神様にされたら愛され過ぎてヤバい件について。   作:Am.

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14.蹂躙(パレード)

「た……助けてくれッッッ」

 

「アラガミだ……!!空からアラガミが!!!」

 

 

 僕が防壁の内側へと侵入した際には、既に地獄が出来上がっていた。空を覆うフリューゲルが民間人を攫っては空中で食い散らかし、地上はゾルダートが抵抗もろくに出来ない人々を追い回してはその牙と尾で屠殺していく。

 

 並ぶ家屋はゾルダートの放つミサイルに薙ぎ倒されるように粉砕され、恵みの雨のように血と臓物が降り注ぐ。乾いていた地面は既にあちこちに血の水たまりが出来ており、バラバラに喰い散らかされた腕や骨が中に浮いていた。

 

 そんなベル●ルクとそう遜色ないこの光景の中、必死に戦う神機使いの姿も既に散見していた。展開が迅速なのは防衛班だからか。意外とこういったケースはあるのか、妙に慣れた様子でアラガミと交戦しつつも無事な民間人を避難誘導している。まだまだ無事な人間がいるようで安心した。全部喰い尽くされてたらどうしようって少し心配してたんだよ。

 

【さて……どいつから頂くべきか。】

 

「!??こいつ……まさか極東の連中が言ってた新型か!?なんでこんな場所に!!」

 

 死体でもいいから口にしようと辺りを見渡していたら、ふとそんな声が響いた。見ればロングブレードを構えた神機使いがこちらを見上げて臨戦態勢に入っていた。

 

 なるほど……既に情報は共有済みと。まぁそりゃそうか。他支部に僕らの情報が共有される前にここを落としたかったんだが、この分だと無理そうだね。

 

「隊長!隊長!!こちらE区画防壁!!例の新型が現れました!!至急集合を────」

 

【敵前で連絡とは随分余裕じゃないか。】

 

 何にしろ隙を晒したから、手始めにと蝕刃を振り下ろして頭から真っ二つに引き裂いた。そして切り口から蝕刃を通して捕喰。そうやって傷口から脳と臓物を撒き散らした死体に何度も蝕刃を振り下ろし、遺体を跡形なく平らげる。

 

 そうして喰い尽くすと同時。僕の脳内にこの男の記憶と容姿。身体能力に関する情報が溢れ帰り、肉体に染み渡るようにして刻まれる。これをあと何十人こなせば僕は人間に擬態できるやら……記憶を身体に刻むこの行為は戦争という殲滅行為抜きに逸楽だが、今は急いでいるからな。

 

 ひとまず最低限今口にした男の記憶を漁り、向こうの状況と神機使いの配置を把握する。なになに……さっき口にしたのは防衛班のメンバーで、巡回中に空からアラガミの群れが到来。地上に新種のオウガテイルを投下して………ってさっきまでの光景に関する記憶だな。もう少し前か後に何かないかな。

 

………この緊急事態に際して、全住民を中央施設に一時収容。神機使いの応援を要請。待機中の神機使いは直ぐに出撃したものの出撃中の神機使いは帰投に一時間ほどかかる……か。

 

 つまり今こうして出動中の神機使いに加えて更に一時間後。外に出ている神機使いが応援としてやってくるわけだ。いや、実際にはもう少し早いと見ていいはず。なら………

 

『ディーヴァ。防壁侵入口周辺のゾルダートを自衛用に戻して。一時間くらい後に外から増援が来るって。』

 

『げっ。了解しました。……けどいいんですか?ご主人様の負担増えません??』

 

『大丈夫。こっちはサリーが上手くやってくれる。』

 

 ディーヴァにそう感応現象を繋ぐと同時、付近を蹂躙していたゾルダートが一斉に防壁の破壊痕から外へと撤退していく。このままだと壁の内側の神機使いと外から帰投した神機使いに挟まれる形になるからね。消耗しきったディーヴァがエンカウントするのも避けたいし、事前もって手を打たせてもらう。

 

 そして壁内から消えたゾルダートと引き換える形で、僕が引き連れてきた大型アラガミを戦線に投入。こちらには『武器持ちを攻撃しろ』と感応現象で命令を与える。

 

 ただしヴァジュラ三匹にはゾルダート同様にディーヴァの元に撤退だ。必要ないとは思うがあっちに戻る戦力数が不確定な以上、防衛は過剰なくらいがいい。二人のどちらかでも死んだらその時点で僕らは負けなんだ。

 

「ヴォウッ!!」

 

【さて……こっちもやることやらなきゃな。】

 

 ちょうどタイミングよく中央施設の方向からこちらに向かってくる神機使い達が目に入る。その殆どは僕らの迎撃というよりは襲撃に晒されている民間人の救助に来たらしいが、何部隊かは進軍する大型アラガミの群れへと向かってくる。

 

「いたぞ新型だ!!あいつを潰せ!!」

 

「あいつがアラガミを指揮してるぞ!!」

 

【わざわざ死にに来たか。やれ。】

 

 さっき殺した神機使いの報告を受けてか、避難誘導以外の神機使いは真っ直ぐに僕を潰しにかかってくる。報連相が早くて優秀な事だが、おかげでこっちからすれば入れ食い状態。やや後方に展開した遠距離型神機使いにはクアドリガとコクーンメイデンを向かわせ、距離を詰めようとする部隊にはシユウ四匹とボルグ・カムランを当てる。

