その錬金術師は儘ならない~彼に薬を求めるのは間違っているだろうか~   作:獣ノ助

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マズポの対価に女の子とのデート権を手に入れたアルク。
※ただし2人きりとは言っていない
海老で鯛を釣るとはこの事か…


今回オリジナルキャラが出ます。


Recipe.6 - 剣姫 + 眠り神

時は戻り、再びダンジョン内。アルクはティオナと共にダンジョンを進んでいた。アルクの背中にはミノタウロスに襲われていた冒険者。彼は2度目の強制停止(リストレイト)を受けた際に耐え切れず気絶してしまったらしい。

 

「武器を溶かしちまうモンスターか…。それは厄介だな。」

 

「そうなの!私の大双刃(ウルガ)も溶かされちゃってさぁ。はぁ、お金どうしよ。」

 

彼女の武器である大双刃(ウルガ)は、アダマンタイトと呼ばれる稀少鉱石を大量に使用している。その硬度は非常に高く、加工ともなれば鍛冶師が数人がかりで昼夜休みなく鍛える必要がある。劣化を修理するだけでも手間のかかる代物だ。それを再び一から作る事になると知れば、鍛冶師が悲鳴を上げるのは間違いないだろう。

 

「ファミリアでの大規模な探索でも、個人の武器は個人管理って訳か。」

 

「うん…。」

 

確かに団員全員の武器の修理や生産をファミリアが賄っていたら大変な事になるだろう。その力でレベル5にまで至った彼女ではあるが、少し戦い方を変える必要があるのかもしれない。

 

「そういえば、あのポーションは持ってったのか?」

 

あのポーションとはもちろんアルク特製のマズポである。今回ロキ・ファミリアは50階層まで探索に行ったという話だが、深層では通常のポーションの半分程度の効果しかないマズポは嵩張るだけのお荷物になり兼ねない。

 

「持って行った!ちゃんと回復出来て助かったよ。…不味かったけど。」

 

その味を思い出したのか、少しティオナの表情が仄かに青ざめる。それに苦笑しながらも、アルクは自分の錬成したポーションが一応は役に立った事を喜ぶのだった。

 

「まぁなんだ、また錬成出来たらストックしとくから、その内取りに来いよ。マズポで良ければな。もちろん、お代はタダだ。」

 

「うぅ…、お世話になります。」

 

自分の未来を憂いてか、アルクの気遣いの嬉しさからか、ティオナは涙目になりながらアルクに感謝するのであった。

 

アルクとティオナは周囲にミノタウロスの気配がないか確認しつつ、ダンジョンをさらに進む。実はこの上層で現れるミノタウロス、原因はロキ・ファミリアらしい。なんでも探索から帰る途中でミノタウロスの群れに遭遇したのだが、ティオナの武器を溶かしたという新種の芋虫型モンスターによる予期せぬ負傷や物資の損失で気が立っていた一級冒険者達を前に、散り散りに逃げ出してしまったのだという。モンスターすら逃げ出す程となると、どれだけ殺気に満ちていたのだろうか。アルクは知りたいような、知りたくないような、何とも言えない気分だった。

 

7階層にミノタウロスがいない事を確認し、6階層へと上がろうとした時だった。

 

「あ、アイズだ。おーいっ!」

 

アルクと会った時と同じく元気いっぱい手を振って声を掛けるティオナ。その先には金色の長髪を靡かせる美少女がいた。彼女の名はアイズ・ヴァレンシュタイン。"剣姫"の二つ名を持つ、オラリオでは有名な第一級冒険者だ。

 

「もう上のミノタウロスは片付いたの?」

 

「うん、もうこの上にはミノタウロスはいないから大丈夫。」

 

表情豊かなティオナと比べて、アイズは無表情。その無表情でモンスターを狩る姿からアイズを"人形姫"と呼ぶ者もいるという。そんな両極的な2人の横でアルクはある人物と睨み合っていた。

 

「久しぶりだな。ベート・ローガ。」

 

「なんだ、雑魚がまだ生きてやがったのか。」

 

アルクを"雑魚"と呼ぶのはティオナ、アイズと同じくレベル5の第一級冒険者、ベート・ローガ。その二つ名は"凶狼(ヴァナルガンド)"。狼という言葉の通り、彼は灰色の毛並みの狼人(ウェアウルフ)だ。暢気に挨拶をするアルクに対し、面倒臭そうに悪態をつくベート。2人の仲は少なくとも良好ではないらしい。

