神様にされたら愛され過ぎてヤバい件について。   作:Am.

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あらすじ少し変えました。改めて読み直すとこの小説書き始めた頃の話が拙いし矛盾も酷いからちょっと全体的に書き直したい今日この頃。

区切りよくなったらプロローグだけでまとめてリメイク出すかもしれません。


23.偽装(トロイ)

「で、ソロモン。他の支部になんて連絡するの?」

 

ここはロシア支部通信室。当初の予定通り、僕はジゼルの手を借りることでフェンリル本部への連絡を繋いでいた。と言っても秘匿回線でのチャットなんだけどね。その機材の操作方法が分からないってことでジゼルの手を借りたんだけど、案の定というかジゼルはこうした機器の扱いにも精通してた。

 

おかげでこれで、フェンリル支部間で『ロシア支部が第零接触禁忌種ソロモンに落とされた』って情報は撤回できる。そうすればいよいよ、フェンリル全支部への同時攻撃作戦が現実味を帯びてくる。

 

「んっとね。ジゼル、今から僕が言う通りに打ち込んで。」

 

「おけおけ。……よし、どうぞ。」

 

「『こちらロシア支部。本日第零接触禁忌種ソロモンの撃退に成功。しかし被害甚大。至急救援を求む。』……こう打って。なるべく切羽詰まった感じで。」

 

「は?????」(なに考えてんだこいつ。)

 

そう頼んだところ、ジゼルから取り繕う気ゼロの困惑した返事が返ってきた。初めてこの娘の本音を聞いた気がするよ。

 

けど無理もない。さっきロビーでした話だと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()通信を飛ばすって話だった。これでは言ってることが真逆だ。この内容ではまず間違いなく、フェンリルからこのロシア支部に人材が派遣されてしまう。その中には当然神機使いも含まれるだろう。

 

当然僕に取り入ろうと従順に振る舞うジゼルも、僕の言葉には反論を示した。しかし僕がこんなフェンリルの人間を招くような文書を飛ばすことにはちゃんと意味がある。

 

「あのね、ソロモン?それだと他の支部から神機使い来ちゃうし……こうもっと、『ソロモン追い払ったからもう大丈夫』みたいな文章の方が良いと思うなー?ジゼルちゃん。」

 

「こんな丸一日以上も戦時中なのに音信不通だったんだ。『無傷でピンピンしてます大丈夫』って方が違和感あるでしょ。この惨状を見て逃げた連中もいるんだし。」

 

「あー……それは確かにそうか。え、でも大丈夫?これだとマジで神機使いとか来ちゃうけど??」(待て待て。なんでこいつ、極東の奴らと支部長がここから逃げたのを知っている?あいつらとは顔見知りだったか?有り得るな……)

ロシア支部が焼き払われて壊滅する状況を目の当たりにした極東第一部隊がいる以上、『ここ無事だから来なくていいよ』って言い訳は通用しない。それならいっそ、『頑張って撃退したけど壊滅しかけてるから助けて』って助けを求めた方がフェンリル側からしても納得できる。さっき撃退したってことにすれば、返信が遅れた理由にもなるしね。

 

ぶっちゃけ僕の目的はこのロシア支部をフェンリル支部の一つとして再興させることで、そのために中にフェンリルの人間が来るのは別に問題ないんだ。

 

とはいえさっき『神機使いが来たら堕し児は皆殺し』って脅した手前、ジゼルが心配する気持ちもよく分かる。だから僕は心配そうにこちらを見つめるジゼルに対し、態とらしく悪く笑ってみせた。

 

「……確かに僕はさっき『神機使いが来たら皆殺しになる』って脅した。けどそれは、君達がアラガミだってバレたらの話だ。」

 

「えっ。……あぁなるほどそういうこと。ほんっとキミは悪い子だね??言うこと聞かすために、わざとあの子達を脅したんだ??」(そしてこいつ、ターミナルに書き込んだのも最初からフェンリルの連中を喚ぶためか。ならこいつの真の目的は────)

「そういうこと。」

 

