ファースト・オブ・バレット   作:パルバール

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第85話『ピエロの魔術師』

暗い部屋の中、1人の男は顎に手を当てて考えていた。

 

「『Z』さん、どうした?」

 

思考してる男…Zは視線を向けるとピエロの服装で微笑みのピエロのお面をしてる男が立っていた。

 

「『K』か、いい所に来た…今すぐアメリカに行け」

「仕事で?」

「そうだ、Nが苦戦してるようでな…最悪お前が『儀式』を引き継げ」

 

Zはそう言うと近くに置いてあったワインを1口飲む。

Kは恭しく頭を下げ、背を向け部屋を出る。

 

「仰せのままに…」

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

ひと吹きの風が花を揺らす。

 

2人の人間の髪が風で揺れる。

 

1人は二十代の女性、1人は十代後半の少年。

 

少年は本を広げじっと動かない、また女性も動かない。

 

膠着状態が続く中…強い風が吹き時間が進み出したように2人は口を開く。

 

『『酷使せよ!衝撃!』』

 

少年…エドワードと女性…Nから見えない強い風がぶつかったかのように2人の中心で衝突した痕跡だけが残る。

Nは落ち着いた顔だがエドワードはビビり散らかしていた、本には名だけ書いてあり効果や何が起きるかは書いてないのだ。

来る道中でそれっぽく最初のページに書いてある分かりやすい題名だけで選んでいた為に一瞬の油断が生じる。

 

『酷使せよ、腐敗の風』

 

Nは横投げをするように手を振る、すると虚空からどす黒い霧のようなものが湧き出て風に乗るようにエドワードに飛んでくる。

 

「っ!『こ、酷使せよ!障壁!』」

 

黒い風はエドワードを避けるように左右に広がり後方へ流れていく、風が当たった木々がジュグジュグと音を立て広がり数本の木があった場所は腐った木片の塊に変わる。

 

「『酷使せよ!衝撃!』」

 

対抗するように呪文を唱えるがNは見えてるようにサッと避け攻撃は避けられてしまった。

 

「な、なんで…?!」

「…ふふ…貴方まだ呪文を使い慣れてないようね、目線でバレバレ…初級の魔術で私に対抗しようなんて舐められたものね」

「…っ」

 

本には様々な呪文が書いてある、だがエドワードは使えない…と言うよりも使えるか分からないでいた。

衝撃の呪文や障壁は安易に想像できたが他の呪文はどういったものか分からない、もしかしたら先程のNが使った呪文があるかもしれない。

エドワードの目標はただ一つ、目の前の女性…を助ける事だった…だがもし彼女を殺してしまう程の呪文を使ってしまったら?

 

「怯えてるの?苦しんでるの?貴方が望めばその苦しみを解放してあげるわ」

「ぼ、僕は苦しんでなんかない…!」

 

そう言ってエドワードは本を開く、少しずつ体は脱力感を感じつつある…早急に『儀式』を見つけ破壊しなければならない…が、周囲を見ても儀式の道具など見つからない、あるの花だけ。

 

「…(どこかに…どこかにあるはずなんだ…あの子が嘘を言ってるとは思えない…!)」

 

自分だけが知っている情報、柏崎達には知られてない事…

エドワードにとって彼らは強い人達だった、だがそれが言えない原因であった。

彼らが目の前にいるNを殺してしまう可能性があったからだ、それだけは阻止しなければならない為に1人で単独行動している。

 

「…(どこかに…どこか…に…?)」

 

ふと、ある事に気づく。

エドワードはジリジリと左に移動するとNも対極線上になるように移動する。

近づくと呪文を使い、離れると近づかずその場に止まる。

 

「…!(多分…間違いじゃなければ…!)」

 

イメージを膨らませ呪文を口にする。

 

「『酷使せよ!衝撃!』」

 

地面から爆発させるようにイメージし、発動させる…すると一気に花びらが舞散り目くらましのように視界を覆う。

視界を遮り、エドワードは一気に駆け出す…目指すはN。

突然の目くらましにたじろぎながらもNは吹き飛ばそうと呪文を唱えようとするが…

 

「『酷使せよ!衝撃!』」

 

エドワードの呪文が先に発動し、Nの真下の地面が爆発するように膨れ上がり土埃が吹き荒れる。

 

「くっ…!『酷使せよ!突風!』」

 

視界を確保する為に風を起こし土埃と花びらを吹き飛ばす。

覆われた視界が晴れる…そして少年の姿は無く、Nの横を通り過ぎて地面に剥き出しになっていた手のひらサイズの『箱』を掴み持ち上げる。

 

「…や、やめろ!」

 

