ああ、最悪だ、最低な人生だ⋅⋅⋅
両親に捨てられ、高校中退、バカにされ、パワハラされ、倒産して、騙されて詐欺にあい、最後は癌で苦しみながら人生を終えるなんて⋅⋅⋅
嫌だ嫌だ嫌だ⋅⋅⋅やり直せれるなら幸せな人生を送りたい。恨みを晴らしたい。復讐をしたい⋅⋅⋅⋅
「なら、私と契約を結ばない?」
突然意識が途絶える瞬間奇妙な空間に俺は居た⋅⋅⋅そして目の前には年端の行かない少女が居た。
少女は何とも目のやり場に困る様なセクシーな衣装に身を包み妖艶な雰囲気を醸し出している。長い黒髪に翼を付けて佇んでいる姿はまるで悪魔の様に見える。
美しい⋅⋅⋅⋅⋅俺は目の前の女の子?イヤ、女性?に目を離す事が出来ずにいた。
「君⋅⋅⋅いや、貴女様は一体?」
つい敬語になってしまう。
「私は悪魔⋅⋅⋅そう、悪魔ほむらよ。貴方とても絶望しているわね⋅⋅⋅人生をやり直したいでしょ?なら私と契約を、取引をしてみないかしら?」
あ、悪魔⋅⋅⋅訳が分からない等と悠長な事はしていられない。このチャンスを逃したら俺は本当に惨めな人生のまま終わってしまう。
「分かりました。内容をお聞かせ下さい」
「フフッ⋅⋅⋅敬語は不要でいいわ⋅⋅⋅」
「⋅⋅⋅ああ、わかったよ。で、取引の内容は?」
「至極簡単よ。満月の日に次元を突き破って進撃してくる魔獣がいるの。いえ、むしろ害獣かしら?でっ、ソイツらを倒すか、一定時間持ちこたえるかのどちらでもいいから凌いで欲しの。」
魔獣⋅⋅⋅!?まるで俺の好きだったゲームやアニメ、漫画のような設定だ⋅⋅⋅⋅?
「受けてくれるなら、もう一度人生をやり直しできるわ⋅⋅⋅そう、リプレイを」
俺は足りない頭を捻り、激しく回転させた。人生のやり直しがしたい、復讐を果たしたい、幸福で豊かな人生を送りたい。だが、相手は悪魔⋅⋅⋅これがネット小説のセオリーなら神様や女神様が土下座してチートな能力を授けてくれるのだが⋅⋅⋅安易な契約は不味い。
「幾つか質問いいか?」
「いいわよ」
「その魔獣との戦いは満月の日だけでいいんだな?」
「そうよ」
「魔獣とはどうやって戦かえばいいんだ?」
「単純な重火器の類いでも戦えるわ」
「何で俺なんだ?」
「貴方は魔力的適性があったからよ。それとは別に貴方の負の精神エネルギーが、絶望感がとても好ましく思えたからよ」
大きなお世話だよ⋅⋅⋅⋅
「その魔力適性ってのは?」
「満月の晩に異空間に干渉して魔獣の姿を視認できる力よ」
適性ね⋅⋅⋅鵜呑みにするのはどうかと思うが、今は確かめる術は無い。
「リプレイされたらどの年齢の時点でやり直しが出来るんだ?」
「自分が最もやり直しを始めたいと思っている時間からよ」
そうか⋅⋅⋅⋅なら絶望の始まりの日の高校生からだな⋅⋅⋅
「すまないがもう一つ願いを希望したい」
「何故かしら?」
「あんたの条件を呑んでリプレイしても結局、運、実力、才能で人生が摘んでしまう。何より魔獣との戦いも満足に出来そうにない。リプレイしても戦いで命を落としたら意味がない。何か特典が欲しい」
「魔獣との戦いや人生のやり直しにはあるサポートを着けるのだけれど⋅⋅⋅⋅まあ、いいわ。言うだけ言ってみなさい」
悪魔と称してはいるが、意外にもこちらの言葉に耳を傾けてくれる。なら遠慮は無しだ。
「ならドラえもんの秘密道具が欲しい!」
俺は酷い目に合う度によくドラえもんの秘密道具があればと夢想したものだ。恥ずかしいがそれは42歳の現在でも変わらない。
「⋅⋅⋅⋅⋅まあ、多分大丈夫。いいわよ。但し時空や宇宙の法則を乱しかねない道具はこちらで使えない様にするし、何かしらの条件と制限を設けるけど良いかしら?」
「⋅⋅⋅⋅⋅ああ、わかった、それでいい。」
どっちみち俺には条件を、呑むしかないのだ。だが、思ったより本当にこちらの条件を呑んでくれるものだ。
「じゃあリプレイするわね。サポートに着くモノも一緒に送るから」
「ああ、頼む」
「では良き二週目を⋅⋅⋅⋅リプレイヤー⋅⋅⋅」
その言葉を聞いて自分の意識は闇に落ちた⋅⋅⋅⋅
ーーーー
突然眩しい光が目に飛び込んでくる。
ゆっくりと瞼を開くとそこは懐かしくも忌々しいかつての我が家の部屋だった⋅⋅⋅⋅⋅
本当にリプレイしたんだな。俺は洗面所に行き鏡を見ると高校生に戻っていた。だが喜びは無い⋅⋅⋅何故なら契約で魔獣とやらと満月の日にやりあわなければならない。復讐を成し遂げて自分の心にしこりを落としたい。そして幸福の絶頂を味わいたい。必ずだ!
