空から落下して落ちている感覚に襲われ緋彩は冷や汗を流しながら飛び起きる。
早まる心臓の鼓動を落ち着かせながら周囲を見ていると見慣れない壁にふかふかのベット、どうやらどこかのホテルらしいと理解する。
「……………」
「あ…翔太郎…おはよう」
「…あぁ」
横を向くと椅子に座り足を組んだ状態で寝ていた翔太郎が目も開けずに返事をする。
「…えっと、ここどこ?」
「どっかのホテルだ、お前の意識が無くなってからここに身を置いてる…気分はどうだ」
「え?うーん…大丈夫…だと思う」
「…そうか、下であいつらが待ってる時間の筈だ」
「あ、そうなの?」
「早く降りてこいよ」
そう言い残し、翔太郎は部屋を出ていき部屋の中には緋彩だけ残る。
しばらくしてベットから降りて伸びをして筋肉を解しながらぼーっと考え事をする。
「…何か…大事なことを、忘れてる気がする」
喉まで出かけている何か、それが分からないまま緋彩は服を着替え仲間達の元へと向かう。
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人の気配がほとんどしない廊下を歩き、ホテル内レストランに入るとエンの頬を揉んで遊んでいた青葉が店内に入ってきた緋彩に気づき手を振って呼ぶ。
「緋彩さーん!こっちですよー!」
「…エン大丈夫かお前…」
「すごうぅ…」
涙目になっているエンを見て苦笑しつつ緋彩は席に着く。
花村や貴寅、青葉、エン、須郷、翔太郎もおり全員が一斉に食事を開始する。
「おい緋彩おめぇもう大丈夫なのか?」
「大丈夫だよー、なんか情けない姿見せちゃったかな?」
「体調悪ぃならよ…あんま無理すんなよ?」
「ごめんごめん、もう大丈夫だから」
「だといいが…」
疑い深く緋彩を見ながら巨大ステーキを頬張り喉に詰まりかけている須郷を見つつ青葉は花村に話題を振る。
「しかし、追われの身である私達ですが…普通に考えてこんな所即見つかるのでは?」
「しばらくは柏崎の妨害で見つかることはないだろう」
「何…?」
柏崎の名が出てきて翔太郎は食事の手を止めジロリと花村を睨む。
「なんであいつが出てくる」
「今回俺と貴寅がお前達の手助けをしているのは支部長からの命令だからだ、そして柏崎もその1人」
「あぁ?けどよ、あいつ俺達を殺す気で来てたぞ」
「今回の件で他の幹部達が猛反発してな、必ず超人達を始末する必要がある…と」
「…?何故ですか?昨夜聞きそびれましたがエイレーネーの方々が私達を狙う理由が分からないのですが」
「…?なんの話してるの?」
小難しそうな話が始まり翔太郎に聞く緋彩。
青葉、翔太郎、花村、そしてエン(須郷は気づかなかった)はアイコンタクトをして話すべきかを確認し合ったが翔太郎が首を振りまだ緋彩が何者であるかを言うのは遅らせる事になった。
そして気づけない須郷は何度か視線が集まり困惑。
「あー、今回の敵は超人を作り出す超人が現れている…だがそれらを悪用し…えー…超人を兵器として扱おうとしている者達が政府の中にいてな、昔にもそれを行いエイレーネーに大打撃を与えた事がある」
「いつの話ですか?」
「10年前の話らしい、俺達は知らないが柏崎が当時戦っていたらしい」
「あ、ちょっと待ってください」
そう言って青葉は手帳を取り出しメモを取り始める。
「どうぞ」
「あ、あぁ…その時にエイレーネーはその研究をしていた研究所を徹底的に破壊した…らしい」
「ですが現に襲ってきてるという事は」
「また研究が始まっている…そして…あー…幹部達はお前達の事も疑い始めている」
「俺達が敵だってか?」
「そうだ、組織の纏まりを考え最低限の逃げる手段と人員を護衛として預け今回の裏を取るまで潜むつもりだ」
話疲れたのか花村は飲み物を飲み一呼吸置いて超人達を見る。
「俺や貴寅はあの組織に未練はない、この件が解決しても戻るのは厳しいだろう」
「私としては芦川さんという人には会っておきたかったですね」
「誰だそいつは」
