ファースト・オブ・バレット   作:パルバール

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第96話『既視感』

繁栄と喧騒が多い街、異常な程の開発計画で拡大し頓挫した事で廃墟が多いこの街の静かな誰もいない路地に何人もの男達が倒れていた。

 

「ふぅ…お前らこいつらを連れて行け、俺は残りを片付ける」

「へい!」

 

武器を手に持っている男達が倒れてる男達に引っ張り車に乗せ何処かへと運んで行き、その場には腰に手を当て伸びをする若者だけが残った。

 

「あいつら今頃何してるかな、行きたかったなぁ…東京…」

 

1人だけ残り街を守っている超人、岡薗誠は他の超人達が居ないことに更に調子乗って暴れようとしていた別組織を全部ぶっ飛ばしている最中であった。

 

「まぁ、超人と言ったらあいつら4人っていうのが根付いてるから仕方ないか…俺も最近超人って呼ばれるようになったし」

 

その身体能力や変身による装甲は他の超人に引けを取らないが知名度故にあまり知られてはない。

 

「…さて、さっきから物陰から俺を見てるのは誰だ?」

 

手足に装甲を纏わせ威圧するように曲がり角から感じる気配に問いかける。

すると簡単にふらっとバットを持った青年が姿を現し無表情のまま誠を見てくる、それに不気味さを感じながら装甲を纏わせた指を青年に指して口を開く。

 

「草野球が好きな好青年にしては来る場所やってる事が良くねぇな、目的はなんだ」

 

廃墟が目立つ街の1部、街の学校で義務教育を終えているのなら全員が知ってるはずの事であり近づいてはいけないのは絶対知っている。

だからこそ一般人がここにいるのは怪しいを通り越して敵、とも言える。

 

「…………………」

「だんまりか、まぁいい…俺に用があるならさっさとこい?のんびりと戦う…余裕…は…」

 

喋る度に何か違和感を感じ、ゆっくりと周囲を見る。

1人、2人、3人とどこからか鉄パイプ等の武器を手にした若者が誠を囲むように姿を現し逃げ道がほぼほぼ無くなってしまっていた事に気づく。

 

「…まぁ、嫌な予感はしてたんだ…逃げなかった俺の悪いところが出ちまったな」

 

苦笑しながら背後から近づいてきて誠の頭を狙った鉄パイプを装甲でガードする。

常人では考えられない威力と行動力からただの一般人とは考えず敵と認識し、片手で鉄パイプを掴み襲ってきた若者に回し蹴りを当て建物の壁に叩きつける。

 

「…この感覚、あの時会った奴らに似てるな…お前達の目的はなんだ?復讐か?それとも…」

 

ざっと周囲を確認すると先ほどよりも人数が増えていた、数人規模ではなく数十人規模になりつつあった。

 

「俺の始末、と言ったところか…いいぜ?あいつらが居ない今俺がこの街を守る」

 

全身に装甲を纏わせ手をクイクイッと動かし挑発する。

遠くから謎の人影に見られている事を知らずに。

 

 

 

──────────────────────

 

 

 

 

時を同じくある人物達が危機的状況に陥っていた、それは…

 

 

「…なぁもう壊した方が早くねぇか?」

「駄目に決まってるだろ雅弘、今緋彩が開けてる最中だろ」

「けどあまり時間をかけしまうとその分危険が高まるのですよね…」

「だ、大丈夫?ひいろ?」

「任せなさーい、この緋彩さんにかかれば鍵開けなんて一瞬一瞬…」

 

翔太郎の能力により建物の壁まで近づけて尚且つ裏口らしい扉を見つけ翔太郎と雅弘の聴覚が正しければ扉の先には誰もいない、そこまでは順調であった。

だが裏口の扉は鍵によって閉ざされており建物の中の人々は防犯対策は完璧だと言うことが分かる。

そして緋彩が鍵開けに挑戦するが難航しており5分が過ぎようとしていた。

 

「うーん…大体は合ってる筈なのに何が違うんだろう」

「…どけ緋彩、もう待ってる時間はねぇ」

「ち、ちょっと雅弘!?」

 

