ファースト・オブ・バレット   作:パルバール

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第100話『己の弱さ』

地下研究所にある広い空間、様々な目的で作られた建物が多く建つこの場所で激しい戦いが繰り広げられていた。

 

「『酷使せよ!死者の手』」

 

Aが呪文を唱えると使徒の周囲に魔法陣が展開され這い出るように魔法陣から血まみれの手が伸び使徒に襲いかかる。

 

「『酷使する…断罪』」

 

使徒が唱え、手を振り下ろすとその軌道から出るように僅かに発光する大量の刀身が迫ってくる手を切り裂き、そのままAの方へ飛んでいく。

 

「危ないなぁ、それ!お返しだ!『酷使せよ!』」

 

液体をガトリングのように飛ばし刃を弾きながら建物から建物に隠れながら攻撃する。

 

「『震波拳』!」

 

拳を近くの壁に当て破壊し、中に入って飛んでくる攻撃から避難してやり過ごす。

そして使徒の意識がAに向いた瞬間に急いで外へ飛び出し、拳を構える。

 

「『震振拳』応用版!」

 

空気を振動させ衝撃波を使徒へと飛ばす。

 

「『酷使する…結界線』」

 

クナイを取り出し地面一列に刺すとその出来た一列の線から発光する板のような壁が出来上がり衝撃波とぶつかり、鼓膜が痛くなるほどの音が響く。

衝撃でクナイは吹き飛んだが使徒には傷一つ入ってない。

 

「くそがッ!」

「攻撃を続けるんだ!『酷使せよ!』」

 

Aが標的を見定めるように指先を使徒に向けると排水溝や瓦礫の隙間から液体を槍のように変形させ貫かせようと飛ばす。

 

「…小細工」

 

飛んでくる液体槍を鎖鎌の鎖分銅を回し弾き飛ばし、そのまま回した勢いで分銅をAへ投げる。

飛んできた分銅をAはギリギリで避けるが地面に当たった瞬間道のコンクリートが大部分破壊され、破片がAに飛び頭部、足に被弾してしまう。

 

「あれが投げただけの威力かよ!」

「いててて…あれを人間だとは思わない方がいい、人間を辞めてる奴らだ」

「くそ…翔太郎はまだなのか?」

「言っとくけどほんとにやばくなったら逃げるよ?」

「あぁ、わってるよ」

「なら死なないようにねッ!」

 

傷口を塞ぎ、使徒の正面に飛び出す。

それに合わせて須郷も使徒の背後に回り囲む。

 

「須郷くん行くよ!」

「何すんのか知らねぇが来い!」

 

Aが指を鳴らすと傷口から血液が溢れ空中で何かを形作る、それは懐中時計へ形を変えてカチコチ音を周囲へ響かせる。

 

「……ッ!『酷使する…聖域』」

 

背後の須郷に気を配っていた使徒は血の懐中時計を目にした瞬間、懐から袋を取り出し中身を自身の周囲に撒く。

キラキラと光る鱗粉のような粉が使徒を囲むように散らばった時、懐中時計の針が12時を指す。

 

「できればこのまま、死んでくれ『酷使せよ!死の宣告』」

 

Aが呪文を唱えた瞬間、懐中時計が砕け地面へ落ちていく。

砕け散った時、使徒の近くに激しい音と共に何かが落ちてくる。

それは刃だけのギロチンであった、鈍く光るそれはひとつ、またひとつと落ちてきて雨のような量となる。

使徒の周囲の地面を落ちてくるギロチンが砕いていく、だが肝心の使徒には当たる瞬間にギロチンが粉々になっていきかすりもしない。

 

「強力な魔術なんだけどなぁ…ま、本命はこっちじゃない」

 

Aがニヤリと笑い、クナイを構えていた使徒が背後を見ると須郷がその場におらず…落ちてくるギロチンの隙間から大男が現れる。

 

