ファースト・オブ・バレット   作:パルバール

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第93話『作られた者』

夜道の住宅街を走る一行は追っ手が向かってきている事に気づきながらも手が出せず難儀していた。

 

「おい翔太郎!てめぇが透明になって襲撃するじゃ駄目なのか!?」

「雅弘さん、それは悪手ですよ…翔太郎さんの力は体力の消費が激しい上に相手はエイレーネー…どこからまた増援が来るか分からない以上、下手に戦って消耗するのは避けた方がよろしいかと」

「…クソッ!!!」

 

暗く、そして不気味な程静かなこの場に耐えきれないと言わんばかりに須郷が叫び、それを青葉が宥める。

戦えないエン、そして未だに翔太郎に背負われ返答が出来ない程にぐったりとしている緋彩がいる今戦うには守るものが多い。

 

「ならお前は何か出来ないのかよ!花村!」

「手持ちの爆弾があの2階爆発で使い切ってね、貴寅が合流するのはしばらく先だろう。この状況では足を動かすしかない」

「花村さん、私達は今どこへ向かってるのですか?」

 

息が少し乱れてる青葉が前を走る花村に聞く、闇雲に走り回ってるのなら隠れた方がいいのでは…と。

 

「そろそろだ、俺達の協力者がここ辺りで待機している」

「どこにもいる気配はないな、俺の予想が正しければ追っ手にもう追いつかれる」

「クソっ…翔太郎、最悪全員ぶっ飛ばすぞ」

「追いつかれた時点で蜂の巣にされる可能性が高いが…無抵抗よりはマシだろう」

 

抱えていたエンと緋彩を青葉に渡して戦闘態勢をとる須郷と翔太郎は自分達が来た道を見る。

奥から闇に紛れ向かってくる数人の人影が僅かに見え拳を構える。

 

「青葉ぁ!エンと緋彩、ついでに花村と物陰に隠れとけ!」

「ぐっ…おも…くはないですよ?緋彩さん、いやぁ…軽いなぁ…はは…」

「足が震えてるぞ超人」

「花村さん、超人と言えど皆須郷さん達みたいに力持ちじゃないんです…」

 

周囲に気を配りつつ、近くのブロック塀に身を隠す4人を確認し須郷はホッと一息をつく。

 

「雅弘!」

「ッ!震波拳ッ!」

 

咄嗟に呼ばれ技を繰り出す、空気を震わせ飛んでくる物体の勢いを失速させ地面に落とす。

飛んできた物体は弾丸であり、奥から軽い音と共に弾丸が無数に飛んでくる。

 

「あいつら…ッ!見境無しか…!?ここ住宅街だぞ!」

「自分達の存在が露見しても構わないって覚悟か…?」

「柏崎ならそんな事しねぇぞ…!」

「あいつらは俺達が知ってるエイレーネーの奴らとは違うらしいな…雅弘、これ以上騒ぎが大きくなる前にやるぞ」

「頼むぜ翔太郎!」

「任せろ、雅弘」

 

互いの拳をぶつけ翔太郎は透明になり、ブロック塀の上に立ち屋根の上に登ってエイレーネーの戦闘員達へと近づく。

須郷は拳を振るい、飛んでくる弾丸をどうにか落としてはいるが前に進む速度は早くはない。

 

「(遠距離攻撃をするにもこの猛攻じゃ無理だ…翔太郎急いでくれ…!)」

 

遠くから「本当に人間か!?」「ば、化物…!」という声が聞こえる、まさか銃弾を全て背後にも行かせず手前で止めるとは思わないだろう。

その間にも翔太郎は戦闘員達に近づき、跳躍し1人目をかかと落としで意識を刈り取り回し蹴りで2人目を始末する。

 

「懐が…がら空きだ」

「よし、今行くぞ!」

 

内側から荒らされ須郷から意識が外れた瞬間を狙い須郷は一気に距離を詰め戦闘員の残りを1振りで塀に叩きつけ無力化する。

 

「おいおい、俺が攻撃する必要無かったようだな」

「てめぇが意識を外してくれなけれぱ俺が穴だらけになってたんだよ、ありがとうな」

「まぁ今は戻って場所を移動しなけりゃな…」

 

と、話しているとさらに奥から数十人規模の気配がして2人は冷や汗を流す。

 

「嘘だろ…そこまでする程俺達を殺してぇのか…?」

「恐らくだがそれ相応の理由があるんだろうが…何か身に覚えはあるか?」

「ねぇよ…エイレーネーって所を怒らせる事はしてねぇはずだが…」

「………考えてもしょうがない、次の連中を倒して戻るぞ」

「数…ちと多かねぇか?」

「あの人数に追われるのは勘弁だ」

 

拳を構え、透明になる為に集中する。

少しずつ銃を持って向かってくるエイレーネーの戦闘員を視認し、駆け出す。

向かってくる超人達に気づき銃口を向けトリガーに指をかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、両者の間に何かが落下し須郷達と戦闘員達は動きを止める。

