リプレイヤーは稼ぎたい   作:クリスチーネ小林

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長門有希の決意

長門さんが俺の為に資金を前借りしてガンダムDXを召喚してくれた。

 

長門さんは俺に

「ツインサテライトキャノンを放つのにエネルギーチャージが必要。1分間の間どうか時間稼ぎをお願いしたい」と言った。

 

 

原作アニメだと月からのマイクロウェーブからのエネルギー供給だがやはり色々と違うらしい。俺は了承して時間稼ぎする事にした。

 

 

その前にタイムふろしきでガンイージを再生する。3秒後に見事再生したガンイージを見上げ、更にガチャを引いて武装の強化に務める。

 

月のツキを飲んでガチャを引く。

 

「良いの出ろ、出ろ!」

 

結果見事ガンイージ専用のビームバズーカを引けた!やったぞー!!

 

ムカイさんに頼んで空間からビームバズーカを出してもらいガンイージの肩に背負う。

 

「よぉーし行くぜ!」

 

気合いを入れて俺は再生したガンイージで騎士魔獣に向かっていった。

 

 

「マスター後45秒間足止め出来れば長門様のツインサテライトキャノンで魔獣たちを一網打尽に出来ます。踏ん張って下さい!」

 

ムカイさんの応援を受けて俺は赤色騎士魔獣の頭部目掛けてビームバズーカを放った⋅⋅⋅が、案の定緑色のヤツがしっかりと盾で身代わりになって受け止める。

 

「くそー!ヤッパ連携が厄介過ぎる!」

 

俺は愚痴を吐きながら何発もダメ元で時間まで粘る。

 

 

唯一頭部にダメージを受けている赤色のヤツに届かない。青色のヤツに至っては当たりそうにもない。

 

とにかく手数優先で機体と一緒に再生したビームライフルも撃って撃ちまくりヤツらの足を止める事に専念する。

 

「小林、チャージは完了した。魔獣から離れて⋅⋅⋅」

 

待ってました!俺は指示どうりに魔獣達から離れる⋅⋅⋅がっ、青色の魔獣騎士だけが執拗に後ろから追いかけて来やがった!

 

 

「くっ!やっぱ速い!!」

 

ガンイージの出力も量産機の中ではトップクラスだが、青色騎士魔獣のスピードは脅威的で振り切れそうにない。

 

ビームライフルを撃っても牽制にすらならない。なら一か八か、引き付けて接近した所をカウンターで迎え撃つしかない!

 

俺はガンイージを空中で静止させ何時でもビームサーベルを出せる準備をする。静止した機体を見て青色のヤツは急加速してきた。

 

「マスター⋅⋅⋅⋅」

 

ムカイさんは心配そうな声をあげる。

最悪相討ちでもいい。そん時はまた機体から飛び降りるだけだ。

 

「マスター!!此方に向かって来ます!」

 

青色騎士魔獣は竜のごとき二対の翼を羽ばたかせハイスピードでレイピアを向け突進してきた!!

 

(落ち着け⋅⋅⋅タイミングと射程距離を見謝るな⋅⋅⋅)

 

来た、今だっ!!

 

俺は微かに機体を揺らして何処まで有効かは分からないがフェイントを入れ魔獣を誘う。

 

 

その結果⋅⋅⋅魔獣のレイピアは機体の肩の付け根の部分に刺さり、ガンイージのビームサーベルもヤツの肩に突き刺さった!!

 

「ぎっ、ギリギリ相討ち成功!!」

 

ビームサーベルを引っこ抜き、空いてる左手でビームライフルをヤツの顔面に放ってやった!!

 

「ギィルガァァァー!?」

 

思わぬダメージを受けた青色騎士魔獣は顔面を手で押さえワナワナと震えている。その隙を逃さず俺は背中に回って蹴りをかましてやった!

 

 

魔獣は録に体勢を整える事も出来ず上手い具合に他の2体にぶつかった。

 

「っしゃあーっ!!我ながら上出来だ!!長門さん、後はヨロシク!!」

 

俺は長門さんに通信で伝えてすぐにその場から離脱する。

 

 

「ありがとう小林⋅⋅⋅目標補足完了⋅⋅⋅ツインサテライトキャノン⋅⋅⋅発射⋅⋅⋅⋅!」

 

 

 

 

 

 

⋅⋅⋅⋅⋅僅かな静寂の後⋅⋅⋅巨大な二対のエネルギーの閃光が直線上に走り、騎士魔獣三体を包み込んだ⋅⋅⋅⋅!!