確かに僕は神機使いが来たら堕し児は皆殺しにされると脅した。しかしそれは、堕し児がアラガミだとバレたらの話だ。

 

人間性を獲得して人の姿形を取った堕し児は、普通の人間と見比べても外見上の相違点は一切といっていいほど存在しない。それこそ『神骸種は人間に擬態できる』って先入観が無い限り……いや、仮に先入観があったとしても気付けないほどに。

 

つまりフェンリルの連中がこのロシア支部にやって来たところで、彼らの目の前で堕し児の能力を用いなければアラガミとバレるような事は無いのだ。他ならぬ数多の人間を喰い散らかしてきた僕だから断言できる。例え純度百パーセントの人間と堕し児を並べたところで、その二者を見分けることは僕でも不可能だ。

 

それこそ二つを見極める新技術でも無いと、フェンリルの人間は堕し児と人間を見分けられない。そしてそれどころか、フェンリルは堕し児という人間性を獲得したアラガミの存在すら知らないのだ。思いつこう筈すらない。

 

だからこそ僕は『来なくて大丈夫』という違和感しかない文章ではなく、『壊滅しかけでヤバいから助けて』と救援要請を飛ばさせた。それでフェンリルの人間がやって来たとて何も問題は無いんだ。けどそれは同時に、ジゼル達堕し児にとってのある懸念を生むことにもなる。

 

何しろフェンリルの人間が入来すれば、堕し児は僕を含めて支部内でアラガミの能力を使えなくなる。それはつまり、実質僕への復讐が不可能になるということだ。

 

何しろ僕と戦う機会が失われると言っていいわけだから。支部内で能力使ったらアラガミだってバレるからね。そもそも僕に喧嘩売るような真似そのものが出来なくなる。

 

だから当然ジゼルはそう提案した僕に対し、頭の中でどう反論したものかと悩んでいる。アラガミだとバレないとはいえ、フェンリルの連中が支部内に来るのが堕し児に不都合なのは変わりないんだ。

 

ただその一方で、僕の言う通りに救援要請を送る方がフェンリルに受け入れられやすいのも事実。そこはジゼルは頭がいいしちゃんと理解してる。そのせいで余計に僕に反論できないし、友好的に振る舞うと公言した矢先「お前に復讐できねえじゃねえか汚えぞ」と内心を吐露することも出来ない。

 

にも関わらず苦々しい表情とか一切見せないのはほんと凄いと思うよ。そんなに僕のこと殺したいか。ただニコニコと笑い、態とらしく「んーーーー」と唸ることで僕に内心を悟らせまいとしてる。

 

まぁ実際は、僕としても堕し児達が僕を相手に戦闘経験積めなくなるのは困るからね?ちゃんとその対処法は考えてあるわけなんだけど。

 

「そうだねぇ……そっか。確かにそれなら、素直に助けを求めた方がいいのか。ほんっと………キミは頭が回るね。アラガミのくせに。」(こいつ、最初から私達が逆らえない状況を作ろうとしてたんだ。これで私達はこいつに手を出せない。)

「ただね。こう送る場合、送って直ぐにやる事があるんだよ。」

 

「えっ。今度はなに。」(侮っていた。こいつの知能は下手をすると人間のそれを上回る。能力だけでなく知能までもが、こいつは人間を超越してる。やっぱ正面きってやり合うのは無謀だ。)

なんてことは無い。今回のロシア侵攻戦、ここに駐留していた極東の第一部隊は戦況を見限って撤退した。ここの支部長や新型神機の研究データ、その他諸々の最低限の人類の財産だけ持って。そうせざるを得ないほど、フェンリル側からしてこのロシア支部での戦争は人類が劣勢だったんだ。

 

そんな中。殆どの神機使いが死んで民間人しか残っていないような戦場で、どうやって攻略法も定かでは無い新種のアラガミの群れを撃退したか?さっき救援要請を求める方が違和感ないと言ったばかりだが、そもそも今の状態だとあれから一日以上もロシア支部が生き残っていたって前提自体がおかしいんだよ。