 

 ピルグリム二組には救助部隊をやってもらうとして……サリエル四匹はどうするか。空から戦域に毒でも撒いてもらうかな。

 

 それにしてもロシアの連中は面白い編成をするね。多部隊での連携を前提としているのか、近接部隊と遠距離部隊で完全に役割が分けられている。あとはスナイパー型から編成された斥候部隊とね。

 

「なっ………!!」

 

【気付いてないとでも思ったか?】

 

 真上から不意に放たれた銃撃を身体を逸らして躱し、その仕返しとばかりにコンゴウの能力を用いた蝕刃を外周防壁の上部へと振るう。飛ぶ斬撃で防壁もろとも粉砕しにかかるが手応えはない。上手いこと逃れたか。

 

 斥候部隊かとも思ったが、どうやら単騎だったみたいだね。ステルスフィールドで隠れていたから引き金を引かれるまで気付けなかったな。このまま死角からちょっかいをかけられると面倒だ。サリエル四匹には外周防壁上の掃除を頼もうかね。

 

「あの極東の狙撃手……避けられてんじゃねーか!!」

 

「構わん!!元々俺達だけでどうにかするつもりだったんだ!!囲んで叩け!!」

 

【っと。】

 

 そう保有戦力それぞれに攻撃目標を伝えていたところ、前後左右から一斉に近接型神機を手にした神機使いが襲撃してきた。まぁ来るって分かってたから上に跳んで避けたけど。

 

 しかもそのまま蝕刃を地面へと向け、今度はディーヴァの能力を刀身に発動。落下の速度そのままに地面を蝕刃で貫き、地面から全方位に結晶の刃を形成して突き上げるようにして串刺しにする。

 

「ぐはっ………!!」

 

【……やはりあの部隊ほどの脅威ではないな。】

 

 そして身体を捻って蝕刃による回転斬りを発動。串刺しになった神機使い四人を切断と同時に一気に捕喰し、その記憶と生体データを取り込む。それと神機のデータもね。こっちはもう一つずつ頂いてる暇もないから拾い上げたそばから自分の身体に突き刺し、傷口から取り込む形でまとめて捕喰する。

 

 すると人間の情報より先に神機の情報が身体に蓄積されたらしい。僕の身体は更に新たな能力を会得した。

 

「くそっ!!この化け物が!!」

 

 声のした方を見ると倒壊してない家屋を足場に、ショートブレードを持った女が僕の首に向けて刃を振るってきた。咄嗟の事で僕は反応が遅れるも、不思議と危機感は無かった。

 

 それもそのはず。既に十分な数の神機を捕喰した僕の身体は、性質を神機に寄せれば対応した神機による攻撃を遮断できるのだから。現に僕の首に振るわれた刃は皮膚の表面に食い込む程度で止まり、その光景に持ち主の女も目を見開く。

 

 

「……………は!?」

 

 

 この能力は【装甲化】とでも名付けようかね。果たしてどの程度の攻撃を遮断できるかは分からないが、この様子を見るにほぼ九割以上無効化できていると言っていいだろう。

 

 さらに左腕に新たな能力を発動し、腕全体を神機の捕喰形態のような黒い繊維で覆う。そしてその状態で女神機使いを手刀によって薙ぎ払うと、接触した箇所がごっそり抉れるように捕喰された。胴体を根こそぎ捕喰されたせいで神機使いはバラバラになって空中に散乱するが、この能力の本命は殺傷能力ではない。

 

 蝕腕による【捕喰攻撃】。この一撃をトリガーに僕の脈動が一気に強くなる。全身のオラクル細胞が活性化し、様々な生物を歪に縫い合わせたかのような身体の隙間が赤いエネルギーを放って薄らと発光する。蝕刃もひとりでに縦に展開すると、中央の隙間から余剰出力となったオラクル細胞が放出。巨大な光の刃が形成された。

 

【なるほど……これが『バースト』か。】

 

 力が漲るというのはこういう事を言うんだろう。素晴らしい力を手にしてしまった。このままちまちま喰い尽くしてもいいが、新しい力を手に入れたら試したいのが男の子というものだ。この力……手始めにこの場の神機使いに試させてもらおう。

 

 まずは腰の翼からエネルギーを噴出させ、一瞬で後方の遠距離型の部隊の元へと飛ぶ。咄嗟の事に神機使いの動きが硬直するから、まずは右手の蝕刃を真っ直ぐ振り下ろした。光刃によりリーチと破壊力が格段に増したそれは一瞬で女性神機使いの身体を縦に裂き、さらに続けざまに横薙ぎに一閃。回転斬りの容量で斬り抜けることで一瞬で一部隊を壊滅させる。

 

 そして斬り抜け後に再び左腕に捕喰能力を発動し、辛うじて息のある死体の山に向けて振るう。そうすることで死体を纏めて捕喰し尽くし、記憶と肉体の情報を全身に記録。さらに残った神機も左腕で持ち上げるとコアの部分を握り潰すようにして捕喰し、身体に順番に取り込む。

 

