神様にされたら愛され過ぎてヤバい件について。   作:Am.

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ワカメみたいに文字数が増えるのは筆が乗っているからです。


13.侵攻(ゲヘナ)

 第一部隊の交戦で傷ついた身体を癒やす中。しばらくしてディーヴァから感応現象によってフェンリルのロシア支部の位置とここからの移動ルート、そして現在の支部の状況が送られてきた。

 

 半壊した第一部隊が帰投した以外は特にこれといった警戒態勢には移行していないらしく、ディーヴァが遠巻きに偵察してるのもあってロシア支部はまだ僕らの接近に気付いていない。

 

 

 そのためディーヴァには引き続き偵察を続けてもらい、その間に僕とサリーはディーヴァが送ったルートに従ってロシア支部付近へと向かっていた。もう僕という存在はロシア支部内で知れ渡っているだろうが、サリーとディーヴァの存在と僕が二人を従え連携した事はあっちにとっても新しい情報。フェンリルが他支部に情報を共有し、対処法を確立させる前に攻撃を仕掛けたい。

 

 

 更に生き残った第一部隊の面々や壊れたリンドウさんの神機が修理され、今回の侵攻作戦を邪魔されるのも避けたい。故に半ば動ける程度までに回復した僕は、サリーを引き連れて直ぐに行動を開始した。

 

 

 その過程で当初の予定通りにサリーが鱗粉を用いて道中出くわしたアラガミを汚染。僕の配下へと変える形で戦力の現地調達を行い、ついでに僕が感応現象で変異したアラガミを統制できるかのテストを行った。

 

 

 結果は半分成功。というのも意思疎通は出来ても所詮はアラガミ並の知能しかないからさ。元人間のディーヴァや人間を捕喰し性質を模倣したサリーほど頭は良くなく『僕についてこい』とか『僕ら以外を襲え』とか簡単な指示しか理解しなかった。

 

 

 とはいえ今回はそれで十分。軍勢として用いる分には支障ない程度には動かせるし、命令に逆らって僕やサリーに牙を剥こうとする様子もない。アラガミは元々が食欲という本能しか持ち合わせない生き物だからね。外部から理解できる命令を与えられた場合それ自体には大した疑問を抱かないのだろう。

 

 

 むしろ問題となったのは道中出くわしたのが小型のアラガミばかりで戦力になりそうな大型アラガミにそれほど出会わなかったこと。もう少しで僕らもロシア支部につくが、その主戦力はオウガテイルやザイゴート。コクーンメイデンなど神機使いであれば難なく対処できるようなアラガミばかり。

 

 

 そのためもう少し戦力の調達に時間を割くべきじゃないか。そうディーヴァに感応現象で尋ねてみたが、彼女曰く『小型でも十分だから質より量を調達して欲しい』とのことだった。

 

 

 曰くロシア支部への侵攻時は支部内の民間居住区→支部の中央施設という流れで攻め込むことになる。どちらも建造物が多かったり屋内だったりで、小回りの効く小型アラガミは戦力として決して悪くないというのが一つ。

 

 更に神機使いでない民間人には小型アラガミだろうが大型アラガミだろうが脅威度はそう変わらない。なら小回りの利く小型アラガミを多数侵入させ、民間人を危機に晒すことでフェンリル支部内の神機使いの注意をそちらに向けられる。ついでに広域が危険地帯となれば支部内の神機も駆り出さざるを得ず、中も手薄に出来るとのことだ。

 

 

 そう考えると必要なのはアラガミの質より数であり、僕らの調達した戦力でもまだ少し足りないらしい。

 

 

 でもその点に関しては既に解決したも同然と言っておこう。

 

 

『やけに自信満々ですね。なにかしたんですか?』

 

『いや。戦力増強中に面白い性質を見つけてさ。』

 

『ほう???』

 

 

……と言うのもね?さっき言った命令の中に『僕ら以外を襲え』って命令があったと思うんだけど。僕の細胞で変質したアラガミって、例外なく白と黒を基調とした外見に変貌するんだよ。だから知能の低いアラガミでも外見で敵味方を判断できるかなって試しに命令を与えてみたんだけど。

 

 