「『震波拳』!」

 

下から殴り上げる拳に乗った振動が使徒の顎を捉え、そのまま殴り空中へ飛ばす。

すかさず両拳を構え、精神を集中させ使徒を目視する。

 

 

「須郷流戦技『震波空音拳』」

 

 

手を広げ、手と手を合わせるように叩く。

手の形を叩いた衝撃が一点に集中するように型を作り、衝撃波が濃密な音の大砲のように使徒へ飛んでいく。

空中で身動きが取れない使徒は音の塊にぶつかり、鼓膜が破裂し、遠くに飛ばされ天井へ叩きつけられる。

 

「ヒュー、そんな技あるならさっさと使えばよかったのに」

「……使いたくなかったんだよ」

「え?なんで?」

「未完成なんだ、本物はこんなもんじゃねぇ…それに」

「それに?」

「…いや、なんでもねぇ、まだ死んじゃねぇ筈だ、見に行くぞ」

 

須郷は使徒の元へ足を急がせる。

 

「(…俺は…弱い)」

 

本来は『極技』を使うつもりでいた、だが使うにはリスクが伴う…それは使うと自身にも当たり深刻なダメージを受ける事。

また、自身に扱いきれるかの不安が拭えなかった。

過去に一度使った時の記憶が須郷の本能に枷を付ける。

 

「(俺に使う資格はあるのか…?なぁ… 雅雄…親父)」

 

弟と、技を伝授させてくれた父親の事がふと脳内に過ぎる。

自身の未熟さと思わずとは言えひよった自分に怒り、そして悲しくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「今のは40点、お前に合ってない武術だ」

 

突然、須郷の横脇に車が衝突したのではないかという衝撃が発生し、肋骨が数本激しい音と共に折れ近くの建物の壁に叩きつけられる。

 

「がっ……!な…ん……だ?」

「須郷くん!」

 

Aが離れた所で須郷の安否を確認する、近づかない理由は須郷が立っていた場所に誰かが居たからであった。

それは……

 

 

「お前には無意味な技だ、震波拳だったか?教えた奴は無能だったのだろうな」

 

ピエロの衣装と微笑みの仮面を付けた男が立っていた、その拳には紫色のオーラが少しずつ濃くなっていくのが見えその拳で殴られたのだろうと須郷は理解した。

だがそれよりも須郷は違う事に反応する事があった。

 

「……て、めぇ……誰が…無能だって?」

「ん?君の技を教えた奴さ、くだらない技だ…君は型にハマるべきじゃないポテンシャルを持っている、もっと本能に従い戦うのが君に合うスタイルだ」

「…………俺の技は…くだらなくねぇ!親父は無能でもねぇ!てめぇ…名を名乗れ!」

「ん?名前か」

 

男はサーカスのピエロが観客に挨拶するように深々と頭を下げ、顔を須郷へ向ける。

 

「私は6席会、4席目『K』さよならだ格闘の超人……須郷雅弘くん」

 

圧縮された魔力の塊を纏わせた拳を、Kは須郷が目で追えない速度で近づき顔面に叩きつけ瓦礫を破壊し、床を破壊し、地面に須郷の上半身が半分埋まる。

意識が一気に持ってかれ、頭蓋骨から鈍い音が響く。

 

「K……!君がここに来てるとはね!」

「やぁA、裏切り者?早速だが君には死んでもらおう」

「何が裏切りだ!君だって善神とつるんでるじゃないか!」

「利害の一致だ、そろそろ使徒が戻ってくる…どうする?」

「……須郷くんは置いていけないからね、抵抗させてもらおう……!

『酷使せよ!降臨の儀式!』」

 

須郷が最後に見たのはAが禍々しい魔力のオーラに包まれている所と、その背後にクナイを今にも突き刺そうとしている使徒の姿だった。

 

 

負けた

 

 

それだけが呪いのように頭に残り続け、意識を手放してしまう。

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