ファースト・オブ・バレット   作:パルバール

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第102話『出会い』

静かな場所、暗く寒く足の痛みで涙が出る。

だが足の痛みよりも意識を向けなければならない対象。

ナイフを喉元に添えて感情のない目で見てくる15歳程度の少年。

 

『……』

 

冷たい目で見てくるその少年は力を籠めナイフを引こうとする。

 

「おっと、そこまでだ若いの」

 

少年の後ろに誰かがやって来て、ナイフを持っている少年の手を掴み止める。

 

『…噂の探偵か、貴方が俺を止める理由はなんだ』

「言いたいことは色々あるが、始末は可能な限り無しと聞いているが?」

『組織の方針としてはそうだ、だがそれは建前だ…捕まり実験体として生涯を終える人生を生きさせるのは酷だと思わないか?』

「……」

『貴方も元超人なら分かる筈だ、超人 の力は強大で扱いやすい…だから人工超人が生まれる』

 

少年は掴まれている腕の拘束を振り解き、ガスマスクを取る。

 

「今後、そいつが生きてる事を後悔することが訪れる…これからエイレーネーは立て直さなければならない、その間人工超人を手に入れた腐った奴らが俺達の手が届かない深みに消え新たに作るだろうな……同じことが繰り返されないようそいつも…消す」

 

ナイフを逆手に持ち、少女を突き刺そうとする。

だがまた探偵がそれを阻み間に入る。

 

「俺がこの子を預かる、お前らに敵対する可能性が出ないよう育て普通の暮らしをさせる」

「……」

「俺は腐っても元超人だ、この子が1人で生きていけるまで守り育てよう」

「……何故そこまでする?」

「この子と同じくらいの歳のガキを育ててる最中でな、それに…泣いている奴を見過ごせないタチなんだ」

 

少年は視線を少女に向けると、表情が動かないが涙がポロポロと流れていた。

しばらく少年が動かないでいると胸元近くにあった無線から声が聞こえ始める。

 

『柏崎さんまだっすか~、それとも何か問題でも起きたっすか?』

「……」

 

柏崎と呼ばれた少年は探偵と少女を交互に見て無線に答える。

 

「こちら柏崎、対象が暴れ始末した」

『そうっすか…了解っす、作戦終了…帰還するっすよ』

「了解、それと無線はこちらがするまでやるなと言ったろうが」

『あっ…は、早く戻るっすよ!』

 

無線から声が聞こえなくなり、柏崎は探偵を見る。

 

「今回は俺は何も見ていない、暴れた人工超人を始末して探偵のあんたとは雑談をしただけ」

「そうだな、それじゃあまた会う時に」

 

ナイフをホルダーに入れ、柏崎は闇に溶けるように消えていく。

探偵はポケットからハンカチを取り出し、少女の涙を拭きゆっくりと抱きかかえ立ち上がり表に出る。

 

「おっさん!話し終わったのか?」

「おっ…!?もっとこうマイルドにならないか?」

「けどおっさんだろ?あれ、その子誰?」

 

誰もいない夜の町、そこに元気な声で1人の子供が走ってきて少女の存在に気付く。

 

「あぁ、この子は今日からうちで引き取ることになったんだ…翔太郎、挨拶しな」

「おう!オレ道華翔太郎!お前名前は?」

「わ…わたし…」

 

いきなりの事ばかりで頭の中がこんがらがっていたが、どうにか口を開く。

 

「ひ、ひいろ…緋彩…」

「緋彩か良い名前だな、な?翔太郎」

「そうだな!」

「…ん?」

 

探偵が何かに気づき緋彩の額に手を当てる。

 

「翔太郎、急いで帰るぞ…酷い熱だ」

「マジかよ…急げ!」

「う…うぅ…」

 

緋彩は安心か、緊張が緩み頭がぼーっとなる。

高熱で身体が熱く、強い眠気に襲われ緋彩は深い眠りへと沈んでいく。

 

 

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

 

冷たく硬い感触に緋彩はゆっくりと目を開ける。

横たわって床に寝そべっている事に気づき、周囲を見るとどうやら室内の一室にいるらしい。

窓から日差しが差し込み、朝より遅い時間に起きたらしい。

 

「ここ…何処?」

「やっと起きましたね緋彩さん」

「青葉?」

 

声が聞こえ視線を向けると壁を背に座っていた青葉と、その横に座って寝ているエンの姿があった。

手足を縛られた状態で。

 

「あ、青葉…ボク達階段のぼってて…あれ?」

「落ち着いてください緋彩さん、一瞬だったから覚えてないでしょうが…上の建物で須郷さん達を待っていたらピエロ風の男が突然現れて、緋彩さんの意識を刈り取って人質にされたのは覚えてますか?」

 

自身も縛られてるのを確認しながら記憶を掘り起こすが、給湯室を見つけて入った辺りから記憶がない。

 

「……いや、覚えてない…青葉、ここは何処?」

「さぁ…私も目隠しされていたので…ですがあそこから随分と遠い所までは運ばれているのは確かです」

「そうか…まだ状況が良く分からないけど、この拘束取らなきゃ」

 

緋彩は足に力を入れて足に巻かれたロープを引きちぎろうとするが、どんなに力を入れても千切れる様子はない。

 

「ぐぐぐぐッ………!!!!」

「無理だと思いますよ、普通のロープじゃないようです」

「ど…どういう…こと?はぁ…はぁ…」

「緋彩さんが寝てる間にロープをどうにかしようとしたのですが…エンさんが言うにはロープに僅かにいやな感覚がすると」

「よく分からないけど、お手上げ状態?」

「そういう事です」

「そ、そんなー…」

 

ぐでっと倒れ、どうにか動こうと芋虫のように動いて青葉の横に到着する。

 

「よっと」

「緋彩さん、これからどうします?」

「え?ボク?」

「緋彩さん以外となるとエンさんですが…」

「あ、あぁそうか…とりあえず…ここから逃げる?」

「今私達を縛っているロープがあって逃げれませんね」

「えーっと…」

 

もう一度緋彩は拘束ロープを引きちぎろうとするが、どうにも千切れる様子はない。

 

「うーん…青葉~…分からないよ…」

「そうですね…いいですか?私達が独力で逃げ出そうとしても恐らく…私やエンさんは逃げ切れず捕まるでしょう」

「それは…駄目だ」

「いざとなれば私が囮になりますが…少なくとも体感では数時間から数十時間経っています、しかも窓の外が見える太陽の位置を考えると…何時だと思います?」

「?????」

 

話を聞いていた緋彩の耳から煙が出るのではないか?という程悩み始め、目が点になる。

 

「……分かんない」

「大体朝の8時30分前後と言ったところですね、少なくとも須郷さん達が行動を起こしてくれているはずです」

「なるほど、翔太郎達が助けに来てくれるのを待てばいいんだね!」

「そういう事です」

 

名案と言わんばかりに笑顔になる緋彩を見て青葉は心の中でため息を吐く。

 

「(私達が捕まり、下にいたあの三人が無事だとは思えませんが…そんな死ぬような程安い人達じゃないですし今は変に動かずこのまま…)」

 

はらり、と青葉の手を縛っていたロープが緩み青葉の手に切れ先が乗る。

その切れ先を緩く結び傍から見て分からないよう細工する。

 

「(…いざとなれば、強硬手段ですね…だが今じゃない)」

 

緋彩でも千切れなかったロープをいつでも外せるようにした青葉はタイミングを図る。

全てを見通しているようにほくそえみながら。

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