 結果は成功だったんだけど、ここで思わぬ副次効果が見つかってね。なんと僕の細胞を持つアラガミがそうじゃないアラガミを襲った瞬間、襲われたアラガミが僕の細胞を取り込んだアラガミ同様にその場で変異したんだよね。

 

 

 ついでで言えば今回の戦力調達はサリーに僕が持つ『既存のアラガミを僕と同じ存在に変える』能力を与えた上で、その細胞を鱗粉として空から散布することで行った。推測でしかないけど、この現象は僕がサリーに与えた能力が変異した個体の中にも同様に残った結果の産物だと思うんだよね。

 

 

『えっと……つまり白いアラガミに襲われたアラガミは、同様に白いアラガミに変質すると?』

 

『そういうこと。で、機動力のあるザイゴートに『付近のアラガミを手当り次第襲え』って命令したから。』

 

『うっっっわ。』

 

 

 多分だけど僕の知らない場所でねずみ式に白いアラガミは増殖している。向かわせたのが小型アラガミのザイゴートだからあまり強力なアラガミは増えてないと思うけど……って説明したらディーヴァがドン引きしたような声を漏らした。まぁつまりそういうことだ。

 

 

………で、そろそろ戦力も問題無い程度には増えると思うんだけどさ。ディーヴァはどこで偵察と監視を行っているのか。感応現象を用いて尋ねてみると、ディーヴァが『この辺です』って座標を送ってきた。案外近いな……一回合流しようか。こっちで調達できた戦力も確認したいし。

 

 

『そうですね。なら私がそっち行きます。動かないで待っててください。』

 

『ほんと?……悪いねディーヴァ。』

 

『支部の周りに見たことないアラガミの群れがいたら流石に警戒されますから。それにご主人様、まだ傷が癒えてないのでしょう?』

 

 

 無理しないでそこで休んでてくださいって言葉を最後にディーヴァからの感応現象が切れた。……なんで分かるかな。コアのある胴体の中心……ここだけはどう足掻いても治らないんだよね。活動に支障はないから気にしてないけど、コアが損傷したせいかな。ほんと厄介な置き土産だよ。さすがリンドウさんのお姉さんなだけある。

 

 

 とにかくディーヴァがこっちに来てくれると言うのならこっちも先に戦力の確認と簡易的な強化を施しておこうか。サリーも鱗粉撒いて飛び回るので疲れたと思うし、しばらくは休んでていいよ。その間に僕は僕の仕事をする。

 

 

 感応現象を広域に用いて『ここに集まれ』と命令を飛ばす。そうすると十分かそこらで派遣したザイゴートの群れが新たな軍勢を引き連れてこちらに合流した。

 

 その総数はさっきまでサリーが道中従えたのと合わせてザイゴートやオウガテイルが計二百体以上。コクーンメイデン五十匹前後。コンゴウ八匹にシユウ四匹、クアドリガとボルグ・カムラン二匹。そしてサリエル四匹にヴァジュラ三匹。体色が統一されてるから詳細は分からないが、もしかしたら堕天種も混ざってるのかもしれない。

 

 

 ディーヴァもこれなら満足すると思うが、大型アラガミはさておきせっかくだ。あっちから見て比較的対処が容易なオウガテイルとザイゴートには簡易的な進化を施しておこう。

 

 

 僕は頭の中で現在の知能でも理解できる程度の進化の図を思い浮かべ、感応現象を用いることでオウガテイルとザイゴートにその進化形態を伝える。あとそのために必要な大雑把なアラガミの身体情報も。そしてその姿に進化するよう感応現象で命じると、みるみるうちにオウガテイルとザイゴートはその姿を変える。

 

 

 まずオウガテイル。こっちは至って単純でボルグ・カムランの装甲を身に纏うことで防御力と尾の攻撃力を強化。更に背中にクアドリガのミサイルポッドを組み合わせることで遠距離に対する攻撃手段と対建造物に対する攻撃力を獲得。小回りと戦闘能力を両立した歩兵へと仕上げた。

 

 そしてザイゴート。こちらは以前僕の細胞の実験時に生まれた個体のデータを参考に、更に卵殻内にコンゴウの真空器官を増設。邪眼はサリエル神属のものへと変化させ、手始めに推力の増強と超長距離狙撃能力を強引に付与する。

 

