神様にされたら愛され過ぎてヤバい件について。 作:Am.
こんな内容スッカスカなのに???
お ろ か も の(アルダノーヴァ)
書きたい内容決まってるんだからさっさと更新しろ(戒め)
そうして僕は、ジゼルに招かれるがままに彼女の部屋を訪れた。正直な内心を言うならこの時点でヤバいなっては思ってた。なのに強めに拒否ってでも離れなかったのは、ジゼルに
「どうしたのソロモン。……なんか緊張してる?」
「緊張するなって方が難しくない??……ジゼル、これは何のつもりかな。僕のこと聞きたいって話じゃなかったの。」
「そうだけど?……あっ。もしかしていやらしいこと期待しちゃってる??女の子みたいな顔して、ソロモンもちゃんと男の子なんだねぇ。」
そうニヨニヨと笑ってジゼルが僕の顔を覗き込んでくる。……ベッドに二人並んで座るのは、もうそういう雰囲気にしか思えないんだよ。しかもジゼルは僕の腰に手を回して、ぐいぐいと抱き寄せてくるし。
どうしてこうなった??いや、ジゼルの部屋が思った以上にゴミ屋敷で座れる部分がここしか無かったからなんだけどさ。
僕は造書庫を介して堕し児の思考が読める。それはジゼルとて例外では無い。でもだからこそ油断した。というか、造書庫の思わぬ弱点が露呈した。
確かに造書庫は堕し児の思考を読めるが、あくまで読めるのは思考と記憶だけ。わざわざ気に留めるまでもない当人にとっての些事は、僕には把握できないんだ。
そして男慣れしたジゼルにとって、男を自分の
「ま。やらしい事したい〜って言うならジゼルちゃんは全然いいけどね??そっちのが色々聞くより、キミのことも分かると思うし。」
「性交で相手の性格を把握する能力か。大したものだが一応女の子なんだから、自分の身体は大事にしなさい。」
「わぁ紳士。じゃ、優しいキミにはこれをあげようね。」
なんてケラケラと笑いながら、ジゼルは僕になにかを渡してくる。………缶ジュース?あぁ、なんか飲みながらって言ってたっけ。
でも何気にこの世界に来て、僕が人間の飲食物を口にするのって初めてかもしれない。いや……マグノリア・コンパスにいた時はどうだったかな。もう覚えてないや。
何にしろ毒とかは入って無さそうだし、入ってたとしてもサリーの体質を併せ持つ僕に毒は効かない。ジゼルも僕の反応を見てるし、ありがたく頂こう────
「────────っ。」
「お?なになにどしたの。そんな驚いた顔して。」(えっ、なにその顔。)
「………めちゃくちゃ美味しい。なにこれ。」
そう素の反応をしてしまうほどに、缶の中の飲料水は澄んで味わい深かった。分かってる。なんて事ない、自販機で安価で売られてる缶ジュースだ。フェンリルに勤める人間にとっては何でもない、日常的に口にするであろう文明の味。ただ僕にとっては、それがあまりに新鮮だった。
………いや、新鮮ってのは違うか。僕は忘れていたんだ。長過ぎるアラガミとしての暮らしで、人の暮らしとその快適さを。食生活ひとつ取ってもそうだ。人間の食事がこうも口に合うとは……文明の荒廃と共に、食生活も荒廃したものだと思っていたのだが。このままだとアラガミとかサリーレベルじゃないと食えなくなる。そう確信するレベルで、人間の食事はヤバかった。
「あっはは。そんな美味しかった?……キミがそんな顔するなんて思わなかったな。目キラッキラじゃん。」(………そんな美味しかったんだ。かわいい……ッ!?)