 

もし外部に『どうにかソロモンを撃退した』と送る場合。どうやって撃退したか納得できるだけの状況が必要だ。こんな神機使いほぼゼロで民間人だけ収容した施設が一日も無事だったというのは、どう考えても疑われる。

 

故に僕が考えた筋書きはこうだ。殆ど民間人しか生き残りのいなかった僕らは、その民間人を片っ端から神機使いに変えてアラガミの群れに突撃させた。そうする事で夥しい死人は出したものの、どうにかソロモンとその軍勢を消耗させて撃退できた、と。

 

当然この筋書きで行くにはそれなり以上の数の神機使いを用意しなくてはいけない。が、幸いここには既にアラガミ化した人間達が溢れ返っている。言うまでもなく堕し児達だ。ここまで言えばもうジゼルは理解しただろう。僕が言うやるべきこと。それは────

 

「ジゼル。君には上手いこと堕し児達を言いくるめて、彼らに神機を握らせてもらいたい。」

 

「待って待って待って。キミはアラガミだから知らないかもだけど、神機って適合に失敗するとアラガミ化しちゃうんだよ??そんなのあの子達に無理強いなんて────いけるね???」(こいつ神機使いの作り方も知ってんのか?なんで??けどこれなら、まだ私達にも復讐の機会は残る。むしろ、やりやすくなる。)

「そう。行けるんだよ。」

 

これには思わずジゼルとハイタッチ。何しろ堕し児は既に頭頂部からつま先に至るまでアラガミだから。神機の施術に関してはノーリスクに等しい。

 

仮にもし神機使い用の健康診断(バイタルチェック)とかされてアラガミ認定されても『なんか適合に失敗したけどアラガミ化したまま人の形を留まられた』って言えば堕し児の存在自体は秘匿できる。

 

幸いここには神兵計画っていうディーヴァが犠牲になった前例もあるし。なんか因縁つけて来た時用にその計画書も偽造して、いざとなれば叩きつけてやればいい。

 

そして神機の施術そのものが堕し児はノーリスクで行える以上。民間人を即席の神機使いに変えて特攻させたという筋書きも、信憑性を帯びさせる事ができる。何しろ神機の種類を問わずに施術をノーリスクで行えるんだ。そうなれば握らせるものは決まっている。

 

「その上で、堕し児達に施術するのは唯の神機じゃない────()()()()を握らせる。この僕も含めてだ。」

 

「本気で言ってる?新型神機なんて、未だに適合した子は一人もいないんだよ?確かにキミ達は適合失敗のデメリットは無視できるけど………」(それにこいつ、なんで新型神機の事なんて知ってる?どれだけ神機使いの内情に精通してるんだ。ただのアラガミのはずなのに。人の真似事したアラガミのはずなのに、どうして────)

「だからこそその性能は未知数だし、多少の暴論も押し通せる。数を揃えられれば尚更だ。どうせ神兵計画とかの研究資料は持ち出せても、新型神機まで持ち出す余裕はなかったはずだし。それを堕し児(みんかんじん)に握らせ、ソロモンにぶつけたら撃退できた。こういう筋書きで行く。いいね??」

 

ついでになにか疑われた時は堕し児自体を『新型神機に適合失敗するとこうなります』ってガセネタ流しちまえ。人の形を留めたままアラガミ化したって前例は神兵一号(ディーヴァ)がいるし。

 

あっちは最終的に身体が限界を迎えてバルファ・マータになったけど、堕し児も適合失敗しても直ぐにはアラガミにならないって事にすれば。何かの節に生態データを疑われても、それでゴリ押してしまえばいい。民間人に適合率皆無の神機を握らせて特攻させたとか倫理観ガン無視もいいところだけどね!!

