ファースト・オブ・バレット   作:パルバール

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第97話『奇妙な関係』

「協力だと…?ふざけてんのか!?」

「僕は至って真面目さ!真面目過ぎるのが取り柄だよ!」

「こんの…!」

「須郷さん落ち着いて下さい」

 

今にも殴りかかろうとする須郷を青葉は止め、Aから目を離さず一歩前に出る。

 

「けどよ、青葉!」

「須郷さん、言いたいことは分かります…ですが翔太郎さんの生死が問われるのであれば私は貴方を止めます」

「くっ…」

 

Aの手によって翔太郎は捕まっている、むやみに攻撃して仲間が傷つくのは避けたい場面であった。

 

「うんうん、やっぱり冷静な人がいると楽だね~」

「…Aさん」

「なーんだい」

「話を聞かず攻撃したのは謝ります、さらに自分勝手なお願いでありますが翔太郎さんを解放してもらえると助かります」

「対等な会話したい?」

「貴方がよろしければ」

 

Aと青葉はお互いの表情、目線を見て探り合う。

 

「…んー、いいよ!ここでピリピリしても時間の無駄だしね」

「ありがとうございます」

 

グネグネと動く液体を翔太郎から剥がし、翔太郎は仲間たちの所へと戻る。

須郷、緋彩はいつでも戦える準備をしていたが場の空気が落ち着いて来たのを確認して拳を下す。

 

「いやー怖い怖い、か弱い魔術師相手にそんな殺気出さないでよ」

「Aさんなら、私達なんて1分もかからないのでは?」

「はははっ!無理無理!5分!」

「「「……」」」

「…須郷さん達、睨んでもこの狂人は死にませんよ」

 

ひとしきり笑った後、Aは腕を組んで困ったような顔をする。

青葉は他の超人達が冷静でない以上、こののらりくらり動く怪物を相手にしなければならないことにため息を吐く。

 

「…それではAさん、聞きたいことがあるのですが」

「いいよ、返答はその後に聞こう」

「……まず、この倒れてる人たちは?」

「一般人、カモフラージュ用の科学者達…一応生きてるよ、寝てるだけ」

「貴方は何故、この場所に?」

「んー、強いて言えば嫌がらせとあぶり出し?」

「細かく聞いても?」

「ここからは本題後で」

「分かりました、私達が来るのは?」

「知らない、というよりもさっき気づいた」

「『神聖連盟』に聞き覚えは」

「名だけは、けどあまり知らないかな」

 

青葉はとりあえずと言った感じに質問と返答をメモし、しばらく考える。

思考をめぐらせて様々な事を予測し、考え、脳内で上がってくる可能性を潰していく。

Aはニコニコ笑い、他のメンツは青葉の言葉を待つ。

場合によっては戦えるようにしながら。

 

 

 

 

 

 

「分かりました、Aさんと協力しましょう」

「なっ!?」

「なんでー!」

「…理由はなんだ?青葉」

「翔太郎さんは薄々気づいてるかもしれませんが…まずAさんが私達と手を組もうとしてるのがあります、少なくともAさんは私達個々よりも強い」

「照れちゃうな~」

「あとウザい」

「傷ついちゃったな~…」

 

シュンとするAを尻目に青葉は超人達を見る。

 

「Aさんが嘘をついてない事を前提になりますが、Aさんが1人行動しているが私達と協力を考えてるということは少なくとも1人では厳しいと考えてる可能性が高い、そしてこの場に必要なのがあり私達の手を借りたい」

「そだよ」

「私達がイレギュラーであり例の組織と繋がりがないのでメアリーさんが呼んだ助っ人でもない」

「かわいい名前だね!」

「はいはい、最後に…Aさんが協力的ならこの上なく心強い」

「けどよ、青葉…」

 

青葉の話を聞いていた須郷がAを見る、見た目は普通だが中身は吐き気すら覚える邪悪な存在なのは変わりないのだ。

 

「こいつが裏切る可能性があるだろ」

「それはありえない…とは言えません、ですが裏切るとすれば『今じゃない』」

 

そう言うと青葉はAを見て、探偵が犯人を追い詰めるが如く指を向ける。

 

「Aさん、改めて言いましょう…貴方と協力します」

「良い判断だね、他の子は良いのかな?」

「…俺はてめぇが気に食わないが青葉が言うなら、従う」

「ボクはどっちでも…」

「Aはなんか嫌いだ、シね!」

「わ、わたしはいいと思う…よ?」

「わー、僕大人気☆」

 

若干数名、というよりほとんどが納得してないがAとの協力関係を認めた。

Aは嬉しそうに青葉達に近づき、両手を広げ静止する。

 