「正直僕も驚いてる。……こんな美味しいもの飲んだの、きっと初めてだよ。」
「………そっか。
そしてそんな初めて見るレベルで喜んでるらしい僕に、ジゼルがクスリと笑いながらそう漏らす。……ほんと、胸の内が顔に出ない娘だこと。そもそも嘘という概念を知らないサリーや素直なディーヴァが異例なだけで、普通はこんなもんなのか?いや、復讐誓った相手にここまで平静装えるのは早々居ないよね。ていうか居てたまるか。
つまりそれだけ僕に敵意を悟られまいとするジゼルは、僕が隙を見せるまでは友好的かつ役に立つわけで。僕がほぼ一気に缶の中身を飲み干すと、それを見たジゼルは僕に身体を寄せてきた。
「とはいえ……こんな味の薄いジュース一つでこんな喜ぶなんて。キミは健気なんだね。今度プリンのレーションとかあげよっか。キミ絶対好きそうだから。」(逆に活用するんだ。餌に毒盛るとか、なんか使い道はあるはず。)
「ありがたい話だけど遠慮しとくよ。……これ以上君達の食事に慣れると、前の食生活に戻れなくなりそうなのでね。」
「むしろそうなってくれた方が人類は安泰なんだけどな。……第零接触禁忌種が餌付けで大人しくなってくれるなら、多分フェンリル総出でキミにフルコース積むと思うよ。」(何にせよここまで人間の食事にこいつが反応を示すとは思わなかった。他にもこういう隙見せそうな生態はなにか無い?例えば────)
などと、恐ろしいことに僕の弱点が早速一つ露呈した訳だが。まだまだジゼルの僕に対する攻撃は始まったばかりだった。と言うのもね?僕がもらったジュースを飲み終えてその缶を床に置いた途端。ジゼルは僕の首の横に掌を当てると、ぐいーっと僕の身体を横に倒してきた。
おかげで僕はジゼルの太ももの上に頭を置くことになるんだけどさ。そうするとジゼルは、僕の髪を長い指でさも愛しそうに……そう錯覚させるような手つきで撫でてきた。
要は膝枕されてるってわけ。この娘と出会って一時間経ってないって何回言ったっけ。されるがままされてる僕も僕だけど。スラリとした体型だと思ってたけど、こうやって甘えるとめちゃくちゃ太もも柔らかい………
「………じゃなくて。ジゼル、これは何のつもり?」
「んーん。いや、実際キミって人間の女の子に興味とかあるのかなーって思って。人間の男の子はこうすると喜んでくれるんだけど。……どう?ジゼルちゃんの膝枕。」(もしこいつが欲情とかしてくれるなら、殺りようは幾らかある。期待薄みたいだけど………)
「すごい柔らかくて良いけどさ。……仮に僕が人間の女の子に興味ある、って言ったらどうするの。懐柔でもする?」
そして僕を真っ赤な瞳で見下ろすと、僕でなくともわざとらしさを感じるほどにジゼルは悪戯っぽく笑う。頭のどこかで「これは男共は落ちるわ」と確信を得るほど、それはもう蠱惑的に。
「そうだなぁ。……懐柔っていうか、キミが良いなら仲良くなりたいかな。それでキミが嫌じゃないなら、そのうち恋人になったり。」(よしいいぞ思ったより反応がいい。これなら可愛がった後にぶち殺せる。)
「……………悪趣味だな。僕に取り入ろうとでも?」
「えっへへ……まぁそんなとこ。キミがジゼルちゃんの恋人になったらさ、ジゼルちゃんのお願いも聞いてくれたりするかな〜って。………まぁキミみたいな子がタイプってのもあるんだけど。」(あわよくばこのまま抱いて、隙を突いて殺してやる。)
などと嘘なのに熱の篭った視線を向け、ジゼルが僕のローブの裾の中に指を這わせる。そして僕の柔らかな太ももの肌を軽く撫で、誘惑するよう目を細める。
………恐ろしい事にね。これ仮に、僕がジゼルの誘惑に乗った場合。間違いなく僕はジゼルに、この場で抱かれることになる。まぁその場合これまた間違いなく、してる最中にジゼルに殺されるんだけど。