 加えてラッパ状の尾を巨大な鳥の脚にも見えるシユウの掌に変質させ、同じく翼もシユウ神属を思わせる大型のものに発達させた。これで先ほど生み出したオウガテイルの変種を保持。空中にて運搬しつつ目的地に投下できる。

 

 

 そうやって一体ずつ完成形が出来れば他のオウガテイルとザイゴートもその姿を参考に全く同じ姿へと模倣を開始する。そうしてほぼ新種の小型アラガミが二種類。計二百体以上も出来上がる。

 

『ゾルダート』と『フリューゲル』。僕の手で作り出したアラガミ一号と二号にはそう名付けた。原種個体の生息数が多いために調達も容易で、かつ戦場となるフェンリルの区画内で機動力と制圧力を両立した高性能モデルだ。これからの戦争ではこの二種類が主戦力となるだろう。

 

 いやー……既存のアラガミを姿を留める範疇で進化させるなら情報を与えるだけで行けるな。思いついたことは試してみるもんだね。自身で思考し進化の形を選択するには至らない個体でも、これなら汚染後に即戦力として運用できる。

 

 

『なんか楽しそうなことしてますね。』

 

【あ、ディーヴァ。ちょうどいいところに。】

 

『随分とアラガミを集めてくれましたね?しかも……ほう、二種類の新種ですか。大したものですね。

 

 新種のアラガミは小型であっても対処法が確立されておらず、群れともなれば既存の大型アラガミ以上の脅威となるほどです。それにピルグリム二組にコクーンメイデンの対空砲火の雨。こちらも多くの神機使いにとっての鬼門。一部隊で相手取るのが困難な大型も添えてバランスもいい。

 

 それにしてもこれだけの戦力を現地で調達してしまうとは驚異的な能力と言うほかない。本当になんなんですか貴方は。』

 

【サリーが頑張ってくれたんだよ。戦力はこれだけいれば足りるよね?】

 

『足りるどころかオーバーキルもいいところですよ。草木も残さないつもりですか。』

 

 

 元から草木残ってないだろロシアなんだから。それにこの戦争は人間がする戦争と違って敵国を支配したり資源を略奪するのが目的じゃない。そこに住む人間と国家の完全絶滅が目当てなんだ。井戸にガンガン毒を投げ込むタイプの戦争では戦力なんていくら居ても困ることはないはずだよ?

 

 

『むぅ……じゃあもう正面突破で殲滅する形にしますか?』

 

【いや。当初の君の予定通りに行くよ。こっちも無駄な被害は被りたくないから。】

 

『そうですか?これだけいたら正面突破のが早い気もしますけど……』

 

 

 ディーヴァはそう言うが、いくら新種と言っても小型アラガミだしね。対処法が確立されたら瞬く間に制圧されるし、大型アラガミの数は少し心もとないから。

 

 それに例の極東の第一部隊が無理して出てくる可能性もある。脳筋戦術も悪くはないけど、僕らが絶対的な数で劣る以上はこちらの被害は最小限に、且つなるべく迅速に終わらせたい。

 

 

 そして何より。さっき皆殺し目当ての戦争って言ったばかりだけど、フェンリル支部本体は残したいんだよね。あそこは僕らが持たない神機使いの情報の宝庫だから。

 

 あの極東の最高戦力がなぜこんなロシアまで僕を追いかけてきたのかとか、フェンリル側での僕の認識がどうなっているかとかさ。これから戦いを続ける上であちらの内情を知っておいて損は無いと思うんだ。

 

 

『それはそうですよ?だからご主人様がそういうのもまとめて地ならしするのかなって心配で────』

 

【僕そこまで脳筋じゃないよ。】

 

『ならいいんです。ご主人様は賢い子ですね。』

 

 

 正直ここまで戦力が確保されるのは僕も想定してなかったから。心配しなくても僕は当初の予定通りに侵攻するつもりだよ。ディーヴァが顔ぺろぺろしてくるけどやめようね。侵攻前に死体がひとつ増えそうだからね。落ち着いてサリー。

 

 

……そう。当初の予定通り、一次侵攻でこれらの戦力をまずアラガミ防壁内の居住区へ放出。神機使いをその対処のために引きずり出し、その間に僕は民間人でも神機使いでもいいから捕喰して人間の性質を完全に取得。完了した時点で一時撤退する。