痺れを切らした須郷がドアノブに手を置き、最小限の音で扉を破壊する。

扉としての機能が完全に無くなりゆっくりと外側に開いていく、中は使われてない空室のようで一見ゴミなのでは?と思うようなのが沢山転がっていた。

 

「これで入れるな」

「はい器物破損」

「お前も鍵開けようとしてたろうが!」

「はいはいどーどー…落ち着いてください雅弘さん、侵入なのにそんな大声出したら本末転倒ですよ」

「…すまん」

「分かったならいいんです」

 

手に残ってるドアノブを放り投げ、それぞれ中に入ろうとするがエンだけはドアノブをじっと見ておりそれに気づいた青葉がエンの近くに行き顔を覗き込む。

 

「どうしました?」

「…あのすごうが壊したの…少し魔力のオーラが見えたの」

「…何?」

 

エンの言葉に翔太郎が反応し、ポケットから手袋を取り出し地面に落ちているドアノブを拾い上げ眺めるように色々な角度から見る。

 

「…魔力のオーラ?っては確か紫色だったか…そんなのは見えないが」

「ほ、本当に一瞬だったの…だから多分すごう達じゃ見えないかも…」

「まぁ私達は魔術師ではありませんからね」

「つまりなんだ?緋彩が開けられなかったのは魔力…魔術のせいってか?」

「うん…」

「つまりは魔術師がいる、という事ですか」

 

超人達は部屋の中の奥にある、建物の廊下に出るであろう扉を見る。

一見ただの扉だが…魔術師がいるとなると話が別になる、もしかしたらその扉の先には魔術師がおり戦闘になるのではないかと。

超人達が出会ってきた魔術師の殆どは常軌を逸した強さを誇り苦戦を強いられた事が多い。

 

「…戦いたくはねぇな」

「あぁ、魔術師というのは予測ができない」

「ですが皆さん、ここで引き下がるわけにはいきません」

「そうだねー、それにボク達なら大丈夫だよ」

 

全員の力を信じ須郷が先頭となり部屋の奥の扉に手をかけ、改めて全員の顔を見る。

それぞれ意を決した顔をしておりそれを確認した須郷はゆっくりと扉を開ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ…これは」

 

扉の先には廊下があった、左右と正面に向かう廊下でありダンボールの箱が雑に積まれている。

それと同時に倒れている白衣を着ている人が何人も倒れていた。

 

「これは…死んでるのか」

「いや翔太郎、息はしてるようだよ…寝てる?」

「とにかく現状確認です、ここだけなのか…それとも」

「チッ!エン!こいつを診てくれ!」

「う、うん!」

 

翔太郎、緋彩、青葉は他の部屋の確認へ行きエンは倒れている女性に近づいて手で触れる。

 

「…………」

「何か分かったか?」

「…命の別状はないけど…何で寝てるの…?」

「この人数、外傷は見えねぇな…睡眠薬とかそこら辺か?」

「分からない…けどみんな寝るのはおかしいよ」

 

廊下に倒れていた人達を診ていた2人、そして他の3人が各々部屋から戻ってくる。

 

「俺が見たところも全員が寝ていた、何かをしていた途中で突然倒れたようなのが多かった印象だ」

「ボクの所もそんな感じだった」

「私もです、この建物…この人達が眠ってしまっているようですね」

「…おい、これ」

 

須郷がある事を思い出し、それを言おうとした瞬間。

悪寒と底知れぬ恐怖が沸き起こり全員が背を合わせるように立つ、エンを咄嗟に抱き抱え須郷達と円になるように立った青葉は冷や汗を拭いながら唇が乾燥していくのを感じる。

 

「…これは」

「あぁ…誰かが居る」

 

全員が閉じられた廊下に続く扉を見る、扉の向こう…廊下から足音が聞こえ誰かがこちらに向かってきていた。

 

「どうする、今なら窓から逃げれるぞ」

「けどそうするとここに来るのは難しくなるんじゃないかな」

「誰か知らねぇが…俺達よりも早くここに来て襲撃してたんだろうな、何か知ってるかも知れねぇ…青葉、どうする」

「…………」

 