ディーヴァに先に犯されてて本当に良かった。童貞のままだったら罠と分かりながら死んでた可能性がある。……いや、僕にはサリーがいるしそれは無いか。それは無いにしても、本当に恐ろしい話だよ。
だから僕はジゼルの膝に乗せた頭を持ち上げると、背筋を伸ばしてベッドに座り直した。顔には出さないが、ほんとこの誘惑は心臓に悪いからね。膝枕から離れたせいでジゼルは頬を膨らませてるが、やんわりと提案を断っておく。
「僕に大事にされたいなら、キミはこの調子で働いてくれるだけで十分だよ。……君は身体の安売りが少々過ぎるな。」
「女の子に興味ある、って言ったのはキミだろー。いいのかなー?ジゼルちゃんの彼氏になったら、さっきみたいに甘々させてあげるのに。物欲しそうな顔してたの知ってるんだからなー。」(ダメか。分かっちゃいたけどほんっとガード固いな。)
「生憎と恋人は間に合ってるのでね。魅力的な提案だけど、遠慮しとくよ。………これでも僕は一途なんだ。」
でもそうして断ってる最中。僕はまたしても知ることになった。
確かにこの能力は堕し児の思考と記憶を常に感応現象で記録し続け、スーパーコンピューターのように纏めて僕に全てを伝える。それこそ用いれば相手の心を読む程度は朝飯前で、おかげで今まで僕は堕し児相手に僕なりの最適解を積み重ねて事を意のままに運んできた。
けど────
「ソロモン。………もしかしてその恋人ってさ、フレイのこと?」
────そう、ジゼルが初めて素の反応を僕に返す。僕に身を寄せて尋ねるほどの食い付き様と、突如として出てきたある名前。それらは造書庫でジゼルの思考に先程まで存在せず、たった今の僕の答えで一瞬にして生まれた反応だ。
そして同時。ジゼルの脳内での興味が、一瞬で僕の生態からフレイ・アイアンハート────いや、僕に連なる【伴侶】と呼ばれる接触禁忌種の一角。フェンリルから
造書庫は確かに相手の心を読み、その心象や行動までをも把握できる。しかしそれを加味して僕が行動を起こした場合。それらの行動が相手の心象にどのような影響を与えるかまでは分からない。これが今ジゼルと話していて、思わぬ形で露呈した造書庫のもう一つの弱点。
やってしまったと思った時にはもう遅かった。ニコニコとした作り笑いは何処へやら、僕にディーヴァの事を尋ねるジゼルは、初めて真剣な面立ちで僕を見つめていた。
「………………フレイ?誰だそれは。」
「身体とおっぱいバカでかくて、綺麗だけど筋肉すごい娘いたでしょ。……あの子がキミの恋人なの?」
「あぁ、ディーヴァの事か。……恋人、では無いかな。彼女は僕のことが好きで好きで仕方ないようだが……それがどうかした?」
別段意に介した様子も見せず、真面目な声色で僕に問い詰めるジゼルに軽口で応答する。……が、言葉を吐いて直ぐに余計なことを言ったとまたしても後悔した。
ディーヴァの片想いを知った上でのこの言動。彼女の女心を弄んでいると言外に示せば、ジゼルの殺意を煽る材料になるかと思ったのだが。どうにもジゼルは違ったらしい。
何しろジゼルは何故ディーヴァがロシアを────仮にも彼女の故郷を滅ぼした相手に恋愛感情を向けるのか。一体僕が何をすれば、あの娘が僕をそんな好きになるのか。そう乙女じみた方向から思考を働かせ、僕が言ってもいない余計なことを推測で正確に悟ったのだ。
「そっか。………そうなんだね。あの子はキミが………」(戻してくれたんだ。あの子は、こいつに救われたんだ。なら………)
そのせいで、半ば独り言じみた呟きをジゼルが漏らす。そしてそう口にするとほぼ同時。ジゼルが内心で僕に抱く黒い感情の全てが、大きく揺らいで消えかけるのを僕は理解した。
代わりに生まれたものは、僕に対する感謝と疑問。やってしまったと後悔した時には既に手遅れ。ジゼルは不意に僕の身体に寄りかかるよう身を詰めると────
「ソロモン。………正直に答えて。」(それにさっき、この子は恋人って言った。これじゃ、まるで………)
