神様にされたら愛され過ぎてヤバい件について。   作:Am.

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お久しぶりです。遅れて申し訳ない。


04.宿敵(アマミヤ)

予期せぬ増援による妨害。雨宮リンドウにソーマの捕喰を邪魔され、真っ先に怒りを顕にしたのはサリーだった。この二人は僕を傷つけた神機使いとしてサリーも覚えていたらしい。憤怒と殺意により僕の左手を無理やり変質させ、今にも襲いかからんと邪眼を血走らせている。それを僕が宥める反面、リンドウさんも今にも事切れそうなラーナの姿に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。

 

 

「……くそ。遅かったか。その声といい………」

 

【ディーヴァ。】

 

 

その名を呼ぶとディーヴァは滑り込むようにしてリンドウさんの背後へと周り込む。そして倒れているラーナを咥えると、足元を冷気で凍らせながら滑るようにしてどこぞへと滑走していった。

 

邪魔が入った以上ここでゆっくりあの女を頂くことはできない。が、かと言って追ってこられても面倒だ。僕はこっちを片付けてからディーヴァを追うとしようか。

 

 

「っ、あの人面猫……!ラーナさんを返せ………ぐふっ!!」

 

「ソーマ。お前はそこのエリックとやらと先に帰投しろ。ここから先は私達が預かる。」

 

「ふざけんなこのくそババア……!あいつは俺が────」

 

 

そこまで言って、ソーマがツバキさんに腹パンされていた。……うわっ。めっちゃ吹っ飛んだし気絶してるじゃん。女の人にババアはダメだって。ソーマって確かロリコンだった気がするけどさ。……にしてもやっぱあの人怖いわ。

 

 

でもソーマが倒れるとその場にもう一人。見たことの無い女が駆け寄り、エリックと共に気を失ったソーマを起こす。それを見てツバキさんが続け様に指示を出した。

 

 

()()()。お前もその二人を護衛しつつ先に帰投しておけ。新兵のお前にこの戦場はまだ早い。」

 

「は……はい。分かりました。………気をつけてくださいね?ツバキさんも、リンドウも………」

 

「……………サンキュ。姉上。」

 

 

ふむ……サクヤ、ってあれだよね?リンドウさんの嫁の。そっかこの頃はまだ神機使いとしては新兵か。ソーマと一緒だね。どうもさっきこっちを見た視線の感じ的に、ここ最近僕の周りをこそこそと嗅ぎ回ってたのはあの人っぽい。

 

 

しかしあのまま逃がすとソーマもサクヤさんも厄介な神機使いとなる。そしてその二人が今はこうしてひとまとめになっており、片方は動けない。ここまで条件が整っていればやることは一つだ。

 

 

【誰が帰っていいと言った。神機使い。】

 

「えっ………!?」

 

 

足元を浮かせて滑るように宙をかけ、戦場を去ろうとする神機使い三人の頭上へと一瞬で移動する。こいつらはここで殺す。これ以上リンドウさんやツバキさんレベルの神機使いが増えるのは我慢ならないんでね。僕らアラガミの脅威となる前にここで死んでもらおう。

 

 

しかし同時に背後に殺気を感じ、左手の甲の邪眼を後ろへと向ける。そうして振り向きざまに蝕刃の刀身を盾のように構えると、ちょうど放たれた銃弾を弾く形で無効化できた。

 

 

「私が許可した。私の決定に文句でもあるのか?化け物。」

 

【………………………フム。】

 

 

薄らと弾痕の出来てる蝕刃を下ろし、退却していくソーマ達を横目に見る。……この二人が相手じゃ余所見してる余裕もないか。しかし今ので分かった。神機を二振り、神機使いを一人喰った今の僕なら銃弾にはそこそこ余裕を持って反応できる。

 

 

………と、思うのだが。僕の面前に立ち塞がる二人から発されるこの重苦しい殺気。ツバキさんはまだしもリンドウさんもそんな顔するんだね。怒りを必死に押し殺すような二人の表情に自然と僕も背筋が伸びる。浮いた身体を地に下ろし、左腕(サリー)を隠すように後ろへと回す。

 

 

 

 

 

「………なぁアラガミ。言葉が通じるなら、さっきのラーナって人間の遺体を返してくれないか?そうすればここは俺達も下がる。」

 

【くだらん戯言を並べる前にその殺気を隠すといい。第一そんなものに何の用がある?】

 

「埋葬するんだよ。在るべき場所に……遺族達の元へな。」

 

 

埋葬……埋葬、ね。この時代にもそんなくだらない文化が残っているのか。葬式ってものには出たことないから知らないが、この身体になった今なら言える。死者の埋葬など生物界に於いて見れば何の価値もないことだと。この身体となった今、弔いというものを理解は出来ても共感することは絶対にない。

 

 