 

 

「・・・・・!?」

 

 

魔獣達の咆哮らしき声すらかき消され、無慈悲なまでに光輝くエネルギーの奔流にヤツらは飲み込まれた⋅⋅⋅⋅

 

 

凄まじい突風に煽られながら何とか残っているビルの影に避難して様子を伺うとさっきまで多数の巨大なビル群が跡形もなく消し飛び、ツインサテライトキャノンの閃光の通った後が大地に生々しく刻み込まれていた⋅⋅⋅!!

 

 

劇中でも凄まじい威力の描写が成されていたが、実際に本物の⋅⋅⋅リアルのツインサテライトキャノンの威力を間近に見ると背中に冷たい汗が吹き出してくる。

 

 

「てっ、敵じゃなくて、味方側で良かったよ⋅⋅⋅まあ、これで何とかミッション完りょ⋅⋅⋅」

「マスター!!魔獣の生命反応感知しました!!」

 

ほっとした俺にムカイさんは大きな声で注意を促してくれた。

 

「なっ、嘘だろう!?アレを喰らって⋅⋅⋅」

 

ビルの隙間から覗くと草一本生えてない荒野の状態になった大地から緑色の騎士魔獣が全身ズタボロとなって這い出してきた。

 

 

所持していた盾は殆ど原形を留めておらず、本体も鎧が大きく損傷してひび割れして隙間からは赤色のヤツと同様に黒いナニかが這い出している。

 

後ろから赤色と青色も這い出てきたが、緑色程の耐久力は無かったらしく腕や足等を失い、今にもくたばりそうな程にフラフラしている。

 

「生き残っているとは正直驚いたけどアレならすぐに息の音を止められる!」

 

俺はトドメをさすべくビームバズーカを構えようとするが、ヤツらの行動に固まってしまった⋅⋅⋅⋅

 

「ゲエッ!アイツら共食いを始めやがった⋅⋅⋅⋅!?」

 

三体のボロボロの騎士魔獣どもは互いを押さえつけて喰らい合いを始めた⋅⋅⋅おっ、おぞましい過ぎる⋅⋅⋅⋅

 

嫌な音を立てながら喰らい合う姿に吐き気迄してきた⋅⋅⋅

 

「ハッ!マスター気をつけて下さい!!魔獣達の生命エネルギーが急激に高まっています!!」

 

「なっ、何ですとー!?」

 

魔獣達の様子を見ると血管らしきモノが見え、激しく脈打ちみるみる内に三体は交わり融合し姿を変える。

 

 

激しい脈動が収まるとそこには黒い騎士の姿の魔獣が佇んでいた⋅⋅⋅⋅!

 

その姿は何処かのゲームの暗黒騎士風でツヤのある漆黒の色合いで重厚な気配を漂わせている。

 

「でっ、デカい⋅⋅⋅」

 

大きさは三体の魔獣の二倍の約40㍍程で雄々しい3本の角のついた兜に背中には悪魔を連想させる2つの翼を拡げ、右手には禍々しい雰囲気の巨大な剣を持ち左手には緑色の盾が可愛く思える程の重々しい盾を所持していた⋅⋅⋅

 

「まっ、マスター⋅⋅⋅あ、あの魔獣のエネルギーは先程の魔獣の五倍以上です⋅⋅⋅」

 

それを聞いた俺は直ぐ様、長門さんに通信した。

 

「長門さん!!ツインサテライトキャノンはもう一度撃てる?」

 

「⋅⋅⋅エネルギーチャージはもう始めている。次の発射までは後2分掛かる⋅⋅⋅」

 

気のせいだろうか?長門さんの声からは微かに焦りの感情が滲み出ている様に感じる。

 

「⋅⋅⋅わかったよ長門さん!2分間何とかまた、時間稼ぎをしてみせるよ!」

 

俺はガンイージを起動してバズーカを構えて黒い騎士魔獣に向かっていった!!

 

 

⋅⋅⋅がっ、目の前の騎士魔獣は姿を消した!!きっ、消えた!?

 

 

「マスター!!後ろですー!?」

「なっ、えぇっ!?」

 

 

⋅⋅⋅目の前にいた筈の魔獣は一瞬で背後に周り巨大な剣を振り下ろしてきた!!

 

「どわあぁぁぁーーー!!??」

 

俺は必死でサイコントローラーを握り回避した⋅⋅⋅がっ、ヤツの剣圧の衝撃により機体の斜め半身が切り裂かれてしまった!!

