その錬金術師は儘ならない~彼に薬を求めるのは間違っているだろうか~   作:獣ノ助

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現在個人的に大変な状態ですので週1でなんとかという感じです。
拙いうえにペースも落ちてしまい申し訳ないですが、よろしければ引き続きお付き合いください。


それでは3章、始まります。


3章:『錬金術師、リヴィラを訪れる』
Recipe.13 - お誘い + 場違い


怪物祭(モンスターフィリア)が開催された翌日。アルクは久しぶりに酒場『豊穣の女主人』に食事に来ていた。外食に出る事のあまりないアルクだが、この酒場では従業員から良く顔を知られている。それは、アルクの噂によるところではなく、彼を良く知る人がそこで働いているからである。

 

「よっ。 久しぶり、ティア姉。」

 

「アルクじゃん。 ほんと久しぶりだね。 今日も1人?」

 

「その言い方はなんか引っ掛かるな。 …間違っちゃいないけどさ。」

 

彼女の名前はティルニア・ヴィスキー。今は酒場の従業員として働いているが、以前は冒険者として活動していたヒューマンだ。彼女がアルクを良く知っているように、アルクもまた彼女を良く知っている。それも当然だろう。彼女はミアハ・ファミリア所属の冒険者だったのだから。

 

「そういう意味じゃないって。 たまにはナァちゃんも連れて来てって事。 何を気にしてるのか知らないけど、どっちかって言うと私は()()()()()()なんだしさ。」

 

「まぁ、誘うだけ誘ってみるよ。」

 

ミアハ・ファミリアに起こったとある出来事。ファミリアが今の状態になる原因となったそれに、彼女もまた関わっている。ナァーザが冒険者を廃業し薬屋の仕事に専念しているように、ティルニアも冒険者という道を断ち、酒場で働いているのだ。

 

「ティア、サボりにゃ? またミア母さんに怒られるにゃ!」

 

「いつも怒られてるアーニャに言われたらお終いだわ。 でも、確かにミア母さんに怒られるのは困るわね。 それじゃあ戻るわ。 たくさん食べてってね、アルク!」

 

「ま、程々にな。」

 

アルクが酒場へやって来たのは、昨日シルが別れ際にティルニアの話をしたためだ。アルクが酒場に来ない事でティルニアが寂しがるとは思っていなかったが、なんとなく気が向いたため足を運んでみた。

 

「サルはまたジュースにゃ? まだまだお子様にゃ!」

 

「いいだろ、ほっとけ。 あと俺はサルじゃない。」

 

酒場であるにも関わらず、アルクは酒を飲まない。苦手というよりも、アルクには酒の味が良く分からないのだ。味も分からないのに割高な酒を飲むなどアルクがするはずもない。

 

「アーニャ! 暇なら注文取って来な!」

 

「にゃ!? はいにゃ!」

 

人に言っておいて自分が怒られていては世話がない。注文取り待ちの客の元へと走り、その途中でテーブルにぶつかり再び怒られるアーニャの姿にアルクはやれやれとため息をついた。

 

「あ、いた! アルクー!」

 

アルクが食事を終えようとしていた頃、豊穣の女主人をとある人物が訪れて来た。しかし彼女はアルクに用があるようだ。アルクを見つけると、その人物―――ティオナはアルクの元へとやって来た。

 

「やっほー。 お店に行ったらここだって聞いたからさ。」

 

「店まで行ったのか。 それは悪かったな。 俺に何か用があるて事は、…マズポか? まだあまり数は出来てないんだが…。」

 

「違う違う。 実はウルガの製作費を稼ごうと思ってさ。 ちょうどいいからアルクもどうかなって。」

 

前回の探索で新種のモンスターに溶かされて、一から作らざるを得なくなった彼女の武器。やはりというか、その金額は今の彼女には絶望的だった。止む無くお金稼ぎにダンジョンへと向かう事になった彼女は、そこでアルクとの約束を思い出したのだ。

 

「いいのか? 多分レベル2の俺じゃ足手纏いだぞ?」

 

