その錬金術師は儘ならない~彼に薬を求めるのは間違っているだろうか~ 作:獣ノ助
その豪華なメンバーに、彼の存在が薄れていく…。
ほぼ原作です。ほんとすみません;
アルクにとっては初となる
「天井の大きな水晶が光って、階層中を照らしているんです。 夜の時間に合わせて水晶も光らなくなるので、本当に夜が来たように感じられるんですよ。」
アルクの心中を察したようにレフィーヤが解説する。上を見上げれば、確かに天井にはびっしりと水晶が広がっている。アルクが視界を埋め尽くす程の水晶に感嘆していると、そこで何かが視界へと入って来た。
「あれは、鳥か?」
「モンスターだと思います。 ここには果実や水が豊富ですから、他の階層からモンスターが餌を求めてやって来る事も珍しくないんです。」
安全階層というのはあくまでこの階層でモンスターが発生しないというだけで、他の階層からのモンスターの侵入は話が別らしい。安全と言えどやはりダンジョン。油断は許されないらしい。
「それじゃあ早速、リヴィラに向かおうか。」
「おーっ!」
「ちょっと、待ちなさいよティオナ!」
「やれやれ、落ち着きのない。」
「まぁまぁ、元気があっていいじゃないか。」
ここまで戦闘続きだったとは思えないヒリュテ姉妹が先を行くと、リヴェリアはその様子に溜息をつく。フィンの言葉は少々爺臭い気もするが、アルクも概ね同意見だ。
「皆も早くー!」
急かすティオナとそれを追うティオネに続き、残りのメンバーもリヴィラへ向け歩き出した。
―――――――――――――――
到着したリヴィラの街。その異変に初めに気が付いたのはフィンだった。
「おかしいな。 妙に人が少ない。」
「確かに、いつも店を開いているはずの商人も見当たらないな。」
店先に人が出て来ていないという訳ではない。人の気配がしないのだ。冒険者がやってくれば金稼ぎのチャンスであるはずなのだが、アルク達を迎えるような雰囲気は一向にない。
「あれ? なんかあっちの方に人が集まってない?」
ティオナが指差す方を見てみると、そこには人の姿があった。それも1人や2人ではない。まるで何かに群がるかのように人がその場に集まっている。商人がいないのではしょうがないと、アルク達は人の集まるその場所へと向かう事にした。
「やぁ、ボールス。 いったいどうしたんだい?」
「なんだ、ロキ・ファミリアじゃねぇか。」
フィンが声を掛けたのは、左目に眼帯を巻いた男だった。彼の名はボールス・エルダー。リヴィラの元締めであり、冒険者としてのレベルは3だ。元締めの彼が騒ぎの中心にいる以上、街で何か事件が起こったのは疑いようがない。
「
"襲撃"ではなく"殺し"。つまり男はリヴィラへと入り込んだモンスターに殺されたのではなく、同じ冒険者から殺されたという事だろう。ボールスの言葉にアルク達は驚き、フィンやリヴェリアも眉をひそめた。レフィーヤに至っては少し青ざめている。
「犯人の目星は?」
「宿の受付をやってた奴の話じゃ男は女連れだったらしい。 だが現場にはそんな女いなかった。 おそらくそいつが犯人だ。」
現場を見せて欲しいというフィンの希望により、一行は宿のとある部屋へと案内された。そこでアルク達が見たのは、下顎から上を失った状態で仰向けに横たわる男の遺体だった。
「うっ…。」
その見るも無惨な姿に耐え切れず、レフィーヤは顔を逸らしてしまった。他のメンバーも程度の差はあれどそれぞれが顔を歪めている。その中でフィンだけはその遺体の惨状に臆さず遺体やその周辺を調べている。
「ボールスさん、取って来ました。」
「おう、ありがとよ。」
「ボールス、それはもしかして…。」
1人の男がやって来て、ボールスに何かを渡した。それは赤い液体の入ったガラス瓶。その時アルクはリヴェリアの視線が険しくなった事に気が付いた。
「あぁ、『
『
「死者を冒涜するような行為は褒められたものではないが…。」
「仕方ねぇだろ。 これじゃ何処の誰かも分からねぇんだ。」
