神様にされたら愛され過ぎてヤバい件について。   作:Am.

13 / 36
お気に入り2000件超えありがとうございます。

………何が起きた?(困惑)


03.生贄(ラーナ)

ディーヴァの方へと僕が向かおうとしたところ。ふと視界にさっき食い尽くした男の神機の残骸が目に入った。刀身の部分は粉々に砕けてるが、柄の本体の部分とシールドは未だに健在。……どちらも僕の蝕刃にはない機能だな。これはこれで頂いておくとするか。

 

 

【サリー。ちょっと不味いの食べるよ?】

 

『──────────。』

 

 

左掌の口の部分で神機のオレンジのコアに当たる部分をまず口にし、そのあと盾の装甲部分を咀嚼する。……ほんと神機って不味いな。さっき食った人間(ひと)の味が大当たりなだけに余計不味く感じる。僕らに喰われないように作ってるとの話だが、幼少期に口にするブラックコーヒーみたいな……確かに普通のアラガミならこんなもん好き好んで食わないわ。

 

 

けどこれで僕は神機を丸々口にした事になる。これで僕は神機の機能をそっくりそのまま模倣できるというわけだ。人間共の作った人工アラガミとも呼ぶべき神機だが、実際こいつの能力はアラガミを殺すことに特化している。この能力を完全に取り込めばこれから神機使いと戦う上でも必ず大きな力となる。

 

 

 

………まずは残ってる神機使いで試してみるかね。ディーヴァに残りの三人を任せたままだから。助けがてらあいつらで試し斬りさせて貰うとしよう。

 

 

『─────────。』

 

【あの猫はそのまま死ねばいいって……酷い事言わないのサリー。】

 

 

 

ディーヴァはディーヴァで頑張って足止めしてくれてるんだから。……現に今も神機使い三人を同時に相手取って互角以上に戦っている。凄いよねあの子。互角以上っていうか余裕じゃん。もうブラスト使いは地面に倒れてて、残りの大剣(バスター)使いと短剣(ショート)使いの女を翻弄している。

 

 

「ちっ……なんなのよこいつ!アラガミのくせに防御なんかして!!」

 

「!?………おい。あいつは……………」

 

 

そこに遅らばせながら推参っと。空中から舞い降りる僕を見て、ディーヴァは神機使い共の相手を中断して僕の方へと駆け寄ってくる。そして僕の顔を心配そうに前脚で触って……大丈夫大丈夫。怪我とかしてないから。瞬殺してきたから平気だって。

 

するとポフッという音を立てて前脚が僕の頭に置かれた。……なでなでされてる。一人で倒してきたの褒められてるのか……

 

 

本当ならもっと褒めて欲しいところではあるけどね。あいにくあっちはあっちで体勢立て直したっぽいから。ディーヴァが離れた隙にいつの間にか、大剣を持った神機使いがブラスト使いを復活させていた。あれがリンクエイドってやつか。

 

 

 

「ちょっと待って……なんであいつがここにいるの……?隊長は……ジャックはどうしたの………!?」

 

 

ジャック……あぁ。さっき僕が殺した神機使いの名前だね。僕を見て戦々恐々としてる短剣使いの女……確かラーナとか言ったか。あいつの脳みそ喰った時に記憶で見たけど、この女と僕が喰った奴は付き合ってたみたいでさ。この任務終わったらプロポーズする予定まで立ててたんだって。

 

 

けど代わりに立ったのは死亡フラグだったわけだ。リア充の末路はこうあるべきと昔なら僕も思ったけど。大切な相手を失う恐怖と絶望は僕も最近知ったからさ。サリーが死んじゃうと思った時は本当に焦ったから。あのラーナとやらの心中は察するに余るというもの。

 

そんな慌てなくても直ぐに会わせてやるさ。僕達の腹の中でな。だから安心して僕に身を委ねるといい。

 

 

「おい!来るぞ!!」

 

「~~~っ!!この化け物が……ジャックをどこにやったのよ!!」

 

 

でも僕が斬りかかろうとした瞬間、僕の右肩に裂傷が入った。ちっ……速いな。しかも後ろに殺気を感じて左手の甲を背後に向けると、ラーナは跳躍した体勢はそのままに空中で加速してきた。慌てて右腕の蝕刃を背後へと向けると、ちょうど僕に放たれる一撃が蝕刃に弾かれる。

