神様にされたら愛され過ぎてヤバい件について。   作:Am.

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生物実験はいつの時代でも一番手っ取り早いと古事記にも書いてある。捨ててけ倫理観。


09.変異(ケガレ)

 まず第一の実験として、僕は出くわすアラガミに手当り次第に細胞を投与した。方法は至って簡単で蝕刃で、アラガミを斬る際に刃の先から僕の細胞を流出させるだけ。そうすれば切り口からオラクル細胞を僕の細胞が侵蝕し、早くも僕の性質が反映される。

 

 

………そのはずだった。

 

 

「グギ……ギィ……グゲ………」

 

【なんかダメそうじゃない……?】

 

【うん。いきなりディーヴァで試さなくてほんと良かったね。】

 

 

 最初に僕の細胞を投与したのはオウガテイル。その結果は全身が異様な形に変形した挙句に活動を停止した。死因は変異による肉体の強制的な変形と僕の細胞に全身を蝕まれた際の拒絶反応。しっかり全身の細胞が僕の細胞に似たものに変質はしていたものの、こうなってしまっては意味が無い。

 

 

………これで死ななくなれば実験は成功と言えそうだけど、問題は成功するのか。その場合問題なく適合できる条件は何なのかと。そこを具体的に突き止めるまでは危なくてディーヴァに投与なんて出来ない。

 

【だからディーヴァ。そんな怯えなくても大丈夫だよ。】

 

「…………………………ガゥ。」

 

 言い出しっぺのディーヴァは異形の何かに変異したオウガテイルを見て縮こまって震えていた。そんな今すぐ君に僕の細胞を移植しようってわけじゃないんだから。

 

 

 一応成功の前例としてはサリーがいるが、この子は僕の身体の中にいた期間が長かったし僕の細胞と神機使いの身体を素体に自分の肉体を作ったから。同じ手法を他のアラガミに取ることはできない。

 

 反面、そのおかげで一応僕の細胞が他のアラガミにも適合してその学習能力を跳ね上げるって事実も確認できてるんだ。絶対成功しないって事はない。

 

 あとはその具体的な条件を見つけるだけ。道のりは長いが不可能なことではない。

 

 

 とりあえず動かなくなったオウガテイルには蝕刃を振り下ろし、捕喰する形で霧散させる。口にした感じオウガテイルとしての性質はきっちり残っており、今更ではあるが僕はオウガテイルの能力を使えるようになった。

 

 というのも蝕刃からオウガテイルの尻尾の棘を模したものを生やし、振り抜くことで発射できるようになったのだ。小型アラガミのそれと侮りがちだが追撃や搦手にも使えそうな地味に便利な能力である。

 

 

 そしてこの実験のせいで、僕の細胞がある種のアラガミ殺しの猛毒として機能することも発見されてしまった。これのおかげでアラガミを狩るのが格段に楽になったのはまた別の話として。僕は引き続き出くわしたアラガミに細胞を移植し、その経過を見守る。

 

 

 次に出くわしたのはコクーンメイデン。結果は死亡。死ぬまでの時間はオウガテイルより短かった気がする。投与対象の耐久値も関係してるのだろうか。

 

 

 次はザイゴート。なんと適合した。変異の過程で全身が白い肉体に変わり、額の眼が真っ赤になったもののそれ以上の変化はなし。更に前に死なせたコクーンメイデンを捕喰させたところ、その砲撃能力を継承。目からオラクル弾を撃ち出す形で能力の使用を確認した。

 

 

 結果としてザイゴートの探知能力とコクーンメイデンの砲撃能力、更に卵殻がコクーンメイデンの甲殻で覆われたことで硬化。全身固い上にブンブン飛び回る狙撃型の小型アラガミが完成した。

 

 神機使いからすれば害悪極まりなさそうだから野に放したが、やはり僕の細胞が適合するアラガミはいる。おまけにそうして学習能力が向上したアラガミは神機使いにとっても相当厄介なものになる。統制できないまでもこういったアラガミを増やせば、それだけでも神機使いは疲弊するだろう。

 

 

 それに成功例をこんなに早く発見できたのは予期せぬ収穫だ。ディーヴァに細胞を移植出来るようになるのも意外と時間の問題かもしれない。引き続き実験を続けよう。次の対象はディーヴァと同じ中型種や大型種のアラガミだ。

 

 

 まずはグボロ・グボロ。適合に失敗。見るも無惨な姿になって死んだために捕喰して処分した。今さら水弾を放つ能力を得たもののこちらを使うことはそう無いだろう。

 

 