「ん。………………いいよ。」
「………どうして、キミはあの子を人の姿に戻してくれたの?」(もしかして、この子もフレイと同じで……境遇が同じだから、同情してくれたんじゃない?もしそうなら、この子は……アラガミなんかじゃなくって………)
────ジゼルは、僕の目を見つめながらそう尋ねた。……本当に失言だった。今は僕をどうにか殺そうとあれこれ足掻いてくれた方が都合がいいって言うのに。
とはいえ下手に嘘を吐いても、こうも目を見つめられてはバレるしさ。かと言って目を逸らせば、それはそれで隠し事があると自白するようなものだし。事実上、軌道修正は既に不可能となっていた。
……まぁいい。のらりくらりとはぐらかすだけならやりようはある。それこそ僕は造書庫を用いて心を読めるのだから。ジゼルが期待する答えとは裏腹に、僕はジゼルの問いにこう返す。
「なに?……もしかして戻さない方がよかった?なら望み通り畜生の姿に戻してやってもいいけど。」
「なっ………ちがう!!そうじゃないの!!ただ、私は戻してくれてありがとうって────」(ちがう。ちがう。余計なこと言った。待って。お願い。)
「ありがとうって事は無いだろう。……あの娘は僕を
そう、ジゼルの内心を知った上で僕は尋ねる。実際間違ってはいない。憎いとまでは言わなくともジゼルはディーヴァに思うところはあるし、下の階の堕し児なんかは僕に並ぶくらいディーヴァの事を憎んでいる。それは事実だ。
だからこそ僕はディーヴァを堕し児の面前に晒さないよう支部長室に匿っている。その上で四階より上への立ち入りを堕し児に禁じる事で、僕はディーヴァを堕し児達から隠して守った。
でもそんな事を知らないジゼルは、僕がディーヴァを獣の姿に戻すと提案すると激しく首を振って拒絶した。……ニコニコと笑顔を貼り付けるのが上手だなって思ってたけどさ。こんな顔するんだってくらい、必死に嘆願するように僕の肩を掴んでくるんだもの。ジゼルは自分の事なら随分と耐えられるが、他人が絡むと案外脆いらしいね。
おかげでジゼルの内心で、僕に対する警戒と敵意が再び再燃する。『僕はやろうと思えばディーヴァを始め、堕し児達を再びただの
「私は……下の子達とは違うの。あの子のこと、まだ身体が小さかった頃から知ってるし……妹みたいに思ってるんだよ。あの子がどうかは分からないけど………」(お願い。あの子をまた化け物に戻さないで。やっと元に戻れたんだから。)
「へぇ。……それは今もそう思ってるんだ?」
「うん。……あの娘が人の姿でここに戻ってきた時はすごく嬉しかったし、今でも生きててくれて良かったって思ってる。少なくとも憎いだなんて……私は思えない。だから────」(やっぱりこいつがフレイを元に戻したのは気紛れだ。こいつは化け物で、人の心なんて分かりやしない。情に訴えようとしたのが間違いだった。私のせいでフレイがまた化け物にされる。それだけはダメだ。またあの子が化け物にされる前に、こいつは殺さなきゃ。)
「────だから、あの娘から二度と人の姿と言葉を奪わないで」と。縋るように嘆願するジゼルの言葉は、嘘偽りない本物のそれだった。造書庫で見たから間違いない。
そして必死にディーヴァを庇うその様を見て確信したよ。『あぁ、彼女はディーヴァに会わせて大丈夫だ』って。
ここを地獄に変えた罪悪感を、ディーヴァは『大好きな僕に愛されるための必要な犠牲』と思い込むことで自身の心を守っている。そして『僕に愛されてる』と思い込むために、今の彼女は僕の頼みならなんでもやってしまう。
それは今の僕には都合のいい状態だが、この先のことを考えるとあまりに不安定で危うい状態だ。だから僕以外にも、縋れる相手が必要だとは思っていた。
