神様にされたら愛され過ぎてヤバい件について。 作:Am.
サリーが完全に身体と力を取り戻した今、僕はついに神機使いの殲滅に向けて本格的に動くことにした。サリーを蘇らせることは出来たものの依然として神機使いが脅威であるのは変わりなく、特に極東支部の神機使い。あの雨宮姉弟は言うまでもないが、下手に時間が経てば今は経験の浅いソーマやサクヤさんも直に同等レベルの優秀な神機使いになる。
つまり当初の目的を達成した今、神機使いの本拠地であるフェンリル────特に極東支部の連中はさっさと潰したい。あの魔境は放置しとくとガチで手がつけられなくなるから。そのためには二人にも協力してもらいたいんだけど………
【私も人間は食べたいから賛成。……だけどあなたの事も食べたい。もっといっぱい可愛がりたい……】
「ヴォゥ………」
【ふむ……ディーヴァは嫌そうだね。なんか他にしたい事でもあるの?】
サリーに抱き上げられて甘噛みされてる中、ディーヴァは何やら物申したげに唸り声を上げていた。けどその姿を見てサリーは小さく笑うと、僕を一層強く抱きしめた。柔らかいおっぱいに顔が押し付けられるけど完全に当ててんのよって感じで。当の本人は僕に自分を食べて欲しくてやってるんだけど……そこ頂くとCEROが一つ上がっちゃうからね?また今度ね??
「ヴゥウ────────ッ!!!」
【えっ何!?ディーヴァどうした!?】
【イチャイチャすんなって?嫉妬は見苦しい……】
普段じゃ見ないくらい滅茶苦茶にキレ散らかしながら前脚バンバンしてるからびっくりしちゃった。あっ……そういうこと?ごめんね??確かに人前でこういうことするのは良くないよサリー。人前っていうかアラガミの前でだけど。僕も見られてるって考えると恥ずかしいし今度また二人だけの時にね?
【……分かった。】
【よしよし。いい子だね。んじゃ離して────】
【あの猫がいなくなれば二人きり。消してくるから待ってて。】
待て待て待て頼むからちょっと待って思考回路世紀末やめてほんと。ディーヴァも徹底抗戦の構えやめてマジで。前から分かっていたけどこの二人相性悪いな!?相性っていうか九割九分サリーが悪いけど!!喋れるようになってから毒増したなこの子はほんと!!
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【はぁ……はぁ……死ぬかと思った………】
【大丈夫……?】
「グゥルル………」
結合崩壊でボロボロになった二人に介抱されつつ、毒と冷気塗れの身体をどうにか休める。正妻戦争とかいうガチの殺し合いの結果がこれだよ。仲裁に入った僕が真っ先に死にかけたわ。
全くサリーは……そんな心配しなくても僕はサリー以外には興味ないから。そんなディーヴァの事を目の敵にしないの。神機使いと戦うなら内ゲバしてる余裕なんてないんだから。
【………ごめんなさい。】
「クゥーン……」
【ディーヴァもごめんね。ずっと僕の面倒見てくれてたのに。】
悲しそうな声を上げてたディーヴァの顔を抱きしめてモフモフする。僕がサリーにばっか構ってるからやきもち妬いてるだけで、この子は僕にそう好意は向けてないはず。……そう思いたい。前脚で僕のことぎゅってしてるけど。
そもそもディーヴァってなんで僕について来てくれるのか。サリーがこうして戻った今、てっきりサリーに僕のことを任せてどっか行くと思ってたのに。まだこうしてついて来てくれるのは本当にありがたい。神機使いとやり合うならディーヴァは頼りになる。一緒に来てくれてありがとうね。
「ヴー………」
【……まだ不機嫌だね。どうしたんだろ。】
【私達。アラガミの言葉。わからない。喋って???】
こらサリー!!煽らないの!!ディーヴァまた怒って……ていうか鳴いてるから!!表情変わらないけど凄い甲高い声を出して僕に顔を押し付けてきてる。ちょ、ぐいぐいしないで!冷気漏れてるから!!凍る!!凍って砕ける!!