 

「あれ?アルクってベートと会った事あるの?」

 

「ちょっとな。」

 

それだけ答え、アルクは深く語ろうとはしなかった。ベートもフンッと鼻を鳴らしそっぽを向く。こちらの反応はいつも通りであるためティオナも特に気にする事はない。アルクの意図を察したのか、「そっか。」とティオナはそれ以上聞く事はしなかった。

 

そこでトントンと、ティオナの肩を叩く者がいた。それは、じーっとアルクの方を不思議そうに眺めるアイズだった。

 

「ティオナ、…誰?」

 

ティオナと共にミノタウロスを探していたようだが、ロキ・ファミリアの団員ではない。そんなアルクについて疑問に思うのも当然だろう。アルクとしても、オラリオで有名なため顔は知っているが、アイズと直接顔を合わせるのは初めてである。

 

「悪い。自己紹介してなかったな。俺の名前はアルク・サルマン。ミアハ・ファミリア所属の冒険者だ。」

 

人一人背負ったままでは格好がつかないため、未だ気絶している冒険者を壁際に下ろし、アルクは名乗った。出来れば二つ名についてはスルーして欲しいところではあったが、それはアルクと共に来たアマゾネスの少女が許さなかった。

 

「アルクはね、あの"災禍の薬箱(パンドラ)"なんだよ!アイズも聞いた事あるでしょ?錬金術が使えるっていう。あ、そうだ、私が飲んでた不味ーいポーションもアルクが錬成して作ったんだよ。」

 

「それって、ティオナがタダでもらったっていう…えっと、…マズポ、だっけ?」

 

とうとう剣姫からも"マズポ"という単語が飛び出してしまった。事実なので拡散元であるティオナを責める気はないが、どれだけ上達しようと"マズポ"という肩書から逃れられない気がしてきたアルクなのだった。

 

ファミリアの本隊と合流するため再びダンジョンを下りていくティオナ達と別れ、アルクはダンジョンから出て来た。まずはギルドへ向かい、背中の冒険者をどうにかしなくてはいけない。ついでに換金もする必要がある。ティオナは自分達が原因だからと冒険者を引き受けようとしたが、目覚めた時にダンジョンから出ていた方がいいだろうとアルクがそのまま背負い直す事にした。申し訳なさそうにするティオナと無関心とばかりにさっさと出発するベート。最後にペコリと頭を下げ2人の後を追うアイズを見て、アルクは噂もあまり当てには出来ないものだと思った。無論、アルクの噂についてはその限りではない。

 

アルクがギルドに着くと、彼の担当アドバイザーであるギルド職員のミィシャ・フロットがそれに気が付いた。

 

「あ、お帰りアルクくん。今日はちょっと早…、って、その背中の方は?」

 

「ただいまっス、ミィシャさん。ちょっとミノタウロスの強制停止にあてられちゃったみたいで。ギルドでお願いしてもいいですか?」

 

「分かった。奥に運んでもらえる?あ、ミノタウロスって、もしかしてさっき聞いた上層に出現したミノタウロスと何か関係があるのかな?」

 

「多分そうだと思います。詳しくは今探索に出てるロキ・ファミリアの団員が知ってるはずなんで、戻って来たら聞いてみてください。」

 

「ロキ・ファミリアね。うん、分かった。」

 

ある程度の事情は聞いたため、アルクが簡単に説明する事は可能だが、当事者から聞いた方が良いだろうし、何より面倒である。ミノタウロスの討伐も終わったようだったため、改めて注意喚起する程でもないかとアルクはミィシャへの挨拶もそこそこに、換金所へ向かおうとした。

 

そこで、ちょうど換金を終えたであろう冒険者がこちらへと向かって来ていた。。白い髪と紅い眼が特徴的で、中層の中でも初期段階で出現する白い毛並みに紅い眼をした兎型モンスター、アルミラージを連想させた。何か嬉しい事でもあったのか、彼は笑顔を浮かべている。その姿を微笑ましく思いながら、アルクは改めて換金所へと向かった。

 

「アイズ・ヴァレンシュタインさん、かぁ…」

 

背後で記憶に新しい名前が聞こえた気がしたが、アルクは特に気にしなかった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