 

 

「なあぁぁー!?掠ってもいないのにー!?」

 

凄まじい剣圧の衝撃に吹き飛ばされ荒野と化した地面に無様に墜落した。

 

 

「ぐうぅっ⋅⋅⋅」「マスターしっかり!」

 

ムカイさんは俺に必死で呼び掛けてくれるが、心の中は絶望のドス黒い感情が支配していた⋅⋅⋅

 

 

こ、こんな⋅⋅⋅時間稼ぎすら出来ないなんて⋅⋅⋅⋅だ、ダメだ今度こそもう⋅⋅⋅

 

「マスター長門様がっ!」

 

ムカイさんの声に振り向くとガンダムDXがチャージ状態からビームライフルやバルカンを射ちまくり黒い騎士魔獣の気を引いていた。

 

「なっ、長門さん⋅⋅⋅!ダメだチャージ中に無理に動くと⋅⋅⋅!」

 

原作アニメと違い、外部からのエネルギー供給ではなく内部のエネルギーチャージしている状態で無理に動くと暴発の恐れがあると何となく直感で感じた俺は長門さんに通信で止める様に呼び掛ける。

 

 

「⋅⋅⋅大丈夫。今の内に小林はどうにかしてこの空間から抜け出して欲しい⋅⋅⋅」

 

「でもそれじゃあ長門さんがっ!!」

 

「問題ない⋅⋅⋅私は対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース⋅⋅⋅代わりは幾らでもいる⋅⋅⋅」

 

「⋅⋅⋅そんな問題じゃない!!長門さんは長門さんだけだ!」

 

「⋅⋅⋅⋅⋅」

 

通信を続けて止めさせ様とするも、長門さんの攻撃に防ごうともせず佇んでいた黒い騎士魔獣は長門さんの機体に振り向き右手に携えた剣を振りかぶった!

 

 

ザシュッ!!

 

 

剣圧の衝撃波が走り、ガンイージ同様に斜め半身が切り裂かれ爆発した!!

 

 

 

「長門さーん!!!」

 

 

 

俺は力の限り叫び⋅⋅⋅歯をくいしばって

スマホのガチャを回した。

 

月のツキを敢えて飲まずに回し捲り、ほむらお手製の爆弾を100個引き、そのままMSガチャを回して10機のボールを出した。

 

 

ムカイさんに頼んでボールの中に爆弾をそれどれ10個搭載させて⋅⋅⋅⋅俺は覚悟を決めた。

 

「ムカイさん⋅⋅⋅ボールをオート操縦でいいからヤツらの足止めをお願い⋅⋅⋅俺はタイムふろしきでガンイージを再生して長門さんの所に駆け寄って何とか同じ様に再生してみるから⋅⋅⋅」

 

「⋅⋅⋅はい!任せて下さい。必ず足止めを成功させて見せます」

 

ニッコリと笑って俺の無茶ぶりに答えようとしてくれる。

 

「ゴメンな⋅⋅⋅他に何にも思いつかないんだ⋅⋅⋅」

 

「ワタクシはマスターのサポートするために存在しております。心のままに命じて下されば良いのです」

 

「本当にありがとう⋅⋅⋅⋅帰ったら高級スイーツのフルコースと洒落こもうぜっ!」

 

「はい!楽しみにしております!」

 

 

そう言ってムカイさんはボールをオート操縦するために乗り込んだ。

 

俺は両頬を叩き気合いを入れてガンイージを秘密道具で再生した。

 

再生したガンイージに乗り込みタイミングを計る⋅⋅⋅⋅

 

 

ムカイさんがまず一つ目のオート操縦のボールを突進させたのを確認して長門さんの機体に近づいた。

 

黒い騎士魔獣はボールを難なく捕らえ握りしめる。その瞬間凄まじい爆発が起こるが騎士魔獣にはダメージが入った様子は無い⋅⋅⋅

 

 

「くっ、耐久力はヤギの魔獣より上かよ⋅⋅⋅」

 

焦りながら何とかガンダムに近づく事に成功してコックピットから降りてガンダムの損傷を確認する。

 

どうやら幸いにもコックピットには損傷はない。恐らく手にしていたライフルの爆発が派手に見えた様で俺は少しほっとする。

 

 

機体にタイムふろしきを被せて再生し、ハッチのボタンを探す。

 

「あった!多分これを押して⋅⋅⋅」

ハッチが開いて行く。

 

「長門さん!!」

 

俺はコクピットの中を覗き込んで祈る様に叫んだ。

 

コクピットの中には長門さんが額から血を流してうなだれていた。眼鏡も痛々しくひび割れている。長門さんは俺に気がついて絞り出すかの様に声を出す。

 

 

「ん⋅⋅⋅こ、小林⋅⋅⋅私は貴方に逃げてと言った⋅⋅⋅筈⋅⋅⋅」

 

