ファースト・オブ・バレット   作:パルバール

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無駄話12回目『回らない寿司は怖いが行ってみたい』

 

俺はタヌキと亜門から今までの事を聞きため息を吐く

 

「なんと言うか…俺はナイスタイミングで来たようだな」

「そうだねー、ぶっちゃけちゃうと大助かりの喝采ものだよー?」

「よし、なら俺をほめ讃えよ」

「亜門さんそろそろ香織ちゃん起こして儀式始めない?」

「あっ、そうですね…香織様を起こしに行きます」

 

亜門はハッとなり舞台に駆け足で向かって行った

 

「…無視はいけないぞタヌキ」

「無駄な労力は別料金だよー」

「あ、褒めるとかは金銭発生するんですね…」

 

冷たい世の中である…

 

「…タヌキ、間に合うと思うか?」

 

亜門が離れたのを確認して俺はタヌキに小声で尋ねる

下級神が来るまでに儀式が終えるかどうか…

 

「五分五分だねー…そろそろ来てもおかしくないし…まだかかるかもしれない」

「つまりは分からない…と」

「そうだねー、100年間信仰と生贄を集めた神相手に私と柏崎君だけじゃ長くは持たないから…今から来たら終わりだねー」

 

やはり一世紀という重みは計り知れない程の力を持ってるという事か…しかしそれにしては俺とタヌキでも多少は戦えるのか?

 

「ん?あぁ、儀式中は基本的に儀式された対象の領域になって他の神の力は弱まるんだよー」

「…聞いた事はあるな、兎にも角にも儀式はさせるべき…と」

「そういう事なのだ、魔力にまだ余裕があるし…儀式が始まれば神力返し用の魔力が節約できるからねー」

「そうか…ん、起きたっぽいぞ」

 

少し離れた舞台の上で香織が上半身をフラフラさせながら起き上がったのを確認して俺とタヌキは香織の元に向かう、ちなみに源次郎は魚人ズによって縛られている

 

「よっ、元気か?」

「柏崎さん…ここは…私は儀式を…」

「香織様」

「亜門さん…?」

 

香織が虚ろな目で亜門を見る、しばらく眺めていたがはっきりと目に光が戻り香織は慌て始めた

 

「亜門…さん?亜門…君?亜門…?え…何…この記憶…」

「香織様…落ち着いて聞いてください、今その事は後で説明します…実は…」

 

亜門が香織に儀式の事や下級神の事を説明する、途中にタヌキや俺が説明を補足などをしたおかげか香織はあまり疑ってる様子はない

 

「そんな…お父さんが…」

「君のお父さんは俺が確キルしといたぞ☆」

「柏崎君〜?」

「すみません…」

 

タヌキにゲンコツを落とされ俺は小さくなる…誰がチビだ!?

 

「…分かりました、まだ…記憶が曖昧で理解出来てませんが…海人として、儀式を始めさせてもらいます」

「では、私は演奏を」

 

準備を始める亜門と香織を眺めつつ、俺とタヌキは神経を研ぎ澄ませていた…頼れる仲間はいない…カクロも、超人も、特殊部隊の面々も…

頼れるのはアル中気味の情報屋…横目でタヌキを見ると目を閉じ集中していたので邪魔したら悪いなぁと思いつつ開けた口を閉じる

 

「何か言いたい事があるのかなー?言うのが吉とみた」

「お前ちょっと薄目で見てるだろ……いや、巻き込んで悪かったなと」

 

昔、タヌキをこちら側の世界に連れてきたのは俺だった

俺が何もしなければタヌキは今も自分の安心出来る空間で平和に過ごせた筈なのに、今ではこうして危険な場所に連れてきてしまっている

 

「気にしなくていいよー、君が道を示してくれて…タヌキさんが勝手にその道に進んだだけだからねー…後悔はしてない」

「………そうかよ、ま…帰ったら一杯奢ってやるよ」

「わーい!なら回らないお寿司がいいなー」

「あれ?お酒の意味だったんだけど伝わりずらかった?ねぇ?聞こえないフリやめろ!給料日半月前だからお金使いたくないんだけど!?」

 

俺達(俺だけだが…)が騒いでると亜門が…なんだあれ?リコーダー?違うか…あれなんて言うんだっけ…

 

「尺八だねー、和楽器の1つだよ」

「リコーダー?」

「尺八ね」

「八尺様?」

「ぽっ!」

「あの…集中したいのですか…」

 

怒られてしまった、まったくタヌキは…

 

「柏崎君のせいだよねー?」

「知らんな」

 

魚人達は物珍しそうに準備をしている2人を見ており五六魚に至っては走り回ってる

 

「…では、始めます」

「分かりました」

 

まず、香織が膝立ちで簪を握りながら祈りを捧げるようなポーズになる

その後亜門が演奏を始めしばらくすると潮の香りが薄まったような気がした

 

「おっ、もう大丈夫っぽいねー」

 

タヌキがメガネの位置を直しながら言う、体感的にも神力が満ちてるのが分かるとは…凄いな

俺が関心してると香織が立ち上がって舞を踊り始める、その姿は一言で表すと…

 

「美しい…」

 

その一言に尽きる、タヌキも…そして魚人達も動きを止め見入っていた…そのくらい香織の舞には目を奪われる程の美しさがあり時間を忘れてしまいそうだ…

 

 

 

 

 

 

 

地震が起きたのかと思った、しかし実際は俺の体が震えている事に気づいたのはしばらくしてからだった

 

「な、なんだ…この震え…恐怖…?」

「柏崎…君…海っ!海見て!」

 

タヌキは震える体を抑えながら鳥居の向こうに見える海に指を向ける、俺はそれに従うように海を見ると…

 

「ぁ…か、神…?」

 

海が割れ、割れた海から何かが出てくる

遠いのでよく分からないが…それでも見える程『大きい』

 

「…ウツボか…?」

 

その姿はウツボの姿ながら宙を泳ぐように少しずつ島に近づいてくる、そしてその周囲にはおびただしい数の魚人達が島に上陸していた

 

「…タヌキ、あれ想定してた?」

「想定外…だねー…」

「くっそ、海神のやつどんだけ眷属いたんだよ…五魚!六魚!」

「あいあーい」

「おらうーたん?」

 

五、六魚が俺の横に立つ…あとオラウータン知ってるの?あと多分オラウータンではないと思うけどどうなんだろう?

 

「お前らは香織と亜門を頼む…まだ時間はかかりそうだしな…一魚!二魚!三魚!四魚!お前らは俺達についてこい、防衛戦だ」

「承知した」

「分かった」

「了解」

「承知之助」

 

ちょいちょいボケを挟んでくるが全員目は真剣だ、心配しなくてもいいだろう

 

「タヌキ」

「なんだーい?」

「行くぞ」

「はいはーい」

 

俺は階段を目指し歩き始め、タヌキは近くに落ちていた出店の残骸を魔術で動かし後に続いてくる

魚人達も香織達を守るように立ち、俺とタヌキについてくる

 

 

「さぁ、正義執行の時間だ」




どうも、寿司はマグロ、私です

今回は次の為に少し短め、明日は長文かも?

では明日、また次の話で会いましょう

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