混じりに震える声で俺に言ってくる。

 

「彼が・・・・・朱乃を大事に・・・・・守ってくれると信じたい」

 

「ああ、だいじょうぶだ。奴は堕天使が嫌いでもちゃんと朱乃を守った。

じゃなきゃ、フェンリルから守るわけがない」

 

「・・・・・兵藤一誠・・・・・彼は強く立派な男に育っていたな」

 

「嫌な性格になっていたけどなあんにゃろう・・・・・」

 

出会い頭に俺をグレイプニルで縛りあげて本当に火炙りしやがった。

おかげで夏の季節が過ぎたっていうのに俺の全身は日焼けでもしたかのように真っ黒だぞ!

しかもだ―――。

 

『上手に焼けましたーっ!』

 

俺は肉かよ!?くそ、あいつ。何時か仕返ししてやる!

バラキエルは俺の言葉を聞き苦笑を浮かべながらも、

涙を流しながら力強く頷くと食べるのを再会した。口いっぱいに肉じゃがを頬張りながら。

 

「・・・・・アザゼル、悪いがもう少しだけ付き合ってもらう」

 

「なんだ、まだ買い物かよ?」

 

「いや・・・・・朱璃の墓参りだ」

 

―――墓地―――

 

―――一誠side

 

とある場所の墓地。駒王学園から少し離れた静寂に包まれた場所で俺と朱乃は

一つの墓石の前に佇んでいる。

 

―――姫島朱璃―――

 

そう刻まれている墓石の前に花束を置く跪いた朱乃の隣に俺は静かに佇んでいる。

 

「お久しぶりです母さま。少し遅れてしまいましたわ」

 

「・・・・・」

 

「私は今とても充実した生活を送っていますわ。

新しい友達もできてちょっとエッチな後輩もできましたわ」

 

ちょっとどころじゃないけどな。

 

「隣にいる彼は兵藤一誠くん。・・・・・父さまのご友人だった兵藤誠さんと兵藤一香さんの

息子です。あの方にも人間のご友人がいたとは知りもしませんでした。

だって、あの方は堕天使ですもの」

 

朱乃は溜息を吐く。

 

「母さま。私はとても弱いです。あの時、父さまが悪くないことぐらい分かっていた。

 けど―――。そう思わなければ、私の精神が保たなかった・・・・・。

 私は弱いから・・・・・寂しくて・・・・・ただ、三人で暮らしたくて・・・・・」

 

懺悔の如く、彼女は墓石に向かって言い続ける。

 

「―――寂しかった―――いつも父さまがいてくれたら、良かったのに―――」

 

・・・・・彼女の声音に震えが交じり始めた。

 

「母さま・・・・・ッ!私は・・・・・ッ!父さまともっと会いたかった!

 父さまにもっと頭を撫でてもらいたかった!父さまともっと遊びたかった!

 父さまと・・・・・父さまと母さまと・・・・・三人でもっと暮らしたかった・・・・・ッ!」

 

それが、朱乃の内に秘めていた本当の想いだとすぐに分かった。似ている・・・。

彼女は俺と同じ気持ちを抱いていた。―――不意に、気配を感じた。

横に顔を向けると・・・・・大量の買い物袋を持ったアザゼルとバラキエルがいた。

 

バラキエルの手には花束が・・・・・。なるほど、同じ理由のようだな。バラキエルの目から

静かに涙を流している。父親冥利尽きるな。

・・・・・アレ、やるか。発現した金色の錫杖を手にし、

 

禁手(バランス・ブレイカー)

 

カッ!

 

無限創造龍の錫杖(インフィニティ・クリエイション・メーカー)』の力を解放する。

神々しい輝きに包まれ、金色のオーラは龍を模した金色の全身鎧へと俺の身を包み、背後には、

口に『魔』『聖』『命』『万』『運』の文字がある珠を咥えている金色の龍が姿を現す。

無限創造龍の錫杖(インフィニティ・クリエイション・メーカー)』の禁手(バランス・ブレイカー)

―――『無限の創造龍の鎧(インフィニティ・クリエイション・アーマー)』だ。

 

「・・・・・イッセーくん?」

 

一体なにを・・・・・?と彼女の顔から疑問が浮かんでいることが伺える。

俺は敢えて何も言わず、

金色の錫杖を目の前の墓石に突き付けると、俺の背後に浮かぶ金色の龍が咥えている

『命』の文字が光り輝く。

 

「・・・・・っ」

 

これをするのは二度目だ。初めてした時は一週間も眠っていたとリーラから聞いている。

これは、かなりの精神力と魔力、体力を使うと後に分かった。

・・・・・今回は一日で済んで欲しいかも。『命』の珠が更に光を増す。すると―――龍の口から

『命』の珠が離れて朱乃の母親の墓石に溶け込むように消えた。

 

ドサッ!