 何気に遠距離型の神機を捕喰するのはこれが初めてだが、一部隊分の神機を捕喰したおかげですぐさま機構と能力は学習(ラーニング)できた。いい加減能力を追加する箇所が無くなってきた僕の身体だが、この能力は蝕刃の拡張能力として追加。光刃の展開部に銃口としての機能を搭載することで習得する。

 

 とはいえ遠距離に対する攻撃手段は既に幾つも持っている。専らその用途は近接戦闘における追撃と、全身に反映しきれてないアラガミの能力を銃撃として使う場合くらいか。

 

………なんて考えていた時だった。ふと殺気を感じて背後に左手の甲の邪眼を向けると、見慣れた相手が僕に突進しつつ神機を振り上げていた。振り向くことなく背部に蝕刃を構えて受け止めたが、装甲化を用いた今の僕なら防ぐ必要もなかったか。

 

「てめぇ……なんでここにいる!!」

 

【君こそよく出てきたな。わざわざ死にに来たか。】

 

「この襲撃はてめぇの差し金か!!何が目的だゲテモノ野郎!!」

 

 振り向きざまに蝕刃を横薙ぎに振るい、シールドに防がせることで吹き飛ばす。ついでだから早速遠距離神機の能力を発動し、追撃として数発のオラクル弾を放った。けどその様子を見ると相手は建造物の裏へと身を隠し、建物の中を通って僕の死角から飛び出す。

 

 そうして放たれた振り上げを僕は結晶の壁を展開することで受け止め、同時に衝撃波を伴う振り上げを放つことでカウンターを決める。

 

 

(……今のはパリング!?こいつ、(ひと)の技を────)

 

【何にしろこの状況で単独行動とは感心しないな。ソーマ。】

 

 そんなに僕が恋しかった?それともツバキさんに会いたくなったか……第一部隊の面々に死んでもらいたいのは変わりないから歓迎はするけど。この分だとさっき狙撃してきたのはやっぱりサクヤさんかな。リンドウさんは……いるわけないか。神機壊したしねあの人。

 

 そうなると隊長不在での臨時出撃。サクヤさんは衛生兵かつ狙撃手だから単独行動も視野に入るが、ソーマに至っては完全に私怨だろうね。僕のところに直行してきたのも含めて。ツバキさんの件と言いその前と言い毎回こいつの部隊の人間殺してるしね。恨まれるのも当然っちゃ当然か。そんな()()の面目躍如とあっちゃ……ねぇ?

 

「てめぇだけは……生かしちゃおけねぇんだよ!!ここの連中にやらせるわけにも!!!」

 

【一人でどうにかなると?……随分侮られたものだな。】

 

 不意をついてソーマが神機を僕に真っ直ぐ投擲し、同時に弾丸のような速度で僕に距離を詰める。しかしその投擲された神機を蝕刃で難なく弾き、左腕に捕喰能力を発現させる。

 

 そして真っ直ぐ向かってくるソーマに向けて左腕を振り下ろすが、その一撃をソーマは跳躍することで回避。さらに先ほど僕が弾いた神機を空中で手にすると、真っ直ぐに落下の勢いを乗せて振り下ろしてきた。

 

「くたばりやがれ!!!」

 

………うん。やはり戦闘センスはリンドウさんと比べても遜色ないレベルに高いか。ただ敢えて二人の違いを上げるなら、経験値の差かな。

 

「ッッッ!!?」

 

【ふむ……バスターすら通さないか。これならあの赤神機(ブラッドサージ)も敵ではないやもな。】

 

 さっき物にした【装甲化】の能力。あれを全身に発動したままの僕は左腕で受け止める形でソーマの神機を止め、同時に捕喰能力を発動したまま左腕で薙ぎ払う。

 

 そうすればソーマの神機の刀身は()()()()()され、その身体は地面へと思い切り叩きつけられた。あまりの勢いに一回バウンドした後ソーマは地面に転がるが、自分の神機を見てその顔は瞬く間に絶望に染まる。

 

 隙を見せると気持ちいいほど思い通りに動いてくれるな。リンドウさんなら動きを誘導されたって気付くだろうに。

 

 僕はさっき口にした神機使い達の記憶……つまり戦闘経験をも自分の記憶として取り込んでいるんだ。神機の振り方、身体の運び方、戦術に戦略……人間の全てを僕の能力として取り込み進行形で成長してるんだよ。ブラフの一つ二つ張るさ。

 

 それに加えてこの【捕喰攻撃】と【装甲化】だ。もはや僕は一神機使い────特に旧型の神機使い如きにどうこう出来る存在じゃないんだよ。

 

 

 とはいえいくら神機を破壊したとてこいつはマーナガルム計画の産物。オリジナルとでも呼ぶべきゴッドイーターだ。生命力(しぶとさ)は並の人間を遥かに凌駕する……故に、無力化した今でも確実に殺す。

 

 まず蝕刃の中央からエネルギーを放出し、巨大なオラクル刃を刀身に纏わせる形で展開。振りかぶった後にソーマめがけて直線上に振り下ろす。その攻撃はきっとソーマにとっても見慣れたものだろう。

 

 神機使いが【チャージクラッシュ】と呼ぶ能力だ。現にソーマは、倒れていたにも関わらず僕の予備動作を見ただけで横に転がって回避した。

 

