神様にされたら愛され過ぎてヤバい件について。 作:Am.
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第一部隊に叩き返される形で僕はその日は支部長室へと戻る羽目になった。だがそれで一日は終わり、という訳には行かない。
何故なら────
「────ご主人さまあ!!!」
「うおっ。ディーヴァ。」
僕が扉を開けるとほぼ同時。二メートルを優に超える恵体が僕に向けて高速で迫る。
それをマトモに受ければ余裕で骨の数本は持ってかれるため、僕はひらりとディーヴァの突進を躱す。だがそれはそれとして僕に「来て」とばかりに腕を広げる女性の姿があった。
「………ただいまサリー。」
「おかえりソロモン。……今日は早い。嬉しい…」
「『働き過ぎだ』って神機使い共に叩き返されてね。お陰で直ぐに戻れた。ほら、ディーヴァもおいで。」
腕を広げるサリーに背中から身体を預け、突進を外して床に転がるディーヴァを呼ぶ。そうするとディーヴァが僕の腹部に顔を埋める形で飛び込み、その衝撃で僕の頭は殊更サリーのデカいおっぱいに深く沈んだ。
だがそんな僕に対してサリーは怪訝そうに呟く。
「そう。人間に休まされたんだ……」
「失礼だと思わない?僕一応支部長なのに。」
「私はご主人様が早く戻ってきてくれて嬉しいです!!頭撫で撫でしてくだしゃい………♡♡♡へっへっへっ……」
そんな感じで支部長室。僕はサリーの膝の上に抱っこされ、僕の腹部に顔を埋めるディーヴァを撫でていた。体重預けると頭がサリーのデカいおっぱいに沈むし、ディーヴァの髪撫で心地良いしでめっちゃ癒される。
だがそうやって支部長室で寛いでいたその時である。ふとディーヴァが荒い呼吸をピタリと止めた。どうした。
「………ねえご主人様?」
「なに。」
「なんでご主人様の膝から、あの部隊の
そう突如投下された爆弾にサリーまでもが身体をピクリと跳ね上がらせる。そうか匂いで分かるかさすがヴァジュラ神属。こりゃ言い逃れ出来そうにないな。出来ればこの子達には知られたくなかったんだけど。後の展開が見えるから。
かと言って下手に嘘ついてもバレるし却っていらん誤解を招くからあくまで正直に答えるけど。重ね重ねこの後の展開が見えるからこそ僕は天井を仰ぎ見る形になった。
「そりゃそうだよディーヴァ。……今日この支部に訪問したのって、僕らが散々殺り合ったあの部隊なんだから。」
「!!!!!………ソロモン大丈夫!?なんか酷いことされてない!?」
「そういう事なら生かしちゃおけないですよねご主人様!!私、今すぐあいつらブチ殺してきま────」
「まあ待て待て。落ち着けって。」
案の定そう実情を告白したところ、二人して臨戦態勢に入るから慌てて宥める。本当に僕やジゼルが頑張って隠匿してきた二人の秘密が暴露しかねないから。人間性を宿すアラガミなんて見つかったら何されるか分からないんだぞ。
それに二人が警戒して心配する気持ちも分かるけど本当になんて事は無かった。寧ろ────
「────ふう終わった終わった。あ、ソロモンお疲れさま〜……って。何この空気?なんかあったの??」
「おージゼル。ご苦労さん。」
ひらひらと手を振りながら支部長室に訪れるジゼルに僕も目線だけ向けて相槌を打つ。けどそれより先にディーヴァがジゼルに掴みかかった。
「………ねえジゼルちゃん!!この支部に来た人間があの極東の連中って本当!?なんであいつらがここに居るの!?ご主人様、酷いことされてないよね!?」
凄い剣幕で詰め寄るものだからジゼルも困った笑みを僕に向けてる。ディーヴァはそんなアイコンタクトに困惑してるが、まあそういう事だ。こっちはこっちでセコムモード入ったサリー宥めなきゃだから。全部言っちゃっていいよ。