開錠薬は罪人の身元を明かす時等に特例として使われている。物言わぬ亡骸のステータスを晒すのは神意に背くような行いだろう。しかしボールスの言う様に、遺体は頭のほとんどを失っておりその身元を確認は出来ない。事件と考えるのであれば身元を知る事で解決の糸口にもなり得るし、何よりこのままではその死を伝えるべき相手に伝えられない。抵抗はあっても理解はしているのだろう、リヴェリアもそれ以上何も言わなかった。
「それじゃあやるぞ。」
ボールスは、開錠薬を一滴、遺体の背に垂らした。すると、スッとその背に施錠されていたステータスが浮かび上がる。
「
「ハシャーナ・ドルリア。 所属はガネーシャ・ファミリア。 ……レベル4。」
「レベル4だと!? そんな男がこんな簡単にやられちまったってのか!?」
ボールスの発言は、遺体や現場の状況に基づいてのものだった。
まずは遺体。下顎から上を粉砕された点に目を奪われがちだが、その首には絞殺を思わせる手形がしっかりと残っていた。耐久というステータスは何もモンスターだけに対して効果を発揮する訳ではない。レベル4の冒険者の耐久を上回る力でなければ死に至らしめる事等出来ない。
もう1つは現場の状況。殺人現場に争った形跡がないのだ。ハシャーナが男で犯人が女なのであれば、隙を作る事も可能かもしれないが、その場には抵抗の跡もない。レベル4の冒険者を抵抗さえ許さず絞殺したのであれば、間違いなく犯人はそれ以上のステータス。
「犯人のレベルは4、いや、5以上と考えるべきか。」
レベル5以上の女冒険者。それだけで候補はかなり絞られるだろう。
「ま、まさか、お前等の中にこいつを
「あたしが団長以外に色目を使ったって言いたい訳……?」
「い、いえ、何でもないです!」
確かにこの場にはレベル5以上の女性が4人いる。しかし彼女達は全員男性と2人で宿に泊まるなど考えられない面子ばかり。フィン以外の男と宿に泊まる等あり得ないと怒りを露にするティオネを前に、ボールスは震え上がった。
これも巡り合わせというやつだろうとフィンは事件の捜査を手伝う事にした。自分のファミリアの団員ではなく今回特別に同行している形のアルクにも改めてその寄り道について話をしたが、アルクも手伝う件には賛成だった。今は女冒険者という手掛かりから街中の女性を集めて事情聴取をしている。レベルについての問題はあったが、女性である事を武器に油断させれば犯行は可能かもしれないというボールスの意見で話は進んでいる。
「油断程度じゃステータスの差は覆らないだろうけどな。」
リヴィラの街を探索しつつアルクは呟く。おそらくフィンも同じ考えだろうが、とりあえずは街の元締めであるボールスに任せるつもりなのだろう。事情聴取の裏で、リヴェリアと事件について話し合っている。
「ないねー、手掛かり。」
「そもそも何が手掛かりになるか分からないからな。」
現在アルクと共に探索しているのはティオナだ。アイズとレフィーヤは別の場所を調べている。ティオネに関しては、事情聴取に集められた女性達がフィンに色目を使うのではないかとその傍に控えている。
「せめて容姿を覚えててくれたら良かったんだがな。」
犯人と思われる女を見た受付の話では、女はフードを被っていて、体のラインから女性と分かっただけらしい。特徴が分からないのでは探しようがない。
「あとは、何かを盗んだかも、だっけ? 何かって言われてもなぁ。」
現場には確かに争った跡はなかった。しかし、1点のみ荒らされた形跡があった。それは、被害者のハシャーナの物と思われる鞄だ。鞄は大きく裂かれ、中身が溢れていた。その周辺には一切傷等見当たらないのに、その鞄にだけ、である。それを元にフィンが導き出したのが、ハシャーナの持つ"何か"を奪うために犯行が行われたのではないかという推理だった。
「そもそもまだ街にいるとは思えないんだよなぁ。 目的の物を奪ったなら、さっさとここから離れるだろうし。」
「だよねぇ。 オラリオに戻ってレベルが高い女性を調べた方が良いかも。」