………が、当然僕が神機使いの能力をそのまま使うわけがない。この一撃にも大幅に手を加えてある。

 

「ぐぅっ………!?」

 

 赤黒いオラクル刃が地を裂くと同時。前方五方向に向かって地を這う巨大な斬撃が走り、無慈悲にソーマの身体を引き裂いた。それでもソーマは立ち上がって僕から逃げようとするが、これで終わりではない。

 

 次に放つ一撃。それはチャージクラッシュを発動したままの蝕刃による横への薙ぎ払い。踏み込みつつ放つそれをソーマは流石に予想してなかったのか、半ば祈るように壊れた神機のタワーシールドを展開した。

 

 しかし薙ぎ払いでもチャージクラッシュに変わりはない。ましてやアラガミ仕様だ。辛うじて防ぎはしたものの、もろに受け止めたタワーシールドは刀身同様に粉々に粉砕。ソーマも壁に叩きつけられるほどの勢いで吹き飛ばされた。

 

「────ッ!!?」

 

【まだまだ行くぞ。】

 

 刀身にチャージクラッシュを発動したままの連続攻撃。バースト状態という余剰出力がなきゃまず扱えない大技だ。しかしその攻撃の数々は確実にソーマを追い詰め、彼の身体と神機を破壊していく。

 

 外周防壁に叩きつけられたソーマに向けてX字に蝕刃を振り上げ、今度は巨大な黒い斬撃を二連続で飛ばす。その破壊力はなんと外周防壁を粉砕するほどで、あまりの威力に外周防壁を壊してくれたディーヴァに申し訳なくなった。

 

 そんな破壊力を持つ連続攻撃だ。ソーマを見れば既に全身血だらけで、いくら再生力を持つと言っても虫の息なのは明らかだった。これでトドメだ。これで二人目。最後の一撃でこのまま抹殺してくれる。

 

 一際絶大なエネルギーを蝕刃に収束させ、オラクル刃を巨大化。ある種の巨大な砲撃(レーザー)とも呼べるほどの光の刃を形成する。これを振り下ろせば、ここら一帯はオラクルの奔流に焼き払われる形で消失するだろう。

 

 

【さらばだ……神機使い。よく逃げたがここまでだ。】

 

 

 ようやく光の刃(ライ●ーソード)を形成し終え、虫の息のソーマに向けて解放する。全てを破壊し尽くすバースト状態時の渾身の一撃。

 

 

 

……その一撃で、この勝負は決着するはずだった。

 

 

 

 しかし次の瞬間。吹き飛んでいたのは僕の右腕の方だった。肘から先にかけてが宙を舞い、少し離れた家屋の屋根へと突き刺さる。あまりに突然のことに僕も思考が固まるが、すぐさま何が起きたかを理解した。

 

 腕の破壊痕……これは銃創だ。しかも一撃。狙撃型(スナイパー)だろうな。銃声がしなかったのはそれだけ離れた位置から撃ち抜かれたのか。

 

 こんな芸当できる神機使いはそういない。恐らくサクヤさんだろうが……まさか差し向けたサリエル四匹を始末したのか?あの女ゴルゴめ。腐っても極東の神機使いか。

 

 

 いや、重要なのはそっちじゃないよな。なんで【装甲化】を発動しているのに僕の身体に神機の攻撃が通ったんだ?しかもたった一撃で、僕の最も硬度に優れる蝕刃と同硬度の右手首が吹き飛ばされた。普段は銃弾を防げるような硬度なのに……どう考えても普段じゃありえないダメージの通り方だ。

 

 これはもしや────

 

 

「………っ、ようやく隙を見せたな……!!化け物!!!」

 

【!!………まだ立ち上がるか。】

 

 

 僕の思考を遮断するように、ソーマが壊れた神機を片手にこちらへと走ってくる。こいつもこいつだ……最初は無茶な私怨による独断専行と思い、殺すのに絶好のチャンスと思って戦いを仕掛けた。

 

 が、さっきの狙撃で確信した。最初からこいつは囮だったんだと。

 

 神機を破壊されたのは流石に想定外だろうが、現に僕はこいつを追う形でまんまと射線の元へと誘導された。嵌められていたのは僕の方だったようだ。

 

………バースト能力にイキって暴れてたらこのザマだ。わからせまでが早すぎるんだよ。情けないったらありゃしない。

 

 

 だとしても普通、こんなボロボロになってまで……自らの命を投げ捨ててまで囮をするか?こんな年端もいかない子どもが?いくら再生力が高いとはいえイカれてるとしか思えないな。そんなに僕を殺したかったか。自分の命を投げ捨ててまで……だとしたら大した覚悟だ。素直に尊敬するよ。

 

【しかし無駄な足掻きだ。そんな壊れた神機で何ができる。】

 

「ここで殺すんだよ……!!てめぇはここで!!!」

 

 右手首の断面にディーヴァの能力を用いて結晶を生成し、巨大化させることで瞬時に結晶の義手を生成。応急処置を施し、僕に立ち向かうソーマを迎撃しにかかる。

 

 一方で遠目に放たれた緑色の銃弾がソーマを撃ち抜くと、全身の流血が瞬時に止まった。回復弾か。あの安全地帯からよくやる。

 

