ぐだ子inハルケギニア   作:千草流

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ぐだ子の名前は安定の藤丸立香でいきます。




一話

 空は快晴であった。しかし、彼女の心は空模様とは真逆であった。どんよりと雲が掛かったその心に、彼女はきっと諦めという言葉を思い浮かべたことだろう。ダメだ、どうしようもない、所詮はこんなモノだ、憂鬱な雲に覆われた心の中で、それでも彼女は願った。暗雲立ち込める空の隙間から少しでもいい、太陽の輝きが見たいのだと。

 

 同じ頃、彼女とは別の場所で空を見上げる者達がいた。その場所は一年の内のほとんどが吹雪に覆われる、白く暗い場所だった。しかし、その日は彼女のいる場所と同じく快晴であった。一年の内の本の数日だけ垣間見える明るい太陽の日差しが、雪に覆われた大地の銀色に輝かせていた。そして空を見上げる者達の心の内も、また晴れやかであり、その者達自身がちっぽけだが太陽のような輝きを纏っているかのように感じられた。

 

 それ故にだろう、太陽の輝きを、本の少しだけ、ちっぽけなものでもいいから欲しいと、雲に覆われた暗闇の中でも諦めることなく願った彼女と、自らが太陽の如く晴れやかな者達が繋がった。科学や魔法などといった如何なる力を持っても干渉、観測が出来ない筈の遠い、遠い地が繋がった。

 

 周囲から嘲笑の声が幾つも聞こえた。もういい加減諦めろと。

 

 初め、彼女はまたかとそう思った。目の前には土煙、既に何度も見た光景だった。だがまだだ、次こそはと彼女は手に握った杖を振り上げようとした。

 

 ゆらり、と土煙の中で何かが揺れ動いた。

 

 彼女は、一瞬だけ何かを期待するかのようにそれを見つめたが、そんなわけがない気のせいだと否定した。諦めたくなかった筈の彼女だったが、彼女自身の制御出来ない所で折れてしまっていたのかもしれない。どうせ見間違いだと次を始めようとした。

 

 ゆらり、とまたも何かが動いた。

 

 彼女は、それをちょうど人間くらいのサイズの何かだと感じた。しかしやはり彼女は首を振る、期待の裏返しが大きな絶望であることを彼女は知っていたからだ。

 

 「げほげほっ…」

 

 土煙の中からだ、まるで人が咳き込んでいるかのような音。彼女は、それすらも幻聴だと否定しようとしたが、気が付けば一歩だけ足を前に出していた。

 

 「酷い土煙、これがエミヤママの言っていた召喚事故ってやつかな?」

 

 ようやく、土煙が晴れた。そこには間違いなく彼女が願い求めた者がいた。彼女はついに否定することやめ現実を直視した。それは彼女の理想とした姿とは違ったが、それでも彼女が望んだ者が確かにあった。

 

 「あ、あんた誰よ!?」

 

 彼女は思わず嬉しさで涙を出しそうになったが、それを堪えた。彼女のプライドがそれを許さなかったからだ。涙を堪え、顔には大げさな感情を出さないようにしながら彼女は問いかけた。

 

 「えっと、確か、召喚に従い参上した。問おう貴方が私のマスターか、でよかったかな」

 

 「え、あ、そう!そうよ! 私があんたを召喚したの、それであんたはなんなのよ!?サモンサーヴァントで人間が出てくるなんて聞いてないわよ! 私はもっとカッコいいドラゴンとかがよかったのに!」

 

 それは彼女のちっぽけな嘘であった。彼女の地位や立場からくるプライドを守るための嘘だった。本当は誰でもよかったのだ、けれど彼女は少しでも召喚した主人としての威厳を見せようと精一杯の虚勢を張った。

 

 「どうしたの?」

 

 「え?」

 

 「泣きそうな顔してる」

 

 しかし、彼女の嘘の仮面はあっさりと見破られてしまった。指摘された通り、彼女は今にも顔を崩し歓喜の涙を浮かべたかったのだ。僅かに動揺したその隙に、彼女は抱きしめられていた。よしよしと小さな子供をあやすかのように扱われた彼女は何が起こったのか分からなかった。

 

 「いいんだよ、嬉しい時も悲しい時も我慢しなくても。隠していたらきっと後悔するよ。それにあなたがどうしたいのか教えてくれなくちゃ、私もあなたと一緒に笑えないし、一緒に悲しめないよ?」

 

 理由は分からなかったが、彼女は出会ってまだ数分も経っていないような相手に深い親しみを覚えた。それはまるで信頼する家族のようだった。そして堰は破れた、彼女の目からは小さな水の雫が流れ出た。

 

 「よかった、よかったよぉ……、ちゃんと、ちゃんと出来た……私でも出来たんだ……」

 

 彼女は召喚した者の存在をしっかりと確かめるように腕を回し抱きしめた。

 

 「うん、大丈夫だよ。私はここにいるよ」

 

 彼女が落ち着くまでに数分程掛かった。その間、彼女は静かに泣き続けた。彼女の周りで囃し立てていた者達も、まるで敬虔な教徒が素晴らしい宗教画を眺めているかのように静かにその光景を見ていた。

 

 「ねえ、私の名前は『藤丸立香』、あなたは?」

 

 「『ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール』、ルイズでいいわ」

 

 「わかった、じゃあ正直良く分かってないけどこれからよろしくねルイズ!」

 

 彼女、ルイズはまだこの時点では知らない。藤丸立香が世界で最後にして唯一のマスターとして世界を救った存在であったことなど知る由もない。そして、ルイズ自身もまた極大の運命を背負っていることなど知る由もない。

 

 それらを知る旅路はここから始まる。

 




初っ端から絆レベルを上げていくスタイル、これはきっとRTAですね、間違いない。

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