その錬金術師は儘ならない~彼に薬を求めるのは間違っているだろうか~   作:獣ノ助

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未だアニメ1話分という事実。
これもう処女作でやるボリュームじゃないな…。


少し書き方を変更しました。読みづらい等あればご指摘下さい。


2章:『錬金術師、オラリオを駆ける』
Recipe.9 - 怪物祭 + 悪戯神


"怪物祭(モンスターフィリア)"。

それは、ガネーシャ・ファミリアが主催する年に1度の祭典。

観客の前でモンスターを調教(テイム)するその催しは、ギルド公認となっている。

今日はその怪物祭(モンスターフィリア)が開催される日。闘技場(コロシアム)にはオラリオ中から多くの観客が集まっていた。

 

「さて、今日はどうするかなぁ。」

 

そんな中、アルクは本拠でその日の予定について考えていた。本日は薬屋は休みだ。

 

「怪物祭に行ってみたら? 調教(テイム)が好きじゃないなら、外の屋台を回るだけでもいい気分転換になると思うよ。」

 

予定の決まらない様子のアルクを見て、ナァーザは屋台巡りを提案した。零細ファミリアの団長でありお金には少しうるさいナァーザだが、お祭りの時まで細かい事を言うつもりはない。そもそもアルクは探索や薬草採取でしっかりとファミリアに貢献していながらも自身の魔法『錬金混成(アルケミクサ)』で消費する魔石の事を考えあまり贅沢する方ではないため、お祭りでの屋台巡りは丁度いい息抜きだろうとナァーザは考えていた。

 

「そうだなぁ、屋台だけならまぁ…。 行ってみるか。」

 

ダンジョン探索へ行くという手もあるが、怪物祭の運営にギルドも駆り出されるため換金は後日となる。何より街がお祭りムードの中1人寂しくダンジョンへ向かうというのも虚しい。ナァーザと主神ミアハは昨日アルクが採取した薬草などを元にポーションを調合するらしい。アルクも手伝おうと考えたが、2人きりにした方がいいだろうと思い直した。アルクは()()()なのである。

 

という訳で本拠(ホーム)を出たアルクだったが、よく考えれば1人で屋台巡りというのであれば、それはそれで寂しい。せっかく知り合ったのだからとベルを誘ってみようと教会を訪れたが、残念ながら留守だった。ベルだけでなくヘスティアもどこかへ行っているらしい。祭りであれば誰かと会うかもしれない。アルクはそのまま闘技場へと向かった。

 

「あっ、()()にゃ! どこ行くにゃ?」

 

「"サル"じゃねぇ、"サルマン"だっ。 何度言わせんだよアーニャ。」

 

酒場『豊穣の女主人』の前を通りかかると、そこの従業員である猫人(キャットピープル)がアルクを呼び止めた。

彼女の名前はアーニャ・フローメル。少し抜けたところある彼女だが、実は元冒険者らしい。『豊穣の女主人』へとたまに食事に来るアルクは、その従業員とも顔見知りだ。その中でも、何度訂正しても自身を"サル"と呼ぶ彼女に、アルクは少し困っていた。先程のやり取りも最早恒例である。

 

「そういえば、少し前に食い逃げして行った冒険者がいたと思うんだが、ちゃんと金を払いに来たか?」

 

食い逃げ犯となっているはずのベルのその後を尋ねるアルクに、アーニャは腕を組み考え込む。どうにも思い至らない様子の彼女に分からないならいいかと声を掛けようとした時、アーニャの後ろから答えが返って来た。

 

「クラネルさんの事ですよ、アーニャ。 シルがミア母さん達を説得していたでしょう。」

 

「あ! さっきの()()()にゃ!」

 

白髪頭という呼び方にアルクは苦笑いするしかない。彼女は"さっき"と言ったため、もしかしたらベルは少し前にこの酒場に立ち寄ったのかもしれない。

 

「すみません、サルマンさん。 クラネルさんでしたらちゃんとお金を払いに来たとシルが言っていました。 その場にいなかったので、アーニャは知らなかったのだと思います。」

 

「それは良かった。 忠告した甲斐があったってもんです。」

 

どうやらベルはしっかりと代金を払いに来たようだ。女主人であるミアの恐ろしさはアルクも知っているため伝言まで残し忠告したが、問題なかったらしい。ちなみにアーニャに代わってアルクの質問に答えた彼女の名はリュー・リオン。長い耳を持つエルフだ。

 

「シルさんが説得したって事は、ベルと彼女は知り合いなんですか?」

 