 だが今さら多少回復したところで問題ない……【装甲化】はソーマの神機は遮断できる。それはさっき実証した。それにそもそも神機はもう破壊したんだ。このまま距離を詰めてきたところをディーヴァの能力で────

 

 

()()()()()!!イーブルワン!!!」

 

【!?!!?】

 

 

 突如。砕けた刀身の付け根から黒い繊維が溢れるように展開し、巨大な獣の顎(あぎと)のような器官が形成される。それは壊れた神機の唯一の攻撃手段にして、最大の武器。謎の悪寒を感じた僕は慌てて左腕に捕喰能力を発動して振るったが、それより先にソーマの神機が僕の左腕を捕喰した。

 

 しかもそれだけじゃない。ソーマは僕の左腕を神機で咥えると、そのまま力任せに振り上げることで僕の左腕を強引に引きちぎった。

 

 アラガミの僕でも激痛を感じるほどの負傷に僕は思わず後退するも、捕喰によりソーマはバースト状態へと移行。なんと捕喰形態を維持したまま手にした神機を僕に振るってくる。はやくも捕喰攻撃は僕に有効と見たらしい。

 

 おまけに振るわれるそれに目をやると、何やら妙な変化を起こしていた。展開された繊維状の捕喰器官が黒から白へと変質を始めているんだ。

 

 それだけならまだしも、色調の変化は付け根だけ残った刀身やシールドにまでも起きている。僕を捕喰した辺りから変化が起きたみたいだが……なんだあれ。どうなってるんだ?

 

 

………興味深い話ではあるが、ここは退き時だな。このまま無理して消耗すると後の作戦に響く。僕の失態による悪手だが、幸いにも悪いことばかりではない。おかげで今回得た【装甲化】の能力の性質を見極めることが出来た。

 

 それに【捕喰攻撃】によるバースト能力……この二つはサリーやディーヴァを始めとしたアラガミにさらなる力をもたらすだろう。

 

 

「ふざけんな!!ここまでやって逃がすかてめぇ!!」

 

【なに……互いに命あればまた見える事もあるだろう。決着はその時だ。】

 

 

 結晶で出来た右腕を地面へと叩きつけ、ディーヴァの能力を発動。残る余力で巨大な結晶の壁を作り出し、ソーマを強引に分断すると翼を広げて上空へと撤退する。その隙を逃すまいと遠目にスコープに光が反射したが、狙っている箇所が傷の残るコアであることは予想できた。

 

 だから硬質の結晶で出来た右腕で胴体を庇うことで狙撃を防護し、同時に右手の掌に結晶の槍を生成。勢いよく投擲して光った場所に撃ち出す事で、着弾地点を無数の結晶の棘で覆い尽くす。

 

……が、恐らく命中してはいないだろう。今度戦う時まで狙撃用の能力も考えておくかな。今回はこの隙に身体を加速させ、さっさと戦域を離脱させてもらう。なんせ僕にとっての本命はこれからだ。

 

 空中を駆け抜ける形で僕は壁外へと脱出を果たし、感応現象でサリーにも撤退を命じる。一方で投下した戦力には引き続きロシア支部内を侵攻。あちこち荒らしてもらって神機使いを疲弊させてもらう。

 

 そうしてしばらく待つとロシア支部の壁を超える形でサリーがこちらへと飛んでくる。えらく疲弊しているのかふらふらとこちらに降りてくるから、僕は両腕……はないから義手の右腕だけ広げる形でサリーを受け止めようとする。

 

 けど僕を上回る体格を持つサリーにはちょっと無謀だったみたいだ。ふわりと着地するサリーに巻き込まれる形で勢いよく地面に押し倒されてしまった。

 

【サリー……ご苦労さま。怪我とかしなかった?】

 

【私は大丈夫……ってどうしたの!?そのケガ!!まさか今ので────】

 

【ちょっとヤンチャしただけだよ。平気平気。】

 

 

 前のツバキさんの時と違って治療すれば治る怪我だからね。しばらく放置しておけば勝手に治る。

 

……なんて言ってもサリーは納得しないよね。既に僕がどこにも行かないようにってのしかかったまま体重をかけてくるし、ドレス状の翅からは回復効果を持つ鱗粉を。両掌の邪眼からは部位再生の擬似回復弾を放射状に散布しながら僕の傷ついた箇所を撫でている。ちょっとくすぐったい………

 

【誰にやられたの……?もしかして………】

 

【例の部隊だよ。彼らもこの戦線に参加してた。】

 

【やっぱり……あいつら嫌い………】

 

 分かるよ。本当に厄介だよね。その他の神機使いも相手取ってきたから分かったけど、やっぱあの部隊はイレギュラー過ぎる。あそこがって言うよりは極東自体がイレギュラーなのかもだけど。

 

 そのうち極東支部を落としに行く際はどれだけ苦戦を強いられるやら……リンドウさんいなくてこれだったもんな。今回は僕の失態が大きかったとはいえ先が思いやられる。神機絡みの能力じゃなくてアラガミ由来の能力を主体にしてれば、もう少しやりようはあったろうに。

 と、自身のやらかしを省み思考を巡らせていた時だ。治療の傍ら、サリーが心配するように僕の顔を覗き込んできた。

 