「私達が最初配属される予定だった隊の人ですよ」
「…興味無いな」
「おっと、話を続けても?」
コホンと咳をして時間を置いて青葉は口を開く。
「現状エイレーネーの方達は私達を狙っている、そしてその政府の方達も私達を狙っている…?のは分かりますが…」
「そうだな、おい昨日言ってた…あの…なんだったけ青葉」
「『神聖連盟』ですよ、雅弘さん…大層な組織名?ですが私達に隠れ場所を提供してくれるあたり優しい組織なんですね」
「…なんか難しいね、翔太郎」
「そうだな」
ペンを回しながら花村に質問をする青葉、それを聞きながら目を点にしている緋彩はストローでジュースを飲む。
「…なんと言うべきか、俺達に協力してくれいる幹部がいる
そしてその幹部は今日俺達の所に来る予定だ」
「ほう、幹部の方が直々に来るとは相当私達を重要視してるのですね」
「…いや、ある意味そうかもしれない」
「ん?どういう事です?」
「それは私が説明しましょう」
茶碗蒸しを食べ終え会話に混ざってきた貴寅が微笑みながら口を開く。
「まず幹部の方が直々にというのも、神聖連盟は各々勝手に行動してる組織なんですね、だから今回もその人が独断でやってるのでその人が来るしかないのですよ」
「…ん?それは組織…というので…?」
「思想が同じだけの集まりみたいなものですね、彼らは魔のものを嫌い…しかし中には魔も使い方〜…と言ってる者もいれば全ての関連する物人全てを消せという過激派もいます」
「なるほど…なるほど?」
納得しかけ、どうにか踏みとどまり目頭を抑えながらペンを机の上に置く。
「その幹部の人が来るということは、何かしらの見返りを求めてるのでしょうか」
「それは俺達にも分からん、だが…」
「…だが?」
「恐らく巻き込まれるだろうな」
花村はその言葉を最後に喋らなくなり、食事を続ける。
超人達は嫌な予感を感じつつ…食事を続ける。
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昼前、2人の人物がビルの屋上を陣取って休憩をしていた。
「タヌキ、あいつらは無事に逃げれたかな」
「そーだねー、東京に駐屯してるエイレーネーの兵士は優秀ですけどそれでも人間止まりだから捕まることはないんじゃないかなー?」
「だといいが…あー水うめー」
「今日は暑いねー」
真夏のビル屋上は休憩には適してないがここにいる理由が2人にはある為炎天下の中居座っていた。
「タヌキ、それっぽいのはいたか?」
「いやー…まだ感じないねー…隠すのが上手いかここじゃないのか…」
「…もう少し探してくれ、そろそろ見つけないと上がうるさくてな」
「はいはーい」
アイスを食べながらタヌキは集中し丸メガネを付ける。
魔力を細かく視認するメガネと本人の視覚を最大限に引き出しある反応を探していた。
「…微力な魔力4つ…これは違う…」
「人が多いと、魔術の才能があるのがいてもおかしくはないか…やっぱり」
「まーねー、だけど魔術に触れない限りは何も気づかず過ごすよ」
「…やっぱりこの街じゃないのか?」
「これで9つ目だねー、研究所はどこにあるやら…」
柏崎とタヌキが探してるもの、それは超人を作り出している研究所だった。
人工超人、10年前エイレーネーが破壊した研究所の場所には当然いるわけがなく東京全体を探し回っている最中であり
柏崎はとある可能性を感じていた。
「恐らく6席会が関与してる、最高位の魔術師か…はたまた天才か…どちらにせよ魔力が隠せても残留して痕跡はあるはず」
「けど、尻尾どころか痕跡すら見つからないんじゃねー」
「…急がねぇとな、神聖連盟のどこのどいつが関与してるか知らないがあんまりあいつらと関わらせたくねぇ」
「私苦手なんだよねー」
「俺もだ、あいつらスグに噛みついてくるから」
苦い顔をしてこめかみを押さえる。
様々な意見が交差する神聖連盟の幹部達は時によってはエイレーネーの障害になる為交戦する事が多い。
「とにかく、あと10分何も無かったらここから移動する」
