その錬金術師は儘ならない~彼に薬を求めるのは間違っているだろうか~   作:獣ノ助

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話は再び本編へ。
ようやく彼女が再登場します。


前振り的なのを消化出来るとホッとする初心者な私です。


4章:『錬金術師、パーティを組む』
Recipe.17 - 神の嫉妬 + 思わぬ再会


「なぁ、セラさんって酒は飲まないのか?」

 

「何だい急に。」

 

「いや、飲んでるとこ見た事ないからさ。 飲めないのかなって。」

 

「いーや、酒は好きだよ。 そりゃもう浴びる程飲んだもんさ。 ハッハッハ!」

 

「へぇ。 じゃあなんで飲まなくなったんだ? 村の皆と食べる時も、酒は断ってるだろ?」

 

「よく見てるねぇ。 でもま、理由は簡単さ。」

 

「そうなのか?」

 

「村守ってるアタシが酔っ払ってちゃ仕事になんないだろ?」

 

「…確かに。 じゃあ俺が強くなって、セラさんが酒を飲めるようにしないとな!」

 

「ハッハッハ! 言うじゃないか。 弟子の成長もあって酒が一層美味くなるってもんだ! そうと決まれば特訓行くぞ! 酒がアタシを待っている!」

 

「今から!? もう今日の特訓は終わっただろ!?」

 

「何言ってんだい。 酒を飲めるかもしれないってのにのんびりしてられないよ!」

 

「だぁー、クソっ! 下手な事言うんじゃなかった!」

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

 

「…ん? ここは…。」

 

アルクが目覚めると、そこは本拠『青の薬舗』の店内であった。

明日の開店の準備をしていたという記憶はあるため、その途中で寝てしまったらしい。体を起こそうとするとパサリと何がが落ちた。

 

「起こしてくれてもいいんだけどな。」

 

それは毛布だった。ミアハはアルクが起きている間に出掛けたため、おそらくナァーザが掛けたのだろう。彼女は何かとアルクには甘いところがあるのだ。すぐには起こさず、しばらく寝かせた上で起きないのであれば、改めて起こしに来るだろう。

 

「にしても、懐かしい夢だったな。」

 

アルクが夢で見たのは、過去の師との記憶。まだアルクが彼女に鍛えられ、そして守られていた時の記憶だった。

 

「最近何かと無力なのを痛感したからなぁ。 初心に戻れ、って事なのかね?」

 

第一級冒険者に、まだ未熟ながらも才能溢れる冒険者。その出会いにより自分がまだまだ弱いのだと実感させられたアルク。そんな彼に夢を通じて師が発破を掛けに来たのかもしれない。

 

「……ないか。」

 

しかし夢で見た彼女から伝わったのは"酒が飲みたい"という願望のみ。墓に酒でも供えろという意味かもしれないと、アルクは考えを改めた。

 

「ただいまアルク。 まだ店の準備の途中だったか。」

 

するとその時、出掛けていたミアハが帰って来た。

 

「おかえりなさいっス、ミアハ様。 準備は終わってますよ。 実はちょっと居眠りしちゃったみたいで、今起きたところなんです。」

 

「なるほど、それで毛布を持っているのか。 それ程寒くはないが、体を壊さないようにな。」

 

「はい。 …そういえば、どこへ行ってたんですか?」

 

「少しヘスティアと飲みにな。」

 

答えるミアハにアルクはなるほどと思った。ミアハが入って来た瞬間に酒のような匂いが店内へと吹き込んで来たが、理由はそれらしい。

 

「でも、珍しいですね。 食事ならともかく、ヘスティア様と飲みに行く事って最近じゃほとんどなかったんじゃないですか?」

 

ミアハ・ファミリアもそうだが、ヘスティア・ファミリアも零細ファミリアだ。その2つのファミリアの主神が一緒に酒を飲む機会は滅多にない。

 

「何やらヘスティアが荒れていて、話を聞いて欲しいと誘われたのだ。 もちろん割り勘だがな。 どうやら探索帰りのベルが知らない少女と食事に行くのを見掛けたらしい。 それがどうにもヘスティアは気に入らなかったらしくてな、「自分がいながら」、「あれは誰なんだ」と愚痴っていた。」