 

俺は力尽きたとその場で倒れた。朱乃が慌てて俺を介護する。

 

「イッセーくん!あなた、一体なにをしたの・・・・・・?」

 

「・・・・・まあ、見ていれば分かる。これをするのは二度目だけど・・・・・必ず成功する」

 

全身で息をしてそう言う。朱乃は怪訝な面持ちのようで墓石に目を向けた。

その時、母親の墓石から光の球体が浮かび上がり―――ゆっくりと人の形を作っていく。

 

「・・・・・まさか・・・・・」

 

ああ、そのまさかだよ朱乃。―――十年振りのご対面だ。光はやがて消失していく。

目の前にいる朱乃に似た全裸の女性を残して。流石にアレはダメだろうと思い、

彼女に金色の錫杖を振るって、能力を発動する。

全裸の女性は一瞬の光に包まれ、巫女服を着た状態になった。

 

「・・・・・」

 

女性は、ゆっくりと目を開ける。綺麗な黒い瞳だ。

朱乃の瞳は紫だが顔の容姿は朱乃とそっくりだ。

 

「私は・・・・・ここは・・・・・?」

 

辺りを見渡す。瞳に困惑の色が浮かんでいるがすぐに消えるだろう。だって―――

 

「は、母・・・・・さま・・・・・?」

 

「・・・・・朱乃・・・・・・?」

 

目の前に自分の娘がいるんだからな。朱乃は立ち上がり、俺からゆっくりと離れ、母親に近づく。

 

「母さま・・・・・」

 

「朱乃・・・・・あなた、朱乃なのね・・・・・?」

 

理由は分からない。でも、自分は生き返った。そして、目の前には自分が死んでいる間に成長した

娘が涙を流して近づいている。―――と、俺はそう思った。

 

「―――母さまぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 

朱乃は母親、姫島朱璃に泣き付いた。母親も朱乃の背中に腕を回して、再会の喜びを露わにする。

 

「朱乃・・・・・立派に育っていたのね」

 

「母さま・・・!母さま・・・・・っ!」

 

「もう、年頃の女の子がそんなに泣くものじゃないのよ?―――ほら、父さまがいるのよ?」

 

そう言われて朱乃は初めて俺に、俺の背後に振り返った。

 

「・・・・・朱璃・・・・・」

 

未だ、涙を流し続けるバラキエル。娘同様に喜んでいるのだと分かる。

朱乃の母親は、笑みを浮かべて言った。

 

「お帰りなさい。あなた」

 

「―――っ!」

 

ダムが決壊し、膨大の量の水がダムから流れ続けるかのように、

バラキエルの目から大量の涙が出てくる。

 

「朱璃ぃぃぃいいいいいいいいいいいっ!」

 

うん、男泣きだ。バラキエルは腕を大きく広げて二人に駆け寄り、二人を纏めて抱きしめた。

その光景を見ていたら、

 

「お前・・・・・そんなことができたんだな」

 

アザゼルが声を掛けてきた。体がだるい、とばかり俺は地面に倒れた。

 

「まあな。もう、一歩も動けない」

 

「・・・・・色々と力が疲弊しているな。魔力が全然ないのが分かるぞ」

 

「今の俺ならアザゼルの槍で死ねるよ?」

 

「殺すかよ。お前は―――とても大きなことをした男なんだからな」

 

そうか、まあ、そうだろうさ。

 

「イッセー、どうしてその力で誠と一香を甦らせない?」

 

「・・・・・そんなの、決まっている。―――あいつらを殺し、

復讐を終えるまでするつもりはないからだ」

 

「・・・・・そうか・・・・・」

 

それだけ言い、アザゼルは俺を担ぎ始めた。

 

「お前の家に連れて帰るがいいな?」

 

「おう、ありがとうな。今回は一週間寝続けないですめるようだ」

 

「どんだけ今の力を使うんだよ」

 

昔の話だ。と、俺は言い返した。担がれながら俺は見た。

 

「うおおおおおおっ!朱璃ぃぃぃぃっ!」

 

「父さま!痛いですわ!もっと優しく・・・・・!」

 

「うふふ・・・・・」

 

家族三人、幸せなオーラを漂わせて抱擁を交わしているところをな。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。