 

けどそれやらせたのも元民間人の僕って事にすればいいし、そうしなきゃロシア支部は滅びてたって言えば何も言い返せないだろうから。元は上の連中と極東の連中がトンズラしたせいでこんな手を取らざるを得なくなったんだから。

 

それで完全にアラガミ化してダメになるまでは戦力として運用できるとなれば、フェンリルのお偉いさんも文句は無いだろう。ガタガタ抜かされても立場は僕達の方が強いんだ。

 

 

そしてこの方法で行くなら、実は堕し児達に関しても重大なメリットがある。それは神機使いという身分になったことで、フェンリルの連中が来た後にもここに正式に住み着くことが出来るのがまず一つ。

 

と言ってもこっちは些細なものだろう。分からないけど。でも復興後にも二度と居住区に戻る必要が無くなるってのは堕し児達にはありがたい話かな?でももう一つの利点に比べりゃ些細なものだと思う。

 

何しろもう一つのメリット。それは神機使いである以上、僕も堕し児も否応なく出撃する機会が訪れるということだ。新型神機使いともなれば尚更だ。

 

もしそうなれば、出撃先は異なれど僕と堕し児を一時的にロシア支部の外へと向かわせることが出来る。つまり僕を襲撃して抹殺する大チャンスである。ジゼルが僕のこの暴論に乗ってきたのもそのせいだ。

 

これでフェンリルの連中が来て、二度と堕し児の力が振るえなくなるという前提は覆った。僕はまず間違いなくロシア支部の外へと出撃することにはなるし、タイミングを合わせて堕し児の部隊を出撃させれば襲撃も容易となる。そこらの任務の用意とお膳立ては、オペレーターのジゼルの専門だ。

 

その上で外に出て殺り合う以上、蝕鎧を纏うためのオラクル細胞も満ちている。僕も神機使いの真似事をしなければいけない以上、堕し児達にもより本物の神機使いとの実戦に近い戦闘経験を積ませることが出来る。このロシア支部の無事を偽装できる上に、僕にも堕し児にも得しかない完璧な計画というわけだ。

 

それでもしロシア支部が完全に復興したら、今度は各支部にお礼として新型神機使い(堕し児)を戦力として派遣してやればいい。それで各支部の正確な位置と間取りを把握したら、いよいよパンドール(害悪コクーンメイデン)を用いて全ての支部を同時に地獄に叩き落とす。それで全ての人類の絶滅は完遂するって寸法よ。

 

何ならその頃には堕し児達も百戦錬磨の神機使い殺しに成長してるはずだから。そうなればパンドール抜きにやり合ったところで、僕の勝ちはほぼ約束されている。

 

「………という訳でジゼル。さっき僕が言った通りに、救援要請を送って貰っていいかな?」

 

「もう送っちゃった。……復興に手を貸せそうな手の空いてる支部を探すから三日後にもっかい連絡よこせって。」(とにかくこれでソロモンへの復讐の機会は確保できた。最も、こいつがその盲点に気づかないとは思えないが……何を考えている?それにさっきこいつ、神兵計画って言った?)

「よしでかした。三日後……三日後か。思ったより猶予があるな。」

 

こんな死にかけの支部からの救援要請だし、もっと早急に救援が来るものだと思ったが。でもよくよく考えれば、まだ襲撃に遭ってる最中なのに救援欲しさに嘘の状況報告をこっちが送る可能性もある。本当に無事にソロモンを撃退したなら三日くらいは生き残るはずってことか。ある種のここの無事の確認って思っていいんだろうね。回りくどい。

 

ここに住まう人間からすれば堪ったものではないが、幸いにも今の僕らにやることは多い。堕し児達に神機の適合試験を受けさせるのはそうとして、サリーを人の姿に封じて支部長室に匿ったり、外に駐留してる人間性未獲得の堕し児と神骸種を居住区から撤退させたり……

 

あとはなんだ?レーダーか。アラガミの反応を探知するレーダーも、設定を弄って僕らの反応を探知しないようにしなきゃいけない。神機使いとかは映らないんだし、個別に設定できるはずだから。これもジゼルの手を借りる必要がありそうだな。

 

そしてその上で、実はこのロシア支部にはまだ堕し児ではない人間も存在する。僕がここを襲撃した際にパンドールを爆破したのは一階。そして神機使いの殆どは外で戦闘していたため、そのまま外で死んで堕し児の贄になった。

