ファースト・オブ・バレット   作:パルバール

115 / 122
第95話『狂い狂いされ』

 

 

昼ご飯を食べ、満腹になった超人達は神聖連盟の幹部が来る時間まで各々寛いでいた。

ホテルのロビーに警戒も含めた食後休憩をしていた涼風緋彩と道華翔太郎はトランプを片手にババ抜きに興じていた。

 

「翔太郎」

「なんだ緋彩」

「なんでババ抜きなの?」

「人数が足りないからな、青葉達は別の事をしている以上無理に誘うのは難しいしな」

「エンちゃんも雅弘にべったりだからねー」

 

圧倒的に顔に出てしまう緋彩がボロ負けし、表情筋をピクリともさせずに圧勝する翔太郎。

手に持っている2枚のジョーカーを上空に放り投げ全身を脱力させだらりとする。

 

「…緋彩、ちょっといいか」

「ん?どうかしたの?」

「……お前のその体調が悪くなるのはいつからだ?」

「…さ、最近だよ?」

 

うわずった声で下手くそな口笛と目逸らしでバレバレだが、言いたくないのだろうと判断し翔太郎は気づかれないようため息をする。

 

「そうか、体調が悪くなったら直ぐに言えよ?」

「あぁ!そうさせてもらうよ」

 

相棒の見え見えな嘘にチクリとした痛みを感じながら翔太郎は自身で作ったコーヒーを飲む。

 

「そう言えば翔太郎、神聖連盟?の幹部の人ってどんな人なんだろうね」

「ん、あぁ…確かもうそろそろ来るはずの奴か」

「そうそう!どんな人なんだろう…」

「好き勝手やってる組織の幹部だ、自由奔放な奴だろう」

「でも幹部だよー?ボクは誠実な人で優しくて勇気があって…あと凄く強くて真面目で勤勉な人だと思うなぁ」

「どこのスーパーウーマンだ」

 

協力者であり、何かを要求する者であろう幹部を待つ2人の妄想は広がり完璧人間のような人物像が出来上がる。

もちろんそんな人間そうそういないと分かってる2人の他愛のない妄想であるが。

 

「…ん?翔太郎、誰か来たみたいだ」

「気をつけろ緋彩…敵の可能性もある、その場合はお前は上に行って青葉達を呼べ」

「戦えば気づくと思うけどなぁ」

 

ホテルの外からゆっくりと来る2人の人影は少し反射し見えずらいガラスの自動ドアからその姿を表しホテル内へと入ってくる。

 

「あっ」

「どうした緋彩」

「あの人…知ってる」

「なんだと?」

 

緋彩が指を向けた先にいる向かってくる2人の人影、2人も気づきお互いの声が届く距離に近づき1人が微笑みながら口を開く。

 

「おや、涼風緋彩さんですね?また会えるとは奇跡としか言い様がないですね」

「奇跡って言葉好きだよねメアリーたん」

「奇跡と言えば大抵の人が私の姿見て納得するので楽なんですよ」

「悪用!?それは悪用だよメアリーたん!」

「誰も不幸じゃなければそれは良い行動ですよ輝夫さん」

 

漫才を始めたかのように喋り始める2人を呆然と見ていた緋彩と翔太郎に気づき、緋彩が最初に出会ったメアリーがニコッと微笑む。

 

「申し遅れました、私神聖連盟の幹部メアリー・ペリオットと申します、こちらは名もなき豚です」

「とうとう豚にされた!けど一応存在を伝えてくれたメアリーたんマジ神!ゴッド!」

「私は主に仕える信者ですよ」

「あ、いや比喩でねメアリーたん…」

「まぁいいでしょう」

 

どこからか取り出したハリセンで輝夫の頭を軽く叩き翔太郎達の方を向く。

 

「さて、仕事の話をしましょう

他の方も呼んでもらいましょうか」

 

 

 

★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 

ホテルの応接室、そこには須郷雅弘、長内青葉、涼風緋彩、道華翔太郎、エンが各々ある2人の対面する席に座っていた。

 

「…なぁ青葉」

「なんでしょう雅弘さん」

 

目の前のメアリーと輝夫に気づかれないように間にエンを置いてる上から2人は小声で話し始める。

 

「…あいつ何読んでるんだ?」

「…私から見える範囲では『激凸!炎の軟体生物!』…と」

「なんだよそれ」

「さぁ…恐らく同人誌?なのではないでしょうか…本屋で見た事ありませんから」

「カバー付けてるのにカバーが少し外れて見えてちゃ意味ねぇだろ…」

 