いつでも動けるよう扉側に須郷、窓側に翔太郎と緋彩が立ち青葉の合図を待つ。

 

「皆さんの意見も聞きたいですが、今はそんな時間もありまんね…この現場を見る限りでは相手さんは気づかれてもいいという動きです」

「誰にだ?」

「研究所を所有してる人達に、ですよ。

今ここで逃げても警備が強化…最悪ここは無かった事にされるでしょう」

 

話してる間にも足音は確実に近づいている。

 

「…こちらの事に気づいており尚且つわざと足音を聞こえるようにしている、つまり話があるか自信があるか」

「舐められたもんだな」

「雅弘さん達の実力を知らないだけかもしれませんがね …私は話してみる必要があると思います…皆さんはどう思いますか?」

 

青葉が超人達を見る。

 

「俺はいいぜ、敵対すんならぶちのめすだけだからよ」

「ボクはいいよ」

「わ、私はすごう達が残るなら…」

「俺もいいが…やばいと思ったらすぐに逃げるぞ」

「はい、何も相手がどう考えてるかなんて分かりませんし

…皆さん一応準備を」

 

全員の意見を聞き終えた辺りで足音が聞こえなくなり、聞こえた距離からもう扉の前まで来ている事が青葉には分かっていた。

緊張感と緊迫した空気に目の前が真っ暗になりそうなのをどうにか抑えながら扉が開くのを待つ。

 

 

 

 

だがいつまで待っても扉は開く気配無く、何も起きない時間だけが流れていく。

 

「…なんで来ねぇんだ…?」

「ボク達の事警戒してるとか」

「どうする青葉…俺が開けてくるか?」

「いえ…翔太郎さんが行くには危険過ぎます」

「俺がやる、翔太郎と緋彩は青葉達を頼む」

 

一向に扉の向こう側にいるはずであろう者が扉を開けず苛立っていた須郷が慎重に近づいて扉を開ける。

だが扉の向こうには誰もおらず須郷は肩透かしを食らう。

 

「…誰もいねぇぞ?」

「え?でも足音は…」

「どこかに行っちゃったんだろうね!」

「行った、と言うよりも消え…た…」

 

違和感を感じ、青葉が後ろを振り向く。

振り向いた目と鼻の先に胡散臭い笑みを浮かべた1人の男が立っていた、翔太郎も緋彩もエンも気づいてる様子はなく。

青葉が突然振り向いた事に気づき視線を追いかけようやく男の存在に気づく。

 

「い、いつの間に!?」

「緋彩、青葉!下がれ…!」

 

咄嗟に翔太郎は近くにあったペン等を投げつつ、追い討ちをかけるように回し蹴りを男の顔面に叩き込もうとする。

 

「戦うつもり、無いんだけどなぁ」

 

飛んでくる物を玉虫色の液体で弾き飛ばし、回し蹴りを避け翔太郎に玉虫色の液体を巻き付けさせ身動きをとれないようにする。

 

「くそっ!」

「はいちょっと拘束ね、そこのデカブツも動かないよーに」

「………てめぇ」

 

拳を構えて攻撃態勢をとっていた須郷は拳を下ろし、腕を組む。

 

「……お久しぶりですね」

「かなりね、君達色々やってるらしいじゃん?噂は聞いてるよ」

「貴方にも知られてるのは嫌ですね、Aさん」

「酷いなぁ」

 

ローブを身にまとい、ヘラヘラとした顔をしている男…Aは楽しそうに芋虫のように拘束されてる翔太郎を転がす。

 

「なんかさ、前回もう名が出たからインパクト薄くなったよね?別にいいんだけどさ」

「?」

「てめぇ…なんでここにいるんだ!」

「おー怖い怖い…君達も何故ここにいるのか聞きたいけど、僕は親切で優しくて聡明だから本題に移してあげるよ」

 

顎に手を当て、問題の答えを早く言いたい子供のようにニヤニヤしながら口を開く。

 

 

 

 

 

「僕と協力しようよ」

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