「………大丈夫だよフレイ。寧ろあの子、思ったよりあいつらと仲良く出来てるから。この調子ならまずバレないんじゃないかな。」
「………………………えっ。」
そんなジゼルの言葉にディーヴァ以上にサリーが身体の動きを止めた。あの散々殺り合った第一部隊と仲良くしてるなんて言ったらそりゃそうなるか。
「何なら寧ろあの極東の支部長が気に掛けるレベルだからね。「彼が無理して働き過ぎないよう私からも言っておけ」って釘刺されたよ。ハッ(嘲笑)」
「
お陰で神機使いとしての生活は至って順風満帆。新型神機使いってのもあってめちゃくちゃチヤホヤされてるしね。ソーマやエリックはどうだか分からんが……それでも僕がソロモンとバレる事は現状ほぼ有り得ないと言っていい。
「そういう訳だから僕は大丈夫。サリーもディーヴァも心配させて悪かったね。」
「………本当に大丈夫なんですか?万が一バレたら、ご主人様は────」
「当然その懸念はある。だから彼らの抹殺は引き続き試みるよ。僕の神骸種を使った事故死に見せ掛けて、ね。」
その上で僕が彼らと馴れ合うつもりはなく、淡々と始末を図っている事も忘れず伝えておく。あの仇敵連中と僕が仲良くしてるなんてそれこそサリーやディーヴァは傷付きそうだからね。
現にディーヴァは僕がそう付け加えれば感激してサリーに抱っこされた僕の元へと再度飛び込んできた。心配しなくても僕がこの娘を捨てることは無いってのに。
「ご主人様ほんとだいしゅき……人間としても幸せになれるのに、私達のこと捨てないでくれるんですね……」
「僕としては君達に囲われてた方が幸せだもの。……あっ、こら。」
好き好きゲージが限界に達したディーヴァがベロチュウしようとしてくるからお腹撫でて宥める。なんか最近またディーヴァの身体が前よりでかくなった気がするんだが。この大きさともなるとサリー共々一目で人外バレするからな。「お前のような人間の女がいるか」って。
でもそんな普段ならサリーがヤキモチ通り越し、殺意全開にしかねないやり取りしてたんだけどさ。寄りにもよってサリーに寄りかかりながら。サリーは僕がディーヴァに全力で好き好きされてるのを見ると、僕の頭をやんわり撫でてきた。
「………ソロモン。」
「ん?どしたのサリー。」
「ソロモン……あいつらと仲良く出来てるんだ。それならソロモン、もう殺されそうになったりしない?」
………………………。
……………バレなければ、て注釈がつくな。
「……僕がソロモンだと知れなければね。けどいつバレても不思議じゃない以上は早目に殺さないと。」
「………………そう。これでソロモン、危ないことしないで済むと思ったのに………」
「危ないことはしないよ。僕が直接手を下すわけじゃないからさ。心配しなくても大丈夫。」
僕がそう答えれば、僕を愛おしげに撫でるサリーの声が分かりやすく沈む。何なら僕を撫でる指まで止まってしまう辺り相当ショックだったらしい。
ちょっと意外だよね。サリーは何がなんでも「あの第一部隊は殺せ」って言うと思ったのだけど。実際は僕が第一部隊との関係が現状は良好と知るとサリーは明らかに安堵した。
あの部隊の生死なんかよりもサリーは僕の身の安全の方が大事らしい。それで僕が危ないことしないで済むのならそれが一番サリーにとっては理想的、か。
サリーは暗にそう示すと未だ一人戦いの渦中にある僕を案ずるように抱きしめる力を強めた。
そして僕に好意を剥き出しに甘えるディーヴァもそうだ。彼女が第一部隊と交戦し、ロシア支部に僕を導き、ロシアを滅ぼす片棒を担いだのは僕が望んだからだ。僕が喜ぶからそうしただけで、ディーヴァは一度も人間の滅亡を望んだ事は無い。
………これもしや、あの第一部隊の面々を殺そうと躍起になってるのって僕だけなのか?