 

「それは。…大変でしたね。」

 

それはきっと嫉妬なのだろうとアルクは思い至ったが、ミアハはヘスティアの気持ちこそ理解したものの、その根本は分かっていないように見える。どちらかと言うのであれば、ミアハよりもナァーザを誘った方がヘスティアは共感を得られたかもしれない。

 

(にしても、ベルが探索の帰りに女性と食事、ねぇ。)

 

かなり奥手だと思っていたが、実はそうでもないのかもしれない。あるいは女性の方からベルを誘い、彼がそれを断る事が出来なかった、という線もある。というかそちらの方が納得だ。次に会った時に聞いてみるかと思い、アルクは毛布を抱え、ミアハに続いて本拠の奥へと入っていくのだった。

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

数日後。アルクはいつもの様に薬草採取も兼ねてダンジョンへと潜っていた。今日も今日とてモンスターを狩りポーションを錬成したアルク。使う当てのあるものを数本ホルスターへと収め、地上へと戻っている時だった。

 

「あれ? アルクさん?」

 

「ん? なんだ、ベルもダンジョンにいたのか。 お疲れさん。」

 

アルクは同じくダンジョン探索中のベルと出会った。以前は共にダンジョンへ向かったため、ダンジョン内で会うのはこれが初となるだろう。

 

「お、防具を新調したのか。」

 

「はい、アドバイザーのエイナさんにその方が良いと勧められて。」

 

ベルの装備は以前とは大きく変わっていた。メインの武器となるヘスティア・ナイフについては怪物祭での戦いについて話した際に聞いている。それに加えて防具についても、布地が多く防御面に不安のあった防具から、金属部の多いライトアーマーへと変わっている。

 

「ベル様、魔石の回収終わりまし…、た!?」

 

アルクがベルと話していると、ベルの後ろから1人の少女が現れた。大きなバックパックを背負っており、彼女がサポーターである事が窺える。少女はアルクに気が付くと、何故か目をギョッとさせ、あからさまに動揺した。

 

「あ、リリ。 この人はミアハ・ファミリアの…、って、リリ? どうしたの?」

 

「ん? ()()?」

 

大きなバックパックを背負ったサポーターで、"リリ"と呼ばれるその少女に見覚えがあるアルクは、フードを深く被り顔を隠そうとする彼女を眺め、ようやく気が付いた。

 

「なんだ、アーデじゃないか。 久しぶりだな。」

 

「あ、あはは。 お久しぶりですね…、サルマン様。」

 

気付かれた以上意味はないと抵抗を止めた少女。そう、彼女はアルクが一度日雇いサポーターとしてパーティを組んだ、リリルカ・アーデだった。

 

「え? アルクさん、リリを知ってるんですか?」

 

「あぁ、1日だけだが、サポーターとして雇ったんだ。 その後ももし見掛けたら誘ってみようかと思ってたんだが、いなくてな。 まさかベルと契約してるとは思わなかったわ。」

 

「そうだったんですか。」

 

1日ではあったがサポーターであるリリルカとの探索が好調だったため、機会があればまた組めないかと思ったアルクだったが、それ以降リリルカと出会う事はなかった。

 

「今はベルと正式に契約してるんなら、前の冒険者とは契約を切ったんだな。 まぁ俺が言うのも変だが、ベルの事をよろしく頼むな。」

 

「は、はい。 荷物持ち程度しか出来ませんが、ベル様にご迷惑がかからないよう精一杯頑張ります。」

 

「そりゃ卑下し過ぎだろ。 援護射撃の腕も確かだし、小人族(パルゥム)なのにデカいバックパックで重い荷物運んでくれたじゃねぇか。」

 

リリルカとの探索を思い出し、その有能ぶりを語るアルクであったが、そこでベルがアルクの話の中に違和感を感じた。

 

「……小人族(パルゥム)?」

 

「どうした、ベル?」

 

「あの、リリは小人族(パルゥム)じゃなくて、犬人(シアンスロープ)ですよ。 ね、リリ?」

 