 

 

「このアラガミ……後ろに目でも付いてんの!?」

 

「ラーナさん!離れるんだ!!ここは僕が華麗に決める!!」

 

 

声のした方を見るとブラストの銃口が僕を捉えていた。しかもラーナもその声に合わせて退き、受け止めた神機の刀身を蝕刃で喰い壊す前に離脱された。ちっ……ブラストの方を避けたりガードする時間が無いか。ディーヴァ、また頼むよ。

 

 

「ガオォッ!!」

 

 

天に向けた咆哮と共に氷壁が展開され、僕に放たれた砲撃を間一髪防いでくれる。やれやれ……この爆発、かなりのオラクル細胞を込めたものと見た。食らえば致命傷は免れられないが、あちらも今ので(OP)切れになったはず。なら援護射撃もうざったいしまずはあの小僧から喰い散らかしてやるか。

 

 

ディーヴァに氷壁を解除するように目配せをする。しかしそうして氷壁を解除すると同時。氷壁で覆われた視界の先から、僕の死角を縫うようにしてひとつの影が躍り出た。

 

 

「ようやく捉えたぜ……化け物!!」

 

 

振り上げられた大剣が胸元を掠め、空中で体勢が揺らぐ。掠っただけでこの威力……これは神機の性能どうこう以上にこいつの腕力の問題か。何者だこいつ。どうみても普通の神機使いに比べて能力が高い。

 

 

しかもそこに割り込むようにして再びラーナが跳躍しながらの切り上げを放ち、僕がそれを回避すると空中から矢のように加速して神機で僕の胸元を貫いてきた。ていうか突き刺さった。それも僕のコアの上スレスレに。あっぶな……

 

 

()()()!今だよ!!」

 

「言われなくても分かってる。手こずらせやがって………」

 

 

 

 

────────ソーマ??

 

 

ふと呼ばれた名に今まさに振り下ろされようとしてる神機を見る。あの黒い大剣……イーブルワンか。へぇ……気付かなかった。まさかこのガキんちょがあのソーマか。

 

確かに言われてみれば金髪に褐色肌って面影あるな。なるほどね……こんな小さい頃から神機使いしてたのか。可哀想に。

 

 

 

 

【ハハ………恨むなら。その歳で子を駆り出した愚かな親を恨むんだな。】

 

 

「「「ッッッッッ!!???」」」

 

 

 

完全に模倣を完了した声帯から発する声に神機使い達の動きが止まる。その一瞬を突き、僕の胸元に剣を突き立てて張り付くラーナを左手で殴って吹き飛ばした。更に入れ違いに振り下ろされるソーマの神機を右手の蝕刃で受け止めると、そのまま力を込めて神機を押し返す。シールドを食った甲斐があったというものだね。大剣のチャージクラッシュも受け止められるとは。かつてヴァジュラテイルにへし折られてたのが嘘みたいだ。

 

 

 

そしてソーマの神機を遠くに弾き飛ばすと、僕は胸元に刺さった神機をそのまま身体に取り込むように捕喰する。段々慣れてはきたが、やっぱ不味いな神機は……ごめんねサリー。こんな不味いものを二つも食べさせちゃって。直ぐに口直しさせてあげるからね??

 

 

 

「なんだこいつ……!今喋ったのか!?しかもあの声………」

 

「ジャック………!?なんで……………」

 

 

おーおーびっくりしてるね。どんな感想だ?仲間を喰い殺した化け物が殺された仲間の声で喋り始めるってのは。まぁお前らの心中なんざ僕が知ったこっちゃないんだけどさ。ただいくら驚いたからって、敵の前で丸腰で棒立ちするのはどうかと思うよ??