そして造書庫で神機使いの時代の記録を辿ったことで、ジゼルには前もって印を付けてたが……僕の見立ては正しかったらしい。あれだけの地獄を齎されてなお、ジゼルの怨嗟は僕にこそ向けどディーヴァには向かない。
それどころか、他の堕し児が憎悪を向ける中でもディーヴァの味方で居てくれる。語った言葉は少ないが、その点に関しては確実に信用出来る。
そういう相手であれば、ディーヴァの元に連れて行っても大丈夫だろう。寧ろ、今の彼女にとってはきっといい刺激になる。
そう判断した僕は、ジゼルにある提案を持ちかけた。
「ならジゼル。……今度ディーヴァに今の言葉を聞かせてあげてよ。きっと喜ぶから。」
「…………………………………え"っ。」
「あの娘さ。今すっごい精神病んでて不安定なんだよ。自分のせいでロシアが落ちたって。」
……きっとディーヴァはジゼルと会わせるって言うと拒否するだろうから。期を見てサプライズで招き入れることになるんだけどさ。一人でも堕し児に自分の味方が居るって分かれば、あの娘も精神的に少しは余裕が出来るだろう。
ただ僕がそう頼むのは意外だったのか、ジゼルは反射的に身体を強ばらせた。それもそのはずだ。ディーヴァが匿われている支部長室は五階。普通の堕し児は立ち入りを禁止されており、本来許可なく立ち入れば厳罰を与えると言い含めてある。
つまり。その支部長室に入ることが出来るというのは、僕の懐に入り込むに等しいということなんだ。その上で僕らの目論見や普通の堕し児では手に入らない情報まで手に入る。
寧ろ僕の抹殺を目論むジゼルは、こうしたエリアに訪れる事を最初の目標にしていたほどだ。私室なら、僕も隙を晒すと思っているみたいだからね。
そのために僕に貢献し、僕の信用を得ようとあれこれ小賢しい立ち回りを演じていたのが……思うよね。『流石に順調に行き過ぎて怖い』って。例えそれが、僕の身内のメンタルケアのためだとしても。ディーヴァの知り合いって好材料があるにしても、身構えるのは当然と言える。
「…………………………いいの?四階より上は、私達は入っちゃダメって言ってたのに。」(……やっぱり、こいつはフレイに情みたいのはあるの?)
「今のディーヴァには僕以外の刺激が必要だからね。……ま、僕に依存しきって素直に言うこと聞いてくれた方が都合はいいんだけど。それも可哀想だからね。君は特例だよ。」
「ふーん……………そっか。」(それとも、私のリアクションを見て誘ってるの?もしそうなら罠の可能性も全然あるけど……ダメだ。こいつの考えが分からない。)
どこか納得が行かない様子だが、それを悟らせないようにジゼルが僕から目を逸らす。……何年ぶりかの妹分に会う緊張が半分、僕の思惑が見えないが故の警戒心が半分。ってところか。僕が無警戒とか、どう考えてもジゼル視点だと罠に見えるものね。
だからさらにもう一つ。僕はジゼルの綺麗な顔にずいっと顔を近付けると、人差し指を彼女の口に当てた。それがびっくりしたせいで、ジゼルは軽く身
「────但し、だ。君の上階への入場は特例中の特例だ。故に幾つかの制約は設けさせてもらう。」
「!!………うん、そうだよね。そうに決まってるよね??」
「悪く思わないでくれ。無条件に君を招き入れられるほど、まだ僕は君を信用できていないんだ。僕は臆病でね。」
などと微塵も思ってもないことを口にすれば、ジゼルは安心したように表情を緩めた。分かるよ。納得は全てに於いて優先する。特に僕らみたいな小賢しい人種は殊更ね。相手がこの位の警戒心は見せとかないと安心できないのはよく分かる。
故に僕は、ジゼルを上階に招く際に以下の制約を提示した。
・上階への入場・及び上階内での行動時は僕の同伴が必須。
・上階で見聞きした内容と、上階での行動の仔細の口外禁止。これには上階の状況の共有も含まれる。
・支部長室と支部長の私室、そして屋上ヘリポートでの一切の戦闘行為の禁止。
「………と、君に課す縛りはこの三つだね。」