【………大丈夫?やられた傷が痛むの……??】

 

【いや……問題ない。ただ我ながら馬鹿な真似をしたなって。】

 

「本当ですよ全く。無事に帰ってくるとか息巻いておきながら。」

 

 突然人間の女の声がしたから、僕とサリーはびっくりして同じ方向へと振り向く。するとそこにはフェンリルの制服を身にまとった大柄な女性が仁王立ちしていた。

 

 サイズが合わなかったのか胸元は大きく開いており、バッキバキの腹筋に覆われたお腹は露出してしまってる。挙句に上着は肩にかけるように羽織ることでマントみたいに風に揺れていて、佇まいだけで頼もしさが凄まじい。

 

 何より。その結晶で出来た義手状の右腕が、この女性が誰かを証明していた。

 

【やぁディーヴァ。もう動いて大丈夫なの。】

 

「それどころか外から来た連中に鉢合わせたから身ぐるみ剥いできましたよ。中を全裸で練り歩くわけにも行きませんからね。」

 

【鉢合わせてたんだ……しかも剥ぎ取ったって………】

 

 ディーヴァに出くわした神機使いは気の毒だ。その言葉に僕もサリーもそんな感情を抱いていた。合うサイズがなかったのかよく見たら着てるのも男物だし。似合うな……なんて思ってしまったのは身長が高いのとがっしりした身体付きをしてるせいだろうか。

 

……で、なんか怒ってるっぽいけど………僕なんかやっちゃった?なんてシラを切ろうとしたら寄りにもよって結晶の方の右腕で顔面に手刀を入れられた。いてぇ。

 

「全く。無茶しないって言ってたのに本来の作戦と関係ない相手に喧嘩売って、その挙句に重傷とか……自殺願望でもあるんですか。」

 

【ごめんなさい。その件は本当にごめんなさい。】

 

「……一応聞きますけど、ちゃんと人間に擬態できるだけの情報は溜めて来たんですよね?首を横に振ったらグーで殴りますよ??」

 

………無言でディーヴァから目を逸らしたら右ストレートが飛んできた。しかも顔面ど真ん中に。ヤバいソーマに出くわしてからあいつ殺すのに夢中で忘れてた。なんで忘れた??え、こんなことある??いくらなんでもバカ過ぎない??もう二、三発殴っていいよディーヴァ。失態に失態か?死ぬ気か??

 

 どうしよう。二次侵攻どうこうどころの話じゃなくなったんだけど。なに?じゃあ今からもう一回ロシア支部内に突撃して人間を捕喰してこいと?こんなバリバリ警戒体勢の戦闘区域に消耗しきった身体で??無理に決まってんだろそんなの。

 

「ほんっとこのご主人様は……保険用意しといてよかったですよ。」

 

【え。保険ってなに。】

 

「さっき私が身ぐるみを剥いだ連中、再起不能にしただけでまだ生きてますから。ついてきてください。」

 

 そう言ってディーヴァは壁沿いに最初の破壊痕の方向へと向かって歩き出す。すると程なくして身ぐるみを剥がれて横たわる神機使いが複数人僕の視界へと飛び込んできた。幸いどいつもこいつもまだ息がある。これはありがたい。

 

 不幸中の幸い、僕はあと少しってところまでは人間を捕喰できている。恐らくここの人間の半分も捕喰すれば僅かに足りなかった人間の情報を蓄積できるはず。

 

 本当に助かった……これはもうディーヴァに足向けて寝れないね。めっちゃドヤ顔してデカい胸を張ってるけど本当誇っていいよ。二階級特進でいいよ。

 

「二階級特進って死んでるんですが??」

 

【とにかくありがとうねディーヴァ。この埋め合わせは今度必ずするから。】

 

 両腕が欠損したままだから蹲る形で、僕はディーヴァが身ぐるみを剥いだ神機使いを捕喰する。逃げられたり騒がれるのも困るから首の辺りを顔本来の口で喰いちぎり、絶命する前に頭から下にかけて順番に捕喰。非常にゆっくりとしたペースではあるが平らげ、その記憶という名の情報を身体に刻んでいく。

 

 一人、また一人。そうして捕喰していくうちに被食者の記憶が自分のものとして累積していく。家族、仲間、恋人……そうした割と無価値な情報と任務や神機使いとしての技術などの有用な情報は取捨選択できない。全てが僕の一部として書き加えられていく。

 

 

 そうやって僕は目の前の最後の人間に口を付けた時。どくんという音と共に僕の身体が脈打ち、全身の細胞が人間という生物の細胞を完全に学習する。

 

 人間は体細胞の作りが全身がオラクル細胞で出来たアラガミとは異なる。今まで口にしたアラガミの性質の模倣は、言わばオラクル細胞の並べ方を変える程度のものであった。

 

 しかし人間の場合は細胞の形そのものから変えなくてはならない。だからこんなに学習までに時間がかかってしまった。

 

 だがそれももう終わりだ。僕は体内で早速自身の細胞そのものを変質させ、アラガミの身体の背中を引き裂くようにして内側から開いた。

 

 あまりに歪で醜悪なそれは傍から見れば悪質な着ぐるみのようにも蛹のようにも見えるだろう。しかし僕が中から新たに生成した肉体を起こすと、アラガミとしての身体は徐々に霧散を始める。