「そだねー…熱中症になるよ」
「そこら辺の喫茶店で休憩でもするか…」
「おー、何かおすすめの場所でもあるのかなー?」
「いや、それは…」
「私がお教えしましょうか?お二人さん」
自分達ではない第三者の声が背後から聞こえ、柏崎はナイフを構える。
自分だけではなくタヌキからも背後を取った相手を考え冷や汗が出ながらナイフを声の主に向ける。
「誰だ!」
「私を忘れるとは悲しい、言いましたよね?お前らエイレーネーを皆殺しにすると」
物陰から足音と共にピエロの仮面を付けた男が現れ、2人の前に立つ。
「…おいおい、誰かと思えば口調が安定しない野郎じゃないか?キレて本性出さないように訓練はしてきたか?」
「……貴方達が我々を探っているのは気づいていましたが、魔術師を使ってるとは驚きですね」
「タヌキさんはフリーの魔術師だからねー、君達の事も可哀想とも思わないねー」
「同じ魔術師としては仲間ではないのが悔やまれますね」
「すっごい無視するなこいつ…」
ナイフを構えジリジリと近づき、タヌキもじっくりと視覚的にも紫色の魔力を集めいつでも攻撃できるようにする。
相手に気づくようにしているのは現状でのこの場で戦うのは難しいと判断しての事だった。
「…(タヌキは兎も角、俺はあのピエロ野郎の魔術に対抗するのが厳しい…今の俺では逆に足でまといになる、どうにかしてここは撤退させるしかない)」
アメリカで戦った時の感覚と魔術を思い出しながら自身の実力が相手の力に負けている事を理解し、いつでも戦えるというハッタリを仕掛ける。
「…タヌキ、俺が前に出るから援護を頼む…………おい?」
反応のない相棒に違和感を覚え、目線を後ろに向ける。
タヌキは反応しなかった、のではなく出来なかったのだ。
口を背後から塞がれ背中から刃物で刺されていたせいで。
「…タヌキ…!」
「………………」
咄嗟にその場から駆けタヌキに奇襲を仕掛けた謎の影に回し蹴りをしようとする。
だがその影はタヌキから刃物…クナイを抜き柏崎の方へ突き飛ばす、避けられずタヌキにぶつかる形で柏崎はぶつかりタヌキの頭が頭から落ちないよう手で支え屋上の床に背中で着地する。
「おい!タヌキ!」
「油断…しちゃったよ柏崎くん…」
「くそッ!」
傷が深いらしく、傷からの出血が止まらないタヌキを応急処置しようとするが影からのクナイ投擲の追撃に邪魔される。
クナイを弾きつつ反撃しようとした瞬間、背中からの殺気に気づき手でガードするがそのまま腕がへし折れながらピエロの男の蹴りをモロにくらって貯水タンクにぶち当たり屋上の床に落下する。
「ぐっ…が…」
息が出来ず、肺が動きを上手く行うことができない。
骨が折れたのか身体中が激痛に襲われ腕から白い何かが飛び出ている。
「ふむ、これで大丈夫だろう…流石佐助…優秀ですね」
「……………」
「喋らないのが難点だ、が…残りの敵はあと少しだ、働いてもらいますよ」
そんな声が遠くから聞こえ、屋上からピエロと影の男…忍者装束が姿を消す。
全身の痛みに悶えながら柏崎は体を這いずってタヌキの元に向かおうとする。
「…くそ…がっ…タヌキ…タヌキ!」
何度も呼びかけるが声が帰ってくる事はなかった、気絶してるのか…それとも。
「…最悪だ、まさか…6席会の方が関与してる…とは…」
エイレーネーの兵士達も研究所を探している、だが魔術師が関与しているのなら今の兵士達では太刀打ちができない。
そして何よりも厳しいのは。
「あいつら…が…孤立する…」
超人達には戦力は少ない、柏崎が超人達の支援をしている状態でならイザとなればエイレーネーの兵士との衝突を避けさせる事ができる。
「…全面戦争になる…」
超人達の敵が増える事は負担が増える事に繋がる、神聖連盟は戦力になるのは難しい。
花村と貴寅がいるとはいえ、この東京という地に超人達だけが取り残された形になる。
「……やっべ…意識が…」
遠くなる意識の中、超人達の安全を祈る事しか出来ず
柏崎は意識を手放してしまう。