何故なら僕は今、人間を僕の糧とするため。死体の使い道を見出したからこそ殺したのだ。それをわざわざ灰に変えて埋めるために返せと?それは人間が口にするため屠殺した牛や豚を、埋めて腐らせるために返せと言っているようなもの。それこそ命に対する冒涜というものだろうに。

 

強いて言うなら殺した相手を喰い尽くしこの身の糧とするのが自然における弔いだ。化け物相手に人間の価値観を押し付けるんじゃあない。例え人語を解したところで、僕はもう人間では無いのだ。故に僕はその回答とばかりに、蝕刃を向けて改めて臨戦態勢に入る。

 

 

「………そうか。その声……ジャックも食ったんだな?」

 

【彼には感謝しているよ。言葉が通じるというのは素晴らしいものだ。】

 

「耳を貸すなリンドウ。いくら言葉を得ても奴はアラガミだ。我々とは決して相容れない。それに………」

 

 

ツバキさんがアサルトを構えてリンドウさんの前へと出る。……思えば前も同じだったな。僕が初めて神機使い(この二人)と出会い、交戦し、そして僕はこの命とサリーを失いかけた。

 

だが今度喪うのは果たしてどちらだろうな。蝕刃の弾痕を再生させ、再び身体を浮かせる。サリー……あの時はごめんね。君の言う事を聞かなかったせいで君を酷い目に遭わせた。今度は一緒に戦おう。

 

 

「………私達がこいつを取り逃したせいでジャックとラーナは死んだ。この責任は……他でもない私達が取るんだ。今ここで……!!」

 

【いい覚悟だ。なら彼らにあの世で詫びてくるといい。】

 

 

左手を天に翳し、サリーが空中に無数のレーザーを放つ。それらは空中に停滞した後に二人を捉えると雨のように降り注いで爆撃となるが、当然この程度の攻撃であの姉弟はやれない。爆撃を躱して左右に散開した後、同時に攻撃を敷いてくる。

 

 

しかも僕から見て左側にリンドウさんが移動し、ツバキさんは右側からアサルトで銃撃してくる。今の僕なら蝕刃で銃撃を防げるが……なるほど。これでは左側から来るリンドウさんを蝕刃で迎撃できない。面倒な拘束になるわけだ。そして二人が早くも僕が左腕しか射撃能力を持たないと把握しているのなら………

 

 

「リンドウ!まずその左腕を破壊しろ!!」

 

「了解だ姉上!!………うおっ!?」

 

【敵前で作戦を口に出す阿呆がいるか。】

 

 

地面に蝕刃を突き刺し、蝕刃の刀身を縦に展開する。そうするとその合間に赤い稲光が走り、大爆発と共に土埃が巻き起こる。

 

ロングブレードの特殊能力のインパルスエッジだ。剣形態のまま銃撃を行うことで至近距離を爆撃で吹き飛ばす技術。さっきジャックの神機を口にして会得したんだよ。

 

直に当てれば人間相手には些か過剰火力(オーバーキル)だが……こうして地面を爆破すれば、相手の視界を奪う搦手としても使える。現にこれで視覚を奪われたリンドウさんとツバキさんは攻撃の手を止めざるを得ない。

 

 

そうしてリンドウさんを土埃に巻くと同時。僕の左手の甲の邪眼に赤いエネルギーが収束する。サリー……狙いは大雑把でいいから吹き飛ばしちゃってね。

 

 

『──────────。』

 

 

そうしてサリーの合図に合わせて左手を薙ぎ払うように振るう。そうすると無数の赤いレーザーが扇状に連射され、着弾地点一体を連続爆破で焼き尽くす。一緒に土埃も吹き飛ばしてしまったが、リンドウさんもちゃんと巻き込んだらしい。よくやったねサリー。

 

 

「ぐぅっ……!?なんだこれ………身体が………!!」

 

「おいリンドウ!何をしている!?さっさと動け!!」

 

「姉上……身体が重いんだよ。つかめちゃくちゃいて……ゲホッ!!」

 

 

神機を杖のように突き立て、必死に立った姿勢を保つリンドウさん。サリエルとザイゴートの致死性毒(デッドリーヴェノム)を吸っておきながらよく立っていられるものだ。さすが最強の神機使い……体力も化け物というわけか。

 

 

でも効いてはいるのか、リンドウさんは血の塊を口から吐き出して体勢を崩す。……うん。放っといたらあのまま死ぬね。サリーありがと。やっぱサリーが一緒だと頼りになるね。左手の甲に唇を当てると、左腕の羽の部分が慌てたようにパタパタと揺れる。

 

 

「おのれ毒か!?小賢しい真似を……!」

 

【人間がそれを言うか。】

 

「リンドウ!さっさと治療しろ!!それまでは私がこいつの気を引く!!」

 

 