花村と貴寅が遅れてやってくると言い、2人が来るまでの時間をつぶす必要がありメアリーと輝夫にもそう伝えるとメアリーは本を取り出し輝夫はノートPCを取り出していた。

 

「輝夫さん、この文はなんと読むのでしょう」

「あぁ、これは『地獄の炎の力でお前をたこわさびにしてやる!』…こいつは何を言ってるんだ…?」

「この作者は勢いと迫力のある文は良いのですが時に表現がよく分からないのが難点ですね」

「けど輝くものがあると思う」

「そうですね、熱意と作品を楽しんで作っているのが伺えますね」

 

本を閉じ、別の本を読み始めた辺りで部屋に花村と貴寅が入って来て全員を見る。

 

「遅れてすまない、貴方が神聖連盟の?」

「はい、神聖連盟…メアリー・ペリオットと申します」

「そして漢の中の漢!竹之内輝夫と言えばこの男ォ!」

「彼はハイブリッド社畜です」

「そう!ハイブリッド社畜…ってメアリーたん!?」

「愉快な方達ですね花村さん」

「…頭が痛い」

 

コントをするように喋り始める2人を見て花村は頭を抱える、また面倒なのが来たと。

 

「さて、皆さん集まりましたし本題に入りましょう」

「本題に入るまでおせぇな!?」

「はいはい雅弘さんどーどー」

「…ボク達どうしよ翔太郎」

「聞いてればいいんじゃないか」

 

花村、貴寅がそれぞれ席に座り…部屋全体にピリッとした緊張感が張り詰める。

エンは怯え、超人達も咄嗟に臨戦態勢をとったがこの緊迫とした空気を作っているのはメアリー、花村の2名がお互い探り合うように鋭い目を交差させた為である。

 

「…早速聞こう、わざわざ俺達に接触しホテルまで用意して何が目的だ」

 

ドスの効いた…と言えど少し厳しめ程度の声で花村はメアリーに問いかける。

メアリーは輝夫に手を向け何かを受け取るとお互いの間にある机の上に受け取った物を花村の前に置く。

それは1枚の写真であり、その写真には…

 

「建物…それも山奥で撮られたようだが」

「はい、そこはとある研究所でして…貴方達…そこにいる涼風緋彩さんが今1番欲しいであろうものがある場所です」

「っ!?ぼ、ボク?」

「おいメアリーって言ったか?緋彩が欲しいものってなんの事だ」

 

木々の生い茂る場所、ポツンの広がる木が生えてない広場にある建物が映された場所…そこに突然名が上がった緋彩は驚き翔太郎は詰めようように身を乗り出しメアリーを睨む。

 

「涼風緋彩さん、貴方は自身の超人としての力を使う時…もしくは最近で体調の不調があるのではないですか?」

「…なんでそれを」

「私は知っているのですよ、貴方は体に心が追いつかず今にも爆発してしまいそうな爆弾のようになってるのです」

「…ボクが…?」

 

なんの事か分からず、だが体調不良は当たってる為冗談とも思えず困惑し頭を抱える。

その姿を見て花村は話を続ける。

 

「メアリーさん、あまりうちの者を困らせないで頂きたい」

「申し訳ありません…が、これは本人が自覚し知っておかなければならない事です」

「………話を続けてくれ」

 

諭すように話され、翔太郎は話の続きを促す。

 

「この建物は超人を研究してる機関の建物であり、超人の心理状況を整える薬を制作し完成しているという情報を手に入れまして」

「…!まて、それは」

「はい、貴方達エイレーネーが探してる研究所です…そしてそれが知られればその研究所は破壊され内部のは全て破壊されるでしょう、薬も含め」

 

話を客観的に聞いていた青葉は自身の情報を整理し始める。

まずエイレーネーは超人達全員と敵対しており話を聞くことはない。

また超人を作り続けているであろう組織もエイレーネー&超人達を始末しようと動いており、こちらも和平は厳しいとされる。

 

「…なるほど、私達はエイレーネーの方達が発見する前に薬を手に入れなければならない、そういう事ですね?」

「はい、その研究所にしかないと考えるとそこを潰されれば緋彩さんは苦しむ事になるでしょう」

「ま、まってくれ!」

 

話がかなりの勢いで進んでいる状況に緋彩は待ったをかける。

 

「ボクが…その薬を手に入れる?のは分かる、だけどなんでそこまでしてくれる?」

「というと?」

「ボクとメアリーさんはあの時会ったくらいでそこまで仲良い訳じゃないし…何が目的なんだ…?」

 

少なくとも現状緋彩が助かる美味しい話だけが来てる状況に危機感を覚える緋彩はメアリーに問いただす。

 

