神様にされたら愛され過ぎてヤバい件について。 作:Am.
凍りついた地面を辿ること数分。ディーヴァは神機使い達が簡単に到達できない切り立った岩の上で横になっていた。そして僕が舞い降りるのを見ると、ディーヴァは腰を上げて僕の元へとゆっくり歩いてくる。
【ディーヴァお待たせ。撒くのに時間かかっちゃった。】
「ガルルルル………」
【怪我?へーきへーき。ヤバくなる前に逃げてきたから。】
最もあれから神機使いは一人も食えなかったけどね。そう言ったらディーヴァが慰めるように前足をポフッと僕の頭に乗せてきた。同時に左手の甲の邪眼がビキッた。ステイ!ステイ!!
………で、ディーヴァ。君には確かラーナとかいう死にかけの神機使いを持ってって貰ったはずだけど。まだいる?流石に遅くなっちゃったしもう食べちゃった??
いや、それならそれでいいんだけどさ。ディーヴァにも神機使いの味は知って貰いたいし。ただあいつらの腕輪って確か発信機だからさ。もしまだいるなら────
「………ぁ……………ぅぅ………………」
………って言いかけて、ディーヴァが血の海に横たわる神機使いに目配せした。うわマジか。まだ生きてんのか。生命力強いとそれはそれで大変そうだね……お腹に穴空けたのに。
でもよく見ると傷口が凍りつくようにして血が止められていた。恐らくディーヴァが口で咥えた時に凍らせたのだろう。そう考えると中々にこの子もえぐい事するなって……位置的に肺が凍ってるじゃん。息するだけで苦痛で地獄だろうに。
「ガオ。」
【……僕が帰って来るの待っててくれたんだ?ありがとね??】
「グルルルル………♡♡」
甘えるように顔を擦り付けて来るディーヴァの頭を右手で撫でる反面、未だに満身創痍ながらも息のあるラーナに目をやる。ふむ……そうか。もう少ししたら死ぬと思うけど、一応神機使いを生け捕りに出来たわけか。
………でかしたねディーヴァ。この神機使いを生かしておいてくれてありがとう。これは想定外の大きな収穫だ。
「ガウ………??」
【いや……ちょっと待ってね。】
『──────??』
ディーヴァとサリーが二人して僕に「食べないの?」と尋ねてくる。いやさ………実はね僕。ちょっと前に考えたことがあるんだよ。
前に言ったと思うんだけどさ。サリーの
けどさ。同時にふと思ったんだよ。神機使いって要はアラガミの細胞を身体に入れて神機っていうアラガミを使う人間なんでしょ?つまるところアラガミ混じりの人間だ。それもあの腕輪がないと完全にアラガミになってしまうくらい不安定な状態の。
これってさ。一応サリーの身体としての条件は満たしてんじゃないかなって。
人型のアラガミとアラガミ混じりの人間。その本質は違えども
『…………………………!!』
【ま……あくまで思い付きだけどさ。サリーが嫌ならやめるけど。】
『────!!──────!!』
それを聞いてサリーは即座に僕の提案を受け入れた。そうだよね……一番元の身体に戻りたいのはサリーだもんね。今回のあの化け物姉弟との戦いも僕がヘマしたらサリーまで危なかったし。状況的に考えてもこれから神機使いにちょっかいかけられることを考えると僕の身体に一体化してるのは危険だ。
とはいえこれがただの僕の思い付きである以上、確実に成功する確証なんてものはない。もしダメそうだったら直ぐにサリーを僕の身体に戻すから。こんな妥協案みたいなものでサリーを元に戻すのは少し心苦しいが……事態が変わったからね。ラーナが生きてるうちにさっさと終わらせてしまおう。
【んじゃ……失礼するよ。神機使い。】
「………………??……………あ"……っ………!!」
【……こうでいいのかな?】
まずラーナの右手の腕輪の接続部に指を入れ、中に僕のオラクル細胞を流すことで偏食因子の働きを阻害する。そうすると……おっ。腕輪のしてある部分から黒い血管みたいなものが浮き上がってる。それが脈打つと同時、ラーナは苦しそうな悲鳴を上げた。
「あ"ぅ……う"ぅ"………!!う"ー…………!!」
そうしてそのまま腕輪を介して僕のオラクル細胞を体内に侵入させることで無理やりアラガミ化を促進させる。その影響か死にかけの重傷を負ってたにも関わらずラーナの身体には異常な怪力が入り、腕輪周りの皮膚が赤黒く変色して硬化し始める。
瞳もだんだんと赤く濁り、その変質は僕が腕輪から指を抜いてももう止まらない。人間離れした唸り声と共に歯を剥き出しにし、今にも襲いかかってきそうなラーナの胴体に僕は蝕刃を突き立て地面に縫い止める。手元が狂っちゃうといけないからね。なに……多少の傷は変化の過程で塞がるさ。
あとはこの変質する過程にサリーを混ぜることで、アラガミへの変化をサリーの意思の元に行わせる。果たして上手く行くかどうかは分からないけど……サリー。頑張ってね?