「いいっていいって。 お礼なんだし。」

 

彼女なら武器を一振りしただけでマズポではない普通のポーションが買えてしまう気もするが、せっかくの機会を棒に振る必要もない。アルクは彼女の厚意に甘える事にした。

 

「それなら同行させてもらおうかな。 いつ行く予定なんだ?」

 

「明日!」

 

「明日かよ。 まぁ準備については問題ないんだけどな。」

 

話をした翌日という急なスケジュールだったが、怪物祭の中で彼女の主神であるロキからそのお誘いの可能性は聞いていたため、アルクは既に準備万端だった。中層用に少し備えを多めにしているため、改めて何かを購入する必要もない。

 

「じゃあ明日、ダンジョン入口に集合ね! 何人か誘って行こうと思うんだけど、大丈夫だよね?」

 

「あの"凶狼"じゃなければな。」

 

「あははっ、ベートは一緒に行動するのとか苦手だし、もし誘ったとしても絶対来ないと思うな。」

 

実際のところ、アルクはベートの事を特に嫌ってはいない。どちらかと言うと、ベート側がアルクを嫌っているのだ。あまり面識はなくとも彼の性格はおおよそ理解しているため、彼を話題に挙げたのは、アルク的には冗談のつもりである。

 

「じゃあ明日、ダンジョン前だな。 了解。」

 

「モンスターは私達が片付けちゃうから、アルクもゆっくり薬草集め出来ると思うよ。」

 

「戦える内は戦うさ。 どうにもならなかったら遠慮なく頼らせてもらう。」

 

「うん!」

 

その後お腹が空いたという事で、ティオナはそのまま料理を注文した。食事を終えたアルクも先に帰る事はせず、ジュースを飲みながらティオナと話をする事に。その内容は主に、昨日のモンスター脱走事件についてだ。広場での戦いの後、地下水路に向かったティオナとティオネであったが、地上に現れた花型モンスターの姿はなかったらしい。ちなみに、新種の花型モンスターはその姿と大きさから、"食人花"と呼ばれるようになったとか。

 

「ガネーシャ・ファミリアの調教リストにもなかったみたいだし、いったい何だったんだろうね、あのモンスター。」

 

「連れて来たんじゃないなら、自力で上がって来たかもしれない訳だしな。 もしそうなら、あの強さを考えても正直洒落にならないぞ。」

 

脱走騒動こそ解決したが、その代わりに大きな問題が発生してしまった。しかし謎の多いその食人花について語れる事もなかったため、アルクとティオナは他愛もない話に花を咲かせたのだった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

そして翌日、ダンジョンの前でアルクは目の前の状況に呆然としていた。

 

「初めまして、アルク・サルマン。 僕はロキ・ファミリア団長のフィン・ディムナだ。 ティオナやレフィーヤが世話になったと聞いている。 今日はモンスターを気にせずゆっくり採取に専念してくれ。 君の安全は僕が保証しよう。」

 

フィン・ディムナ。ロキ・ファミリアの初期メンバーにしてレベル6である彼に与えられた二つ名は、"勇者(ブレイバー)"。小人族(パルゥム)の小さな体に似合わぬ覇気がヒシヒシと感じられる。

 

「たいした事はしてないですよ。 既に知ってるみたいですが、俺はアルク・サルマン。 ミアハ・ファミリア所属です。」

 

少年にも見える姿のフィンに長身のアルクが敬語を使う光景は違和感があるが、決して間違いではない。ちなみにこう見えてフィンは40代である。詐欺だ。そんなフィンとの挨拶を終えると、アルクを呆然とさせたもう1人の人物がそれに続いた。

 

「副団長のリヴェリア・リヨス・アールヴだ。」

 

"高貴"という言葉が似合うハイエルフの女性、リヴェリア。彼女は簡単に挨拶を終えると、その何かを見透かすような瞳でアルクをジッと見据えた。

 

「えっと…、何か?」

 

「いや、何でもない。 すまなかったな。」

 