もしかしたら人類の絶滅に二人が同調するのは、僕がそう望むから手伝ってくれてるだけなんじゃないか?
もしこのまま
「ダメだよ?あいつらはちゃんと殺さないと。」
そんな気の迷いから僕を現実に引き戻したのは、静観を決め込んでいたジゼルだった。
「ああいうゼロを脅かす可能性のある神機使いはちゃんと殺しておかないと。安全策に舵を切るのはいいけど、そこだけは絶対に忘れちゃダメ。そうでしょ?」
あくまで普段と変わらない声色に口調。しかし名状しがたいその圧力は、どこか「僕を戦いから逃がすまい」というジゼルの執念を感じた。
……当たり前だ。ここに至るまでに僕がどれだけの人間を殺したと思っている。僕はジゼルの故郷も家族も滅ぼし尽くしている。
「あいつらがキミに酷い事をしなければ、キミは人間を襲う事も無かった。私の弟がキミに殺される事も、私の故郷がキミのせいで地獄になる事も無かった。そうでしょ?……そうだよね?そうだって言って。」
その上でジゼルは僕への怨みを、奪われたものへの憎悪をあの部隊に押し付ける事で僕に折り合いを付けた。僕の本性があまりに幼く憎悪を向けきれないばかりに。全ての復讐の受け皿にあの第一部隊を選んだ。
第一部隊が僕に手を出さなければ。第一部隊がロシアで僕を探さなければ。第一部隊が敗走してロシアに逃げ帰らなければ。
そうやって幾重にも重ねた恨みの数々で、もっと大きな憎悪に無理やり蓋をした。そうやって忘れたフリをしないとジゼルは正気を保てないから。
だからこそ僕は頭に手を置くジゼルの手首をそっと握り返す。その上で上目遣いでジゼルの顔を見つめれば、ジゼルは可視化出来るほどの愛情を僕に向けていた。
それはまるで既に亡き健気な弟の影を僕に重ねるように。素直に言うことを聞く僕を慈しむように。どこまでも歪で欺瞞に満ちた、願いにも似た偽りの愛情。しかしそれだけが、そんなものだけがジゼルの心をどうにか保っている。
そんな手の施しようがない有様に他ならぬ僕が変えてしまったんだ。だからこそ僕はジゼルが僕が望む言葉を、あくまで彼女が望む通りの振る舞いで紡ぐ。
「そうだよジゼル。……彼らを今死なせる必要は無いかもしれないけど、それ以上に生かす理由がない。あれだけの力を野放しにすれば必ず僕らにとっての災いになる。」
「さすが
そう。分かっている。いくらあの連中との仲良しごっこが居心地良かったとして、それは彼らを殺さない理由にはならない。
何故ならジゼルに説かれて提示した人類絶滅を見送る妥協点と僕が提示した最低条件。他ならぬそれが第一部隊の抹殺なのだ。それがサリーやディーヴァの安寧を守るための、僕がジゼルに説き伏せられて見繕った最小限の犠牲だ。
だがそれでもやはり僕が危険に晒される事は許せないらしい。
「………………ソロモンのこと、いじめないで。」
突如として僕が寄りかかるサリーが、ジゼルが僕を愛でる手を乱暴に払った。
明確な嫉妬も独占欲も絡まない、純粋な敵愾心。かの第一部隊にしか向かないレベルの純粋な敵意にはジゼルも幾分か冷静さを取り戻したらしい。ジゼルは慌てて払われた手を引っ込めると、普段の調子に近しい笑みを浮かべた。
「おっと。……ごめんねサリー?ジゼルちゃん、そんなつもりじゃなかったんだけど。」
「あなたを殺さないのはソロモンにお願いされたから。……ソロモンに酷いことするなら容赦しない。」
そしてその上で、今にでもジゼルを殺しに掛かりそうな程にサリーの威圧感が膨れ上がる。というか僕の寄り掛かるサリーの身体がその場で緩やかに巨大化を始める。
「待って待ってサリー。僕は大丈夫だから。ね?そんな怒らないで。ここでアラガミ化されたら部屋潰れちゃうから。」