「……あの」

「フリーハグだ!今までの事は水に流し協力しよう!」

「…やっぱりこいつと協力するのは間違っていると思うんだが」

 

白い目で見られていたAはシュンと項垂れたが近くの椅子に座るといつもの胡散臭い笑顔になる。

 

「それじゃ、お互い知ってることを少し話そうか?」

 

 

☆★☆★☆★

 

それは彷徨っていた、何かを探すように

何かを求めるように。

 

上との連絡が取れなくなり、周囲の研究者達が慌ただしく避難を始めていた。

研究していた物は置いて行き処分せずにしておく。

何故なら『それ』が居たから、もし侵入者が降りてきても負けることは無い事を知っていたから。

 

それはこの地下研究所を守るように命令されていた。

 

研究所から人気が無くなる、この場には誰も居ないようだ、静かな空間に鎖の金属音が響く。

黒い装束服、見た目は忍者だが身体に巻き付いている鎖が囚人のような雰囲気を出す。

 

それは待っていた、訪れる時を。

 

「……守らないと…みん…な…皆…?皆ッて…ダレだ…?」

 

それは上から降りてくる気配を感じながら、ブツブツと独り言を続ける。

 

 

★☆★☆★

 

「これが私達の話せる全てです」

「へー、君達も大変だね」

 

廊下を歩きながら青葉はAに全てを話した、緋彩の事以外だが。

 

「けどエイレーネーが都合の良い君達を切るなんて思い切った事したね、愚かだけど」

「柏崎さんや一部は手助けしてはしてくれますが…」

「そんな過度な期待は出来ないと、僕と出会えてよかったね!僕最強だし!」

「…そうですね、それではAさんも知ってることを教えてもらいましょうか?」

「良いけど、その前に」

 

Aは一階の廊下の途中で立ち止まり、後ろで歩いていた超人達を見る。

 

「あ?」

「そんな睨まないでよ凄いくん」

「須郷だ!」

「僕の話の前に、ちょっと彼女の力を借りたくてね」

 

そういうとAはとある人物の前まで歩み寄り、しゃがみ視線を合わせる。

 

「…?」

「おいA、エンから離れろ」

「言っただろ?彼女の力がいるんだって」

「わ、わたしの…?」

「Aさん、どういう…」

 

Aは立ち上がり、廊下がよく見えるようにエンの前から退く。

 

「僕や、超人の君達では無理だ、だが…」

「おい、意味がわからないぞ…A、変な真似をするなら…」

「翔太郎落ち着いて」

 

翔太郎が睨みながら近づこうとするのを緋彩が止め、エンを見る。

エンは困惑していた、自分に何ができるのかと。

 

だが、あるものが見えてエンは息を飲む。

それは…

 

「あ、あれ…い、嫌な感じがする…」

「エン?」

「エンさん……何が『見えた』んですか?」

 

一点を凝視し、だが怯えるエンが見ていた場所を見てもあるのは通路の壁。

全員が動かない中、Aだけが壁に歩み寄り手で触るように伸ばすと

 

 

Aの手は壁をすり抜け、手だけが壁の奥に入っていく。

 

「はぁ!?」

「ててて手が壁に食べられた!!????」

「今度はお前が落ち着け緋彩」

「Aさん、これは」

 

青葉がAと同じように壁に近づいて手を伸ばす…だけでは終わらず上半身を一気に入れると、視界の先には下に続く階段が見えた。

 

「道理で見つからないわけだ、脳で理解か、認識がトリガーかな」

「お、おいA?」

「魔術でも化学でもない、やはり神力の類か?」

「おい!」

 

1人で考え始めるAの胸倉を須郷は掴み意識を思考から現実に戻させる。

 

「あ、ごめんごめん」

「…Aさん、何が分かったのですか?」

「あー、ごめんそれも含めて歩きながら説明していいかな?君達の目的も下にあるかも」

「!それは本当か!」

 

Aの一言に翔太郎は詰め寄り肩を掴んでめちゃくちゃに揺らす。

 

「ほんんととととだから揺らさないでででで!」

「あ、す…すまん」

「まったく、とりあえずいこっか」

 

Aがため息をしながら壁の中に入っていき、それを追うように他のメンバーも続く。

 

「………」

「翔太郎さん」

「…青葉」

 

壁に入らず立ち止まってた翔太郎の前に青葉は歩いてきて覗き込むように下から翔太郎の目を見る。

 

「焦るのは時として重要です」

「……」

「ですが、貴方が冷静さを乱すのは…」

「分かってるッ!…大丈夫だ」

「…分かりました、ですが覚えておいて下さい、私は貴方の味方ですから」

 

そう言って、青葉は壁の中へと入っていく。

その場に残った翔太郎はハット帽を深く被り仲間の後を追う。

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