 

 続く二次侵攻で一次侵攻同様にアラガミを投下。その襲撃の混乱に紛れて人間に擬態した僕がディーヴァの案内で支部内に潜入。中のフェンリル関係者や待機中の神機使いを皆殺しにし、ロシア支部を内側から制圧する。

 

 中でも新型神機使いに関する研究施設。ここだけは何としても制圧・あるいは殲滅し、未来の新型神機の適合候補者は探し出して排除しなくてはならない。そのために最初の侵攻対象にロシア支部を選んだんだから。中に入ったらとことん無慈悲にやるよ。

 

『了解です。中の案内は任せてください。』

 

【頼むよ現地ガイドのディーヴァさん。絶滅ツアーの順番とかは一任するからね。】

 

 あとはこのアラガミの群れが支部に接近した時点で、恐らくあっちは警戒態勢へと移行する。作戦開始後は全体的に迅速な行動が求められる訳なんだけど……なにか質問はありますか。特にサリー。さっきから頭の上に?マーク浮きまくってるけど。話が難しかったね??

 

 

【えっと……私は何をしたらいいの?】

 

【サリーは空から無差別に地上を攻撃して。レーザーよりも毒の鱗粉を撒いてくれた方がいいかな。】

 

【………あなたについて行きたいんだけど。ダメ……??】

 

 

 そうだね……確かに僕もすごく一緒に行きたいけど。連れていきたいけど!!でも捕喰活動は僕一人のがしやすいし、二次侵攻もサリーは人間に擬態したことないからさ。元人間の僕とディーヴァは人のフリも上手くできるけど、サリーはそういうの難しいだろうから。

 

 それに外で戦う神機使いも、民間人の防衛と新種や大型への対応って切迫した状況に上空からの空襲が増えればより混乱状態へと陥るはず。貴重な飛行能力持ちのサリーには新型ザイゴート(フリューゲル)と共にそっちに注力してくれた方が助かるんだよね。

 

 

 別にサリーが嫌いで一緒に連れて行かないって訳じゃないから。だからそんなに心配しなくても────

 

 

【そうじゃない……あなた、まだ怪我してる。】

 

【あー……うん。それはまぁ、そうだけど………】

 

【またあなたが怪我したら嫌なの……だから、もし危ない目に遭ったら治してあげたい。そのために一緒に………】

 

 

 そこまで言いかけたところで僕はサリーにギュッて抱きついた。本当に……本当、サリーは優しい子だよね。その優しさが僕にしか向かないところも含めて、僕はサリーのそういうところが大好きだよ。

 

 

………大丈夫、なんて無責任なことは言えないよね。今からやるのは戦争だ。死と暴力を最大効率で与え合う人が生み出した最悪の文化だ。いかに今回の作戦が安全策とはいえ僕も例外なく手傷は負うだろうし、もし状況が変われば死んでもおかしくない。

 

 

 だからこそ。回復能力を持つサリーをそんな場所のど真ん中に連れて行き、喪失するわけには行かないんだよ。僕らがこれから戦い続けるためにもサリーの生存は絶対だから。不向きなことをさせて死なせる訳には行かないし、悪いけど今回のサリーの申し出は受け入れられない。気持ちはすごい嬉しいけどね。

 

 

『ご主人様に賛成ですね。第一サリーは私と違って人間に擬態したことすら一度もないでしょう。』

 

【それは……そうだけど………】

 

『サリー。サリーが外で頑張ってくれれば、それだけご主人様がお仕事しやすくなるんです。これは重要な任務なんですよ。』

 

 

 ディーヴァに言いくるめられる形でサリーは黙ってしまうが、実際サリーの仕事が大事なのは本当。なんせ今回の侵攻作戦。僕とディーヴァが二次侵攻でフェンリル支部内に潜入する以上、外に残される知能を持つアラガミはサリーだけになる。

 

 つまり二次侵攻時、外のアラガミの指揮はサリーに全部任せることになるんだ。まあ指揮といっても今のアラガミはそう難しい命令は聞かないと思うからさ。空から見て、戦火に晒されてない場所にアラガミを向かわせるだけでいい。

 