アルクがその視線の理由を聞いたが、答えはなかった。

ちなみに他のメンバーは、発案者のティオナ以外にティオネ、レフィーヤ、アイズとなっている。お出かけ感覚で深層まで行けてしまえる錚々(そうそう)たる顔触れに、アルクは自分が明らかに場違いであると感じざるを得ない。いっそこのまま辞退した方が良いのではないかと考え始めたアルクに、ティオネが話しかけて来た。

 

「あんたがアルクね。 ティオナから話は聞いてるわ。 私はティオネ・ヒリュテ。 怪物祭じゃまともに挨拶する暇もなかったしね。 今日はよろしく。」

 

彼女の言うように、怪物祭の際は食人花を相手に同じ場に居合わせていたのだが、脱走したモンスターの撃破とその後始末に追われ、アルクとは特に挨拶もしていなかった。応えるようにアルクもティオネに挨拶し、これでようやく今回のメンバーと顔見知りとなったアルクだった。

 

「増えるとは聞いてたが、どうしてこうなったんだ?」

 

「えっとねぇ、アイズが借りてたレイピアの弁償代を稼がなくちゃいけないって話だったから誘ってぇ、レフィーヤも一緒に参加したいって事になってぇ、フィンとリヴェリアも誘ってみたらオッケーって事でティオネも付いて来たの。」

 

「…まぁ、なんとなく分かった。」

 

要は声を掛けてみたら皆参加する事になった訳だ。顔触れについてはロキ・ファミリアの若き幹部でもあるティオナが発端であればこうなってしまうものなのかもしれない。

 

「しかし、剣姫まで金に困ってるとはな。 一級も楽じゃなさそうだ。」

 

「あの…。」

 

アルクが冒険者生活の世知辛さを憂いていると、アイズが話しかけて来た。

 

「ん? なんだ?」

 

「私の事は、"アイズ"でいいです。 親しい人は皆、そう呼ぶので。」

 

親しいという程の付き合いはないが、冒険者によっては二つ名で呼ばれるのは好きではないという者もいる。他でもないアルクがそうであるように。特に名前で呼ぶ事に抵抗がある訳でもないし、むしろその方がアルクとしては好みである。

 

「分かった。 改めてよろしくな、アイズ。」

 

「はい、アルクさん。」

 

「俺にも敬語なしで構わないぞ? 年も同じくらいだろうし。」

 

アイズの実年齢は知らないが、ベルよりは少し年上と判断したアルク。ベルは14歳だと聞いていたため、それより少し年上ならば、アルクとほぼ同じ歳だろう。

 

「そう、なん…、そうなの? 年上かと思った。」

 

「無駄にデカいからな。 これでもまだ16だよ。」

 

「本当に同い年なんだ。 うん、分かった。 改めて、よろしく。」

 

ベルの気持ちを知っていながらアイズとの距離を縮めつつあるアルク。しかし当然アルクにその気はない。アイズと話す途中でレフィーヤが割り込んで来たりティオナが飛び込んで来たりと少々騒がしくなったが、団長であるフィンの一声でアルク達はようやくダンジョンへと足を踏み入れたのだった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

ダンジョン探索は早くもアルクの知らない世界へと突入していた。

 

「うーん、手応え無いなぁ。 せっかく二代目オルガでの初探索なのに。」

 

「まぁ、この階層じゃあね。」

 

ヒリュテ姉妹の会話を聞きながら魔石を拾うアルク。何故アルクがそんな事をしているのかというと、単純にやる事がないのだ。現在アルク達がいるのは17階層。この階層になるとアルクも来る事がないため、自分の力がどこまで通用するか気になってくる。しかし、それ以前の話だった。そもそもアルクが戦闘に出る状況にならないのである。

 

「フィン、どうする? このまま19階層まで行っちゃう?」

 

探索した先で稀少な薬草を見つける可能性があるため行きでは特に採取を行っていないアルク。そうなると、戦闘も任せきりとなっている彼は完全に手持無沙汰となる。そのため、少しでも何かしようと思い、買って出たのが魔石拾いだ。

