ファースト・オブ・バレット   作:パルバール

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第62話『死を司る神』

ぼんやりとした頭で考える…

今俺はどこにいる?敵は?Aは?タヌキは?皆は?

思考が暗い深海で浮かんでるような感覚の中、俺は意識を覚醒させる

 

────────────────────

 

「…ん?どこだ…ここ」

 

見えるのは暗い空間にちゃぶ台にテレビ…あれ?既視感があるな…

 

「…あのクソ野郎またここに呼びやがったな」

 

あのテレビの中にいた子供、のような体型のマネキンみたいなもんだか…あいつ2度目だぞ

 

「チェストー!」

 

とりあえずブラウン管テレビはななめ45°ってばっちゃんが言ってた

 

『ちょっと、テレビ見えないんだけど』

「あ、すまん…って、誰!?」

 

人が必死にブラウン管テレビに必殺ななめしてると後ろから声をかけられた、振り向くとちゃぶ台の下に下半身を入れ寝っ転がりテレビを方を肘をつきながら煎餅を齧ってる女性…黒と白が入り交じった長髪に黒目、一見すれば日本人に見えるが…

 

『貴方がそこにいるから見えないって言ってるじゃない』

「す、すみません…」

 

とりあえずブラウン管テレビから下がって謝っとく

 

『いい子いい子、私の信者になる?』

「何の信者かは知らないけど入りたくはないな」

 

あぁ…嫌な予感する…こんな時の予感って良く当たるんだよな…

 

『しっかし…面倒ねぇ…私の可愛い信者君が私を地球に来させようとしてるけど実際行ってもね』

「…あ、あんた…誰だ?何者なんだ?」

 

今ので確信した、こいつは

 

『死に関する神よ、まぁ今は貴方が狂わないように人型になってるけど』

 

今回の敵であるAの信仰する対象であり、あの玉虫色の化物達の親分とも言える人物…いや、『存在』がそこに寝転がっていた

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

『そんな事より座る?飲み物は出ないけど』

「あ、んじゃお言葉に甘えて…」

 

座って一息つく、はぁ…最近まともに座ったのいつだろ…ずっと戦ってるような気がする…あれ、俺何してたんだっけ…なんか急がないと行けなかった気がするけど…

 

『Aに君の記憶戻すよう言われてるから、早速始めようか』

「記憶?俺は特に何か忘れてる様なことは…いや、まぁ人だから忘れるのは当たり前だけど」

『あぁ違う違う、ここは記憶がどんどん薄れていくけど埋もれた記憶を引き出す事が出来てね、本人すら忘れた事も見れるんだよ』

 

へぇ〜…まぁ忘れるなんて…

 

『んじゃ、やってみよう』

 

リモコンを取り操作をしながら俺の方を見てくる

 

「…なぁ、俺何忘れてんだ?」

『さぁ?けど私なりに順序よく探していくしかないよ』

「お前なりに?」

『死を司る神…まぁAの事だから目的はそこじゃないだろうけど』

 

そう言ってテレビが砂嵐になったと思ったらゆっくりと砂嵐が消えていき画面がハッキリする

 

『ん、これかなり最近だね』

 

そこに写ってたのは壁に寄りかかって倒れている糸目のスーツ姿の男…何処かで見たなぁ…

 

『…ん?あぁ、ここからは…ダイジェストでいこうか』

 

そう言ってチャンネルを変える…

 

 

『お前のせいで、父上は…!』

 

誰だろうか、日本刀を手に画面の中の俺に日本刀を向けてるのは

 

『なぁ…なんで兄貴が死ななきゃならねぇんだよ!答えろよ!なぁ!』

 

赤い髪の男は画面の中の俺の襟を掴み揺さぶっている、その隣にはよく似ている男が倒れており俺の愛用してたナイフが突き刺さっていた

 

