緋弾のアリア -吸血鬼で自衛官な武装探偵- 作:エウクランテ
吸血鬼という化物を知っているだろうか?
生き物の血を啜って悠久の時を生き永らえ、人間の比にならない身体能力と五感を持ち合わせた怪物。
その昔、この吸血鬼は確かに存在していた。
絶対的な暴力を持ち、その圧倒的な恐怖を以て人間を影から支配して来たそうな。
でもそれはもう昔の話。
いくら人間の比じゃない身体能力と五感を持っていると言っても所詮は生き物、映画や小説のような不老不死の能力や無限の回復能力なんか持っている訳じゃ無い。
銃で撃たれれば死んでしまうし、高い所から飛び降りれば当然死んでしまう。人間からは吸血する『鬼』などと恐れられているけど、ちょっと人間より丈夫で長生きな生物なだけである。
だから私達吸血鬼は一掃されてしまった。
火縄銃の登場でその『絶対的な暴力』というアイデンティティを奪われた吸血鬼は世界中で瞬く間に駆逐され、一部の生き残りを除いて想像上の物になってしまった。
そして現代。
☆
「ん・・・・朝か」
時刻は7時少し前の6時57分。
いつも通り携帯のアラームが鳴る前の起床になった。
少しぼーっとして7時にセットしていた携帯のアラームが鳴り出してようやく私は起き上がったのだった。
こうして私、
とりあえずパジャマを脱いで制服に着替えて、リビングへ。今日の朝飯当番は私だから今日は朝飯を作らないといけない。
何を作ろうか考えながら私は寝室を出るのだった。
とりあえず目玉焼きと卵焼きでいいかな、そう思いながら冷蔵庫を開けた時だった。
ぴん、ぽーん。
慎ましいドアチャイムの音がした。
聞き覚えのあるドアチャイムの慎ましさ、きっとあの人だろうな。
「キンジ兄ぃ、白雪さんだよー」
と私が寝ていた寝室とは別の寝室に向かって大きめの声で知らせてあげる。
すると少ししてボサボサ頭でまだ眠気が飛んでいない兄貴がしわくちゃのワイシャツとズボンを着て出て来る。
彼は私の義兄の
というのもキンジ兄ぃとは血で繋がった兄弟じゃないので、苗字が違ってたりと普通の兄妹とは違う関係だったりする。
吸血鬼の家族に一人っ娘として20年前に生まれた私は5歳の頃に『とある事件』で両親を亡くしてしまって天涯孤独になってしまって、そこでその事件に関わったキンジ兄ぃのお父さんが私を引き取ってくれて今の関係に至ってる。
そこで苗字を変えていないのも私が本当の両親との繋がりを捨てたくないといワガママからだったのだけど、お義父さんはそれを許してくれた。
それからキンジ兄ぃは武偵に、私は自衛官を目指してお互いそれぞれ別の進路に進む事になったのだけど、今年から私がキンジ兄ぃの通う東京武偵高校に架橋生として通うことになったので今では寮で同居生活をしています。
「お・・・・おじゃまします」
キンジ兄ぃが玄関に向かってから少しして、少し張り上げた女性の声が聞こえる。
「白雪さん、おはようございます」
「あ、那智さん!おはようございます!!」
と声の主さんは90度くらいの深いお辞儀をぺこり、相変わらず物凄い畏まった態度である。
ちなみに前に普通に接して貰えるように頼んだのだけど、小声で「でも義姉さんになるかもしれないのに」という返答が帰ってきた。
彼女は
「で、何しに来たんだよ」
と座卓の隅脇に腰掛けてキンジ兄ぃ。
それに続いて正座した白雪さんは持っていた和布の包みを解いて重箱を差し出した。ちなみに今日は元旦じゃ無い。
そこにはふんわり柔らかそうな卵焼き、ちゃんと向きを揃えて並べられたエビの甘辛煮、銀鮭、西条柿といった豪華食材と、白く光るごはんが並んでいた。
「これ・・・・、作るの大変だったんじゃないか?」
とキンジ兄ぃ。
それに対して白雪さんは塗り箸を渡しながら、
「う、ううん、ちょっと早起きしただけ。それにキンちゃん(白雪さんのキンジ兄ぃへの呼び名)、春休みの間またコンビニのお弁当ばっかり食べてるんじゃないかな・・・・って思ったら、心配になっちゃって・・・・」
なかなか愛されてますネ、キンジ兄ぃ。
まああのキンジ兄ぃは気付いているのかどうかは知らないけど、実を言うと白雪さんはキンジ兄ぃに惚れている。だから朝っぱらから重箱に豪華な料理をてんこ盛り持ってきてくれたりするのだけど・・・・。
「そんなこと、お前に関係無いだろ」
とキンジ兄ぃは言葉を返す始末。絶対に好意に気付いて無いと思う。
「はぁ・・・・キンジ兄ぃ、ちゃんとお礼は言いなさいよ」
「わ、分かってるっての!!」
そう言って私は自室兼寝室に戻って身支度を始めるのだった。
昨日整備して置きっ放しだった2丁のシグザウエルP226シルバー陸自仕様を腰のホルスターに入れて、更に89式多用途銃剣とその鞘を腰のベルトに装着。あとは鞄の中に弾倉を突っ込んどいたら、準備完了。
部屋から出ると何故か白雪さんが泣いていて、それをキンジ兄ぃが慰めていた。
一体何をしでかしたの?キンジ兄ぃ。
ジト目でキンジ兄ぃを睨んでそのまま私は洗面所へ直行、顔を洗って歯磨きしていたらいつの間にか時間は7時55分になっていた。
あ、7時58分のバスに乗り遅れた。