 

 やがてアラガミの身体はボロボロと崩れ落ち、人の形質を模倣した僕は元の身体を脱ぎ捨てる形で静かに地面へと着地した。継ぎ接ぎだらけの身体を捨てた肉体は信じられないほどに軽やかで、頭の中は何とも晴れやかな気分だった。

 

………しかし容姿や外見については特に考えず変異したが、今までこんなやつ食べたことあったっけ。そう考えずに居られないような、見覚えのない容姿の人間へと僕は変わり果てていた。

 

 なんせ肩にかかるふんわりした髪の毛は月光みたいな白銀色で、瞳はこれまた朝焼けみたいな赤にも紫にも見える不思議な光を宿す。

 

 太陽に翳すように広げた左手のひらに邪眼を開いて自分の顔を凝視するも、その顔付きは少年とも少女ともつかない幼げなもので長いまつ毛や肌に至るまでもが雪みたいに白い。

 

 衣服は肉体の構築と共に散々口にした神機使いの記憶を頼りに、裸体の表面に繊維の性質を模倣しつつ変質させることで黒いボロボロの外套を生み出す。こんなみすぼらしい格好したのが助けてって逃げ込んできたらきっと招き入れてくれるだろう。けど念の為潜入時に軽く土埃は被っておこうか。

 

 仮にそのくらい汚れたとしても、僕は本来(アラガミ)の姿とはあまりに対称的な姿になった。あっちが生命の理を土足で踏み躙る程に歪で醜悪なのに対し、こっちの姿は軽く引くぐらいに端正で美人でさ。身長は男性として見たら相当に小柄な部類だけど、今回はそれすら幸いと作用した。

 

 おまけに身体付きは全体的に細くも柔らかめで、変異しておいて性別が自分でも分からない始末。……こんな不思議なやつ口にしたら覚えてると思うんだけどな。サリーとディーヴァはこの姿を見たことある?僕が今まで口にした人間に関しちゃ僕より二人のが詳しいでしょ。

 

【ううん……全然ない。】

 

「ご主人様……いつの間にそんなかわいい子を手にかけたんですか。いい趣味してますね。」

 

「うっせ。僕も口にした覚えがないんだよ。」

 

 そう咄嗟に返した声さえも、雑音の混じらないハスキーな少年のものだった。声変わりを迎える前のその声は、到底戦場には似つかわしくないものでさ。尚のこと、僕が食った人間の中には心当たりがない。

 

 しかし二人もこの姿の人間を知らないとなると、だ。僕がサリーやディーヴァに会う前に口にした人間……なんていないんだよな。僕が人間を口にしたのはサリーとディーヴァに会ってからだから。

 

 そう考えたら可能性として上がるのはひとつ。僕がアラガミになる前の人間の姿がこれだったか。そもそも覚えてないからなぁ人間時代。こんな超美形だったら普通に暮らしてたらさぞ人生楽しかったろうに。

 

 人の美醜とか分からないサリーはえらく小柄になってしまった僕を困ったように抱きしめようとはしているが、元人間のディーヴァは僕の顔からつま先を眺めて何やらうんうんと頷いている。こうなるまでに随分と手間をかけさせちゃったけど、満足してくれたみたいでよかったよ。気に入ってくれた?

 

「えぇ。身なりから容姿に至るまで潜入には理想的な姿だと思いますよ。まず間違いなく動くまではバレないでしょう。」

 

「そういう君はデカいしくっそ目立つけど大丈夫?結晶の右手とかどうにか出来ないのかい。」

 

「いえ。この手でしか私はアラガミの能力を使えないので。上着で隠せば大丈夫ですよ。」

 

 そういうものかね。けど言われてみればディーヴァってアラガミの形態になる時もあの腕を叩きつけて変身してたっけ。ならしょうがないかな。

 

 ぶっちゃけ腕がどうこう以前にディーヴァは身長でかくて目立つし。中が襲撃に晒されて大騒ぎになってれば、多少の違和感は目をつぶって通してくれるだろう。まず向こうはアラガミが人に擬態するって発想すらないんだから。

 

 しっかし……全身を伸び伸びと動かしてはみるが、身体能力はさすがに落ちるな。一応蝕刃は右手から形成できるとはいえ、能力の大半も使用が不可能となっている。神機使いとの戦闘は極力避けるべきか。

 

 あくまで目的は新型神機使いの候補者や関連施設の破壊と、フェンリルの重要設備の殲滅。支部を機能不全に陥れるための破壊工作だ。

 

 それとあと中の避難民の大量殺戮ね。こっちは壊すだけ壊したら最後に仕上げとしてやる感じかな。いやぁ心が痛むね。どう皆殺しにしてやろうか。毒ガス訓練でも開始するか?そのくらいならこの身体でも行けるはず。

 

「うっわ……絶対心痛んでませんよこの人。すんげぇ楽しそう……」

 

【楽しむのはいいけど気をつけてね……?もう怪我しちゃいやだよ………??】

 

「大丈夫大丈夫。今回はお目付け役(ディーヴァ)もいるからさ。ちゃんと守ってもらうよ。ね?」

 