 

 

「────ラーナさん危ない!逃げるんだ!!」

 

 

取り込んだ神機の性質を身体が模倣し、変質が始まる。背中から生えた二つの生々しい剣は翼のような突起となり、それに応じるかのように身体が羽根のように軽くなる。良薬口に苦しとでも言うのか。神機はいつも僕に力を与えてくれる。

 

 

蝕刃を構えて空を蹴り、弾丸のような速度で突きを放つ。蝕刃の大振りな刀身が茫然自失のラーナの腹を貫き、同時に刃を伝ってそのありとあらゆる情報が僕の頭の中へと逆流し始める。戦闘中に食事を始めるのは無作法というものだが、やはりこの人間の味と情報には興味を惹かれるものがある。

 

でもそうして捕喰行動を始めると、ソーマが凄まじい形相でこちらへと走ってきた。ちっ……そりゃ邪魔しに来るよな。ディーヴァ、お願い。

 

 

「てめぇ……このクソゲテモノ野郎が!!!」

 

「ガオッ。」

 

「ぐあっ!?」

 

 

前へと躍り出たソーマをディーヴァが前脚で叩き潰すようにして地面へと押さえつける。そしてディーヴァはソーマに向かって首を横に振っていた。まるで邪魔しちゃダメとでも言うかのように。……そのまま殺しちゃっていいよディーヴァ。そいつは逃がすとリンドウさんみたいに厄介な神機使いになるから。サリーやディーヴァの脅威になる神機使いにね。

 

 

………こっちも早く喰い終えてあっちで腰を抜かしてるブラスト使いをやってくる。ディーヴァも人の味を知るといい。

 

 

『────────!!』

 

ん?どうしたのサリー。なに?その女がなにか持ってる?……ほんとだ。こんな今から死のうって時によく動くもんだ。教えてくれてありがとうねサリー。

 

一度蝕刃による捕喰を止め、ラーナを突き刺したまま地面へと放り投げる。そうするとグシャッという生々しい音がしたが、手に握った何かがディーヴァの方へと投げられた。……あれ。まさかあれって────

 

 

「ギャンッ!??」

 

「エリック………ソーマを連れ…逃げ…さい………」

 

 

ちっ……スタングレネードか。閃光と爆音にディーヴァは怯んで顔を背けてしまい、そこにブラストの爆撃が飛んできた。氷壁の展開も間に合わずに爆撃を直に受けたディーヴァはよろけて前脚で押さえていたソーマを離してしまう。

 

 

健気というか……死ぬ寸前だってのによくやる。人間は忌々しいが、ああした仲間のために命を張れるのは敬意を表する。だからって僕がソーマ達を見逃す理由にはならないんだけどね。

 

 

「ふざけんなラーナさん!!あんたを置いて逃げれるか!!」

 

「お願ぃ……もう……助からない………」

 

 

 

それにソーマも仲間を置いて逃げれるような性格じゃないからね。ましてや今のソーマはまだ子どもなんだから。自分が助ければどうにか出来ると思ってる。もう放っといても死ぬのに。

 

だから僕は食いかけのラーナをソーマ達の近くに投げたんだよ。ソーマが慌ててラーナに駆け寄るのを見て、左掌の口を向ける。そうすると口の中から黒い筋繊維のようなものが溢れ出し、左腕全体を覆うようにして巨大な捕喰器官を作り出す。丸呑みじゃ味なんて分からないかもだけど……サリー。食べていいよ。

 

 

『────────────!!』

 

 

神機の捕喰形態を模した左腕がソーマに向けて伸びる。だが、それで僕に伝わってきたのは人を噛み潰す感覚でも頭に流れる情報でもなんでもなく。

 

 

サリーの悲鳴と、左腕が縦に切り裂かれる激痛だった。

 

 

その感覚に慌てて左腕を元に戻す。サリーは……無事だね。何が起きた?今の切り裂かれる痛みはどこかで味わったことがある……そう。僕が初めて神機に傷つけられた時の痛みだ。

 

 

 

 

「間一髪、ってところだったな。ソーマ。」

 

 

裂けた腕を元通りに再生させ、僕の捕喰を遮った相手を見すえる。新たな()()の人影に赤いチェーンソーのような神機。忘れもしない。僕を一度殺しかけ、サリーをこんな身体に変えた神機使い。そして僕にとっての最大の天敵にして宿敵。

 

 

【いや………少し遅かったな。神機使い。】

 

 

 

雨宮リンドウ。また僕らの前に立ち塞がるか。それもいい。……あの時からどの程度僕らの差が埋まったのか。ここで試してみるのも悪くはないか。




ソーマって無印の時点で18歳。で、この時点で六年の実戦経験ありのベテラン。

12歳(暫定小六)の時から神機使いやらされてるって支部長は鬼かなにかなんですか。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。