ファースト・オブ・バレット   作:パルバール

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第80話『魔導書を求め』

 

涼しい夜風が頬を撫で、俺と1人の少年は暗い道を歩いていた

向かうは町…少年の家にある魔導書を求め歩みを進める

 

「そういえばエド少年」

「な、なんですか?カシワザキさん…?」

 

とある事が気になりエド少年に話しかける、まだ時間がかかるので暇つぶしだ

 

「魔導書ってのは知らなくても使ってみたりしたりはしたのか?文字読んで唱えるだけだし」

 

紙に魔力を込めるのと同じように本自体か宝石に魔力を込めればただの紙に魔力を込めるより威力をそのままに使える筈

ただ、エド少年が何度か使ってた場合は俺達の誰かが補充しないといけないかもしれない…まぁできないけど

 

「あー…いえ、使った記憶はない…はずです」

「はず、ねぇ…少女の事も不自然に忘れてたって事だし…とりあえずはそのままの状態と見ておこう」

 

もしかしたら忘れてるだけで魔法使い(きゃぴ)と名乗って使いまくってる線も考えられるが…中身があればいい

 

「…君はもしかしたら」

「なんですか?」

「…いや、なんでもない」

 

喉まできていた言葉をぐっと飲み込む、エド少年はもしかしたら…

 

「よし、急ぐぞエド少年!早く取って帰って寝るぞ!」

「は、はい!」

 

もう時刻は夜中の1時だろうか?潜入にはもってこいだ

俺とエド少年は歩みを進める

 

────────────────────────

 

町が見えてきた、俺は近くの土に水筒の水を垂らし泥を作る

 

「カクロ、ちょっとだけ我慢してくれよ?」

『ニャー…』

「そう落ち込まないでくれ、お前が綺麗に輝くからいけないんだろう?」

 

泥をナイフ形態になってもらったカクロの刀身に入念に塗り全体を塗れたか確認する、どうやら大丈夫そうだ

 

「あの、それは何を…?」

「ん?あぁ…光が刀身に当たって反射しないようにな、愛用してたナイフには反射対策してたんだが…」

「なるほど…けどカクロさん?は嫌がってましたけど」

「泥塗られる気持ちは分からないが普通は嫌だろう…カクロも女の子だし」

 

少しだけの辛抱だ、我慢してほしい…日本に帰ったら労わってやらないと

 

「さて…エド少年、これより潜入任務の説明をさせてもらおう」

「は、はいっ!」

 

雰囲気を変えてエド少年を見る、突然雰囲気が変わったことによりかなり驚いていた…もしかして俺仕事中もあんな感じだと思われてるのかな?まぁ…否定はしないけど…

 

「第一目標は魔導書確保、第二目標は超人達と接触する、第三目標は敵戦力偵察…以上の3つを目標にしていく」

「み、3つも…!?」

「まぁ最悪魔導書さえ確保できれば問題はない、超人達も強い…俺達が心配する必要はない」

 

須郷、緋彩、翔太郎、誠、青葉…あの面々がそうやすやすと負けるのは考えられない、Aのようなのが現れない限り

 

「エド少年はどうする?今ならここに残って待つか戻るか選べるぞ」

 

そう言った瞬間、エド少年はビクッと肩を揺らしオロオロとし始める

内心逃げたくてしょうがないのだろう、そりゃそうだ…突然ゾンビ現れて魔術師現れて町から逃げて…普通なら精神的に参ってしまうだろう、だがエド少年は俺達に迷惑をかけないようにか我儘を言わない…歳は十代後半っぽいが我儘の1つは言いたい筈だ

 

「…どうする?」

「ぼ、僕は…行きます!僕だけ何もしないでただ怯えて隠れるなんて嫌なんです!」

「…そうかい、なら気を引き締めて俺の後ろにいろよ?お前は魔導書の確保だけを考えていればいい」

「はい!」

 

いい返事だ…もう少年とか付けるのは失礼だろう、エドの方を向き1番近い家屋壁に指を向けナイフを構えながら壁に一気に向かう

エドも遅れないように急いで走ってくる…足音が出ないよう場所を選んで走ってるのは良い判断だ

 

「…エド、できるだけ壁から体を離すな…見つかりそうになったら隠れろ…いいな?」

「は、はい…頑張ります」

 

小声で確認する、心配する必要はなさそうだ

壁から壁へ…人の目がなさそうな道を進みエドの指示で家を目指す、ここまででゾンビは見当たらない…どうやら街中には配置してないらしい

 

「…(町にゾンビがいないのは何故だ?拠点にしてるなら守りたい筈だろうに…)」

 

配置しない理由が何かあるのかもしれない、流石に理由は分からないが…敵の思惑がよく分からない…

 

「カシワザキさん、あそこです」

 

遅れてやって来たエドが指を向ける、そこそこ大きい家が1つ

 

「…どこに置いてあるんだ?」

「えっと、僕の部屋に…ですけど昔ダンボールに入れたので探すのに少し…」

「まぁ、俺が出入口を見張っていれば大丈夫か…よし、行くぞ」

 