『────────。』
【もしヤバそうだったら言ってね。直ぐに引き上げるから。】
そう言って僕は左手の人差し指と中指でラーナの頭骨を貫く。そして彼女の脳に指先が触れるのを確認すると、今度は僕の左手の甲が脈打った。手の甲の琥珀色の邪眼が僕の指を伝い、指先から剥がれ落ちるようにしてラーナの脳の中へと侵入する。
よし……入ったね。あとはサリーがどれくらい上手くできるかだけど。けど僕がラーナの額から指を抜くと同時。彼女のアラガミ化が急激に促進された。それを確認して僕も突き刺した蝕刃を引き抜く。
皮膚は血の気が失せるようにして白化すると同時、骨が軋むような音を立てて身体が巨大化する。衣類は内側から変質する身体に無理やり引き裂かれ、露になった裸体もみるみるうちに異形のそれへと変わり果てていく。
指先は裂けるようにして伸びて羽のような形に変わり、上半頭部は膨れ上がるようにして肥大化。人の顔の部分を覆うようにして後ろに伸びるとその先端が脳から噴き出すガスによって膨らみ始める。
でもそうやって急激な変異を遂げているものの、やはりアラガミ化にはかなりの苦痛が伴うのだろう。のたうち回るその身体を見るとなんだか心配になってくる。やっぱ神機使いにサリーを入れたのは不味かったかなって。
「あ"ぅ……ぐうぅ………!!」
【サリー……大丈夫?意識ある??】
『──────。』
尋ねてみるとサリーから「私は大丈夫」って返事が帰ってきた。んじゃこの苦しんでるのはまだラーナの意識が残ってるってことか。さっさと消えてくれるといいんだけど………
それから五分くらいが経過したか。脚は皮膚と皮膚が融合するようにしてラッパのような尾に変化し、膨れ上がった上頭部に巨大な血走った単眼が開いた。さっきまでのたうち回っていたのも大人しくなった辺りラーナの意識は完全に消えたらしい。
そうしてアラガミ化が終わると、その元人間のアラガミは僕の腕の中へと飛び込んできた。僕はそれを受け止めるとゴムのような触感の頭部を傷つけないようにそっと撫でる。
……やっとだ。短い間だったにも関わらず随分長く感じた。元通り……とまでは行かなくてもちゃんとした肉体を彼女に与えられた。彼女をアラガミとして甦らせることができた。
【……………おかえり。サリー。】
そう囁き、物欲しそうに僕を見つめる
大丈夫……完全に元通りになるまではサリーは僕が守るから。二度と君を消したりなんかしないって。そう誓い、彼女を僕の頭の上に乗せたんだよ。
………だからこそ。あまりに元通りで懐かしいその姿だからこそ、次に起きた出来事は僕の思考をどこぞかへと置き去りにした。
【た………だ。い……ま……………??】
頭の上から初めて耳にする掠れたような少女の声が返ってきた。発音を模索するかのようなその声は神が決して発することの無い産声。
それが
……それほどまでに現在の状況を受け入れられてなかったんだよ。
────まさかサリーが『喋る』なんて。
ヒロイン復活。次回からイチャイチャするぞ(遠い目)