 

けど戦闘で負傷して撤退した負傷兵や、その面倒を見る医療スタッフなんかは四階にいた。何なら今も医務室にいるし、下の騒動にも気付かずに療養してるところだ。

 

こいつらは当時の惨状を目の当たりにした生き証人。状況を偽装したい僕にとっては邪魔になる。外の堕し児に人間性を獲得させるための餌にするなり、同じく堕し児に変えて口封じするなりして処理しとかなきゃならない。それも秘密裏に。

 

何しろジゼルやディーヴァを始めとする堕し児にバレたらまた面倒だからね。顔見知りも何人かいるかもしれないし、そうでなくとも負傷兵の処分なんて見せられるわけない。特にジゼルは聡いから、悟られないようにしなくては。

 

……………………………………………。

 

 

「………やることが多いな。三日か。」

 

「まぁ三日もあればなんとかなるっしょ。他の子を神機使いとして仕上げるのはジゼルちゃんやっとくから。」(ダメだ。知りたいことばかりが増えていく。こいつに直に聞かなくては。でもどうやって?)

「手間かけて悪いね。僕が行くとまた乱闘になるから助かるよ。」

 

僕をぶち殺したいって下心があるとはいえ、本当にジゼルはよく僕に貢献してくれる。特に堕し児にあれこれ頼む仲介役として、今の僕にジゼルの存在は不可欠だ。まぁその間に間違いなく堕し児達にも余計なことを吹き込むだろうって、そんな嫌な確信はある訳なんだけど。今の僕にとっては些細な問題だ。

 

けどジゼル自身、僕が彼女を頼らざるを得ないのは既に理解している。きっとそのせいだろうね。ジゼルはゆっくりと僕に足を進めると、僕の身体に正面から抱きついてきた。

 

堕し児の目がないのにこうスキンシップの距離感が近いのは、半分くらいは彼女の癖みたいなものらしい。ジゼルは誰にでもこんな感じで接するみたいだから。悪い女だよね。それで男だけじゃなくて女の子の堕し児まで落としてるんだから相当だよ。

 

実際こうされると頼まれ事とか拒否しにくくなるもの。分かってやってるのか密着すると、ジゼルは緩く笑ってみせた。

 

「ねぇソロモン?代わりっちゃ何だけどさ。ちょっとだけキミも、ジゼルちゃんに付き合ってくんない?」(一か八かだ。信用はある程度得られた。もしこれで、ソロモンが首を縦に振ってくれれば────)

「いいよ。君だってタダ働きは嫌だろうしね。僕にできることなら何なりと。」

 

「もう、そんな身構えなくても大丈夫だよ。ただちょっと息抜き兼ねてキミとお話したいなって。なんか飲みながらさ。」(いよっっっしゃきた!!いきなりチャンス到来!?頑張った甲斐あったなほんと!!前のクソ支部長よりよっぽど温情だわこのアラガミ!!)

……まぁそれなら別に断る理由もない。実のところ僕も、よく働いてくれるジゼルにはここらで報酬を与えておくべきかとは思っていた。

 

良質な仕事に高いモチベは必須だ。僕に貢献すればするだけ望むものが手に入ると思わせるのは、人間をベースとする以上堕し児には有効な手立てだ。それはジゼルも例外ではない。そしてこれからも彼女の手を借りる以上、そう示しておくのは早いに越したことは無いと。

 

さっきああは言ったものの、実際ジゼルは僕の弱点や隙を探ろうと機会を伺っている。そんなあからさまな話題には触れないまでも、二人で話す時間は欲しがってるんだ。その中で僕についての情報が得られれば、それがジゼルにとっての報酬になる。それくらいは僕も分かってるから、ジゼルの要求は二つ返事で了承しようとしたんだよ。

 

────ジゼルのその言葉の続きを聞くまでは。

 

「つっても下の階は他の子いて乱闘になっちゃうし?()()()()()()()()()()お話する感じになるんだけどさ。」(ついでに後であの子達に部屋連れてったって言ってやろ。神機で滅多刺しにされちまえ。)