「………ソロモン。ソロモンが嫌な事はしちゃダメ。その女の言うこと、無理して聞く必要ない。」
「無理でも嫌でもないよ大丈夫。ありがとうね?」
巨大化しかけのサリーの身体を抱きしめ、改めて向き合う形で甘える。そうするとサリーは片方の乳房に僕の顔を押し付け、頭を撫でる形で甘やかしてきた。
……やっぱり嫉妬や独占欲も混じってたのか?完全にジゼルに甘やかされてたの上書きしようとしてるな。めっちゃおっぱい出てる……
「ソロモンはここで私に甘えていればいいの。……あの部隊の相手なんてそれこそあの女にやらせればいい。」
「サリー。……もしかして支部長室に放置してたの寂しかった?」
「うん。……ディーヴァもソロモンにはここに居て欲しいよね。」
「はい!!!!!」
声でか。ていうかジゼルが加わったせいか、それとも3Pなんてジゼルに吹き込まれたせいか。いつの間にかサリーとディーヴァの共同戦線が出来上がっている。僕を囲って支部長室から逃がすまいという利害の一致が引き起こっている。さすがに最近放置し過ぎたか?
でもそうだよな。やっぱ僕が第一部隊の抹殺なんかに精を出すよりも、僕がこの娘達に構ってあげた方が喜ぶんだよな。
「ジゼルちゃん!!そんなご主人様があいつらと上手くやれてるなら、もう少しのんびりさせてあげられない!?そしたらご主人様に身体抱きしめられたり、お顔ぎゅーってして撫でてもらえるの!!!」
「君も僕のこと休ませる気ないだろ。」
「だって最近ご主人様が居ないと、頭ボーッとして来ちゃうんです……力も強くなって、危ない事になっちゃうから……自分が怖くて………」
僕の後頭部にデカ乳を押し付けるディーヴァの猛獣みたいな息遣いが僕の頭頂部を撫でる。そしてそれに呼応するよう、僕の腹部に回される腕の筋肉が目に見えて膨れ上がる。
無自覚に「暴」の部分見せるのやめてね?ディーヴァはアラガミ化引き起こすとマジでヤバいんだから。
………まああれだな。この娘達も放置しすぎてストレス溜めすぎるとどんな爆発の仕方するか分からないし?特にディーヴァ。当の第一部隊の連中にまで「無理し過ぎんな」って言われたことだ。
この二人とジゼルの間を取って「第一部隊は余裕持ってのんびりぶち殺す」って事で、当面の方針は進めよう。慌てたって良い事ないものな。
「………そうだね。今下手な事してあいつらに勘付かれるのも嫌だし信頼されるまでは大人しくした方がいっか。ゼロの言う通りだね。」
「それに無理し過ぎると人間じゃないのバレそうだし。この娘達との時間も要るし、それでいいね?」
ジゼルにそう提案すればジゼルもあっさり快諾してくれた。し、僕が「サリー達との時間も作る」って言ったせいだろう。サリーとディーヴァの表情が目に見えて晴れた。そんな僕に構って欲しかったんだね。
「……ごめんねゼロ。「ゼロがあの連中に情でも持ったんじゃないか」ってジゼルちゃん心配になっちゃったの。君が人間に情を向けるなんて、それこそ有り得ないのにね。」
そしてサリーとディーヴァに♡を向けられる僕に、どこか安堵したようにジゼルが僕に笑う。それがまるで僕を「絶対に逃がさない」とでも言いたげな、何とも薄暗いものに見えたのはきっと気のせいではない。
ジゼルは僕を人類絶滅を願う化け物に変えたフェンリルを、僕をロシアまで誘導した第一部隊を誰より憎んでいる。それこそ僕やサリー以上に。
だからこそ僕が第一部隊の面々と馴れ合う事は絶対に許さないし、何なら今すぐにでも殺したいと息巻いている。それこそ人員不足でオペレーターを任せざるを得ないが、実働担当だったら今直ぐにでも殺しに掛かるだろう。