………だから言葉の通じる敵前で作戦を口にするなと。対アラガミ戦しか知らない悪い癖だね。とはいえ僕としてもまずは後方支援のツバキさんを狩りたいところだから。ツバキさんの相手をしてやる。

 

左手を向け、掌の鋭い牙が並ぶ口を開く。そうすると三連射、口の中から赤い光弾が高速で放たれる。シユウの気弾にサリーの毒を混ぜたものだ。ホーミングはしないがこっちは連射能力に優れる。

 

 

そして気弾を撒きながら銃撃を躱し、空中を駆けるようにしてツバキさんへと距離を詰める。二人の連携を断てたこの千載一遇のチャンス。決して無駄にはしない。距離を詰めてしまえば遠距離型の神機使いに為す術はない。

 

 

「────と、考えてる動きだな?化け物。」

 

【なに?】

 

『────────!!!』

 

 

左手のサリーの声に反応するも、次の瞬間には僕の視界が真っ白に塗り潰された。それに耳もキーンとして……くそっ。スタングレネードか。近付いても為す術あったな。

 

咄嗟に左手の甲を向け、サリーの邪眼を使って辺りを見渡す。そうするといつの間にか僕から距離を取り、神機の引き金を引くツバキさんの姿が視界に写った。ほんと忌々しいこと。

 

 

「リンドウ!まだか!?」

 

「……よし!行けるぜ姉上!!」

 

【チィッ………!!】

 

 

遠距離から放たれる銃撃に晒される中、早くも分断が終わったらしい。リンドウさんがこっちにダッシュしてくるのが左手のサリーの邪眼を通して見えた。完全に挟まれてるな……どうしたものか。ひとまず視界は回復しつつある。が、この二人を同時に相手するのは依然として厳しい。もう一度分断できるとは思えないし。

 

 

『─────────!!』

 

【………確かに。十分時間は稼いだか。】

 

「なにっ!?」

 

 

斬りかかってくるリンドウさんの刃を蝕刃で受け止め、弾きつつ宙に舞い上がると掌の口からツバキさんへと向けて三発の光弾を吐き出す。流石に見え透いた爆撃だから避けられたが、直後に僕は右手の蝕刃の刀身を空中で展開する。そうして開いた刀身に赤い稲妻が走ると、僕は蝕刃へと意識を向けて形状を変える。

 

 

イメージは槍だ。チャージスピアはまだ口にしたことないが、柄を伸ばして刃と一体化させるイメージ。そうして形質を変化させれば、不格好ながらもそれらしい形へと蝕刃が変わる。そうして緋色の雷光を帯びた槍を僕は地面へと向けて投擲した。

 

 

「!!………リンドウ!伏せろ!!」

 

「了解だ!!あんのやろ………!!」

 

 

危険を感じ取って伏せようとする二人を他所に槍に形を変えた蝕刃が大地に突き刺さる。それとほぼ同時。オラクル細胞の連鎖反応による大爆発が地表を包んだ。インパルスエッジの応用とでも言うべきだろうが……こういう一発限りの実用性皆無な技は嫌いじゃない。僕も男だからね。アラガミには性別とかないんだけど。

 

 

 

そうして大爆発と共に大地が裂け、視界を覆うほどの毒素を含むオラクル細胞が土埃と共に巻き上げられる。あの二人は……運が良ければ死んでくれてるだろうが、この感じだと生きてそうだな。第一死んだのを確認しに行こうにも僕にはもう武器がない。生きてて反撃されたら嫌だし、ここはこちらも大人しく離脱するとしよう。

 

 

 

【………次は必ず殺すけどね。】

 

『──────────??』

 

 

 

それにはもっと力がいる。戦えるようにはなっていたがそれだけだ。まだあの二人を殺すに至るほどの力は僕にはない。もっと力をつけなきゃ。アラガミを、神機使いを口にして能力と技術を伸ばす。そうやって準備が出来たら今度はこっちから出向いてやる。

 

 

ひとまずは先に行かせたディーヴァの元に合流しよう。僕達のこと心配してたらいけないし。幸いディーヴァの通った場所は地面が凍りついている。これを辿ればディーヴァのところに行ける。

 

 

 

 

しっかし……なんであいつら神機使いは僕の事を襲ってきたんだろうね??偵察がうろついてたから来るのは想像してたけど。僕が人間を口にするメリットがあるよう、あっちにも僕を殺すことにメリットがあるとでもいうのか。

 

 

理由はどうあれ今後も神機使いが積極的に追撃しに来ると考えると、やはり頭が痛くなってくる。やっぱ神機使いは滅ぼさなきゃダメだな。サクヤさんとかソーマとか顔知ってるやつらが増えてきたけど、あの辺にも僕達アラガミの平穏のために死んでもらうとしよう。




そろそろイチャコラ書きたいですね(願望)

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