「まぁなんていうか……当然の処置だね?ていうかそれだけでいいの?もっとこう、ガッチガチに拘束した方が────」
「僕が傍にいるってだけで拘束力としては十分だろう。それに代わりと言っては何だけど。僕らの領域に君を招き入れるのは、他支部の人間を招く準備を全て終えた後だ。そこの暇な時間に、君は僕の元に招き入れる。」
そして最後にそう提示してみせれば、ジゼルは吐きかけた言葉をぐっと飲み込んだ。同時に先程まで拍子抜けだと油断していた彼女が、内心で別な意味での警戒心を抱く。
当然か。要は『用済みになったら連れて行ってあげる』って言ってるようなものだ。ジゼルも内心『
それでもジゼルは僕の提案を断ることは出来ない。何しろこれから行う仕事の数々は、ロシア支部の復興とその後の堕し児達の生活の保証────及び、引き続き僕を抹殺する機会を得るために必須な仕事なのだから。それらを全て片付けてから感動の再会をしろと言うのは至って真っ当な言葉だ。それを口にするのが、寄りにもよって敵対する支配者だからジゼルは警戒しているだけで。
それに、例え僕の招待が罠だったとしても。ジゼルがディーヴァに会いたいという思いは、紛れもない本物なのだ。彼女はディーヴァがただの少女だった当初から、神兵となって人の枠から外れるその過程。そして人としての声と姿を失う最期まで、オペレーターとしてあの娘を導き続けた。
………いや、ジゼルの胸中の言葉を借りるのなら『導く事しか出来なかった』。この世で数少ない、不幸な彼女の味方なのだから。
「………いいよ。そういう事ならさっさと仕事を済ませよっか。ジゼルちゃんも早くあの子に会いたいし。」
「やる気になってくれたようで何よりだよ。……次は、僕らに埃を被った神機を適合させるんだったか。」
「そうそう。今のままだと民間人だけで第零接触禁忌種を撃退したとか、訳分からない状況になっちゃうからね。」
だから僕の持ちかけたその話を、ジゼルは警戒しながらも二つ返事で了承する。……正直言ってフェンリルに飛ばした救援要請への返答が来るまであと三日、僕らがやるべきことはまだ多い。
だがその中で最も優先すべき事。それは『あの劣勢からソロモンの軍勢を撃退した』という、奇跡にも近いご都合主義展開の偽装だ。
そのためには『民間人を神機使いにして特攻させた』という
そしてそこまで出来れば、実はもう最低限フェンリルの他支部から人員を迎え入れる準備は完了する。他にも堕し児に神機の使い方を叩き込んだり、神機使いの主要設備の運用方法を教えたりとやる事は多いけど。そっちは最悪、アラガミの能力同様に造書庫で知識を直に植え付けてやればいいから。
ただ僕の望み通りというか何と言うか、僕と堕し児は顔を合わすとスマブラになるからさ。僕の言うことなんて堕し児はまず聞かないし、あくまで全てはジゼルの提案という体で進める。
そうなれば当然、ジゼルに押し付ける仕事の量は常軌を逸したものとなる。堕し児だからいいものの、それこそ普通の人間であれば過労死するほどに。
そう既に察しているからか、ジゼルは先ずは僕の周りの仕事を纏めて片付けることにしたらしい。何しろ僕は僕で、本来なら好き好んで堕し児達の前に訪れる理由がない。少なくとも堕し児達はそう思っているから。それに僕がやっておく事は、ジゼルの視点だと神機の適合以外ないからね。
「………じゃあほら。先ずは先に、言い出しっぺのキミから神機使いになろ?下の子達には説明したり何だりで時間かかるし、人数も多いから。ほら、早く早く。」(こいつも前の支部長と一緒で人使い荒いな。仕方ないとはいえ。)
「そうだね。……それにあの
「あっはは。それは確かに。でもきっとどっかに説明書とかあるし、キミをスケープゴートにする必要は……ん?………………………あれ。」(……………待って。今こいつ、なんて言った?)