コンクリートの道路を破壊する程の速度で落下してきたそれらはゆっくりと着地体制から立ち上がり着地と同時に巻き起こった煙から姿を見せる。

紺のローブに背丈やローブから見え隠れする姿から若者のような雰囲気を感じる…その姿に須郷と翔太郎は見覚えがあった。

 

「…ッ!てめぇら…あの時の…!」

「ここにもいるのか…」

 

アメリカの時、翔太郎を退け緋彩と誠を1度は倒したローブの者達が5人。

動きが起きず膠着状態になって場を最初に動いたのはローブの者達だった、5人中2人がエイレーネーの戦闘員達を襲い初め、残りの3人が須郷達の方へ走り出す。

 

「う、撃て!撃て!」

「ぎゃあああああああああ!!手が…手があぁぁぁ!」

 

銃を向かってくるローブに乱射するが当たる気配はなく簡単に接近され拳1振りで戦闘員の1人の腕があらぬ方向へと千切れ飛んでいく。

 

「雅弘!こいつらお前程じゃねぇがパワーがある!気をつけろ!」

「ハッ!俺以下なら恐れる程じゃねぇ!やるぞ翔太郎!」

 

拳を構え、殴りかかってくるローブの拳を受け流しその腹に渾身の一撃を叩きつけ吹き飛ばす。

吹き飛んだローブは威力を殺しつつ着地し、拳をまた構える。

その時、須郷は自身の拳…ではなく腕に違和感を感じる。

まるで数時間腕を酷使し、さらにトレーニングをする時のような脱力感。

 

「クソっ…なんだ…力が入らねぇ…」

「雅弘!1人抜けたぞ!」

 

1人のローブと激闘を繰り広げている翔太郎からそんな声が聞こえ振り向くと最後のローブが2人を抜いて奥にいる青葉達に向かっている姿が見える。

 

「こんの…!」

 

追いかけようと体を反転させた瞬間、背後から殺気を感じ避けると吹き飛ばしたはずのローブが殴りかかってきており外れた拳は地面を殴り、コンクリートを粉々にする。

 

「邪魔すんじゃねぇ!」

 

ローブに攻撃するが、避けられ反撃をくらい時間がかかる。

その間にもローブは青葉達に近づく。

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 

 

「なるほど、戦えない人達を狙うとは恥ずかしくないのですかね?」

「あ、あおば!どうしよう…」

「花村さんが戦えれば万事解決なんですがね?」

「私は暴力が苦手でね」

「使えないですねー」

 

向かってくるローブに立ち向かうように青葉とエンは立つ。

 

「エンさんがいるのは心強いですね」

「わ、私だって戦えるもん…!」

「そうですね、ですが無茶をしないように」

 

エンの周囲に紫色のオーラが漂いはじめ、青葉はカメラを構え戦闘態勢を取る。

ローブは超加速で向かってきており1番近くにいる青葉に拳を振り上げ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…『アキラ』…?」

 

 

そんな声が聞こえ、ローブはピタッと動きを止める。

声は青葉達の背後……塀を背もたれにしぐったりとしていた緋彩が虚ろな目で青葉達の方を向き口を開いていた。

だが呟いた後気を失い眠ってしまう。

 

「…なるほど?貴方はアキラ…明?さんと言うのですね?緋彩さんが何故知ってるのは分かりませんが恐らく知り合いもしくは旧友といった所でしょうか?」

 

青葉の言葉にローブはたじろぐと同時に青葉は勝機を見出す。

 

「(少なくとも動揺してる、時間を稼げば稼ぐ程こちらが有利になる…)貴方は…」

 

優勢になりつつある2人を確認し、時間を稼ごうとした瞬間

ローブの体が一瞬にして消え横の塀を破壊し民家の庭に消えていく。

 

「おや、無事のようですね皆さん」

「貴寅、あまり派手な音は出すな…流石にそれはカバーできんだろう」

「戦いにくいものですね、私達が気を使うのではなく…あちら側が頑張ってもらいたいものです」

 

中段蹴りの体勢の貴寅が困ったような顔をする。

先程の破壊音が原因か、様々な家から物音や声が聞こえ始める。

 

「…不自然な程にここ辺りの住民に気づかれませんでしたが…何か理由があるようですね」

「はい、っと…お迎えが来たようですね」

「戦闘が終わるのを待っていたが騒ぎになってしまった以上来ざる負えなかったのだろう」

 

すぐ先の十字路、青葉達の方へスライドドアが向くように来た1台のワゴン車が停まる。

 

「行きましょう」

「まっ、まって!まだすごう達が…」

「…俺達ならもう来てるぜ…あいつらすぐに消えやがった」

 

多少の擦り傷を負いながらも戻ってきた2人、青葉が戦闘が起きた場所を見ると戦闘での破壊されたものだけが残り

人っ子一人いなくなっていた。

 