 次にボルグ・カムラン。適合失敗。頑丈なアラガミの代名詞みたいなこいつも一瞬で活動停止した辺り僕の細胞の殺傷力は相当えげつないものと見た。あと口にしたことでオウガテイルの棘の代替品としてこいつの棘を習得。更に槍を思わせるような尾を模倣し、僕の背部に追加した。

 

 

 

 次。クアドリガ。こいつも失敗。コアを捕喰したらミサイル撃てるようになりました。ロマン砲。ただミサイルポッドは僕の身体のどの部分に増設したものか。後で考えるとしよう。

 

 

 次はコンゴウ。まさかの成功。白い身体に黒い仮面を持つ個体に変異し、もぎ取ったクアドリガの食べ残しを与えたところ背中からミサイルポッドが生えた。

 

 寄りにもよってそれでサリーに襲いかかったから処分したけど今思えば勿体ないことをした。神機使いにけしかけたらどれほどの被害を齎したやら。

 

 

 大型や中型は無理なのかなって思ったけど、二体目の成功個体が出たことで今までの結果をさらに振り返ってみる。うーん……こうして見ると本当に適合の条件が分からないな。確率って可能性は無きにしも非ずって感じだけどあまり考えたくない。もしそうだとしたら成功率が低すぎる。こんなギャンブルにディーヴァを巻き込めない。

 

 

【大丈夫……その猫なら行ける。できるできる。】

 

「ヴッ…………!!」

 

【無責任なこと言わないの。】

 

 

 もう少し。もう何体か成功個体が出るまで実験を繰り返し、その成功個体の共通点を探し出す。そうすれば僕の細胞が身体に馴染むための条件が見つかるかもしれない。

 

 

 というわけで実験再開。今度もまたオウガテイル。この前ダメだったが、成功条件が種族という線もあるため一応細胞を移植。結果、なんと一匹目と違って適合に成功した。

 

 ふむ……同じオウガテイルでも成功するやつとしないやつがいる。そうなるとやはり確率って線が高いか……?うーん……もう少し見ない事にはなんとも言えないな。

 

 

 

 次はサリエル。出くわすなりサリーの邪眼がビキったけどなんとか宥めて僕の細胞を投与。結果は適合。サリーと違って姿はそのままだったけど配色が似たようなものに変異した。

 

 しかし適当に進化を果たして神機使いに被害を与えてくれればと放すと同時。そのサリエルは不思議そうに変異した自分の身体を見た後、小さな口で僕を甘噛みしてきた。

 

 

 

 サリーがブチ切れたのは言うまでもないと思う。

 

 

【……ッ、ブッ殺してやる…………!!!】

 

「ヴォオ………」

 

 

 ディーヴァが「あーあ」と言った感じに見ているが、サリーは額の邪眼に手を翳すと膨大なエネルギーを収束。同時に腰の羽を拡げ、その先の八つの邪眼から何やら赤い粒子のようなものを噴出する。何をやらかすつもりなのかは大体想像ついたから、僕は急いで変異したサリエルから離れた。せっかくの適合個体だったのに。

 

 

 直後。サリーの額からウロヴォロスのそれすら上回る出力の巨大な赤黒いレーザーが放たれ、不思議そうにしているサリエルの上半身を跡形なく吹き飛ばした。……威力がエグすぎて身体が固まった。あんなの受けたら神機使い(にんげん)じゃ骨も残らないぞ。今のサリーってあんな強いんだ……??今のウロヴォロスの能力だよね……??

 

 

【フー……!!フー………!!】

 

【さ、サリー。ありがと?助かったよ。……あ"っ。】

 

 

 まだ怒りの収まらない様子のサリーは僕へと向かってくると、僕の噛まれた箇所に口を当てて思いっきり吸ってきた。しばらくそうやって抱きついてくるから背中を叩いて落ち着かせてやると、ようやく額の邪眼の光が収まる。……この子にはほんと逆らわないようにしようね。

 

 けど案の定というか……今の実験で少しだけ分かったかもしれない。僕の細胞が適合するアラガミの条件。まだ確信は得られないからもう少し試してみるが、サリエルが適合したって言うのは結構なヒントになった。

 

 

 次はシユウ師匠。適合して堕天種の微妙に色違いっぽい姿になった。さっきから適合したアラガミを見るに、どれも何故か白を基調とした体色に黒い装飾。そして瞳は赤色と決まった配色に変色している。これは今の僕の姿がその色合いに近いせいだろうか。ディーヴァも僕の細胞に適合したらこういう姿になるのかな。

 

 

 

………そして今のでほとんど確信した。僕の細胞が適合するアラガミの条件。それは恐らく僕がかつて口にし、その能力を既に模倣している種類のアラガミだ。具体的には対象のアラガミを一個体の体積分、或いはそのコアを捕喰したことのあるアラガミなら僕の細胞は適合するらしい。