そして第一部隊への殺意を同じくする以上は現状のジゼルは間違いなく利害が一致している。……そういう意味では堕し児でありながら、ジゼルは手放しに信頼できる。
ならサリーも言ってたが、もう少しジゼルにあの部隊の相手を任せてもいいかもしれない。それで第一部隊の面々を片付けてくれれば上々。そうでなくとも現場で第一部隊と活動を共にする僕より、裏方のジゼルの方が何かやらかしても怪しまれにくい。
そう彼女達の意見を頭で纏めた結果、僕はジゼルを手招きするに至った。
「ねえジゼル?」
「なにゼロ。……ジゼルちゃんも混ざっていいの?4P?」
「良かったらなんだけどさ。……君にあの第一部隊、殺させてあげようか?」
そう試しに尋ねてみれば、ジゼルはキョトンとしたように僕の顔を見つめてきた。分かるよ。「裏方でオペレーターしてる自分が現場に干渉出来るわけねえだろボケカスが」って思ってるね?それが出来れば自分でやってるもんね?それが出来ないからこそ僕をここまで扇動するんだもんね?
「……………いいの!?私、あいつら殺しに行って!!」
違うわ。殺意と憎しみ強すぎて乗り込む気満々になってるだけだわ。オペレーターの仕事を放棄しようとするんじゃないよ。直に戦ってもまだ負けるだろうが。
「そうじゃなくて。……オペレーター業しながら第一部隊を殺せる能力あるんだけど、興味ない?」
「!!!!!……………そんなこと、出来るの?」
「「………………………?????」」
サリーとディーヴァも「何それ?」って感じで顔を見合わせてる。確かに僕は堕し児はおろかサリー達にも
だからその一部とはいえ誰かにこの能力を貸し与えるのは初めてなんだ。果たして他者に貸し与えられるものなのか。与えられたとして負荷はどの程度なのか。そこら辺未知だからこそ、サリーやディーヴァに試しにくかったのもあるけど。
でもジゼルなら諸々の条件を踏まえて貸し与えてみても良いかなって。そう判断した僕は頭上を旋回する本のような光輪からその一ページを引き抜く。
そうして光の用紙とでも言うべき情報端末を生むと、僕はジゼルに顔を近付けるよう手招きする。
「これに僕の能力の一部が入ってる。他のアラガミに入れるとどうなるかは分からないけど……どうする?」
「ゼロが良いなら貸して!!!」
「良かった。出撃してると僕はこの能力を使えないから。そういう事なら君に任すよ。」
その上でちゃんとジゼルに同意を取った後。僕は光のページをジゼルの頭部に向けて投擲した。
それは赤黒い稲妻を走らせ、ジゼルの脳へと吸収される。その中身は普段僕が神骸種に感応現象で指示を与えるための集合意識のネットワーク。その一覧を纏めた造書庫の一端だ。
故に情報量は膨大で、移植時は拒絶反応が予測されるが………
「ぎ………っ!?い"、あ"……あ"あ"………………ッ!!!」
「ねえご主人様!?ジゼルちゃん苦しんで……いや血涙流してますけど!?ジゼルちゃん、大丈夫!??」
「……やっぱこうなるか。最初にサリーで試さなくて良かったよ。」
バチバチと赤黒い稲妻が火花を散らし、脳を焼かれる苦痛にジゼルがのたうち回る。とはいえそのくらいの拒絶反応はアラガミの再生能力でどうにかなる。脳が焼き切れて廃人になる、なんて事にはならないはずだ。
「が……あ"っ、頭が……割れそう………!!ソロモンは、いつもこんなの扱って………あ"あ"あ"………ッ!!!」
「使い方は移植したら勝手に分かると思うけど、不安なら明日までに慣らし運転をお願いね。」
「………………ッ、これは………!!!」
