神様にされたら愛され過ぎてヤバい件について。   作:Am.

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お久しぶりとかそういう次元じゃないですが更新再開します。


06.聖誕(エデン)

 アラガミの言語能力の会得。それ自体に前例がないわけではない。まず僕という存在そのものが人の人体構造を模倣し、人間との会話ができるわけだし。

 

 

 それに例外中の例外とはいえこれから現れるであろう『特異点』は────人型のアラガミ故、言語を口にすれば学習もする。更には歌までも覚えた。アラガミが人の声を真似る事そのものは別段不可能というものでは無い。

 

 

 

 しかし既存のアラガミが言語能力を獲得する。その実例は見たこともなければ聞いたことも無く、ましてや初見で会話を成立させてくるなんて。まるで始めから人の言葉を知っていたかのようだ。

 

 

 腰を降ろす僕の膝の上で眠るザイゴートの喉の辺りを思わず撫で、その構造を確かめようとする。けどそうするとサリーが閉じていた邪眼をゆっくりと開き、羽のような両手で僕の腕を掴んできた。

 

 

【………くすぐったい……】

 

【あ……ごめんね?】

 

【あたまか……からだ……なでて………】

 

 

 そう言ってサリーは細い人体部分の胸元を撫でるように催促してくる。たどたどしい口調だが明確に言葉の意味を理解し、会話を行っている。元人間の僕は言葉を元々知っていたからこそ声帯だけ模倣することで人の言葉を話せたが、サリーは違うはず。仮に声帯を模倣しても言葉を知らなければ呻くくらいしかできないのに。

 

 

 

………まだ肉体に人間(ラーナ)の意識が残ってるのか?それともサリーの自我と混ざったか??今この言葉を話してるのは本当にサリーなのか??

 

 

 この不測の事態に対して疑念が尽きない。が、僕がサリーに頼まれるままに人間の乳房に当たる部分を指で撫でていた時だ。サリーが身体を小さく跳ね上がらせながら、ぽつりと呟いた。

 

 

【ん……すきなひとには……ここさわられるとうれしいって………ほんとだね………んっ………】

 

【………??それは……………】

 

【このからだのあたまに……そう書いてあるの。揉んだり吸われたりすると………きもちいいって。】

 

 

 

 息を荒らげながら羽で僕の腕をサリーが抱きしめる。頭の中に書いてある……??記憶のことだろうか。まさかサリーの身体にラーナの記憶が残っているのか?サリーはそれを辿ることで言葉を────

 

 

………いや。それなら僕もそうだね。僕もあのジャックとかいう神機使いの脳を喰った時、その記憶が頭に流れ込んできた。その結果この右手の蝕刃を神機のように扱えるようになり、あの男の今までの経験をまるで自分の記憶のように取り込めた。サリーがやったのはそれと同じだ。そう考えればなんら不思議なことは無い。

 

 

 けどそうなるとサリーはなぜ僕と同じことが出来るって話になるが……こっちは心当たりがある。ラーナをサリーの身体にするべくアラガミ化させる際、腕輪の機能を阻害すべく僕の細胞を入れたからだ。その際に僕の細胞が持つ性質────元人間由来の優れた学習能力がサリーにも与えられたのだろう。

 

 

 

 

 

 つまり………僕の細胞をアラガミに移植し、人間を喰わせればアラガミに人間の言語とそれに類するほどの知能を与えられると。これがサリーが言語能力を得た仕掛けか。それなら今こうして話しているサリーは僕の知っているサリーと変わらないわけで………

 

 

 

【………!?あ……どうしたの………??】

 

【ううん……本当に帰ってきてくれたんだね。サリー。】

 

 

 

 サリーのことを優しく抱きしめた。よかった……もしかしたらサリーが消えちゃったのかと思った。身体がアラガミになっただけで残ってたのがあの人間の意識と魂だったらどうしようって……人間をサリーの身体に使ったのは間違ってたんじゃないかって。

 

 

 そんなことはなかった。ちゃんとサリーは元通りに……いや、僕と同質の存在に進化させて復活させられたんだって。戻ってきてくれてありがとう。ありがとうねサリー。もう絶対離さないし離れたりしないから。ずっと一緒だからね。

 

 

 

 あぁ……好きな人と言葉を交わせるのがこんなに嬉しいことだなんて。今となっては僕より小柄なサリーを抱きしめ、額にそっと異形化した唇を当てる。こんな身体じゃ温もりもよく分からないけど……それでも嬉しいよ。ほんと大好きだよサリー。

 

 

 

【……………!!わたしも………】

 

 

【必ず元の姿に戻してあげるから……そしたら一緒に楽園を作ろうね。】

 

 

 

 二度とサリーが傷ついてあんな目に遭わないように。僕達アラガミの手で人のいない世界を作り出そう。サリーのおかげで僕はその手段に気付いたんだ。僕ら神々に更なる進化を施すための方法を。