 とにかく外のアラガミの監督役が一人は必要だから。こればかりは本当にサリーにしか頼めない仕事なんだよ。

 

 

【………私にしか、出来ない仕事……】

 

『ご主人様ってさ。サリーの扱い慣れてますよね。』

 

【人を悪い男みたいに言うんじゃありません。】

 

 

 それに他人事みたいに言ってるけど、一次侵攻時にディーヴァには地上戦力(ゾルダート)の指揮権を渡すつもりだからね?その際にサリーには空中戦力(フリューゲル)を預けるから配下のアラガミの扱い云々を教えてあげてね。自分も戦いながらで余裕ないと思うけど、長期的に見たらサリーにも戦力の指揮と運用をこなせるようになって欲しいのは本当だから。

 

 

『あー……ご主人様は人間ムシャムシャしなきゃいけませんからね。そっか……私がサリーの面倒見るんですか………』

 

【そういうこと。くれぐれも仲良くね。】

 

『はいはい。』

 

 

 アラガミの運用に関しちゃそんなところか。……他になんか質問は?無かったらもう作戦を始めようと思うんだけど。

 

 

『はいはいご主人様。一つ質問いいですか。』

 

【ディーヴァ軍曹どうぞ。】

 

『侵攻時にアラガミ防壁ってどうするんですか。あれ破壊しない限り侵入も何も無理なんですけど。』

 

 

 あー……確かにそうだね。フェンリル支部ってどこもアラガミ防壁に囲われる形で守られてるからね。あれがどんなものなのかはまだピンと来てないんだけど、正直言うとゾルダートとフリューゲルを生み出したのはその辺の対策のためなんだよね。

 

 と言うのもフリューゲルは尾に当たる部分に持つ腕でゾルダートを保持して侵入できるから。爆弾を投下する容量で壁を越えて、内側に小型アラガミを投下できるんだよ。

 

 

 とはいえ確かにアラガミ防壁に穴を開けないと大型アラガミや僕らが侵入できないか。ふむ……参ったな。そこについては全然考えてなかった。

 

 現物見なきゃ何とも言えないが、壁をぶち抜けるような能力はあったかな。幾つかのアラガミの能力を併用すればいけるか?或いはサリーのウロヴォロスレベルの砲撃とか………

 

 

『………やっぱり何も考えてなかったですね。全く……』

 

【ごめんごめん。そうだね……どうしようか。】

 

『ご心配なく。そんな事だろうと思って壁を破壊する手段は私が考えておきました。』

 

 

……マジで?さすがディーヴァ。できる女は違うね。心做しかドヤ顔してるけど、本当に胸張っていいよ。今回の戦争に関しては何から何まで頼りっぱなしだね。ほんとこの子には言語能力を与えてよかったって何回思ったやら。

 

 元神機使いだけあってフェンリルの設備とか詳しいし、その対処法もちゃんと考えて用意してくれるとか。ディーヴァいなかったら色々詰んでるレベルで僕の作戦ってザルだからね……割と本気で助かる。今回の作戦終わったらなんかお礼してあげるからね。

 

 

『ただですねご主人様?この能力、発動に時間がかかる上に使ったあとめっちゃ消耗するんですよ。だからご主人様もなんか他の方法あったらーって思ってたんですけど。』

 

【悪いけどそんなもんないよ。……消耗するってどのくらい?】

 

『しばらくまともに戦えなくなりますね。私は戦力として使い物にならなくなります。』

 

 

 そのくらいなら問題ない。元々ディーヴァには地上戦力の指揮を任せるつもりだったし。そういうことなら僕もさっさと要件を済ませ、早めに撤退すればいいだけだから。

 

 一個人の戦力に戦況を委ねるのが愚策だなんてことは僕にだって分かってる。ディーヴァ一人欠けたくらいで破綻するような作戦を実行する気はないし、壁だけ壊したらゆっくり後方で指揮に集中してくれればいいよ。その分今回は僕が前線で頑張るから。

 

 

『今回も、でしょう?本当このご主人様は………』

 

【なんか不満げじゃん。どうしたの。】

 

『当たり前じゃないですか。サリーじゃないですけど前回みたいな無茶したら本気で怒りますからね??』

 

 