Nが必死の形相で向かってくるのを横目にエドワードは思いっきり箱を近くの木に投げつける。

箱は脆かったのか木にぶつかると蝶番が壊れ中身が零れる、中にはどす黒い液体…血液が入っており外気に触れた瞬間溶けるように地中に消えていってしまった。

 

「あ…あぁ…!あああ…!!!」

 

Nは苦しそうに呻き、地面に膝をつく。

自分の体を両手で抱きしめるように二の腕を掴んで痙攣を起こす。

 

少しずつ、空に光が差し込み始めた…『夜』が終わろうとしている。

 

「やった…やった!これで皆…!」

 

街の人々、柏崎達、そして目の前にいる人を救える。

震える手を握り、Nを見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぁ…ぐっ…あ…あぁ…」

 

Nは苦しそうに呻いていた…理由は明白だった。

彼女の体から『腕』が生えていて、その腕は激しく脈打つ『心臓』を掴んでいたからだ。

 

「んふふふ、『N』…仕方ないから私が後を続けてあげましょう、儀式を継続する」

 

勢いよく腕を引き抜き、Nはゆっくりと地面に倒れる。

Nの真後ろにいた人物はピエロの服装をしており微笑みのお面をしていた。

 

「さぁ、新たな母体と共に広がれ…『蘇りの儀式』」

 

少しずつ戻りつつあった空は、元に戻り…更に闇が広がっていく。

 

「あ…あぁ…」

「ん、誰で?んー…あぁ、抵抗する方かな?どうせ屍で蘇りますし殺しておきましょう」

 

そう言ってピエロの男は右手をエドワードに向ける。

 

「『酷使せよ、パレード』」

 

男の右腕がぐにゃあ…と歪む、エドワードが瞬きするとそこは楽しげに踊る人々の姿があった。

全員が幸福そうに笑い、何かを祝っている。

激しい音楽が流れてきた…

 

そして人々は『一斉に自殺を始める』

 

ある者達は喉元を切り裂き、建物から身投げをして。

ある者達は順番にナイフで相手をメッタ刺して、されて。

 

全員が『幸せそう』だった。

そしてエドワードの手には包丁があった、『優しい人が渡してくれた』のだろうと考え周囲の人に同調して包丁を首に添える。

 

 

 

 

 

『エドワード!ダメ!』

 

 

 

 

突然の声にハッとして頭を振り、頭痛のする頭の痛みを紛らわし前を向く。

 

「あれ?どうやって抜け出してきた?君みたいな雑魚魔術師には打ち消せないはずなんなけどなぁ…となると」

 

ピエロの男は苛立ちげにNの方を向くと右手をエドワードに向けて倒れていた。

 

「…この裏切り者がっ!」

 

そう言ってNの体を蹴る、面のせいで表情は見えないが相当腹立っているのかさらに追い討ちをかける。

 

「誰のおかげで魔術師になれたと思ってる!Zさんの手を煩わせてやがって!お前のせいで俺の仕事も遅れてんだよ!反省しろ!」

 

何度も何度も蹴り、時には何かが折れる音が響く。

 

「…ぁ…や、やめろ!」

 

止めようとピエロの男に近づき体を掴む。

が、ピクリとも動かない…まるで1本の大木を動かそうとしてる感覚がした。

 

「邪魔すんじゃねぇ、何も出来ない奴が」

「な、何も出来ないけど…僕だって何かしないといけないんだ!」

「お前1人がいた所で何も変わらねぇんだよ」

 

裏拳でエドワードの顔面を殴り、エドワードは地面をバウンドしながら飛んでいく。

鼻は折れ、血が止まらず軽く脳震盪が起きる。

 

「これが現実だ、カスがいた所で何一つ意味はない」

 

エドワードに右手を向け、諭すように言う。

朦朧とする視界の中、無力な自分が悔しくなる。

視認できる程集められた魔力を見ながらエドワードは後悔した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか、だがエドワードのおかげで良い事もあった」

 

何かが高速でエドワードの横を通り過ぎ、ピエロの男を蹴り飛ばす。

吹き飛んだピエロの男は驚きながらも受け身をとり体勢を立て直す。

 

「ふぅ…間に合ったか…」

「…か…柏崎…さん…」

「エド少年、相談してから行動して欲しかったが…その話はこの戦いが終わった後にみっちりとさせてもらおう」

 

1人の小さな男がナイフを逆手に持ち、ピエロの男に立ちはだかる。

 

「うわっ、なんだこのピエロ…サーカスに帰れよ」

 

柏崎悟、魔術師戦に参戦する。

 

 

―――――――――――――――――――――

 

爆撃開始まであと僅か。

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