一応のたうち回るジゼルの前にしゃがみ、そう声を掛ける形で正気を確認する。そうすれば苦痛で自我が崩壊するよりも先に、僕の与えた力の一部は無事にジゼルに適合したらしい。
その証拠にジゼルの後頭部には、赤黒い稲妻が光輪のように走る。それは僕の頭上に旋回する光の本にも似た光輪と同じ、ある種の全能の端くれの証明だった。これが出るせいで僕の場合は神機使いが傍にいると使えないからね。
「ソ、ロモン……!!これって………………」
「早い話、それを使えば離れた野生の神骸種に指示を出せる。……他にも色々できるよ。」
「凄い……!!こんなのあったら、はぁ……第一部隊のゴミ共なんてあっという間に………!!」
なまじぶち込んだ瞬間に能力の詳細が分かるせいか。苦痛で脂汗を浮かべながらも、ジゼルは興奮を隠せない様子で自分の頭を押さえている。
「
「そう、なの……ソロモンは、これで神骸種を………!!!」
「名付けたのは今だけどね。……上手く使えばあの部隊を君の手で亡きものに出来る。難しい力だけど頑張ってね。」
ジゼルに与えた能力を端的に言うならば「神骸種の指揮能力と遠隔操作能力」。神骸種の軍勢を意のままに動かしたり、神骸種の肉体を乗っ取って自ら操作する能力だ。
それこそ作戦区域の全容を把握するオペレーターのジゼルには下手をすれば元の僕より相性がいい。これでどの程度第一部隊を追い詰められるか、明日の親睦会で試してみようじゃないか。
だがそうして僕がジゼルに能力を継承した矢先。痛みが引いた様子のジゼルは僕の顔を見ると、ある確認を取ってきた。
「……ねえソロモン、ううんゼロ。一つ確認したいんだけど、明日の任務もゼロって出撃するよね?」
「ああ。それがどうかした?」
「………それってゼロも、平等に殺しにかかった方がいい?」
「「!?!??」」
その一言でサリーの殺気が一気に膨れ上がり、ディーヴァが困惑したように僕とジゼルの顔を交互に見る。
僕はサリーの足をポンポンと叩いて落ち着くよう促す。仕方ない、これは必要な事なんだ。
「当然だよ。だからこそサリーやディーヴァじゃなくて君にこの能力を貸した。僕だけ神骸種に襲われないと僕と神骸種の繋がりを疑われかねないからね。」
「………そう、だよね。サリーやディーヴァじゃゼロに危害なんて加えられないもんね。」
「そういうこと。だからサリー、その手に握った杖を仕舞いなさい。」
蝕装まで取り出してガチで殺す気満々だったよこの娘。僕の安全第一って言うだけあるな。一応僕の意図は汲み取ってくれたのか、渋々と言った様子で矛は収めてくれるけど。その代わりとばかりに僕に向く圧力が増える。
「……やっぱりソロモン、危ないことしようとしてる。私はソロモンに危ないことしないで欲しいのに………」
「直に第一部隊と殺り合うよりは余程安全さ。……大丈夫。そこらの神骸種如き、僕の敵にはならないから。」
「それは分かってますけど……ジゼルちゃん、なるべく優しくしてあげてね!?ご主人様ってアラガミの力使えないとそんな強くないと思うので!!」
直球に不敬罪な話してやろうかディーヴァ。否定はしないけど。だからこそある意味ジゼルにとってはチャンスでもあるんだよね。
現にジゼルはサリーとディーヴァに囲まれる僕に近付くと、いつにも増して色香が強くなった状態で懇願する。
「ゼロ。……ジゼルちゃんがキミのお手伝いする条件として、二つお願いがあるんだけど。」
「言うだけ言ってみ。」
「……私がゼロのお手伝いする日は、行く前にキスして。あと出来たら抱かせて。サリー達混ぜていいから。」
「「………………………ッ!?!??」」