 ガオッてディーヴァが牙を剥き出しにして詰め寄ってくる。サリーも無言で頷いてるし、あのツバキさんを殺した戦いでは本気で心配させちゃったからね……うん。気をつけるよ。サリーも近くにいない事だしね。

 

 大丈夫。ディーヴァの言葉を信じるなら今回の神機使いはあの第一部隊ほど手練じゃない。数が圧倒的に勝る以上物量による暴力がどう働くかは僕にも分からないけど……総合的な危険度でいえば前回の比じゃないと思うから。ちゃんと無事に帰ってくるって約束する。

 

 

『ならいいんですけど。』

 

【……じゃあそろそろ行こっか。ロシア支部を潰しにね。】

 

【うん……頑張る。】

 

 

 手筈も戦力も整った今、遂に実行の時だ。まずは指揮権をサリーとディーヴァにそれぞれ与え、感応現象で『二人の指示に従え』とこちらの戦力のアラガミへと伝える。作戦予定地に着くまでに感応現象でアラガミを操るのに慣れておくといい。

 

 そしてその上でロシア支部を覆う外周防壁の周囲まで足を進め、ディーヴァの先導の元に侵攻予定地点に移動。そのくらいでロシア支部も外壁の周りにアラガミが集まる異常事態に気付いたのか、壁の中から緊急事態を知らせるようなサイレンが鳴り響いた。

 

 

 なんか探知されるまでが思ったよりずっと早いが……レーダーみたいなものでもあるのかな。何にせよここまで来たらもう後戻りはできない。

 

 

『ご主人様。間もなく神機使いが壁の外に出てきます。』

 

【ならその前に中を荒らしてやる。サリー、フリューゲルの進軍とゾルダートの投下をお願い。】

 

【う……うん。えっと、壁の中に飛んでいって………!!】

 

 

 そうサリーが指さすと、その単眼の怪鳥らは装甲に覆われた歩兵を足で持ち上げて飛び立つ。僕が生み出したフリューゲルは仮にもアラガミ一匹を保持しているにも関わらず外周防壁などものともせずに高高度から侵入し、瞬く間に空を覆い尽くした。

 

 後で知ったんだけど、この当時は防壁を飛び越えて襲ってくるアラガミは存在しなかったんだって。だからこの時代の人間は空から脅威が降り注ぐなんて考えたことも無く、故に初めて行われたこの『空襲』は見事に成功した。

 

 

 サイレンが鳴り響いてから三分以内。フリューゲルが保持したゾルダートが壁の内側へと投下され、ここにまで聞こえるような悲鳴が中から響き渡る。

 

 当然空から降り注いだこれらの新型アラガミにロシア支部の神機使いは壁外の僕ら(アラガミ)の迎撃どころでは無くなり、脅威に晒された外部居住区の防衛へと駆り出される事となる。

 

 

 これで壁の外の僕らは完全にフリーになったわけだが……ディーヴァ。あとはお願いしていいかな?

 

 

 

『任せてください。予定通り壁を破壊します。』

 

 

 

 そう言ってディーヴァは甲高い咆哮を響かせ、天を仰ぐようにその力を解放する。すると赤いオラクル細胞が巻き上げられ、空中に無数の結晶の槍が生み出される。

 

 しかもそれらは時間をかけて巨大化し、やがて一つ一つがディーヴァの全長を上回るほどの質量兵器へと変貌。おおよそ一個体のアラガミが用いるとは思えないほどの大規模攻撃として外周防壁へと放たれる。

 

 

 その威力は想像を絶するもので、放たれた槍の一つ一つが砂の城でも崩すかのように防壁を破壊し尽くした。その破壊痕は大型アラガミの群れでも難なく侵入できるほどで、壁の内側のゾルダートに民間人が食い散らかされる光景がここからでも確認できるくらいだ。

 

 

 なるほどね……こんなの撃てば消耗するわけだ。

 

 

『ゼェ……ゼェ……そういうことです。あとはお願いしますね……ご主人様………ぐふっ。』

 

【はいはいご苦労さま。慌てないでいいからゆっくり休んでからおいで。……じゃ、先に行こうかサリー。】

 

 

 ごろんと横になって荒い息をするディーヴァの頭を撫で、僕はサリーへと声をかける。でもサリーはサリーで、なにやら呆然とした様子で壁の中を見つめていた。

 