「っ!? はい! リリはシ、犬人(シアンスロープ)ですよ!? リリは小柄ですし、サルマン様と探索した際はフードを被っていましたので、か、勘違いされたのでは?」

 

そう言うとリリルカは被っていたフードを取った。そこには確かに犬人(シアンスロープ)の特徴である犬耳が付いている。

 

「マジか。 …あー、確かに見た目で小人族(パルゥム)だと判断してた、…かもしれないな。 悪い。 」

 

「いえ、良く間違われますから。 気になさらないでください。」

 

ファミリアでその日の探索の事を話す時も、アルクはパーティを組んだのが"小人族(パルゥム)の少女"だと言ってしまっている。先入観で判断した事を反省するアルクだった。

 

「ベル様とサルマン様はお知り合いのようですが、パーティは組まれていないのですか?」

 

「あ、うん。 実はアルクさんから誘ってもらってはいるんだけど、僕が未熟な内は足手纏いになっちゃうから、10階層に到達出来たらって事になってるんだ。」

 

アルクは別に足手纏いとは言ってないし思ってもいないのだが、ベルの中ではそういう事になっているらしい。それで励めるのであれば、とアルクは訂正しなかった。

 

「では、それまではベル様はソロで探索をする、という事ですか?」

 

「リリがサポーターをしてくれるから、2人で、だけどね。」

 

「え? あ、…そ、そうですね。」

 

ベルが微笑みそう告げると、リリルカは少し動揺したようにそれに返した。アルクはその光景に、どこか見覚えがある。

 

(ミアハ様も、こんな感じに女性に微笑みかけてたような気が…。)

 

リリルカの動揺に疑問符を浮かべるベル。その自覚の無さもミアハと重なる。となれば自然とアルクが陰ながら応援する(ナァーザ)に重なるのは―――

 

(大変だと思いますが、頑張って下さい。 ヘスティア様。)

 

既にベルの思い人も知っているアルクとしては誰をどう応援したものか悩みどころではあるが、先日ヘスティアが嫉妬の余りヤケ酒をしたと聞いたばかり。今はとりあえず、彼女の思いが少しでもベルに伝わる事を祈るアルクなのだった。

 

(というか、ベルが一緒に食事をしてた少女って…。)

 

自分の方を見るアルクに不思議そうな顔をするリリルカを前に、アルクは女神の心労を憂う事しか出来なかった。

 

 

 

「それじゃ、またな。 ベル、アーデ。」

 

「はい、お疲れ様です。 アルクさん。」

 

地上へ戻るアルクに対し、ベル達はまだ探索を続けるらしい。あまり時間を取る訳にはいかないと、アルクは話もそこそこに2人と別れる事にした。

 

「あのっ――。」

 

別れを告げ背を向けたアルクだったが、それをリリルカが呼び止める。

 

「ん? どうした、アーデ?」

 

「あの、サルマン様も、私の事は"リリ"で構いません。 もうあの時みたいに下手に気を遣う必要も、ありませんから。」

 

あの時というのはもちろんアルクとパーティを組んだ時だろう。彼女は印象を良くするために一人称を"私"としたりしていたが、最後の最後で素が出てしまいそれは崩れてしまった。もうアルクにその手の遠慮は不要なのである。

 

「分かった。 じゃあ俺も"アルク"でいい。 そっちの方が呼ばれ慣れてるしな。」

 

「分かりました。 引き留めてしまってすみません。 ではまた、アルク様。」

 

「様、ねぇ。 まぁいいか。 またな、リリ。」

 

呼び方は変わっても様付けまでは変わらないらしい。それは彼女なりのサポーターとしてのこだわりなのかもしれない。多少むず痒くはあったが、アルクはそれを受け入れ、今度こそ"リリ"達と別れたのだった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

(10階層に到達したら…)

 

そこはソーマ・ファミリアの本拠。団員であるリリは、ベルとの探索を終え帰って来ていた。彼女が思い出すのはベルとアルクの会話。ベルが10階層に到達した際にはアルクとパーティを組むというものだった。

 

(ベル様は思ったよりずっと早くダンジョンを攻略しています。 リリもあまりのんびりはしていられませんね。)

 