 

「いや、リヴィラに寄って行こう。 集まった魔石も換金しておきたいしね。」

 

ちなみに適正レベルとはいえアルクが1人でパーティの後を着いて行くのは危ないだろうとアイズとレフィーヤが彼と共に進んでいる。レフィーヤについては元々サポーターとして働く予定だったらしく、アルクと同じように魔石を拾っている。アイズはただそれを見守るだけであるが、アルクのような手持無沙汰というよりは、今後に向けて温存しているという方が正しいかもしれない。

 

「よしっ、これで拾い終わったかな。」

 

「そうですね。 見た限りでは大丈夫だと思います。」

 

ドロップした魔石を残したままだと、以前のミノタウロスのようにそれを食らい、モンスターが強化してしまう可能性がある。そのため、魔石は基本的に拾うか、拾い切れない場合は砕いて行くのが常識だ。

 

「ありがとう、2人共。 もう少しで安全階層(セーフティポイント)だ。 そこで一度休憩にするから、もう少し頑張ってくれ。」

 

「分かりました。 と言っても、たいして疲れてはいないですけどね。」

 

「それは頼もしい限りだ。」

 

普段行かない階層まで来ているとはいえ、一番体力を使う戦闘がないのだ、アルクの体力は全然消耗していない。それはロキ・ファミリアでの遠征も経験しているレフィーヤも同様だ。しかしそこまでで回収した魔石は今後邪魔になるため一度換金する必要がある。

 

「アルクはリヴィラには行った事あるの?」

 

「いや、ない。 基本日帰りだったし、何よりアドバイザーの話じゃ物価が異様に高いらしいからな。 行こうとも思わなかった。」

 

レベル2のアルクの適正範囲という事もあり、アルクはリヴィラについて担当アドバイザーのミィシャから説明を受けていた。

 

18階層は安全階層(セーフティポイント)と言われ、モンスターが発生しない。光り輝く水晶が数多く存在し、豊富な果実や綺麗な水といった大自然が広がっているため、その階層は『迷宮の楽園』とも呼ばれている。その階層にあるのが冒険者の街『リヴィラ』だ。冒険者達が探索の途中で訪れるその街は彼等にとって数少ない補給の場。しかしそんな冒険者達の足元を見るかのように、リヴィラで売られる商品は高い。その高さといったら、ぼったくりと言っても過言ではないレベルなのである。リヴィラの話を聞いたアルクが自分に縁のない場所だと思ったのも無理はないだろう。

 

「とりあえず今日はリヴィラで宿を取ろうと思う。 もちろん、僕の奢りでね。」

 

「やったー! フィン太っ腹ー!」

 

「流石団長ー! もちろん部屋は私と――」

 

「アルクも、それで構わないかい?」

 

「いいんですか? 俺まで奢ってもらって。」

 

「構わないさ。 むしろ僕としては同室の相手がいてくれると助かるんだ。 …いろいろとね。」

 

直後にアルクに突き刺さる視線。その視線の主は探すまでもなくフィンの後ろに立っていた。最早殺気にも近いティオネの怒りの形相に、以前ミノタウロスの至近距離での強制停止(レストレイト)にも耐えてみせたアルクは、顔を引きつらせ完全に固まってしまった。

 

その後こっそりとフィンに、ティオネからのアプローチに手を焼いていると聞かされたアルクは、苦笑いで「頑張って下さい」と返す事しか出来なかった。




ロキ・ファミリアと絡むと強さ的にアルクの出番が少ない。
つまりは原作準拠になる、と。……これはマズい。


過去の話について、書き方のアンケートを取りたいと思います。
試しに、という面もありますので気軽に投票してみてください。

アルクの過去の話を書く予定ですが、どのように書くのが良いでしょうか?

  • 本作に章分けし投稿(X.5章的な)
  • 別作品として投稿(外伝(?)的な)
  • 章分けもせず流れでそのまま
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