「ええ。 シルがクラネルさんを何かと気に掛けているみたいです。 クラネルさんの様子を見ていると、確かに私も危なっかしそうな印象を受けました。」

 

「それには俺も同意です。」

 

兎を思わせるその姿と気の弱さから、ベルは庇護欲を掻き立てやすいのかもしれない。先日彼のダンジョン探索に付き合ったアルクもそんな1人なのだろう。

 

「で、サルはお祭りに行くにゃ?」

 

「だからサルじゃ…はぁ、そうだよ。 メインの調教(テイム)を見る予定はないけど、屋台巡りでもしようかと思ってな。」

 

「屋台にゃ!? お土産楽しみにしてるにゃ!」

 

アルクは何故か注文を受けてしまった。リューは奔放な彼女に諦めたのか、ため息をついている。

彼女が働く酒場であれば賄いであってもその辺の屋台より美味しい料理が食べられるだろうが、そこはお祭り気分による補正というやつだろう。

 

「美味そうなのがあったら買って来るよ。 実際美味いかは保証しないけどな。」

 

自らが錬成したマズポを幾度となく飲んで来たアルクだ。味覚がおかしくなっていたとしても不思議ではないだろう。とはいえ豊穣の女主人やナァーザの作る食事を疑う気はないため、現時点で味覚に異常を来たしていないのも事実だ。

 

「そうだ。 シルが祭を見に行っているのですが財布を忘れてしまって、先程通りがかったクラネルさんに渡してもらうようお願いしたんです。 もしシルを見掛けた際にまだクラネルさんと会っていないようでしたら、その事を伝えていただけますか?」

 

「なるほど。 分かりました。」

 

今日も酒場で働くアーニャとリューに別れを告げ、アルクは再び怪物祭へと向かった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

闘技場近くには数多くの屋台が並んでいた。オラリオで人気の『ジャガ丸くん』はもちろん、焼串や焼きそば、デザートなどその種類も様々だ。とりあえず焼串でも食べようかとアルクが屋台を選んでいると、少し開けた芝生のエリアに見知った顔を発見した。ベルと彼の主神ヘスティアである。

 

「はい、ベルくん。 あーん。」

 

「えっ!? いやそんなっ!」

 

教会に誰もいないと思ったら、2人でデートに来ていたらしい。笑顔のヘスティアが自分が持つクレープを食べさせようとベルに差し出しているが、ベルの方は顔が真っ赤だ。思わず声を掛けそうになったが、そこは空気の読めるアルクだ、そのまま背を向け立ち並ぶ屋台へと再び歩き出した。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

「んー、まずまずだな。 祭りの屋台ならこんなもんか。」

 

焼串片手にそこそこに祭り気分を楽しむアルク。数ある屋台から比較的安い屋台を選ぶ辺りは、やはり貧乏性故か。アーニャのお土産はこれでもいいかと考えつつ手に持つ焼串を食べ終わったアルクは、そこで再び見知った顔に気が付いた。

 

「ん? 剣姫?」

 

「あ、えーっと、…アルク、さん?」

 

「どうしたんや? アイズたん。」

 

出会ったのは『剣姫』ことアイズ・ヴァレンシュタイン。彼女の後ろから連れであろう赤髪で細目の女性がやって来たが、アルクには見覚えがない。

 

「ん? その兄ちゃんは誰なん? 知り合い?」

 

「えっと、アルク・サルマンさん。 錬金術が使えるって、ティオナが。」

 

アルクがそうであるように、もちろん女性もアルクを知らない。女性の質問に対するアイズの答えに"マズポ"がなかった事をひっそりと喜ぶアルクだった。

 

「あー、ティオナに聞いとるわ。 "()()()のアルク"やろ? その節はティオナが世話になったみたいで、ありがとーな。 ウチはアイズたんやティオナ達の主神やっとるロキや。」

 

喜びはすぐに消し飛んだ。オラリオ最強と言われるファミリアの一角、ロキ・ファミリアの主神が告げる"マズポ"宣告。もうこれは第二の二つ名と言っても過言ではないだろう。

 

「既に聞いてるみたいですが、アルク・サルマンです。 ティオナの件については、廃棄予定だったものを譲ったに過ぎないので気にしないでください。」

 

「そう言ってもらえると助かるわ。 探索に同行したいっちゅー話も団長が許可出しとったから、遠慮せんで行ってき。」

 

「ありがとうございます。」

 

元々見返りを求めていなかったため許可が下りなくても問題なかったが、許可が出たならそれに乗っからない手はない。一級冒険者との探索となれば、楽しみにもなる。

 

「武器が壊れて新調に必要な金稼ぐ言うてたからなぁ。 近いうちに声がかかるかもしれんな。」

 

