神様にされたら愛され過ぎてヤバい件について。 作:Am.
そしてサブタイにルビ振れることに気付いてわざわざ全話分ルビ考えた奴がいるらしい。
四日後。地道な練習とサリーの協力(捕喰的な意味で)もあり、遂に僕は自由に浮けるようになった。元々サリエル種はあまり高くは浮けないのか、高度を上げようとするとまだ落ちるけど。それでもサリーと一緒にふわふわできるようになり、滑るように宙を舞えるほどにまでなった。
更に両手の掌の邪眼。ここから放つレーザーはかなり自在な軌道で放てるようになり、その威力もあの硬いコクーンメイデンの外殻を貫通して撃ち抜けるまでに強力に。毒の鱗粉や光壁はまだ使えないけど、人間相手には十分というものだろう。
……というわけで。神機使い狩りの時間ですよぉ!!
「……………………………???」
「大丈夫だよ。サリーは心配性だなぁ。」
引き止めるように抱っこしてくるサリーの頬を撫でるが、行っちゃダメとばかりに抱きしめる力が強くなる。そんな心配そうな顔しなくても大丈夫。この時代ってまだ新型神機なんてものないから。近接型なら延々と引き撃ちしてれば簡単に殺せる。
それに某地域を除けば普通のフェンリル支部はヴァジュラとか出るだけでも大騒ぎするレベルだってなんかで聞いたことある。僕の認識ではサリエルやクアドリガってその辺の中堅クラスのアラガミだからさ。その能力を持つ今の僕はスペックだけでも普通の神機使いには手に負えないわけで。
………ほんとならずっとこうやってサリーとイチャイチャしてたいんだけどさ。僕の精神が完全にアラガミになったらもうこういう事が嬉しいってのも分からなくなっちゃうかもしれないから。もっと酷いとサリーのこと喰い殺しちゃうかもしれない。サリーは歓迎かもしれないけどそれは嫌だからさ。
「だから……ね?行かせて??」
「…………………………………………………。」
サリーが渋々といった感じに僕のことを放す。なーに。適当に弱そうな神機使い一人喰ったらすぐ戻るから。そんな悲しそうな顔しないの。ほんとこの子どんどん表情豊かになるなぁ……明確に感情ってものが芽生えてるもんね。そのうち本当に人間みたいに進化しそうだ。
「んじゃ行ってくるねサリー。お土産楽しみにしてて。」
そうして身体を宙に浮かせたまま、遥か彼方へと掌を向ける。そして掌の邪眼で遠くまで見渡すと……いるな。神機使い。二人組でシユウ師匠と戦っているやつが。遠過ぎてよくは見えないけど片方は近接で片方は後方支援か。やっぱまだ時期的に新型神機はなさそうだ。
それにこれはチャンスだ。普通の神機使いは四人でパーティーを組んで動くのに。あいつらは今二人組だ。しかもシユウとやり合って消耗していると来た。
喰い方は決まったな。シユウを倒して安心したところで奇襲をかけてやる。浮かせた身体で滑るように飛来し、掌の邪眼で状況を確認しながら距離を詰める。
………よし。シユウが倒れた。釣り餌ご苦労さま。まずは前方に向けた両手の邪眼を見開き、急接近しつつもレーザーをばら撒く。不規則な軌道で襲いかかる赤い光の雨に神機使い二人は直ぐに気付くが、その中にはいくつかホーミングするレーザーも混ぜた。剣の方はさておき銃の方は防ぐ術はないはず。
「ぐぅっ………!?」
「姉上!?……なんだこのアラガミは!!」
銃を持った女の神機使いは飛来するレーザーを無理やり捻って避けたから、その直後に転ぶようにして体勢を崩す。そうすればあとは飛来するこの速度の勢いのままに喉元目掛けて喰らいつくだけ。
口の付け根から耳のあたりまでが裂けるように開き、口の輪郭そのものが無数の牙のようにギザギザな形を作る。サリーには絶対しない捕喰形態だ。これで首を喰いちぎって頭と胴体を泣き別れさせてやるよ。じっくり頂くのはそのあとだ。
「それじゃ!イタダキマ────」
────次の刹那。顎から左頬にかけてが吹き飛んだ。焼けるような感覚と肉の焦げ付く臭い。それがアサルトの神機から放たれた弾丸によるものだと認識するのは、続けざまに振られた凶刃に僕の左腕が切り飛ばされてからのことだった。
「姉上……大丈夫か!?」
「誰にものを言っている……畳み掛けるぞ!!」
「おう!!」
待て待て待て。なんだこいつら。なんだこの神機使い二人組。めちゃくちゃ強いぞ!?いや……今まで会った神機使いの中で一番ヤバい!!全く僕が反応できなかった!!