 

 

 一体目のオウガテイルが適合に失敗したのに二体目が成功したのは、僕が一体目の亡骸を口にして能力を模倣した後だったからだ。そう考えれば少なくとも今まで適合した個体は辻褄が合う。

 

 

【………なるほど。言われてみればありえそう……】

 

【けどそうなると困ったね。】

 

「グゥ?」

 

 

 つまりだ。この条件が仮に当たってた場合、僕はプリティヴィ・マータをその一個体分に当たる量捕喰しなくてはならない。正確にはその全能力を僕が模倣できるまで。プリティヴィ・マータっていつか出くわしたあの群れ以外見てないし、アラガミの中では希少度の高い個体だ。

 

 

 そうなると僕がディーヴァを死なない程度に捕喰し、再生させてまた捕喰してと能力を学習するまで繰り返す必要がある。サリーとは長い時間一緒に過ごしながら何度も互いを口にし合ってたから能力も模倣できていたものの、いざやろうとするとどうしても結構な時間がかかるんだよな。

 

 しかも僕に捕喰される以上はディーヴァの戦闘能力も結合崩壊で幾らか落ちる。そんな状態を神機使いの襲撃がありえる中で長期間晒すのはリスクが大きい。

 

 

 

………それに何より、だ。

 

 

【………は?こいつを食べるの……??私がいるのに………??】

 

【サリー。ステイ。ステイ?落ち着いて??】

 

 

 サリーが許すわけないんだよな。サリーの中では相手を捕喰するって深めのキスくらいの認識だから。それを毎日毎日自分以外の相手に長い期間するなんて。僕がサリーに大事にされてなかったらさっきのサリエルの二の舞になってるレベルのブチ切れ案件なんだよね。

 

 現にかなり鬼気迫る様子で詰め寄られてる。彼女の前で他の女にヤらせてって言ってるようなもんだから当たり前か。

 

 

 でもサリー。あくまで今回は僕がディーヴァを頂くだけで、最後に細胞を移植するとはいえディーヴァが僕のこと食べるわけじゃないから。ほら、愛っていうのは互いに与え合うから成立するのであって一方的に貪ったり与えたりするのは違うと思うんだ。ディーヴァも好きでもない相手に自分の身体を食べられるのは嫌だと思うし、僕とディーヴァの間に愛情とかそういうのは無いから。ね??

 

 

【心配しなくても僕の身体はサリーだけのものだから。】

 

【………私だけのもの。】

 

【そう。ディーヴァにも僕の身体を与えるつもりは無いから。だから────】

 

 

 そう言いかけた時点で、サリーが何やら恍惚とした笑みを浮かべているのに気付いた。何やら頬に手を当ててブツブツと呟いてるし、可視化できるほどになにか禍々しいハートが出ている。彼女の独占欲を変な風に刺激してしまったらしい。

 

 

【私だけ……あなたの身体を好きにできるのは私だけ……ウフフッ………!!】

 

【えーと……サリー?その、ディーヴァ食べるの許してくれる??】

 

【なんていい響き……好きにしていいだなんて。なにしよう……どうやって愛でよう………】

 

 

 そこまで言ってないからね?と言いかけたけど好き勝手されるのは僕も本意だから黙っておくことにした。前はあんな変態っぽくは無かったはずなんだけどなぁこの子。猛毒の鱗粉出てるよほら引っ込めて。……殺意剥き出しになるよりはマシだし、こんな感じでいてくれるうちにさっさと済ませちゃおうか。

 

 なにか可哀想なものを見るような目でサリーを見つめるディーヴァの元へと向かい、僕は横になる彼女の脇腹へと寄り掛かる。そしてどこを食べたもんかと考えていると、ディーヴァは僕の前へと尻尾をフリフリと出してくる。

 

 

………ここを食べろということなのだろうか。

 

 

【……それじゃ。いただきます────】

 

「ギャンッ!!?」

 

 

────噛み付いたら初めて聞くような悲鳴と共に僕の頭上にディーヴァの前脚が振り下ろされた。反射だったんだろうけど僕の顔面は見事地面に叩きつけられることになった。痛かったんだねごめんね。そういやしっぽ弱いもんなこの子。

 

 

 ちなみに後から分かったんだけど、お互いにお互いを捕喰し合うのはアラガミの中でも別に愛情表現ではなく普通に加害行為らしい。そもそもアラガミが愛情表現するかどうかはさておき、僕とサリーの行為ってアラガミからしても特殊性癖に入るのだろうか。




サリー絡みの描写は好きな人に振る舞う料理に自分の血とか入れるアレに近いものを想像しながら書いてます。
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