周囲に人の気配がないか確認し一気に玄関へ到着、鍵がかかっておりピッキングを開始する

焦る気持ちを落ち着かせ慎重に音を出さないようにゆっくり鍵を開け扉を少しだけ開け中の様子を確認…誰もいないようだ

 

「よし、俺は玄関にいるから何かあったら俺を呼べ…それと時間はかけるなよ」

「は、はい」

 

中に入り自分の部屋に向かっていくエドを見送り俺は中に入って扉を閉める、念の為鍵をするがいつでも開けれるよう手を添えておく

 

「さて…今のうちに装備を…」

 

警戒しつつ、装備を確認する

まずカクロ…今は通常の姿になってもらっている

猫神の子の恩恵を受けるには俺の魔力を使う為乱用ができない

 

次に拳銃…アメリカ特殊部隊が所持してたのを借り装備している、日本製よりも威力は高くアタッチメントも豊富だ

しかしアメリカでは個人個人にカスタマイズされており使い勝手は良くない

 

他にはこっちに来る時に装備していた各種便利品とトランシーバー…大体は水に濡れてダメになったがピッキングツール等は生きていたのは幸いだった

 

最後はスタングレネードとスモークグレネードを何個か…

手榴弾は日本で使う機会がそこまでないので所持していない

 

愛用のナイフがない、カクロも拳銃も使うには場面が限られる上に拳銃はそこまで得意じゃない…最悪脅し用だ

エドが帰ってきたらそのまま洞窟に戻り明日に備える予定だ

 

「…あいつらは無事だろうか」

 

小生意気ながら日本が誇る超人達…今は確か夏休みだった筈だ、学校は大丈夫だろうがこんな危険な事に巻き込むのは申し訳ないと思う

 

「戦力になるとは言えどあいつらはまだ若いしな…」

 

学生という身分にも関わらず、この世界の裏側とも言える

場所に連れてきてよかったのだろうか?せめても学生時代くらいは謳歌させてやりたい…

まぁ俺らが馬車馬の如く働けばいいだけか…

 

「たっくよ………ん?」

 

ふと、拳銃の弾数を数えていたら通路方面から気配を感じた

エドかと思い振り向く

 

「……あー、君はエドワードの妹さんかな?」

 

そこに立ってたのは黒の長い髪を背中に纏めた少女だった

嫌な予感がして扉に手を置きながらカクロにナイフ形態になってもらう

少女は何も言わない、薄暗い場所に少女が立ってるだけで

恐怖を感じる…ただ自分がビビりだけではなく少女から漂う濃い『魔力』が俺の精神を揺さぶるように侵食してくる

 

『自らやってくるとは愚かだ、苦しみながら死ぬといい』

 

少女の口から出た言葉は機械的な感情のない言葉だった…

てかやばい!

咄嗟に玄関の扉を開け外に転がり出る、俺が立っていた場所には視覚できるほどの魔力が圧縮するように漂っていた…

あのまま留まっていたら精神を壊されるレベルの魔力が俺を殺してたろう

 

「…う、嘘だろ…?」

 

外には誰もいないはずだった、少なからず来た時には…

だが今は様々な場所からゆっくりと接近してくる影…ゾンビの群れだった

 

「クソッタレが!」

 

エドを回収して逃げようにもあの少女がいる、行くには危険過ぎる

 

「このままいてもジリ貧なら…カクロ!」

『ニャニャ!』

 

一気に魔力をカクロに送り恩恵を受け取る、俺が今できることはただ一つ

 

「撤退っ!」

 

どっかのヒーローや勇者や超人ではない俺ではエドを救出するには戦力不足だった、様子を見て潜入するが最悪町にいるはずの超人達…もしくはケイト達を呼びに行かなければならない…ただまだ総力戦には早い

 

「…魔導書でどうにか生き延びてくれよ、エド」

 

道を阻むゾンビの足を蹴り転倒させ森を目指す、木を登る知性があるか知らないが耐えるとしたらあそこだろう

俺はゾンビを蹴散らしながら撤退する

エドが上手く生き延びる事を信じて

 

───────────────────────

 

「えーっと…確かここに置いた筈…」

 

ダンボールを出しては中を開け魔導書を探す、もう何年も前の事だからか奥の方に入れてしまったのかもしれない

 

「急がないと…カシワザキさん待たせてるしなぁ…」

 

自分とほぼ同じ身長の日本人、頼りになる人だと思っているが同時に怖いとも思っていた…突然現れたケイトも同じだった…あの人達はエイレーネーという組織の人らしい、正義の…超人達等を助けたりしてるらしいがどこか彼らは

 

『正気ではない』

 

そう思ってしまう事があった、理由はない…ただの勘だった

確証もない理由で怖がっては相手に失礼だが意識してないのに彼らを恐ろしく思ってしまう

 

「…けど助けて貰ってるのにとやかく言えるわけないし…」

 

もやもやする考えを振り払うようにダンボールを出しては開けての繰り返し…………………部屋の入口に誰かが立ってるのに気づくのが遅れてしまう

 

「うわ!?だ、誰!?」

 

頭の中ではしびれを切らして柏崎が来たのかと思った、だが目の前にいたのは男ではなく

 

 

 

 

 

 

 

「君…は…」

『……………』

 

目の前には昔と変わらない姿の少女が立っていたさ




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