残った右腕を剣……いや、チェーンソーを持った神機を振るう男の方へと向ける。そして邪眼から拡散するレーザーを放つが、ほぼゼロ距離に近いにも関わらず回避。僕の腕がない左側に回りこみ、死角から切り上げるようにして胴体と左脚が切り離される。
白い翅のついた器官は腰周りにある。その器官が半壊した僕は当然地面に崩れるようにして落ち、しかもその瞬間に数発の弾丸が僕の右腕をも吹き飛ばした。微塵の無駄もない連携に嫌でも思い知ることになる個々の技量の高さ。
この時点で既に僕はこいつらを口にする事ではなく、この状況からどのようにして逃げ切るかに思考を回していた。僕の身体で残ってるのは胴体と右脚だけ。武器の邪眼がある両腕は吹き飛ばされて反撃どころか移動すらままならない。
加えて僕が仰向けに倒れると、男の方が赤いチェーンソーを僕の胴体に突き立てた。これで這いずる事すら出来なくなったわけだ。クソッタレ……道理で強いわけだよこの二人。だってこのチェーンソーみたいな神機、めっっっちゃ見覚えあるもん。一番喧嘩売っちゃいけない神機使いじゃん。
「姉上………もしかしてこいつじゃないか?榊のおっさんが言ってた人に似たアラガミって。」
「アイテールの特殊個体か幼体か?しかし腕に眼があったな。」
「新種かどうか判断するのは俺達の仕事じゃないさ。姉上、捕喰するから離れてくれ。」
姉上ってまさか……うわ若いな。若いけどこの頃から凶悪なおっぱいしてんな。そして性格もあんま変わってないっぽい。いや、若い分なんつーか荒々しい感じだな。僕の身体にアサルトの銃身を突き立てて押さえつけてきた。綺麗だけど付き合いたいかって言われると悩むタイプだわ。行き遅れるのも分かr……
……なーんて余裕こいてる場合じゃないのよ。どうやって逃げようか。腕の再生は……無理だな。肘から先がない。この負傷じゃ再生させるのに片方三日はかかる。足も同様。再生するってだけで回復能力として使えるほどアラガミの再生能力は高くない。
とにかく。今は僕に出来ることを考えろ。腹には神機が突き刺され、仮に抜けたとしても移動手段も攻撃手段もない。そうなるとどう考えても僕一人で逃げ切ることは不可能だ。
だが………僕が散々喰ったサリーの前の姿の時の能力。ザイゴートの能力には、『アラガミを呼び寄せる』という能力がある。本当はこれは僕もやりたくないんだけどさ。現状はこれにワンチャンかけるしかない。下顎が吹き飛んでるから上手く叫べるかは不安だが………
「────────────!!!」
「なっ!?こいつまだ生きてんのか!!」
「離れろ
そしてもうひとつ。ザイゴートの毒ガスだ。両腕と左脚の傷口の付け根から、毒性のオラクル細胞を放出させて辺りに充満させる。すると僕に刺さったままの神機を手放し、二人は僕から咄嗟に飛び退いてガスを回避する。
………これでいい。ガスは別に吸ってくれなくていい。ただ僕の身体に刺さったこのブラッドサージ。僕の目的はこいつだ。こいつを手から離して欲しかったんだよ。
僕含めアラガミはその全身が捕喰機能を持つオラクル細胞で形成されている。つまり、口以外の場所でも捕喰ができる。僕の身体には神機が突き刺さっているが、それは逆にこの神機の刀身が僕のオラクル細胞に包まれているということ。
つまり。口の中にあるのと変わらないってわけだ。
蝕むようにしてブラッドサージの刀身を体内に取り込み、そのまま分解するように捕喰していく。すると身体に凄まじい拒絶反応が走り、体内に取り込まれた異物に対する吐き気が全身に走る。プラスチック喰ってるみたいな感覚とでも言うべきか………
しかし……それだけだ。神機もアラガミ。普通のアラガミが口にしたくないと思う材質で出来てるだけで、スサノオとか神機を好んで捕喰するアラガミがいるくらいだからな。我慢すれば喰えないわけではない。
そして僕の捕喰によりブラッドサージを半分くらい取り込んだところで、ようやく僕を地面に縫い止める刀身がへし折れた。
「あ……あいつ!俺の神機を!?」
「リンドウ!!ここにアラガミの群れが接近しているらしい!!」
「なに!?さてはこいつの能力か!!」
ほーら。どうする?そんな武器のない状態でアラガミに囲まれたら、いくら流石にリンドウさんでも危ないんじゃない?捕喰機能のない銃型の神機じゃ僕は完全に殺せないし。ここは大人しく撤退した方がいいんじゃないかな??
「榊博士にこいつの情報を持ってくためにもここで死ぬ訳には行かない。リンドウ……ここは退くぞ。」
「あぁ……了解だ。」
リンドウさんが刀身の無くなった神機を握り、僕の方を一度睨んだ後にそのままどこぞへと向かっていく。そうか……ここがそうだったのか。
他の支部じゃ大騒ぎになるヴァジュラを単独で片付けるゴッドイーターがゴロゴロいる魔境。その名を極東支部。行く宛てもなく彷徨い続けていた僕は、いつの間にかこの地へと辿り着いていたらしい。
どうにか生き残ったこの身体を再び横にするが、遠方から響く地鳴りがこちらへと向かってくる。ザイゴートの能力で呼び寄せたアラガミがこちらへと向かってくる音だ。
そう……問題はまだ片付いちゃいない。神機使いはどうにかして追い払った。が、二人を追い払うために呼び寄せたアラガミ。ぶっちゃけこいつらも僕のことは基本餌認定してると思うし、僕も普段はサリーが一緒じゃなきゃ隠れてやり過ごすレベルなんだよ。
そんなのがいっぱい。それも片足しか残ってない動けない僕の元へと集まってくる。僕の声を聞いてサリーも来てくれることを祈るしかないが………この魔境に住まうアラガミもまた強靭なのも事実なわけで。
一難去ってまた一難とはよく言ったものだ。迫り来る『獣』の群れに悪寒が走る。今日は厄日というやつなのだろうか。そう考えずにはいられないほどの絶望が、僕のすぐそこまで歩み寄ってきていた。
この頃のサクヤさんはまだオペレーターです。代わりに怖いお姉さんが現役です。