「バカな事言わないで!!女の子を置いて逃げるなんて出来る訳ないでしょ!!それと、自分の代わりは幾らでもいる?いくら宇宙人⋅⋅⋅いや、アンドロイドでもそんな考えは俺は認めない!!長門さん⋅⋅⋅⋅長門有希は此処に一人だけだ!!」

 

「小林⋅⋅⋅⋅」

 

後方から何度も爆発音と衝撃音がこだまする⋅⋅⋅⋅

 

 

「さっ、長門さん席を代わって。元々これは俺が契約を結んで俺がやらなくちゃならない仕事なんだ。君は関係ないから⋅⋅⋅⋅」

 

手を差し出すと長門さんは俺の手を握り返しコクピットから出て立ち上がり、俺を見つめながらひび割れた眼鏡を外した。⋅⋅⋅何だか格好いい⋅⋅⋅

 

 

「関係なくはない⋅⋅⋅貴方を観測する様に言われたが、貴方をサポートする様に決めたのは私自身の意思でもある⋅⋅⋅私は上の派閥の力関係を考慮して自らの能力を極力使わない様にしていた。でも⋅⋅⋅私は私の判断に基づき能力を行使する⋅⋅⋅貴方を守る為に⋅⋅⋅!」

 

 

長門さんは虚空に向かって、またも聞き取れない呪文の様な言葉を発した。

 

すると、周囲の空間が歪み、空気が振動する⋅⋅⋅?

 

「小林⋅⋅⋅そこから一歩も動かないで欲しい⋅⋅⋅私が全てを終わらす⋅⋅⋅⋅!」

 

妙な迫力を感じてたじろいた俺は素直に頷いた。

 

 

尚もムカイさんがボールをオート操縦でぶつけて爆発させているが無情にも魔獣には全く効いてなかった。

 

「ムカイさーん!!もういいから!君もソコから離脱してー!!」

 

長門さんがナニかを仕掛けると予感して出来る限りの大声でムカイさんに伝えた。

 

最後のボールが魔獣に向かっていくのと同時に小さく丸い物体が此方に向かってきた。ムカイさんだ!

 

 

全力で駆け寄ってきたムカイさんを俺は両手でキャッチした。

 

「マスタースミマセン⋅⋅⋅全く歯が立ちませんでした⋅⋅⋅」

 

「そんなのムカイさんが謝る事じゃないよ!足止め本当にお疲れ様⋅⋅⋅後は長門さんがどうにかしてくれるらしい⋅⋅⋅とにかくここから動かない様にしておこう」

 

「⋅⋅⋅はい」

 

ムカイさんを労いつつ、念押しして長門さんの姿を見逃さないように目を見開く。

 

 

更にこの空間全体が軋み、振動が激しくなってきた⋅⋅⋅!

 

「こっ、この特殊空間に干渉するなんて⋅⋅⋅どれ程の情報改竄能力を有しているのでしょうか?」

 

ムカイさんはその丸い体を震わせて驚愕している。

 

 

暗黒騎士魔獣が空間の異変に一切狼狽えずに此方に瞬間移動のごときスピードで近づきその巨大で禍々しい剣を振りかぶった。

 

俺はムカイさんを懐に抱き締めて魔獣を見据える。

 

 

「空間干渉及び改変完了⋅⋅⋅貴方はもう⋅⋅⋅消滅する⋅⋅⋅⋅」

 

 

キシィーン・・・

 

 

ナニかの扉を閉めた様な音が鳴り響き⋅⋅⋅

暗黒騎士魔獣の全身が震えたと思ったらうめき声すらあげず、瞬時に霧散して消滅した⋅⋅⋅⋅⋅

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅えっ?」

 

余りにも呆気なく魔獣が滅びたので俺は暫く放心してしまった⋅⋅⋅⋅

 

 

「あ、あんなに強力な魔獣を⋅⋅⋅は⋅⋅⋅ハハハッ⋅⋅⋅⋅」

 

ついつい乾いた笑い声を出しつつ、何とか精神を現実に向かい合わす努力に努めた⋅⋅⋅

 

人間、余りに自分の常識や経験から逸脱した局面に晒されると現実を認識しずらくなるものだと痛感させられた。

 

「⋅⋅⋅⋅ま、マスターと、とにもかくにも我々の勝利です!」

 

「あ、ああそうだな⋅⋅⋅!」

 

ムカイさんも若干震え声だが、おかげで落ち着けた。そうだ、長門さんにお礼を言わなくちゃ!

 

 

「長門さんありがとう!おかげで助かったよ!」

 

礼を述べると長門さんは静かに振り向き⋅⋅⋅小さく微笑むと⋅⋅⋅やがてゆっくりと倒れた⋅⋅⋅⋅

 

 

  長門さーん!!?

 

 

 

 

 

 


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