けどそうか……確かにディーヴァだけ明確に意思疎通が取れないのも不便だね。アラガミに言語能力を与える方法はサリーで確立されたし、ディーヴァにもそれを施すべきかも。そう考えていたらディーヴァが思い切り顔を上げた。
【……もしかしてディーヴァ、僕とサリーが普通に話してるのにやきもち妬いてた??】
「ヴォウ!!」
【あー……そうだったか。なるほどね。】
ディーヴァも僕らみたいに喋れるようになりたかったと。うーん……実はそれは何回か考えたんだけどね。一応そうしなかった理由はあるんだよ。
というのも、サリーが言語能力を得たのは完全に偶然。神機使いをアラガミ化させてサリーの器にしたら、そのついでに言語能力を得たってだけで。その条件を僕は『僕の細胞を移植して学習能力が飛躍的に向上したアラガミに人間を与えその性質を学ばせる』って解釈したけど。早い話がまずこの推察に確証がないこと。
なんせ僕の細胞を移植したアラガミはサリーしかいないし、そう簡単に餌用の神機使いを調達できるものでも無い。野生のアラガミで試すには適当なやつに僕の細胞を植え付け、その上で神機使いを与える必要があるんだけど……その実験も難しいんだよね。
そしてこればっかりは杞憂かもだけど。そもそも僕の細胞を移植したアラガミが無事って保証がないんだよね。サリーは元々僕の身体の一部になってたから平気なだけで、他のアラガミが異なるアラガミの細胞を移植された際にどんな反応を引き起こすか。
そうでなくとも僕の細胞は幾度も
【そういうわけだから。君に言葉を与えるのにはそれなりに時間がかかるし、骨格が比較的人型に近いサリーと違って君が話せるかは────】
「ヴゥウ………」
【……出来なくても文句言わない?なら試してみるけど……】
………正直この子を実験の材料にするのは気が引けるんだけどな。サリーも小さく【失敗しろ。そして死ね】って連呼してるし。ヤバいねお冠だね。額の邪眼がビキビキしてる。後でちゃんと相手してあげるから抑えて抑えて。
でも実際僕の細胞の影響が未知数で危険な反面、僕の細胞を与えたアラガミがサリーのようになるのならそれは神機使いと戦う上での戦力の増強にも使える。あいつらの手頃な脅威を気軽に増やせるならそれで十分だし、サリーのように意思疎通が出来るようになればアラガミの組織的な行動も視野に入ってくる。
やる価値はある……けど、ディーヴァに僕の細胞を施すのは野生のアラガミで試してからだ。それから問題がないようなら細胞の移植だけは先に済ませてしまおう。そうすればディーヴァも僕やサリーみたいに捕喰したものの性質を選択して自身に反映できるアラガミの一歩上の存在になれる。
そうしたら人間を口にするだけで人間の機能や知能を模倣できるはずだから。それでこの子がどんな形に進化するかは僕にも分からないけど……やるだけやってみよう。
【余計なこと言った……私のバカ………】
【サリーも行くよ。この実験終わったら僕のこと好きにしていいから。】
【やだ……私以外と話しちゃやだ……】
項垂れているサリーを連れて行こうと彼女の手を引く。ほんと独占欲の強い子なんだから……妖艶って言葉が服着て歩いてるような風貌なのにその口ぶりや態度はあまりに幼げで、遂にサリーは耐え切れなくなって僕を抱きしめてくる。ていうか抱き上げてくる。
【本当に何してもいい……?何でもしてくれる………??】
【うん。ディーヴァと仲良くできたらね。】
【………嘘ついたら怒るから。】
そう言ってサリーは口を開くと、僕の唇を奪って触手みたいに長い舌を絡める。そして短く互いに血を与え合うと、互いの感情や記憶を共有して僕がちゃんとサリーを愛してるか。そして自分がなにをしようとしてるかを単純に伝えてくる。そのせいで僕がしばらく沈黙する事になったんだけどサリーはそんな僕を心配そうな、それは無垢な目で見てくる。
【サリー……どこでこんなこと覚えたの。】
【この身体の元にした人間の記憶……】
【ほんっと……人間って
それには僕も身体を流石に作り替えないと……そのためには互いにもっと人間を口にする必要があるな。僕の細胞の移植実験の件といい、どうにかして人間を調達できないものか。いや……今考えても仕方ないか。面前の目標から順番に片付け、その上で考えよう。
こうして僕達は『神を人に近付けるための実験』を始めた。人を滅ぼすために人の性質を模倣する。その本質は人間が僕らアラガミに対抗するためにオラクル細胞を取り込んだのと何一つ変わらない。故にその有用性を僕は心の中で確信していた。この方法は人が神に抗う力を得たように、神が人を滅ぼすための一手になるのだと。
今思えばその手段はあまりに人間寄りで、その中でも一際狂った人間が取る手法だった。なんせ『人を滅ぼす』って目的のために僕達アラガミという種族を『強制的に進化させる』んだから。その結果が後に【人類史上最大最悪の大災害】を引き起こしたのはある意味当然の結果だったのかもしれない。
???「私にいい考えがある!」