「分かりました。 一応準備は整えておきます。」

 

ティオナの武器である大双刃(ウルガ)が壊れた、いや、()()()()()事はミノタウロス事件の時に聞いている。メンテ費用に頭を抱えていた彼女が同じ武器を新調するともなれば、とは考えていたが、やはり大変らしい。アルクに出来るのはマズポの提供程度。せめて彼女に渡すポーションが錬成される確率が上がるようにと、アルクは自分の魔法『錬金混成』に祈った。

 

その時だった。アルク達の元へ、2人のギルド職員が駆け寄ってきた。1人はアルクの担当アドバイザーでもあるミィシャ、もう1人はエイナ・チュールというハーフエルフだ。ミィシャと仲が良いためアルクもエイナとの面識はあった。平静を装ってはいるが、その目には明らかに焦りが見える。2人がアルク達に――正確には"剣姫"に、だが――告げたのは、怪物祭だからこそ起こり得る、しかし、絶対に起こってはいけないトラブル。つまり、"モンスターの脱走"だった。

 

「正確な数はまだ調べている途中ですが、既に中層域のモンスター達が多数逃げ出したと。」

 

催しとするからには上層の弱いモンスターでは見応えがない。しかし下層のモンスターはその強さももちろん戦い方も特殊である場合が多いため、怪物祭での調教対象はほとんどが中層で出現するモンスターとなる。中層の適正ランクはレベル2。レベル1の冒険者では中層のモンスターには歯が立たない。以前のミノタウロス事件でアルクが助けた冒険者や、アイズに助けられたベルがそうであったように。

 

「頼めるか、アイズたん。」

 

「はいっ。」

 

答えるや否や、アイズは上へと跳び上がった。高い所からモンスターを探すつもりなのだろう。アルクも遅れまいと闘技場から街の方へと駆け出す。

 

「なんや、あんたも行くんか? アイズたんに任せとけば大丈夫やで?」

 

ロキの言う事は最もだ。レベル5のアイズが動いたのであれば、中層クラスのモンスター等すぐに片づけてしまうだろう。だが、アルクにはこのまま祭りの続きを楽しむなんて出来そうにない。

 

「被害を抑えるくらいは出来ると思います。 生憎と、今のを聞いてのんびりしてられる程、俺の肝は据わっちゃいないんで。」

 

「そうか。 損な性格してんな自分。」

 

「知ってますよ。 それじゃ!」

 

ミィシャ、エイナ、そして神ロキに見送られながら、アルクは今度こそオラリオの街へと消えて行った。

 

「ま、そういうんは嫌いやないけどな。」

 

アルクの姿が見えなくなると、ロキは暢気に祭りへと戻るのかと思いきや、アルク同様オラリオの街へと歩き始める。

 

「か、神ロキ!? 街は今危険なんですよ!?」

 

「そんなん分かっとるって、エイナちゃん。 けどウチにはアイズたんの尻追っかけるっちゅう使命があるんや。 そのためならたとえ火の中街の中、ってな。 ほななー。」

 

まるで散歩にでも行くような足取りで街へと消えて行く神の後ろ姿を、エイナとミィシャは黙って見ている事しか出来なかった。

 

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

街の中を歩くロキは、先程のエイナ達の話を思い返していた。

 

(見張りの団員は"恍惚とした状態"やった、か…。 何したいのかはよう分からんけど、おそらくは"あいつ"の仕業なんやろうなぁ。)

 

モンスターの脱走、それを起こした真犯人にロキは心当たりがあった。わざわざ本人が出向いて事を起こしたのであれば、まだ街の何処かにいるかもしれない。"彼女"がいったい何を企んでいるのかはっきりとは分からないが、答えは街の騒乱の中にあるかもしれない。神は1人、街中を行く。

 

「あ、ロキだ! おーい、ロキー!」

 

そんな彼女を呼ぶ声がした。振り返るとそこには、モンスター調教(テイム)を見に行っていたはずの双子のアマゾネスとエルフの少女の姿が。彼女達も只ならぬ雰囲気を感じ取ったようだ。ロキが事情を話すと、アルク同様じっとはしていられないのだろう、彼女達は街へと飛び出していった。

 

怪物祭の裏で起こるその騒乱は、まだ始まったばかりだ。




原作の気になるところを仄かにアレンジしてみたい今日この頃。
活動報告に簡単なオリキャラ紹介を作りました。

感想もお待ちしています。

実は()()ポ、錬()とかけて火曜・金曜に投稿してます。
火星(マーズ)は少し無理があったかもしれない…
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