「私達も急ぎこの場から離れましょう、急いで」

「…あぁ、青葉…緋彩は大丈夫か?」

「はい…ですがまた気を失ってます」

「エン、お前の力で原因が何か分からないか?」

「うん…見てみたんだけど普通だったの…」

「…翔太郎、今はどうしようもねぇ」

 

須郷に促され、翔太郎は緋彩を抱えワゴン車へと乗り込む。

そして全部が乗ったのを確認し車はその場から逃げるように移動していく。

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

とあるホテル、そこに超人達が乗った車は停り降ろされ各個人へと部屋が割り振りされる。

他に客は居ないらしく、どこか寂しさを感じる廊下を歩きながら青葉は緋彩の部屋の扉を開く。

 

「皆さん、花村さんと貴寅さんが呼んでます」

「あいつらが…?」

 

中には寝ている緋彩、もたれ掛かるように寝てるエンと椅子に座り何かを考えていたのか静かにしていた翔太郎と須郷がいた。

 

「はい…重要な事だと」

「重要…か、行くぞ翔太郎」

「……いや、俺はここに残る」

「…分かりました、行きましょう雅弘さん」

「あ、あぁ」

 

緋彩を眺めている翔太郎を残し、2人は部屋を出て廊下を歩く。

 

「しかし、見た限り俺達の貸切みてぇだが…エイレーネーの所有物か?」

「私達は追われの身ですよ?…まぁ追われる筋合いはないのですが」

「そうだな…何か知ってるはずだ、納得出来る理由が聞ければいいが…」

 

廊下を歩き、花村の部屋の扉をノックすると鍵が開き花村が扉を開ける。

 

「…道華翔太郎はどうした」

「翔太郎さんは緋彩さんを見てます、私達2人でも構いませんよね?」

「……入れ」

「では失礼して」

「邪魔するぜ」

 

中に入りまず目に入るのはベットの上で瞑想してる貴寅と机の上に散乱してる火薬と配線等の小物が山ほど積まれていた。

 

「……………来ましたか、どうぞおくつろぎください」

「俺の部屋だがな」

 

仏の顔のように穏やかに言っていた貴寅の頭にチョップし、痛みに悶絶する貴寅を横目に須郷と青葉は椅子に座り真剣な表情をする。

 

「…花村さん、私達が何を聞きたいか…分かりますね?」

「分かってる、順を追って説明するが…まずこれを約束しろ」

「約束だと?」

 

花村は須郷、青葉の目を見て人差し指を立てる。

 

「この話を聞いても、取り乱すな…そして考えろ」

「考えろ…だと?」

「あぁ、これからのお前達の立場というやつを…だ」

「…話を続けてください、私達は常に自分達の道を選んでます…選択は聞いてからでも遅くはない」

 

足を組み、花村の目を見る青葉。

しばらくお互いの腹の探り合いをするように見つめ合って花村が先に折れてため息を吐く。

 

「一応信じるかはそちらに任せるが俺と貴寅はお前達の手伝いをする…言わば味方と捉えてもらってもいい」

「…柏崎さんから私達を助けてくれた事を考えて、今は信じるとしましょう…ですが私の目は誤魔化せませんのであしからず」

「超人は敵に回したくないと俺は考えている、それに貴寅がお前達を気に入っているしな」

「おや?私言いましたか?」

「見れば分かる」

 

須郷をそっちのけで話し始める3人を見て、須郷は咳をして注目を集める。

 

「…話が少ズレてねぇか?」

「そうだったな、ではまず…お前達は今3つの組織から狙われている」

「エイレーネーと、あのローブの人達の所でしょうね」

「あいつら人並み以上のパワーを持ってやがる…何もんだ?」

「まぁ落ち着け、お前達は『エイレーネー』『神聖連盟』…そして『日本政府』だ」

「…は?」

 

花村がサラッと言った2つの新しい組織名に須郷は困惑する。

 

「今俺達に協力しているのは『神聖連盟』…そして襲ってきたローブ達は政府に作られた超人だ、エイレーネーはそれら諸共消すつもりだ」

「お、おい」

「そして…それら全てはお前達の仲間…涼風緋彩を狙っている」

「おい!何のことだ!話が飛びすぎて…」

「雅弘さん静かに…花村さん、緋彩さんが狙われる理由と今の不自然な体調不良…関係があるんですか?」

 

青葉は手帳とペンを取り出し、花村へ質問をする。

 

「…俺達が今知ってる情報としては涼風緋彩は今超人の能力に心身が追いついてない状態だ、このままでは超人の力に食われ死ぬだろう」

「なっ…!」

「そして、涼風緋彩はお前達とは違う」

「私達と違う…?」

 

腕を組み、花村は諭すように口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「涼風緋彩は政府によって作られた『人工超人』で数万の命から生まれた完成された人工超人の1人…つまり、涼風緋彩は作られた超人という訳だ」

 

花村から出た言葉に須郷は固まり、青葉は頭を抱える。

 

 

 

 

 

 

真実と混沌とした苦しい戦いの火蓋が切って落とされる。

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