「それでどうして私を呼んだの?」
「えっとね、怒らないでね……」
誰もが静かに見守っていた召喚の時間は終わり、ルイズしっかりと落ちついたのを見計らってリツカはルイズに問いかけた。
「大丈夫大丈夫、人理焼却するためですとか言い出さない限り怒らないから」
「何よジンリショウキャクって……、実はね、学園の授業の一環で進級の試験として使い魔を召喚するの」
「へえ、学校で皆が使い魔召喚するなんてなんだかおもしろいね」
「普通はね、皆当たり前に召喚できるから進級試験なんてのは建前なんだけどね。でも私は……」
そこでルイズは一度言い淀んだ、口を真一文字にし今度はリツカを無事召喚出来た時とは違って悲しみの涙を浮かべそうになった。少しだけ俯いて、口を開こうとしては閉じてを何度か繰り返した。
「ルイズ」
その様子にリツカがルイズの名前を呼ぶ。それは急かすような声色ではなく、優しく見守るようなものだった。その声を聴いたルイズは顔を上げ、リツカをしっかりと見つめた。何かを確かめるように暫く見つめた後、ルイズはとうとう口を開いた。
「私だけが出来なかったの」
ルイズはその瞳に不安の色を浮かべリツカの顔色を窺っていた。誰もが出来ることが出来ない落ちこぼれの自分に幻滅されるのではないか、折角召喚に成功したのに愛想をつかされて逃げられてしまうのではないか、そんな悪い予想ばかりがルイズの脳内を駆け巡っていた。
「何度も、何度も。頑張って頑張っても、失敗ばかりだった」
「うん」
「それでも私は続けた。考えてみればただやけになっていただけなのかもしれないけど、それでも続けた」
「うん」
「そしたら今回もダメだと思ったら、貴方が来てくれた」
「うん」
「別にね、貴方を狙って召喚したわけじゃないの、なんでもよかった。来てくれさえすればそれで良かった」
「うん」
「無責任なのは分かってる、だからもし貴方がすぐにでも帰りたいっていうのなら出来るだけなんとかするわ」
ルイズは自分のその言葉に再び涙を浮かべそうになった、折角召喚出来た使い魔を手放すことになるかもしれないという不安に強く襲われた。
「でも、もし……もし私の使い魔になってもいいって言ってくれるなら、私の使い魔になってください」
ルイズは半ば諦めるようにその言葉を絞り出した。突然呼び出しておきながら使い魔になれなんて言われて答える人はいないだろう。動物であったならなんとでなっただろうが、相手は人間でありそのリツカにはリツカの生活があって帰る場所がある、そんな事はルイズでも容易に想像がついた。もし仮に自分が素晴らしい大魔法使いであったなら、少しは話は変わっていたかもしれないが、実際には落ちこぼれもいいところ、誰ががそんな者の使い魔になりたいのと思うだろうか。
「いいよ」
「えっ……」
ルイズは何を言われたのか理解出来なかった。早く元の場所に帰せと罵声を浴びせられてもおかしくないと考えていただけに、その予想外の返答困惑していた。
「でも、そんな、勝手に呼び足しておいて帰れないかもしれないのに」
「いやまあ、人類が滅ぼされて帰る場所が物理的に消え去ったわけでもないし、なんとかなるでしょ!」
「それに、私みたいな何も出来ない落ちこぼれの使い魔なんて……」
「あー、分かる分かる。私も一人じゃあなんにも出来ないからね」
「本当に? 本当にいいの?」
「いいよ、というか今まで散々サーヴァントを召喚しておいて、いざ自分が召喚される立場になって嫌だっていうのもなんだか都合が良すぎる気がするしね!」
「……ありがとう、本当に……」
今度こそルイズは涙を流した。すっかり落ち着いたと思っていたルイズだったが、まだまだ気を張っていた、その緊張が解れてつい涙を浮かべた。
そしてようやく話が付いた二人を見守っていた人物が、二人に声を掛けた
「そろそろよろしいですかな?」
「あ、すみませんコルベール先生」
少々頭髪の具合が寂しいその人物は、授業の監督を務めていたコルベールであった。彼は本来は速やかな授業の進行を執り行う立場であったが、ルイズとその使い魔の会話に空気を読んだようで今まで黙っていた。
「おや、いつの間にコントラクトサーヴァントを済ませたのですか?」
「え?」
「ふむ、見たことのないルーンですな」
コルベールはリツカの右の手の甲を見てそう言った。確かにそこには赤色の入れ墨のような紋様が刻まれていた。
「あのぉ、コルベールさん?」
「おっと失礼、使い魔とはいえ許可なく女性の体をあまりジロジロと見るのは紳士的ではありませんでしたな」
「いえ、そうじゃなくてですね。これは令呪っていいまして、ルーン文字とは違うんですよ」
「レイジュ? ああ成程、貴方のいた国ではそう呼ぶのですか。まあ些細な問題です、何はともあれ彼女と契約してくれて感謝します。私はここで教師をしておりますコルベールという物です、異国の地に突然呼び出されて困惑していることでしょう、何かあればいつでも相談に来ていただいて構いませんよ」
「あ、はい。それはありがとうございます、ただこの入れ墨は……」
「おっと、申し訳ない、流石にこれ以上は授業を延長するわけにはいきませんので、何かあればまた後でお願いします。では皆さん解散、次の授業に遅れないように!」
コルベールはルイズに気を使い、ギリギリまで授業時間を延長していたが、流石に限界であったようで、リツカとの会話を早々に切り上げて早々と去ってしまった。それに合わせて、それ以外の生徒であろう者達も杖を一振りしたかと思うと、全員がふわりと宙に浮かび、文字通り飛んで去っていった。
「……飛んだぁっ!?」
「そりゃあメイジなんだからフライくらい皆使えるわよ」
「いやいやいやいや、誰でもそんな簡単に空を飛べたらワイバーンやらなんやらの飛行エネミーの立つ瀬がないでしょう!?」
「あなたの所のメイジは飛べないの? 変わってるわのね、まあいいわそれより私達も早くいかないと」
「ルイズも飛んで行っちゃうの?」
「私は……走るわ」
「おお、それはいいね。私も逃げ足だけには自信があるから!」
「何よそれ、まあいいわ、詳しい話は授業が終わって落ち着いてからしましょう」
「オッケー! じゃあ競争だぁ! あそこに見える建物でいいだよね?」
そう言うが早いがリツカはルイズを置いてそそくさと走り出した。
「あ、ちょっと待ちなさいよ! ていうか本当に足早! 主人を置いていく使い魔がどこにいるのよぉ!」
「うはははは、スパルタ仕込みのこん脚力、追いつけるものなら追いついてみなさい!」
怒っているような、そんな口調でリツカに声を掛けながら走り始めたルイズだったが、その顔は笑っていた。ルイズは本当の意味で楽しいだとか、嬉しいだとか思うことはここ数年なかった。家族以外の殆どの者から嘲られるて過ごしていたルイズにとって、久方振りに心の闇が晴れたかのようであった。
ルイズはようやく自分の旅路が始まる、そんなふうに予感した。
ファーストキスから始まる二人の恋のヒストリー?
あちゃあ、ごめんなさい今それ品切れなんすよ。
まあ、RTA走者としてスルー出来るイベントをスルーするのは当たり前だよなぁ?
とは言ってもタグにGL付けちゃってるからきっとそのうち始まるんじゃないすかね?