石板がある部屋を後にした俺たちが出た場所は広大な空間に出ていた。
そこは絵に描いたような迷宮であり、子供が適当にブロックを繋げて作ったように構成されており、あらゆる場所がめちゃくちゃになっている空間だ。
「こりゃ、俺が見てきた中で一番迷宮らしい迷宮だな」
「ふむ、これはちと迷いそうじゃな」
「ここを作ったミレディとか言う奴は本当に子供っぽいだけなのかそれともただ性根が腐ってるだけなのか…」
「どちらにせよ妾たちには関係のないことじゃ、さっさと奥まで進み終わらせてしまおうぞ」
深読みだがどんな状況にさらされようと、常に冷静さを保てるかと試されていると見るべきか?
いや、ないか。
あの石板からはそんな意図を感じ取れない、やはりミレディとか言う奴の個人的趣味だろうか。
とりあえずそんなこと考えても仕方がないかと、適当なところで考えるのをやめ俺と村正はナイフで物理的にマーキングをしながら最奥を目指し進んでいくことにした。
注意しながら進んで行き、迷路のような空間から出た。
ついた部屋には三方に奥へと続く道がありマーキングをすませ、階下に続く階段がある左の通路を通ることにした。
移動していると村正があることに気づき進みながら俺に話をかけてきた。
「のぉ白よ、今気づいたのじゃが…どうやらこの場所は魔法が分解される作用が働いてるみたいじゃぞ」
「魔法を分解?てことはここでは魔法が使えないと…」
それを聞き試しに魔法で火を出してみると、別に分解などされず火は俺の指先でゆらゆらと揺らめいていた。
「…分解なんてされないんだが」
「ふむ、妾たちの魔法とこちらの魔法では根本的に違うというわけかのう…なんにせよ魔法が使えるのならば気にしないで良いじゃろう」
「つか、普通に魔法が使えんのにどうやって分解作用が働いていると気づいたんだ?」
「そうじゃな、ちと空気が違うと…昔に似たような感じの場所に行ったじゃろう」
「あー、あったなそんなとこ、あん時は物理オンリーだったな。
アダマンタイトのナイフですら弾くアホみたいな硬さの魔物がうじゃうじゃいたな」
とりあえずは魔法が使えるのならばさして問題はないだろう。
トラップだけに注意しておけばいいだけだが、今のところは村正が全てのトラップを看破しているので引っかかる心配はないだろうが気は抜けないな、迷宮ってのはいつ何が起こるのかおかしくは『白よ、そこの床に、あ…』ないんだ、は?
ガコンッ、という音ともに何かの仕掛けが作動した。
「何をしておるのじゃ!この阿呆!妾の忠告が聞こえんかったのか!」
「あー、いやすまん少し考え事してたら聞きそびれた…」
すると、階段の段差が消え滑り台のような傾斜へと変わる。
それと同時に地面に空いた小さな無数の穴からよく滑る液体が流れ出してきたが、俺と村正はこの程度か…と浮遊しその場に留まりどうするかと話し合うことにした。
「なんじゃ、罠と言うてもこの程度のものじゃったか…
で、どうするのじゃ?戻るか?それとも滑り落ちてゆくか?」
「戻っても仕方がないからなとりあえずは下に降りるぞ」
下に降りることにすると浮いたまま下へ下へと向かっていった。
ある程度進むと出口らしきものが見え、辿り着くとそこは崖となっていた。
崖の下を見てみるとおびただしい量のサソリがカサカサ、ワシャワシャと音を立てて蠢いていた。
もし、あの場で何も対処できないものが滑り落ちればこのままサソリの海にダイブを決め込んでいたことだろう。
と、考えていると。
「ミレディという奴は本当に性根が腐ってるのじゃろうな…
なんじゃあの煽り文句」
村正の目線を追い上を見ると、何やら文字が発光しておりこう書かれていた。
≪彼等に致死性の毒はありません≫
≪でも麻痺はします≫
≪存分に可愛いこの子達との添い寝を堪能
してください。プギャー!≫
……こりゃまた、この薄暗い空間でやたらと目立つようにするとは性格が本当に悪い、下に落ちた奴がサソリまみれになりながら必死にもがきながら天を仰ぐとしよう、するとどうだ?
天井にはこのふざけた文字を発見し、ブチギレること間違いなしだな。
それに、どうやらここは行き止まりではなくちゃんとしたルートらしく、その証拠に下の方に横穴があった。
「ふむ、あの場所から進むみたいじゃな。
それと白よ、どうじゃあのサソリの海を台無しにするというのは」
「名案だなそれ」
そういうと、横穴に到着したら魔法で大量のサソリたちを圧縮魔法でZIPにしてやった。
サソリの部屋の横穴をしばらく彷徨っていると一つの部屋に辿り着いた、するとその直後にゴゴゴ…となにやら不穏な音と共に俺たちを押し潰そうと天井が落下してきたのである。
「まーた、定番なトラップだこと」
「奥の方に通路があるの、どうする白よ。
天井を消し去るか…いや、消し去ってしまった方が早いの」
村正がそう言いながら両の手でパチンと音を鳴らすとさっきまで落ちてきていた天井が跡形もなく消え去っているではないか。
「村正、お前こんなところで"アレ"を使うなよ
そんなことしたら絵面的につまらん」
「メタいぞ、それに良いじゃろイラン手間が省けたじゃろうし」
「はぁ、俺でも結構自重してるというのにお前ときたら…
後なんださっきの手を叩く動作、いつもはしないだろあんなこと」
「なんとなくじゃよ、なんとなく」
「あそ…」
そんなこんなで俺たちは落下する天井という脅威が文字通り消え去ったためゆっくりと奥の通路へと進んでいったのだった。
村正のやったアレとは一体…うごごごごごご