彼女がベルと契約を組んだのには理由がある。それは、ベルが持つヘスティア・ナイフを奪う事だった。刀身に神聖文字(ヒエログリフ)が刻まれており、彼が主神に与えられたというその武器はきっと多額の金に化けるだろう。そうすれば、自分がソーマ・ファミリアから脱退するために必要となる金額に届くかもしれない。

 

(早く、こんな生活から…。)

 

リリは生まれた時からソーマ・ファミリアにいた。それは彼女の両親がソーマの眷属だったからという簡単な理由だ。そのため彼女も幼い頃にソーマの眷属となった。しかし、ソーマ・ファミリアは彼女にとって地獄だった。

 

主神ソーマの造る神酒に魅了された団員達は、その酒欲しさに他人を蹴落とし、金を求めた。リリの両親も例外ではなく神酒のためにダンジョンでの金稼ぎへと赴いたが、実力に見合わぬ無理な探索によりあっさりと命を落としてしまった。

 

そんなファミリアの状況の中、成長したリリも遂に神酒を口にしてしまう。彼女もやはり酒を求め、金稼ぎに躍起になるのだが、彼女は蹴落とされる側であった。団員には稼ぎを奪われ、サポーターとして同行した冒険者には雀の涙ほどの報酬しかもらえなかった。

 

しかし報償である神酒とは縁遠かった事で、彼女を魅了した神酒の効果は薄れていた。目の覚めた彼女はファミリアの現状を理解し、脱退しようとした。しかしソーマ・ファミリアの脱退には金が必要だった。結局彼女は同じように、虐げられ、蹴落とされながら金を稼ぐしかなかった。

 

(もうちょっと、もうちょっとで…!)

 

辛く苦しい生活から抜け出せる日は近い。そう考えるとリリの頬が自然と緩んだ。

 

「なんだ、妙に機嫌が良いじゃねぇか、アーデ。」

 

すると、他の団員がリリが上機嫌である事を見抜き、彼女を呼び止める。

 

「――っ! 何か、ご用ですか?」

 

「いや、随分と機嫌が良さそうだからよぉ。 何か良いもん持ってんじゃねぇか、ってな。」

 

リリの懐にはその日の稼ぎが入っている、しかも、リリがサポーターであるにも関わらずベルがその稼ぎの半分を配分としたため、サポーターの日当としては多額の金だ。

 

「いえ、リリは役立たずですから、たいしたものは――」

 

「それにしちゃ機嫌が良過ぎじゃねぇか? ちょっと見せてくれよ、な?」

 

リリは確信した。彼が自分の稼ぎを奪おうとしているのだと。そして悟った。自分にそれに逆らうだけの力がない事を。その時、

 

「おぉい! 何そんなとこで突っ立ってんだこらぁ!」

 

「ジ、ジンカ!? どうしてこんなところに。」

 

「団員のオレが本拠にいて、何かおかしいか?」

 

「い、いや、おかしくねぇよ。 そ、そうだ、用事を思い出した。 じゃあな!」

 

言うが早いか、リリから稼ぎを奪おうとしていた団員はその場から去っていった。残されたのはリリと、ジンカと呼ばれたドワーフの男のみ。

 

「なんだ、お前も何か文句あんのか?」

 

「いえ、何もありません。 カルボン様。」

 

彼の名はジンカ・カルボン。ソーマ・ファミリアの団員であり、レベル3。ファミリアの中ではおそらく最も強いと思われる彼だが、彼は団長でも、副団長でもない。それは(ひとえ)に、彼がファミリア内で余りに異質であるからだろう。

 

「チッ、まぁいい。 それより酒だ。 次のはきっといい出来だぜ。 ヘッヘッヘ。」

 

そしてジンカはその場を去って行った。残されたリリは、ただ茫然とその後ろ姿を見ているだけだった。




ようやく地の文もリリルカからリリとなりました。
彼女の計画にアルクはどう関わるのか…


年末年始は執筆、投稿が出来ないためそれまでは週2でいく予定です。

投稿時点でお気に入り300突破していて歓喜しております。
さらに上を目指して頑張りますのでよろしくお願いいたします。
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