 そう言ってディーヴァの方を振り向いたら「え?」って唖然としてた。なに不思議そうにしてんだ当たり前だろ。人間に擬態した僕はめちゃくちゃ脆弱なんだから。

 

 それともあれか?メイ●リクス大佐みたいな体格に身体を再構築するか??今まで口にした人間の容姿を参照したら多分調整できるぞ。そうしたら僕もディーヴァみたいな筋肉モリモリマッチョマンの変態に────

 

「わーストップストップストップ!!それはダメですご主人様!!」

 

「なんでだよ。」

 

「華奢で儚い美少年にそれはあまりに勿体ないです!!ていうかその顔でゴリラは色々と事故ですよ!?ご主人様はちゃんと私が守りますから!!ね!?」

 

 頼もしくて大変よろしい。ま……そもそも守るも何もこそこそと相手が僕らに対抗出来る手段を潰して回った後に皆殺しにするって作戦なんだから。変なドジ踏まなきゃ至って安全なんだよ。

 

 けど不測の事態はいくらでも有り得るし。余計な墓穴を掘らないためにも、お互いにしくじらないよう行きたいものだね。ディーヴァはまだしも僕が何かやらかさないようにサリーには祈っててもらおう。外に破壊と混乱を撒き散らしながらね。

 

【うん。外は任せて……アラガミの使い方は分かった。】

 

「よしよし。偉いねサリー。……んじゃ、そんなサリーのためにさらなる戦力を与えてあげよう。」

 

【えっ。】

 

 

 僕がパンッと手を叩くと同時。地面からボコォ!!と音を立てて無数の変異したコクーンメイデンが生えてくる。そして僕が目を閉じて感応現象を発動すると同時。五十近くのコクーンメイデンは一斉にブルブルと震え出し、その身にとある変異を引き起こした。

 

 こいつの改造案には少し悩んでたんだけどね?今回の戦いのおかげでいい運用方法を思いついたんだよ。その使い方はサリーに感応現象で伝えるけど……その全てをサリーに伝えると、サリーは少々難しそうな顔をしていた。扱い自体は簡単でしょ?

 

【簡単だけど……いいの?これ………】

 

「いいよいいよ。倫理観的には超アウトだけどね。ゾルダートとフリューゲル動かす前にこいつら使うだけでいいから。」

 

「あの……ご主人様?何作ったんですか??外見はそんなに変わってませんけど………あと沢山いるとキモいですね。コクーンメイデン。」

 

 ディーヴァがフルフルと震えるコクーンメイデンの群れを見つめてげんなりしつつも僕に尋ねてくる。んー……教えてあげない。だってディーヴァ知ったら絶対反対するもん。その威力はきっと僕らが潜入した際に目の当たりにすることになるから。楽しみにしててよ。

 

 さてと。第二次侵攻の準備はこんなところで十分かな?あとはそうだね……今回の作戦で手に入った【装甲化】と【捕喰攻撃】の能力をサリーとディーヴァに感応現象で共有して、と。だいぶ強力な能力だけど弱点も多いから、くれぐれも使い所は慎重に選んでね。そもそも使う機会あるかはさておきね。

 

【うん……あなたも気をつけて。能力ありがとう……】

 

「平気だと思うけど無理はダメだからね。外は任せたよ。」

 

「あなたがそれ言いますか。……サリーはなんか困ったことあったら感応現象で呼んでくださいね。余裕あったら出ますから。」

 

 そう言って僕とディーヴァはサリーと別れ、再び戦乱の渦中へと身を投じた。防壁の破壊痕に向けて足を進め、人の目を盗んで壁の中へと侵入。ディーヴァに手を引かれる形でフェンリル中央施設に向けて歩き出す。

 

 こうしてロシアの砦に引導を渡すための最後の作戦が幕を開けた。不思議と気分が高揚したのはこれで人類の破滅が始まる。そんな確信と共に、ようやく僕が心の中で抱いた宿願を叶えられた喜びが今になってやってきたせいでもあった。

 

 ついでにその様子はディーヴァにも筒抜けだったらしい。僕の手を引くディーヴァはそれは微笑ましそうに僕を見つめていた。

 

 

「………ご主人様。人間に()れて良かったですね。」

 

「本当にね。やっぱこの身体が一番落ち着くよ。」

 

「あの時の質問を返すようですけど、人間の暮らしに戻ることもできるんですよ?本当にこのまま作戦を実行していいんですか?」

 

 そんな分かりきったことを聞くなんて……ディーヴァも意外と意地が悪いね?人間の真似事(くらし)なんて人間滅ぼしたあとでもいくらでも出来るんだ。その相手が人間からサリーやディーヴァに変わる。それだけの話だよ。

 

 僕が人間性を獲得したからって、それが人類に牙を剥かない理由にはならない。僕らの理想郷のために人類は滅ぼす。それだけは絶対に変わらない。

 

 予定通りだ。予定通りにロシア支部をぶっ潰し、ここを人類絶滅のための最初の拠点とする。心配しなくても今度は上手くやるさ。そのために僕は人間になったんだから。




自分の中でだいぶ暴挙に走った自覚がありますのでアンケートです。性癖に従ってお答えください。

クリーチャーが美少年に擬態するのは

  • 私は一向に構わんッッ
  • 粛清ッ!!遺言は簡潔にな!
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