『…貴方の行いにとやかく言う気はありませんが…私はいつでも貴方の頭に照準を合わせてますのでお忘れなく』

 

青い髪の男の周囲には自衛隊だろうか…多くの人々の遺体が倒れている、画面の中の俺は最後の1人にトドメを刺してるようだ

 

『ふふふ…私の復讐に首を突っ込むなんて…貴方も私を苦しめるのかしら?』

 

薄いピンク髪の少女が椅子に縛り付け女性の爪を剥がしやがら画面の中にいる俺に問いかける

 

『…ありがとう…ございます…』

 

白髪の少女は必死に笑顔を作っていた、その手には2人の男女の遺影を持ち…原因の男に向け感謝を…

 

 

 

 

 

場面がまた変わる、雨だろうか…ザーッと雨粒が地面に当たる音がまるでそこにいるような感覚にさせる…

画面の中央には4人の人物がいた、1人はヘルメットにガスマスクを付けており素顔が分からないが男性のようだ…地面に膝をついてその手にはぐったりと動かくなってる女性が抱きかかえられていた

 

『…柏崎…俺はもう無理だ…殺してくれ』

『優人さん、俺は…そんなの無理だ…あんたを殺せない』

『柏崎君…やるしかないっす、もう…人が死に過ぎたっすよ…ここで生かしても優人さんは…』

 

茶髪のツインテールの少女は拳銃を地面に落としながら画面の中の俺にそう言う

 

『…優人さん、俺は貴方みたいに仲間を…作れますかね』

『お前ならできる、柏崎…自分を信じろ…第1特殊部隊の隊長はお前に任せた…』

 

俺はゆっくりとナイフを振り上げ…振り下ろす

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

『これが君だよ、柏崎だっけ?君には大量の死者を殺した罪がその肩に重く乗っかってるのさ』

 

俺はぼんやりとしていく記憶の中で画面の中で起きた事は全部自分の事なのかと…自問自答する…俺は何をしている…?こいつは何をしたい…?

 

『そこで、提案なんだけど…私の信者にならない?君が辛くても死を司る神である私がその罪を軽くしてあげよう』

 

その言葉に俺は地獄に天から垂らされた蜘蛛の糸を見つけたような…そんな救いが目の前にある気がした、目の前の神?が言うにはここでは記憶が薄れるらしい…つまり『テレビであった事は俺がやってた事』になる、そう考えると吐き気が止まらない…何人殺したんだ、俺は?そもそも俺はなんだ…?俺は…

 

 

 

 

『はーい、そこまで…おいお前…あんまうちの奴に手を出すなよ、壊れるだろ』

『こっちは勧誘してたんだけど、邪魔しないでくれない?』

 

突然意識がハッキリとして、記憶が溢れてくる…どうにか気持ちを整理した記憶も取り戻して混乱していた頭を正常に戻す

 

「…あ、お前」

『僕とあろう者が何敵宗教に負けそうになってるんだよ、やっばり人間の精神は脆いなぁ…』

『分かる、最近の人間はすぐ壊れるんだから』

 

白い化物の戦いの時…ここと似たような暗い空間に呼び出してテレビの中にいた…小さな子供っぽい体型の黒い人型の何かだ、こいつ…テレビから出てこれるのかよ…

 

『あ、そうそう…君が本当に見るべきなのはこっちだよこっち』

 

そう言って死を司る神の手からリモコンを奪い取りチャンネルを変える

 

「おい!変な事したらただじゃ…おか…ない…」

 

テレビで流れたのは2人の少年が遊んでる風景だ、1人は本が読みたいが仕方なく付き合うように金髪の少年について行き…金髪の少年は冒険だと言って無理やり茶髪の少年の手を引っ張る…小さい頃の俺と…誰だろうか…?