体良く事故死させられるのならそれはそれで。なんて、内心ガチでジゼルは目論んでいた。けど僕が急かすジゼルに応答した瞬間、どういうわけかジゼルは不意に動きを止めた。
……怪訝に思って造書庫を用い、それで僕も気付いたよ。あまりに一瞬ではあるが、またしても僕は失言を漏らしたのだと。その証拠にジゼルはピタリと石になったかのように動きを止め、自身の思考と僕の言葉を脳内で何度も反芻している。
やめようね。余計なことに気付くのやめようね。余計なこと考えるのやめようね。君のような勘のいい女は好きだけどさ。マジでそれには気付くなと、思わず感応現象を飛ばしそうになった。
「どうしたジゼル。……何を固まっている?」
「……………………………んーん。」 (なんで、アラガミのこいつが適合試験に使う機械を知っている?あれを知っているのは、神機使いとフェンリルの人間だけのはず。フェンリルの……人間………)
半ば彼女の思考を遮断させるように、彼女の隣を横切って前に躍り出る。そして手を差し出すと、ジゼルはやや戸惑ったように僕の手を取った。
けど、そうするとジゼルは僕の手を握って一言。
「…………………小さな手。」(………まさか。この小さい男の子の姿が、本当の姿なの?人間の真似事をしたとかじゃなくて、こんな小さい男の子がアラガミになって……それで………)
本人も気付いてか否か、ポツリとそう漏らした。
当然僕は聞かなかったことにした。……ただでさえ図らずして、僕はジゼルに示してしまったんだ。『ロシア支部を滅亡させた人類種の天敵』と『人として生きることを許されなかった少女の救世主』。そんなかの第零接触禁忌種が併せ持つ二面性を、ジゼルは既に知ってしまっている。
その上で今、ジゼルの頭に過ぎったのは……僕自身もとっくに忘れていた僕の本質。ともすれば彼女ら堕し児の中での僕の認識が覆りかねない、そう確信するほどの僕の秘密だ。
少なくともそうと知ってしまえば、ジゼルは僕を殺せなくなる。それどころか、僕に本当の慈愛を向けることすら有り得るのだ。
それを迷惑だなんて言うつもりは無い。ただ……今はまだその時期では無いのだ。確かに彼女を筆頭に堕し児達は、いずれ僕のためにとその力の全てを捧げる。だがそれは最低限、彼らが人間態の僕を────神機使いを相手取れる程度の戦闘力を獲得してからでないといけない。
そしてそれまで、僕はあくまで堕し児達にとって『討つべき仇』で無ければならないんだ。他の感情を抱くな、とまでは言わない。けどその根幹が揺らぐ事だけは、絶対に認められない。それを許して堕し児が戦力として使えなくなれば、僕の計画は根本から瓦解する。
全く……堕し児全ての思考も記憶も自在に読めるというのに。心変わりというものだけは、造書庫をどう用いても予測の仕様がない。その上僕は人の心の機微に疎く、そのせいで何度ミスを犯した事か。
とはいえやってしまったものは仕方ない。僕は握ったジゼルの手を引いて、その意識を現実に引き戻すように呼び掛けた。
「ほら、早く行くぞジゼル。僕はこの支部の構造を知らないんだから。案内してくれ。」
「…………………あぁ、うん。そっか。そうだよね。ごめんね?ぼーっとしちゃって。」(いや、そんな訳ない。余計なことは考えるな。この子はアラガミだ。私の仇の化け物だ。)
そうすれば幸いにも、ジゼルは直ぐに自ら思い描いた可能性を頭から消してくれた。……というより、過ぎった『最悪』を考えないように蓋をしてくれた。
ただそのせいかな。ジゼルは僕の姿を頑なに視界に入れようとしなかったし、僕にしばらく何かを話しかけたり聞くような事もなかった。
今さらだけど全然原作キャラ出ねえな。極東サイドも大概地獄だろうからフェンリル視点の話も書きたいんだが。
あと年齢パスもう貫通するから18禁も書けるじゃんね。えっちな話も書きたいんだが???
更新頻度上げような!!!!!
実際どっちか求むならどっち求めますか
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一話のクオリティ
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高い更新頻度