手伝うとは言ってもあまりに手掛かりが少ない。そのためアルクとティオナの口からはだんだんと愚痴が増えて来る。一度アイズ達と合流し、情報を整理した方がいいだろうかと思い始めたアルクだったが、そこで突然、地面が大きく揺れ始めた。
「何っ!? 何が起こったの!?」
「――っ!? おい、あれって…。」
揺れと同時に聞こえた破壊音にアルクが目を向けると、そこには目を疑う光景が広がっていた。
街の至るところから地面を突き破り伸びるもの。緑の細長い体をしならせ、その先端には不気味な歯を覗かせる花。食人花だ。
「うそ、何でこんなところに食人花が!?」
「分からない。 だが、街がやばい状況だってのは確かだ!」
既に街のあちこちから悲鳴が上がっている。足踏みしている暇ではない。戸惑っている場合でもない。アルクとティオナは食人花を倒すべく走り出す。
「アルク、大丈夫? あいつ結構強いよ?」
「今日は
「しょうがないなぁ。 ま、私とウルガに任せておけばあんな奴さっさと片付けちゃうけどね!」
鬼に金棒、ティオナにウルガ。頼もしい事この上ない。しかしアルクも黙って見ているつもりはない。背負った大剣に手をかけ、街へと牙を剥く食人花へと飛び掛かった。
「そいつを渡してもらうぞ、――"アリア"。」
「っ! なんで、…その名前を。」
一方アイズ達の目の前には赤髪の女性が立っていた。彼女の狙いはレフィーヤが抱える大きく丸い包み。そしてそれは、赤髪の女性がハシャーナから奪おうとしていた物。つまり、目の前の女こそがリヴィラで起きた事件の犯人なのだ。
「何なんだよ、あいつはっ!」
アイズが女と対峙する後方でレフィーヤと共にいるのは
(まさか、アイズさんが圧されてる!?)
包みを奪うべく攻撃を仕掛けて来た女にアイズが立ち向かうが、その形勢は赤髪の女の方が優位であった。しかも、アイズは魔法によりその身に風を纏った状態。その効果で強化されて尚、アイズは圧されているのである。
(なんとか魔法で援護を!)
アイズを助けるために魔法の詠唱に入ろうとしたレフィーヤ。しかし、詠唱に入った瞬間地面を突き破り食人花が姿を現す。レフィーヤはその光景に見覚えがあった。それは怪物祭で食人花と戦った時の事。レフィーヤが詠唱に入るとそれを妨害するように食人花は狙いをレフィーヤに定め、襲って来た。
(まさか、魔力に反応しているの…?)
また詠唱中に襲われてはいけないと途中で詠唱を止めるレフィーヤ。今彼女が戦闘不能になっても助けられる者はここにはいない。悪化する状況に頭を巡らせる彼女だったが、その時彼女の持っていた鞄が輝き始める。
「えっ!?」
「な、なんだ!?」
次の瞬間、弾けるように飛び出したのは事件の鍵を握っていると思われる丸い包みだった。それは飛び出した勢いで包みが剥がれ、その正体を明らかにした。一見すると緑色の水晶。しかし、その内部には不気味な生き物がいた。胎児のように体を丸めていたそれは、ギョッと目を開くと自らを覆っていた水晶から飛び出す。レフィーヤとルルネがその光景に声も出ない中、その不気味な生き物は、その場に現れた食人花へと張り付いた。
「いったい何を…。」
レフィーヤの疑問に答えるように、その変化は起こった。食人花の先端、花と思われるそれが姿を変え始めたのだ。口から何かが生え始めその姿が少しずつ明らかになる。それはまるで、人の上半身。食人花は人―――おそらくは女性―――の体を模したモンスターへと姿を変えた。
<――キィィーーー!!>
そのまるで叫びのような鳴き声が、リヴィラの街に木霊した。
次回はアルクも少し頑張ります。
原作準拠なので週2で上げたかったですが、未だにリアルが落ち着かず;
年内には落ち着いて欲しいですが……。
アルクの過去の話を書く予定ですが、どのように書くのが良いでしょうか?
-
本作に章分けし投稿(X.5章的な)
-
別作品として投稿(外伝(?)的な)
-
章分けもせず流れでそのまま