 あー……そうか。もしかしたらサリーが見るのは初めてか。よく考えたら、僕らって()()使()()()()()()人間って見たことなかったもんね。

 

 

【え……あれが……人間………??】

 

 

 為す術なく小型アラガミのゾルダートに食われる民間人を見て、サリーはそう漏らす。破壊された外壁から外へと逃れようとした人間が後ろから襲われ、中へ引きずられていく様や小さな小屋を焼かれ逃げ惑う子ども。

 

 それらの光景は、どれもがサリーにとって初めて見るものばかりだった。今まで神機使いしか……自分達に危害を加える天敵しか見てこなかったサリーにとってそれは、到底信じられない光景だったのだろう。

 

 

 だからこそ僕はサリーに教えてあげた。

 

 

【そうだよ。あれが人間だよ。】

 

【うそ……だって、だってあんな………】

 

【うん。人間はね?本来僕らよりずっと弱くて脆い生き物なんだよ。】

 

 

 神機以外に僕らに抵抗する手段を持たず、傷つけば再生できないし一般的な人類は身体能力も圧倒的に劣っている。アラガミより高いものと言えば知能だけだったが、今やその知能すら追いつくのは時間の問題ってところまで来ている。

 

 そう……あれが本来の人間の力なんだよ。人間なんて本来あの程度のものなんだよ。小型のアラガミに遭遇しただけで為す術なく死んでいく。僕らに対抗しうる神機使いが例外なだけで、本当ならとっくにこの世界から絶滅しててもおかしくない生き物なんだ。

 

 

【なら……なんであんな弱い生き物を滅ぼすの?あんなの、放っておいたって────】

 

【あの弱い生き物の中から神機使い(僕らの天敵)が生まれるからだよ。】

 

 

 だからこうして滅ぼさなきゃならない。サリーやディーヴァを脅かす神機使いがもう生まれてこないように。この戦争はそのために始めたものなんだ。そのために滅びるべきは神機使いだけじゃない。人間という種族そのものなんだよ。

 

 とはいえこれは……もう戦争っていうよりは虐殺だよね。サリーの気持ちも分かる気がするよ。あんま見てて気分のいい光景ではない。視覚的にも聴覚的にも。もし見てて辛いようならサリーもディーヴァと一緒にここで待っててもいいけど。

 

 

【………うぅん。あなたが行くなら私も一緒に行く。】

 

【ありがとう。なら予定通り、サリーは上空からフリューゲルを引き連れて神機使いの相手をしてあげて。】

 

【分かった。……あなたも気をつけて。大丈夫だと思うけど………】

 

 

 僕を心配するように頭を一度撫でたあと、サリーはゆっくりと腰の翅を広げて空へと舞い上がる。が、その途中で何度も心配そうに僕の方をチラチラと見ていた。

 

 

………分かってるよ。ゾルダートが人間を平らげて支部内を破壊し尽くす前にさっさと片付けてしまおう。こうやって滅ぼす以上、なるべく楽に死なせてやるのがせめてもの情けだと思うしね。

 

 

【では大型軍団。進軍開始。】

 

 

 蝕刃をディーヴァが作り出した破壊痕に向けて命令し、神機使いを滅ぼすべく大型のアラガミの群れを向かわせる。その数は計二十三匹。果たしてこの状況に立ち向かう神機使いにとって、今から向かう増援がどれほどの絶望かは分からない。

 

 しかし、僕が異形の戦列を連れて進軍する際。横になったディーヴァがボソッと呟いた言葉を確かに聞いた。

 

 

『私が現役(神機使い)の時にご主人様がいなくて本当に良かった』と。

 

 

………まぁつまり、そういうことなんだろう。

 

 

 後で聞いた話なんだが、こっちの神機使いはオウガテイルを単独でやれて一人前。ヴァジュラ一匹で支部が軽くザワつくレベルなんだって。それを考えると本当に気の毒なことをしたよね。ディーヴァが僕を脳筋と誤解した理由が分かった気がした。




・既存のアラガミを変質させる。
・変質させたアラガミを統制する。
・統制したアラガミを戦局に合わせて改造する←New!!


なんだこのクソゲー。

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