「ごめん。やっぱちょっと考えさせて。」

 

「それ最終的に拒否るやつじゃん。なんかジュース奢ってあげるから行こ?そんなに時間取らせないから。確かにジゼルちゃんの部屋ちょっと散らかってるけど。」(おっと、部屋行こって意味は理解してんだなこのアラガミ。ほんと人間の文化に詳しいこと。)

そういう問題じゃないんだわ。今までも何回も普通に抱きしめられたり頭撫でられたりでヤバいなっては分かってたけどさ。さすがに距離感の詰め方バグり過ぎじゃないか??他の堕し児にもこんな感じなの??……こんな感じだったわ。

 

しかもこの女、全員に「みんなには内緒だよ」って言ってるらしい。くっそタチ悪くて笑う。そりゃ堕し児達が揃いも揃ってあんな後方彼氏面するわけだ。

 

……まぁいいか。それなら別に。堕し児も部屋に連れ込まれてんなら「あいつジゼルちゃんに部屋に連れ込まれたんだ許せねえ!!!」って暴動にもならな……いや、バレたら地獄になるな。確実に。そして間違いなくジゼル本人も堕し児を焚き付けるネタにする。何なら僕に手を出されたくらいは言うだろ。

 

そう思ったけど、よくよく考えたら二人きりで二階来た時点で堕し児にはそういう認識されてたわ。ならいいな。既に地獄が確定してるなら。なんも良くねえけどいいわ。諦めよ。

 

「………いいよ。今後はやる事多いし、僕も今後のスケジュールとか相談したいからね。」

 

「えー。ジゼルちゃん、仕事の話とか嫌なんだけどなー。どっちかって言うとキミの話とか聞かせてよ。」(寧ろそのためにあくせく働いたんだよこちとら。)

「僕の話……ね。あんまり面白い事は言えないと思うけど、それでいいのかい?」

 

確認程度に尋ねると、ジゼルは満足気に笑みを浮かべて僕の手を引いた。何ともまあその立ち振る舞い全てが蠱惑的というか、あざといって言うか……性経験皆無のクソザコ童貞だったら数秒で陥落するだろうなって嫌な確信があった。ほんとサリーやディーヴァのおかげで多少は美人に耐性が出来ててよかったと思う。

 

……ていうか、堕し児の女の子に部屋に連れ込まれたなんて知ったらサリーやディーヴァがなんて言うやら。あっちはあっちでサリーの身体を人の姿に封じるために頑張ってるのに。

 

そう考えるとすっごい罪悪感っていうか……別になんかやましい事する訳でもないんだけどさ。どっちかって言うとやること腹の探り合いなんだけど。それでもめちゃくちゃヤキモチ妬くのが目に見えるようで申し訳なくなる。

 

「そういえばソロモンってさ。今日見た時から左手なかったけど、どこやっちゃったの?上の階でなんかあった??」(こいつ腕生えたらさらに戦闘能力上がるんだよな。ほんと面倒臭い。)

「痴情の(もつ)れってやつだよ。」

 

「意味分かって言ってる???」(こいつ女いんの!?アラガミなのに嘘でしょ!?まさかあの娘じゃないよね??あの娘ショタコンだっけ??)

ジゼルが信じられないものを見るような目で僕を見つめてくるが、嘘は言っていない。……ほんと。なんで僕の周りに集まる優秀な子は女の子ばかりなのか。なんて、贅沢な悩みだってことは分かっちゃいるんだけどね。

 

因みにジゼルはそう聞いた上で僕に♡‬マークを飛ばすのはやめなかったし、自重するような事も無かった。ほんっと、僕を殺したいってだけでよく()るよ。僕のこと憎くて憎くて仕方ないだろうに。そのうちサリー辺りに消されるんじゃないかなこの娘。





出てから部屋に連れ込むまでたった二話で男を部屋に連れ込むヒロイン(仮)がいるらしい。

はやくない???(全ギレ)

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