神様にされたら愛され過ぎてヤバい件について。   作:Am.

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なぁにこれぇ(困惑)


02.天使(ザイゴート)

ようやくありつけた餌であるザイゴートの頭に食らいつく。が、それと同時に気持ち悪い感覚が脳へと流れ込んできた。

 

それだけでは無い。卵殻のような頭部に詰まった毒が血肉と一緒に僕の喉を通り、胃が悲鳴を上げるのが分かった。そういや毒持ってたっけこいつ……うえぇマジで気持ち悪い。吐きそうだ……

 

 

それに脳に流れてくるこの感覚は……このザイゴートの思考とでも言うべきだろうか。そうだ。あの枯れ草の件と言い、僕の身体は食ったものの性質を取り込んで進化していくオラクル細胞なんだから。アラガミを食って進化すれば頭もアラガミのそれに塗り替えられていくわけで………

 

 

………ダメだ。アラガミはダメだ。アラガミは食えない。アラガミを食っても精神が汚染される。僕の内側のナニカが侵蝕を止めた辺り身体は求めてるんだろうが……僕の自我が塗り潰されるのは嫌だ。

 

 

でもそうするとどうする?やっぱり口にできるなら普通の食事だが……この世界、人間のいる場所って絶対神機使いとかいるよな。今の僕じゃ神機使いに出会ったらそれだけで狩られる。どっか襲って食料パクるって真似はできない。

 

 

そうするとやっぱ口にすべき最適解は……人間、だよな。人間なら食って記憶が流れ込んできたところで精神の汚染なんかないだろうし、集落の外とかで野垂れ死んでくれてるやつなら僕でも食える。

 

問題といえば倫理観というかカニバる事への抵抗感程度。自らの人間性を保つために人間を喰らうまでに至るとは、何とも本末転倒な気はするが。背に腹はかえられん。食事が全ての僕にとっては死活問題なんだ。好き嫌いなんかできるか。

 

 

幸いにも先程口にしたザイゴートのおかげで僕の自我は少し汚染されながらも正気を保っている。三日は持つだろう。その間に人間の……出来れば死体でも見つかればいいなって。

 

ほんと今更かもしれないけど人間を手にかけて食うってのは出来ればやりたくない。それやっちゃったら本当に人として終わりな気がするから。死体なら遺棄されたタンパク質の有効活用ってことでまだ許せる気がする。こんなのは五十歩百歩の問題かもしれないけど、このご時世なら死体には困らないだろうし。

 

 

次に口にする予定の餌が決まり、精神汚染が少しマシになったところで僕は立ち上がる。しかしそうすると、僕の背後からそっと忍び寄る影があった。

 

 

「………まだ生きてたのか。」

 

 

それは頭部らしき部分を少し抉られたザイゴートだった。僕に食われた部分は徐々に再生しているが、それでも大きな充血した目玉で僕を見つめて後を付けてくる。なんだこいつは。もう行っていいよ。お前食うとヤバいみたいだから。

 

 

しかしこいつはそんな僕の心情なんか知ったこっちゃないとばかりにその身体を僕に近付け、そして────

 

 

────あの腕の代わりに生えてる翼で、僕の顔をそっと抱きしめてきた。

 

 

 

………あまりに意外な出来事で、しばらく呆然としていた。いやいや。アラガミって……ザイゴートって人に懐くものなのか?こいつ野生だろ??

 

 

そう思ったけどそうか。僕のことをアラガミとして見てるからこうやって擦り寄ってきて……いや、擦り寄るものなのか………??卵殻の目も細まっており、人型の口の部分も気のせいかにっこり笑っている。

 

アラガミに感情……というか知性なんて無かったはずだが。特にこんな雑魚アラガミには。でもこのザイゴートは自分を食おうとした僕のことを、それは大事そうに抱きしめるような仕草を見せていた。

 

 

「………変なやつ。また食われるかもしれないのに。」

 

「……………………………♡♡♡」

 

 

ザイゴートを引き剥がし、試しに頭と思わしき卵殻のような部分を撫でるとこれまた嬉しそうに目を細める。そういやこいつって人型の部分が女の形してるんだよな。アラガミに性別とかあるのかわからんけどメスなのかな?

 

 

「……アラガミのくせに結構な巨乳だよな。お前。」

 

 

と、人の形の胸の部分をぷにぷにと押してみる。思ったより柔らかかったと思う反面、めちゃくちゃしょうもないことしてる気がして恥ずかしくなった。周りに人がいないから良かったものの。どれだけ飢えてるんだよ僕は……ガキじゃねーんだから………

 

 

………おいこらザイゴート。お前も困った顔すんな。こいつ人の部分が結構感情豊かだな!?しかも困りながらも胸の部分を僕の方へと近付けて……別に触りたいわけじゃねーんだよ!!やめろ!!なんか恥ずかしそうにすんな!!お前そういう知性ないだろ!!

 

 

はーほんと……半年も一人だったせいかな。頭おかしくなってるよな。事実として、アラガミとはいえ一緒についてきてくれるのが少し嬉しかったりするんだから。なんかだんだん可愛く見えてきたっていうか………

 

 

「…………………………………♡♡♡」

 

 

擦り寄ってくるザイゴートの頭をもう一度撫で撫でしてしまった。自分で言うのもなんだけど末期だと思う。

 

 

 

 

 

 

 

こうして旅の仲間が増えた僕だったが。結論を言うと、それから数日経った今日に至るまで死体どころか生きた人間すら見つかっていない。そして内側からの侵蝕が始まりかけている。

 

そしたらなんとこのザイゴート。自分の身体を僕へと差し出してきた。よほど飢餓が顔に出てたのか『食べてください』とでも言わんばかりに僕の腕の中へとすっぽり収まってきた。

 

 

 

………これがザイゴートの何なのかは分からないんだけど。愛だとしたらちょっと重すぎないかなって思うよ?物理的に身体捧げてくるとか……

 

とはいえ、僕も選り好みできないレベルの飢餓感に襲われていたのも事実なわけで。結論を言うと頂いてしまいました。食われても致命傷にならなそうな尻尾の部分をちょいとだけ。

 

 

今回は毒のない部分を食ったから胃の気持ち悪さは無かったけど、やっぱり精神が汚染される感覚はあったよね。アラガミの本能みたいなやつに。

 

あと朗報か悲報か分からないけど。一定量食った影響なのか、ザイゴートの能力が少しだけ使えるようになってしまった。

 

具体的には肩から背中にかけてザイゴートの卵殻みたいな部分を形成。その中で圧縮した空気を掌から撃てるようになった。身体の一部をザイゴートのそれに変えられるようになったというか……草食ってたら草生えてきたあれのザイゴート版みたいな感じ。肩から背中にでかい卵殻できるわ腕から羽生えるわですげーグロテスクだけどね。バ●オに出そうな見た目してるよ。

 

いくら自由に制御はできるけど不味いよなぁ……着実に人間やめてってるよ。僕の身体(オラクル細胞)が食ったものの性質を学習するってのはそうなんだろうけど、こう身体単位で進化していくとは……これで元に戻れませんとか言ったらそのうちG生物みたいな化け物になりそうで怖い。

 

 

 

そして僕が自分と同じ能力を使えるようになったと知ったザイゴートは────

 

 

「────────────!!!」

 

「おいバカ仲間呼ぶな!!おかわり要求してねーから……ってげっ!!いっぱい来た!?」

 

 

どこから呼んだのか色違いの堕天種まで混ざってた。ちなみにみんな一番最初の子みたいに献身的でした。助けてください。




大型やってる時に毒ガスやめろください(憤死)

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