部屋に戻ると見慣れぬ小さな箱が置いてあるのに今さら気づいた。恐らくコレの中に悪魔ほむらの言っていたサポートするモノがあるんだな。
俺は恐る恐る箱を開けると⋅⋅⋅⋅
「ふい~狭かったですよ!あっ、初めまして我がマスター、ワタクシは悪魔ほむら様から貴方様をあらゆる面でサポートするよう仰せつかった杖のムカイと申します。以後よしなに⋅⋅⋅⋅」
⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅思考が停止してしまった⋅⋅⋅⋅⋅⋅
何故なら小さな箱から出て来たのは自分を「杖」と言っているビニールボールの様に丸い姿をしていたからだ!
丸い頭にして体に目と口だけがついていて、声は少女の様であり、妙齢の女性の様な印象でもある。
つーか、何処が「杖」なんだ!?自分の培ってきた常識が否定された気分だ。
「いやはや、マスターワタクシはこんな姿形ですがしっかりと務めは果たしますのでご安心下さいませ」
何だろう軽く頭痛がしてきたぞ⋅⋅⋅イヤ、頭痛を起こしている暇は無い。先ずは今どんな状況なのか確認作業をしなくては!
「あっ、マスター現状確認ならワタクシ把握しておりますので何なりとお聞き下さい」
「⋅⋅⋅⋅あ~そ、そうか⋅⋅⋅⋅?なら頼むよ⋅⋅⋅⋅⋅」
「はい!え~とですねっ、マスターの現在の年齢は15歳の高校一年です。ご両親様達は夫婦揃って失踪した直後です。原因は単純に現状の生活に、人生に疲れたからだと判明しております。え~その⋅⋅⋅⋅お互いに自由が欲しくなったからと言った実に身勝手な理由ですね⋅⋅⋅⋅⋅」
ははは⋅⋅⋅⋅何だよ⋅⋅⋅⋅アッサリと長年何故居なくなったかの理由が判明しちまったよ⋅⋅⋅⋅⋅クソ親どもが⋅⋅⋅⋅絶対に幸せになってやる!!
「ま、マスター⋅⋅⋅⋅」
「あ、イヤ気にすんなよ。お陰で長年の謎がわかったんだからさ⋅⋅⋅えっ、とムカイさん?」
「さん付け等と恐れ多いです。ムカイとお呼び下さい!」
「ん~でも単純にムカイさんと呼んだほうがしっくり来るからさん付けなっ!」
「ははっ分かりました!マスター!」
「んじゃ早速だけど⋅⋅⋅そのドラえもんの秘密道具を出してくんないかな~っと」
「あっ、はいこちらに」
空中に浮かんでいるムカイさんは同じく空中からドラえもんの【四次元ポケット】を出現させた!
や、やった!ドラえもんの秘密道具さえあればこれから起こるであろう如何なる障害を突破して絶頂を得る事が出来るぞう♥ザマーミロだ!!
俺はワクワクドキドキしながらポケットの中をまさぐった。
⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅んっ?あれ?あれあれ!?中身が無い!?何にも入ってないぞっ!?
どういう事だよ?
焦り、驚愕している俺の横にいるムカイさんが突然喋りだした。
「マスター!ほむら様から通信が入りました。お伝えしますが今よろしいでしょうか?」
「あ、ああ!た、頼むよ!!」
俺は冷や汗をかきながらムカイさんに指示する。
「ガガーッ、ピピッ⋅⋅⋅⋅どうやら繋がったようね。悪魔ほむらよ」
ムカイさんの声から悪魔ほむらへと切り替わった。俺は焦り激しく悪魔ほむらに言葉を投げかけた!!
「おっ、オイ悪魔ほむらさんよ!俺はドラえもんの秘密道具を希望しただろ?ポケットの中、何にも入ってないぞっどういう事だよこれは!!」
「あらっ、言わなかったかしら?秘密道具は何かしらの条件と制約を付けるって⋅⋅⋅まずは何でも無限に収納出来る四次元ポケットよ。それはまあ、無害だから最初にあげるわ⋅⋅⋅⋅他の道具が欲しければムカイさんを経由してお金を出して購入する事ね。更に詳しく細かい事はムカイさんに聞きなさい。それじゃ⋅⋅⋅ガチャ!」
⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅何じゃそりゃ~~~~!!??
結局何から何まで金かよ!秘密道具でイージーでチートな人生がぁぁぁ⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅
はっ!待てよ?今家にある金はどれぐらいだ!?ムカイさん調べてくれ!
「マスター⋅⋅⋅⋅今この家にある現金は両親様がせめてもの手切れ金として残していった30万円だけです⋅⋅⋅⋅⋅」
「はあ~!!たったの30万円~!?」
30万円結構な金額だと思われるがこの先の生活費に高校生に戻った今、学費、修学旅行費用、その他諸々⋅⋅⋅⋅足りないー!!!秘密道具だって購入せにゃならんのだぞ~!!
「マスター⋅⋅⋅」
ムカイさんが心配するように呟いた⋅⋅⋅⋅