ミノタウロス事件の次の日、アルクは薬屋の手伝いをしていた。仕事内容は配達。オラリオを駆け回り薬を届けて来たが、日もかなり傾き次が最後の配達先となっていた。実はその配達先のファミリアは、アルクが懇意にしているファミリアでもある。

 

「ミアハ・ファミリアよりお届け物でーす。」

 

店の正面出入口は使わず、裏口の戸を叩くアルク。今はまだ営業時間であるため、その配慮も当然だ。しばらく待っていると、中からのんびりとした声が返って来た。

 

「おー、待っていたよー、アルク。手が空いているようなら、そのまま入って構わないよー。」

 

了解を得たのでドアノブを回し、アルクはバックヤードへと入っていく。すると先程の声の主が、ゆったりとした足取りでやって来た。

 

「今回はちょっと時間がかかったねー。"当たり"がなかなか出なかったのかなー?」

 

「俺からしたら"はずれ"なんですけどね。」

 

菫色の長い髪に寝惚け眼の彼女は天界より来た"超越存在(デウスデア)"、つまりは神だ。その名もヒュプノス。"眠り"を司る神というだけあって、ヒュプノス・ファミリアは主に寝具を扱う商業系ファミリアである。

 

「いつも通り、1つ1つに余剰分の効果を書いた紙を貼ってます。それも合わせて、査定の方お願いします。」

 

「あーい、ちょっと待っててねー。今うちの子達は店に出てるから、私が全部やっちゃうよー。」

 

彼女が発注したのは"睡眠効果付与"の薬。ヒュプノス・ファミリアが経営する店"胡蝶の夢"は、寝つきの悪い者のために睡眠薬も販売している。ダンジョンで夜を明かす際にはパーティが交代で見張りをするのだが、冒険者によってはダンジョン内ではなかなか眠れない者もいる。睡眠は体力、精神力の回復のために必要だ。そんな時、睡眠薬はとても有効なのだ。

 

「一応余剰効果は"一時的"と"(小)効果"で副作用がないものにしてます。他に問題がありそうな効果はなかったですよね?」

 

「そーだねー。アルクの作る薬だとそれで大丈夫なはずだよー。」

 

当然ながらアルクの錬成した薬がそのまま売られる訳ではない。"睡眠効果付与"の薬などそのまま飲んでしまえば、簡単には起きる事はなく、ダンジョン内であれば命に関わるだろう。睡眠薬は、アルクの薬を材料にして調合することで作られるのだ。一度その調合について聞いてみたアルクであったが、

 

――「これはうちの専門だからねー。ミアハのところで睡眠薬を売り始めたら、商売敵になる上に材料までもらえなくなっちゃうじゃないかー。」

 

とヒュプノスに言われてしまった。

 

「はーい、査定終わったよー。レベル2になって回復やステータスアップ効果が付いてる薬が増えたよねー。その分睡眠効果が付く確率が下がっちゃったみたいだけど。これはレベル3にでもなったらうちへの納品はほとんどなくなっちゃうかもねー。」

 

「そうなればいいんですけどね。その時は寝具の材料の注文でも受けますよ。…と、査定結果の方確認しました。じゃ、こちらのヴァリスいただきますね。」

 

「はいはーい。今後とも御贔屓にー。」

 

「こちらこそ。それじゃ、また薬が集まった頃に。」

 

アルクが錬成する薬の効果はランダム。そのため"睡眠効果付与"が付いているものはいつ出て来るか分からない。しかも、その他の余計な効果が大きい場合も調合には使えないため対象外となる。状態異常付与はそのマイナス効果が大きい為か、他の効果が弱くなりがちではあるが、それでも睡眠効果が付く薬にも"はずれ"がある現状だ。ランクが上がればマイナス効果が出る確率は下がるだろうが、それはつまり、睡眠効果の出る確率も下がる事になる。もしかしたら、レベル2である今が、ヒュプノス・ファミリアに一番貢献出来るのかもしれない。

 

「上手くいかないもんだな…。」

 

夜も更けて来た帰り道。アルクは自分の魔法"錬金混成(アルケミクサ)"の面倒臭さに、何度目かも分からないため息をついた。




オリキャラのイメージ像だけでも描きたいところですが、何しろ私には画力がない。
『※閲覧注意』とでも書いておけば下手でも大丈夫だろうか…


お気に入り・感想・評価ありがとうございます。
1章の終わりに書こうと思いましたが、予想外の数にテンション上がっちゃったので。
今後も是非よろしくお願いします。
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