「私は主に仕え、主の方針に従い、また主の名の元に正しき道を歩く事を使命としています…というのは建前でして」

 

メアリーは姿勢を正し花村の方を向く。

 

「今回の件、手柄を私達神聖連盟にしてもらいたいというのが目的ですね」

「手柄…だと?」

「えぇ、この事件の黒幕がいるのは確実です…その身柄を捕まえ渡してもらう、私達は貴方達に隠れ場所を提供する、情報も渡す」

「…青葉」

「はい、メアリーさん少しよろしいでしょうか」

「何でしょう」

 

腕を組み考えていた須郷は青葉を見て呼ぶ、青葉はそれの意図に気づきペンと手帳を取り出す。

 

「まず、断る…というのは可能で?」

「断ってもいいですが、緋彩さんの事をお忘れで?」

「一応聞いただけですよ…まず貴方達の助力は得られるのでしょうか?私達は超人と呼ばれてはいますが未成年というのは変わりないのですよ?」

「人員は私と輝夫さんだけですが?」

「…話になりません、が緋彩さんの為に条件を飲むしかないのでしょう?」

 

青葉の鋭い目に動じる事も無く、メアリーは涼しそうな顔をする。

 

「えぇ、ですが最大限の手伝いはしましょう

お互いの『利益』の為に」

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

夏空の眩しい日光が全員の肌を焼き、だが木々が僅かに日を遮っている為極端に暑くはない。

 

「緋彩、大丈夫か」

「大丈夫だよ翔太郎」

「…エンはどうだ?」

「私も…大丈夫…だよ、すごう」

「エンさんかなり疲労してますしおんぶしては?」

「そうするか…」

「うぅ…ごめん…」

 

山道を歩いている集団、須郷雅弘、涼風緋彩、道華翔太郎、長内青葉、エンは動きやすい服に着替えとある場所を目指していた。

 

「あいつらが見せてきた写真の場所はあとどんくらいだ…?」

「もう少しです」

「そうか…潜入って言ったら翔太郎の能力が輝くな」

「俺の能力はそんな長くは続かない、ある程度近づく必要がある」

 

超人達はメアリーの条件をのみ、花村と貴寅は隠れ場所に待機して安全を確保している。

大人数で行くのは良くない、その上花村と貴寅はそこら辺の強者よりも強いが人間止まりなのもあり超人達にはついて行くことか不可能だった。

その為超人達と治療要員でエンが研究所を目指していた。

 

 

「…見えてきたな」

「恐らくあれでしょうね」

 

茂みを進み視界の先に大きなビルのような建造物が立っていた、外から見える窓には何人かの人影が歩いているのが見え人がいる事が分かる。

そして裏口らしき扉が見える。

 

「…翔太郎」

「あぁ、お前ら手を出せ」

 

翔太郎が全員の体に触れた瞬間、姿が消え始めパッと見ではどこにいるのか分からなくなる。

 

「…よし、行くぞ!」

 

 

──────────────────────

 

 

1人の男が目を覚ます、ダンボールに囲まれながら眠そうに目をこすりながら上半身を起こし伸びをする。

部屋のダンボールにあるのは資料なのか何人も出入りするが誰も男を気にしない…というよりも気づいてない。

誰もが寝起き缶コーヒーとあんぱんを食べてる男に気づかない。

 

「ふぁ…見つからないなぁ」

 

ダンボールを机に紙を広げる、それは何かの見取り図のようで1から5までの数字と階層が書いてあり、1〜4はバッテンが付けられていた。

 

「んー…分からない!あー!分からない分からない!神様成分も足りないー!」

 

ダンボールを押しのけ蹴散らしてゴロゴロ転がる姿は駄々っ子のようで文字だけなら可愛らしいが180も身長がある成人男性なので見苦しいとも言える。

 

「…ん?誰だ?…来客がいるとは言ってなかったしな…Kではないし…」

 

男は立ち上がり窓際から外を見て…ニヤリと笑う。

 

「まさかここで巡り会うとはね、これも運命かな?」

 

視線の先には何もいない、だか男が見ていたのは何かが通ったであろう僅かな土の飛び散った痕跡や微妙に見える足跡…翔太郎達であった。

 

「くふふ、彼らを使えばぐっと楽になるな…敵の敵はまた味方になる…熱いねぇ…嫌いじゃない」

 

男は窓際から離れ下に降りる為に扉を開け廊下に出る。

 

 

 

 

 

 

「また遊べるのが嬉しいよ、超人諸君」

 

 

 

 

破滅的で破壊的で狂信的な男、1度は超人達を苦しめた存在。

 

『A』

 

狂った男を解き放つように扉が静かに動き音を立て閉まる。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。