 

『ま、待ってよ柏崎くん!』

『おっせーぞ!────!』

 

小さい頃の俺はもう1人の少年の名前を言ったと思うんだが…何故か聞こえない

 

「…おいおい、不良品か?」

『違うよ、君が思い出せないだけさ』

『そうそう、柏崎は…っと今流れてるね』

 

そう言って見るように促してくる、俺は画面を見ると黒いローブの男が茶髪の少年を小脇に抱えて小さい頃の俺を魔術で吹き飛ばした所だった

何度も吹き飛び死んだ筈だが何度も起き上がる小さい頃の俺に業を煮やしたのか頭を掴み何か呪文を唱える

 

『あれは記憶を書き換える魔術だね、あの男は魔術が弱かったがこの魔術でのし上がったとも言えるね』

 

男は倒れた俺を見て満足そうな顔になり小脇に抱えた少年を連れていく、少年は目に涙をためて俺に言う

 

『助けて、柏崎くん!』

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

『はい、思い出せた?』

 

黒い子供…?は俺に問いかける、思い出せた…か…

 

「…知らないな、んじゃ俺はそろそろ戻る…タヌキが心配だしな」

『あっそ、んじゃ勝手にどうぞー』

 

柏崎はそう言って最初からそこに居なかったように消える

 

『次うちのを引き抜こうとしたら潰すからね?』

『はっ!言うじゃん、私より2日くらい早く神になれたからって偉そうね』

 

黒い子供と黒と白の髪が入り乱れる少女は睨み合いお互いため息を吐く

 

『…ま、どうなるかは彼ら次第だから僕達が何しても意味無いからなぁ…』

『嘘つき、さっき帰らせる前に何か与えたでしょ』

『元々渡す予定だったの、まぁ使い方は気づくでしょ』

 

そう言って黒い子供はテレビの中に入っていきこの空間には死を司る神のみになった

 

『…ごめんねA、貴方の願いは私じゃ叶えられそうにないよ』

 

そう言って思い出すようにリモコンを操作してテレビをつける

画面に流れるのは1人の少女と少年、少女はやせ細り少年は泣きじゃくって怯えていた

 

『…何泣いてるのよ』

『だ、だって…君は近くの集落で死神って言われてる…』

『あぁ?』

『ピィ!?』

 

黒と白の毛が入り交じった髪を掻きむしりながら少女は何かを考えるがふらっと倒れてしまう

 

『だ、大丈夫!?』

『あー…お腹空いた…このまま私死ぬのかなー…』

『えぇ?!ぼ、僕何も持ってないよぉ…』

 

オロオロする少年、ぼーっとしてると少女は名案を思いついたように口の端を上げる

 

『そうだ、貴方…私の信者にならない?』

『し、信者…?』

『そう!昔何処かで聞いたんだけど私みたいなのって信仰されると神様になれるのよ!』

『か、神様…?けど君死神…』

『あれは関わった人達が勝手に死んでるだけよ!』

『ピィ!?』

 

突然の大声に少年は肩が跳ね上がり震える

 

『どうするの!なるの?ならないの!?』

『け、けど…僕…あ、そうだ…神様になったら何でも出来るの?』

『え?う、うん…そうよ!』

 

突然汗を滝のように流してるが少年は気づかない

 

『なら…あの、僕友達がいたんだけど悪い大人の人に記憶が消されちゃったらしくて…あの…その…神様なら記憶戻してあげる事出来る!?』

『…あ、え、えぇ!出来るわよ!』

『わーい!なら僕、信者になる!』

 

少年は少女の手を取り『信仰』をする

 

 

 

 

 

『はぁ…駄目な神様だなぁ…』

 

 

誰もいない空間で1人溜息を吐く神に気づくものはいない




どうも、今回ちょっと話の流れが早くないか心配な私です

そう言えば最近友人が小説投稿再開したらしいです、まぁ意地でも宣伝しませんがね!しないからな!!!!!
あ、あとさっき見たらUAが1111だったんですよね、ありがとうございます

では明日、また次の話で会いましょう

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