どれが良いと思いますか?
「ゲームに吸い込まれちゃった……」
「り、りみりーん!」
「最近のゲームって凄いね」
「違うだろ!!」
沙綾は言葉を失い、香澄が叫んでいる中、たえの平常運転に有咲がツッコむ。
「つーかどうすんだ⁉ りみがゲームの中に入っちまうなんて……」
「……」
続けて叫ぶ有咲に対し、香澄は何も言わず俯く。
香澄は、自分が言い出した事が原因でりみを危険に晒してしまった事で言葉を失っていた。
「私が助けに行く!」
責任を感じた彼女は叫ぶ。
「香澄⁉」
コントローラーを手に取る香澄の手首を掴んで有咲は、操作を阻止する。
「止めろって! 戻れなくなったらどうするんだ⁉」
「でも! りみりんを放っておけないよ!」
「……確かにそうだけど……」
「香澄を一人で行かせる訳ないでしょ?」
「さ、さーやぁ……」
泣く香澄に沙綾が有咲に視線を移して言う。
「ね? 有咲?」
「お、おう! 香澄を一人にしたらロクな事ならなさそうだしな」
「だから、私達もね」
「二人共、ありがとう……」
「四人で遊ぶを選んでおいたよ」
「おたえ!」
三人が会議をしている内にたえが大体の準備を終えており、後は三人が選ぶだけの状態になっていた。
「私は勿論、配管工」
「おたえ……本当配管工好きだな」
有咲は呆れつつも、コントローラーをたえから受け取り画面を見つめる。
「二人はもう決めているのか?」
「うん! 私は警察官!」
「私は医師ね」
「後は私だけか……」
香澄ら二人は問題無く、有咲は残っているジョブと睨めっこし始めた。
「ハッカー、学者、犯罪者、マスコミ……」
口に拳を当て思考を動かし、答えを出した。
「……よし、私はハッカーだ」
そう言って、有咲はハッカーを選んで、決定を押す。
『以上でよろしいですか?』
「準備はいいか……?」
「出来てるよ……!」
有咲は決定ボタンを押すと四人の体に異変が起き始めた。
「来た……!」
香澄は粒子化し始めた自分の両手を見つめて、直ぐに周りを見る。
三人もまた、体が粒子化し始めていた。
「いよいよだね……」
「な、何か変な感覚だな……」
沙綾と有咲が呟く。
そして、四つの粒子の塊はテレビの中へと吸い込まれていった。
「……」
カウンターテーブルに顔を伏せて眠る香澄。
「……」
「……み……すみ!」
その香澄の肩を誰かが叩く。
「んん……」
「香澄! 香澄!」
微かな仲間の声と叩かれている事で意識を取り戻し、瞼を擦りながら周囲を見渡す。
長く伸びているカウンターテーブルの端で寝ていた香澄は、質素な丸椅子から立ち上がり有咲と正面向く。
「……有咲?」
「ああ、やっと起きたか」
「そうだ皆は⁉」
「いるぞ、りみも一緒だ」
「本当!」
「香澄ちゃん!」
二人が騒いでいるのが聞こえたのか、りみ、沙綾、たえの三人が駆け寄る。
「りみりん!」
「香澄で最後みたいだね」
りみの後ろにいる沙綾がそう言つつ、香澄はりみに涙ながらに謝る。
「りみりん、ごめんね……私のせいで……」
「いいよ、気にしないで。それに沙綾ちゃんから聞いたよ。助けに行こうって提案してくれたのは香澄ちゃんだって」
そう言って続けてりみは笑顔で言った。
「だから、皆が来てくれただけでも嬉しいよ」
「り、りみり~ん!」
香澄は感極まってりみに抱き付き、三人は全員が揃った事もあってか安堵をするのだった。
「そろそろ私からも気になっている事、聞いていいかな?」
「何?」
「皆の服装、変わってない?」
そう言われ香澄は視線を下に落とし、服装を確認する。
紺のズボンに水色のシャツ、その上に防弾チョッキを装備し腰に拳銃ぶら下げていた。
「ほ、ホントだ!」
「香澄、頭」
「頭?」
たえに言われ、頭に手を伸ばすと、何かが乗っているのに気づき手に取る。
「帽子?」
香澄は赤色の星のピンバッチが付いた警帽をじっくりと見つめた。
「もしかして、私達が選んだジョブに合わせた格好になったのかな?」
ジーパンにピンクのシャツ、背中にリュックを背負ったりみが自身の予想を声に出す。
「ああ、かもな」
有咲は首にヘッドフォンを掛け、紫と白のスカジャン、肩下げ鞄をぶら下げており、りみの予想に賛同した。
「だとしたら、私は医師でおたえは配管工になるって事になるね」
黄色のタイが目立つ白のナース服の上に白衣を着た沙綾が話に入る。
「これが配管工?」
青のつなぎを着たたえが一言。
「何か違う……」
「なんだよ、あれだけ推しといて不満なのか?」
「オーバーオールを着れると思ったんだけどな……」
恰好に不服だったのか有咲に提案をする。
「そうだ有咲。服を交換しよう」
「ざっけんな!」
「レタスも付けるから」
「私は兎か⁉」
勿論、キレた。
「皆さん!」
突然、誰かの声が聞こえ、五人はその方向を一斉に向く。
「もうすぐここは、奴らに破られます!」
紳士服の男性がカウンターのバーテンダー側に立ち叫んだ。