 

 

 けど今はサリーとの二人きりの時間が大事だ。帰ってこれてよかったねサリー……僕の身体にずっと居たとはいえ受肉したばかりでおなか空いてるでしょ。なんか食べたいものある?神機使いでもアラガミでも。あったらなんか捕まえてくるけど。

 

 

【………んーと。たべたいのある……】

 

【なになに。教えて?】

 

【そこで寝てるどろぼうねこ。】

 

 

 

 サリーが翼で指さしたのはやる事やって横になってたディーヴァ。まさかの飛び火にディーヴァがびっくりして目を開ける。いやいや待ってサリー。ディーヴァめっちゃサリーが元に戻るまで助けてくれたんだから。「え?私?」って困惑した目でこっち見てるし……やめてあげて?ね?

 

 

【いままでありがと。そしてさよなら。】

 

「ア"ア"ァ"────ッ!!?」

 

【こら!サリー!!メッ!!】

 

 

 僕の膝から離れるなりサリーがディーヴァの頭部に喰い付き、ディーヴァからなんとも悲痛な悲鳴が上がる。慌ててサリーを引き剥がそうとはするけど、ザイゴートとは思えないすごい力で喰いついて頑なに離れようとしない。

 

 

 

 

 そうしてディーヴァとサリーと僕の奮闘はしばらく続き。結果としてディーヴァの冠みたいな部分がちょっと欠けてしまってた。直ぐに治るとは思うけど「私悪いことしてないのに」ってめっちゃこっち見てる。ごめんね。ほんとにごめんね。

 

 

 しかもサリーはディーヴァの冠部分を咀嚼した後に飲み込むと────

 

 

 

【……………まっっっず。】

 

 

 

 そう一言。だがそれがド直球にディーヴァの逆鱗に触れた。胴体に抱きつく形で飛びかかろうとするディーヴァを必死に抑えるが、馬力が圧倒的に強いディーヴァには振り回されるばかりでさ。

 

 そんな飛びかかるディーヴァを相手にサリーはひらひらと舞って躱しながらも毒ガスを浴びせてとヒットアンドアウェイを繰り返している。氷柱使わないのはディーヴァの優しさなんだろう。

 

 

【こらサリー!その辺にしないと怒るよ!】

 

【……だって。この女じゃま………】

 

【その子別に僕になにもしないから!!大丈夫だからこっちおいで!!】

 

 

 

 

 

 そうやってしばらく不毛な戦いが続いたあと。サリーをなんとか鎮めて僕の腕の中に収めることに成功した。けどそうすると僕はある変化に気付く。

 

 

【サリー……なんかひんやりしたね?】

 

【げっ………】

 

 

 見ると頭部の卵に似た部分の色合いが青白く変化し、漏れ出すガスが緑色に変色していた。氷属性のディーヴァを口にしたせいだろうか。サリーはいつの間にか氷の堕天種へと進化を遂げていた。ディーヴァの性質が現れてすっっっごい嫌そうだけど抱っこしてるとひんやりして気持ちいい。

 

 

【………ほんと?わたしきもちいい……?】

 

【うん。こうやってぎゅーってしてるとすごい気持ちいい。】

 

【〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!??】

 

 

 そうやってサリーの後頭部に顔を押し付けると、サリーの頭から逆上せて湯気が立つようにガスが漏れた。恥ずかしがってるのだろうか、顔を羽で隠すように覆っている。かわいいな。包容力に溢れる前のサリーもかわいいけど今のちっちゃいサリーもかわいいね。

 

 

 でも頭を撫でようとしたら腕からすっぽ抜けるようにしてサリーに逃げられてしまった。嫌だったっていうよりは恥ずかしかったっぽいけど────

 

 

【………ひんやりしてて気持ちいいって。】

 

 

 ちょっと待って。なんでまたディーヴァの方飛んでくの。ディーヴァもサリーのことを恨めしげに睨んでるが、それでも横になるとすぐ目を閉じてしまうのは大型ゆえの余裕か、それとも危機感がないのか。嫌な予感しかしないんだけど。

 

 

【もっとよこせ。】

 

「ア"ア"ァ"────ッ!!?」

 

 

 

 さっき見たままの奮闘がまた始まった。相変わらずすごい力で喰いつくサリーを引き剥がすのには相当苦戦し、結果としてディーヴァの頭は結合崩壊してしまった。

 

 

 そしてついでになにやらサリーの全身が白くなった。ディーヴァを喰い過ぎた結果だろうか。進化の速度まで僕の性能をそのまま継いでるのか、早めに餌になりそうなアラガミを狩ってこないと変な進化をしそうで不安である。明日は餌になるアラガミを狩りに行こうね。




デカい犬が優しいようにディーヴァは温厚な子。
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