あまりに切に爆弾ぶち込んでくるせいでサリーとディーヴァが顔を見合せた。まあ要約すると「いつ殺せてしまっても後悔が無いように抱かせて」って言ってるからな。
当然だ。僕はそもそものジゼルの憎悪の根源で、その上で殺傷するための大義名分も与えた。挙句の果てに僕はアラガミの能力を使えない状況。ジゼルにとっては殺さない理由がない。僕が「襲え」と命じたなら尚のことだ。
妙な話だが「僕が可哀想で愛しいから幸せになって欲しい」と「僕が憎くて殺したい」って感情は両立する。だからこそジゼルは苦しみ抜いてこんな拗れた壊れ方したんだ。僕のせいでこうなった以上、その責任は僕が取る他にない。
無意識ながらに堕し児にこんな厄介な「仕様」を植え付けたのは他ならぬ僕なのだから。殺しの免罪符さえ与えればジゼルは易々と僕に牙を剥く。他責で消えるほど浅い怨みでは無いって訳だ。
「………いいよ。代わりに君に仕事任す日以外はサリー達優先するからな。」
「じゃあ毎日お手伝いしちゃう、て言ったらどうする?」
「今のうちにシフト上限決めておくか。」
そんな冗談めいたやり取りで隠せないほどの重過ぎる感情を剥き出しに、ジゼルは僕の首を慈しむように撫でてくる。サリーやディーヴァも大概ヤンデレだけど、ジゼルの愛情はなんていうかドス黒いんだよな。本人すっごい陽キャなギャル娘なのに♡向けられると身震いしてしまう。
いつ殺せてしまうか分からない。だから殺してしまうまで愛したい。愛して欲しいだなんて。殺す手段を与えた僕が言うのも何だが、あまりに精神状態が常軌を逸している。サリーとディーヴァが怖がって静かになってしまっているもの。
「………ねえディーヴァ。やっぱりこの女、殺しておいた方がいいんじゃない……??」
「昔はジゼルちゃんこんな怖い人じゃなかったのに。私達のせいでこんな………」
「大丈夫。ゼロ達は悪くないよ?悪いのはあの極東から来たあいつらなんだから。ね?そうだよね??」
「そうだね」以外になんて答えりゃいいんだよ。仮に彼らを一人残らず殺し尽くせば、何かの間違いで僕が死ねばジゼルは正気に戻るのか。それとも罪悪感に押し潰されて自壊するのか。こんなザマにした当人ながらもジゼルの未来は予想がつかない。造書庫は未来までは教えてくれない。
ただ確かなのは、僕が為すべきことを為す上でジゼルは僕をこの場の誰より正しく導いてくれる。殺意と憎悪に救いを求める彼女だからこそ、僕に迷いも終わりも許さない。
彼女のお陰で僕は、第一部隊をちゃんと殺せる。
「ジゼル。明日はソーマと二人で行ってくる。オペレーターもあの
「あのいけ好かない
「………抜け駆けは許さない。お前は明日……」
まるで我慢効かないとばかりに僕を誘惑するジゼルをサリーが蝕装を向けて牽制する。対神機使い用の戦力として育て上げた堕し児だが、その中でもジゼルは一足先に完成した。加えて明日の同行者はソーマ・シックザール。第一部隊の中でも厄介度で言えばリンドウの次に迫る実力者だ。
色々と思うことはあるが、今は素直に期待しよう。ジゼルの奮闘がソーマを無事に殺すことを。僕の代わりに彼女が彼らを終わらせてくれることを。
ターミナル
感応現象を用いた神骸種の使役と操作が可能となり、本体は無防備を晒すものの神骸種への意識の憑依も行える。これで知性を持たない神骸種を支配下に置けば、その対象を自らの肉体のように操れる。
ソロモンはその気になれば記憶の植え付けや改竄、堕し児の思考や意識の掌握まで自在にこなせる。この権能によりソロモンは常に堕し児の思考を読み取ることが出来る。
アラガミの魂は肉体ではなく意識に宿る。喰い散らかした全ての意識と記憶を司るこの権能は、堕し児達の魂の保管庫であり命綱でもある。