ファースト・オブ・バレット   作:パルバール

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無駄話13回目『下級神』

 

飛び交う銛、そして怒声と奇声…飛び散る鮮血と転がる魚人の死体の山を見ながら俺はため息を吐く

 

「くそっ!お前ら下がれ!防衛線を後方に移動だ!」

 

階段を降り町に向かっていた俺達を待ち受けていたのは島に残っていた魚人達だ、そのせいで町に防衛線が張れずに現在神社の階段までそこまで遠くない場所で防衛戦を強いられていた

 

『酷使せよ!万物の兵士!』

 

タヌキが魔術を使用して地面に鉄板を突き刺す、簡易的だが盾になり飛んでくる銛から身を守る事ができる

 

「一魚、二魚は左から!三魚四魚はそのまま防衛、俺は右側から行く!」

 

指示を出して右側回りに走る、道中の魚人を切り捨てつつも前進を続けるが…海からやってきた魚人の大群が奥からやって来ているのが見えた

 

「柏崎君!あれが来たらここ崩壊するよー?!」

「分かってる!…っと!」

 

返事しつつ銛を突き刺してくる魚人の腕を切り落とし胸に一突きする、そのまま横に切って蹴り倒し次の魚人に戦闘を仕掛ける

 

「だが今戻っても負けるぞ!タヌキ、儀式はどのくらいだ!?」

「……あの大群がくるよりも遅いかなぁ…」

「聞きたくなかったよ、ちくしょう!」

 

魔力が込められたナイフは耐久値が低い、このまま戦闘を続けると戦闘に耐えられず折れてしまい俺は戦えなくなる…

 

「貴様ら!海神様を裏切るとは万死に値するぞ!」

『ゲガッガッガッ!』

「海神様を愚弄するな!」

「え?今会話が成立してたの!?」

 

一魚が敵の魚人と会話してたりとしてるが…現状このまま戦えば勝てるだろう

『あれ』が来なければ

 

「タヌキ…あれちょっと早くなってない?」

「奇遇だねー柏崎君、タヌキさんもそう思う」

 

ゆっくりと、だが着実に神社に向かっていた下級神の速度が少し早まった気がする

 

「…タヌキ、お前障壁を全力で張ったらどのくらい耐えれる?」

「んー?…普通の魚人なら1日くらい?…あれ相手は10秒かなー」

 

弱っているとはいえ神相手に10秒持つとは流石と言うべきか

 

「…よし、全員神社まで後退!」

「っ!まて人間!どうする気だ!」

 

一魚が近づいてきて俺の肩を掴む、その顔は不安の表情で…恐らく儀式が邪魔されるのを恐れてるのだろう

 

「儀式してる間はされてる側の領域だ、そこに近ければ近い程勝てる確率も高くなる…大丈夫だ…俺を信じろ」

「………分かった」

「さて、全員後退だ!銛に当たるなよ?」

 

階段を駆け上がり飛んでくる銛を避けながら俺達は神社に後退する、神社に近づくにつれて下級神の眷属になった魚人達は分かりやすく動きが鈍くなっていく

 

「ここまでは予定通り…あとはあれを倒す…か」

 

こちらに向かってくる下級神を見て俺は作戦を考えつつ、神社へと目指す

 

──────────────────────

 

吹きながら亜門は遠くから聞こえる戦闘音が近づいてきているのが聞こえてきたのを耳にした時、焦りが生まれた

 

「(何してるんですかっ!このままじゃ…)」

 

焦りが体の動きを阻害して音程が乱れそうになる、だがふと香織を見ると目が合い…自分の不安定になった精神を安定させる

 

「(落ち着け…信じるんだ…あの人達を)」

 

演奏を続け、儀式が終わるまであと少しという所で戦闘音がもうすぐそこまで来ているのに気づく

そして魚人達、タヌキ、柏崎が階段を上がりきって息を整える為に膝に手をつく

 

「はぁ…はぁ…タヌキ!」

「『酷使せよ!障壁!』」

 

鳥居を境目に紫色の薄い膜のようなものが張り巡らされて後々に来た魚人達は壁にぶつかったように跳ね返り階段を落ちていくのが見える

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

「はぁー死ぬかと思った…」

 

大きく息を吐いて一息ついた俺は一目散にある場所を目指す

今は見えないが深く青い刀身…『海刀』

あれは俺のナイフとは違うが神相手でも戦えると思い…

 

「っ!まて人間!それに触るな!」

「なんっ…」

 

一魚の警告の声が俺の耳に届いたがその手は止めるには遅すぎた

海刀に触った瞬間、刀から水が溢れ広範囲に広がり俺を包もうとする

 

「危なっ!?」

 

咄嗟にナイフを振り迫ってくる水を切りながら日本刀から離れると水は少しずつ日本刀に戻っていき、何事も無かったように刀に水が入りただの日本刀になる

 

「海刀は海神様によって渡された者以外使えないようになっている、無闇に触ると溺れるぞ」

「マジか…くそっ、計画が1つ潰れたな」

 

海刀を使用して一気に戦闘を終わらせる筈だったが…そう上手く問屋は卸さないらしい

 

「一魚、お前らあとどれだけ戦え…一魚?」

 

最悪全員で挑み時間を稼ごうと考え一魚を見ると一魚は俺を見ず違う方向を見ている

 

「おい、一魚…一魚?」

「…人間…あれを…見ろ」

「あれ…?」

 

促されるように『鳥居』の方を向く

 

 

 

 

そこには大きなウツボが浮いていた、まるで泳ぐように体を動かし大勢の魚人を引き連れその身には神々しい程の神力が漂っている

 

「なっ…まだ距離があった筈じゃ…」

「…眷属から力を取り自身の力にしたのだろう、神に仕える眷属はそのような事が可能と聞いた事がある」

「なんだよ…そりゃ…」

 

タヌキの張った障壁、下級神は1度それを見ると口を開けた

口の間に見える程の神力が集まっていき…

 

「やばい!タヌキっ!一魚達も避けろ!」

 

障壁を継続させるのに集中してるタヌキの所まで走り体を掴んで地面に倒れる、一魚達もそれぞれ衝撃に耐えれるように体勢を低くし…

 

光が障壁を破壊し、俺達の頭上を通り過ぎて島の外にある膜に当たって霧散する

 

「そんな…あの障壁は5tトラックに当たっても壊れない筈なのに…」

「そのくらいやべぇって事だ、タヌキ…お前は香織達のとこらまで下がれ」

「柏崎君は…?」

 

タヌキを立たせ、ナイフを片手に俺は境内に入ってくる魚人達と下級神を見る

 

「…時間稼ぐしかないだろっ!」

 

タヌキの背中を押して俺はそのまま下級神の所まで走る

一魚達は侵入してくる魚人達を相手にしている、俺は下級神を殴るしかない

 

「(大丈夫だ、俺ならできる、大丈夫…大…丈夫…)」

 

下級神に近づくにつれて俺の足は思考とは逆に重くなっていく、何故か1歩が踏み出せない…顔がどんどん地面を向いていき顔を上げられない

 

「(なん…でだ…やっぱり…神相手に戦えないのか…?)」

 

死を司る神との時もカクロがいなければ俺はダメだっただろう、だが今俺は…1人だ

誰も助けに来れる余力はない、俺がやらなければ全てがおしまいなのに体が言うことを聞いてくれない

 

 

『人間か…どけ、今貴様らのような雑種には用はない』

 

声が聞こえる、体が勝手に動きそうになるが必死にその場から動かないようにと無理やり動きを止める

 

『ふ…この私の声が聞こえない事はない、恐ろしいか?人間よ…無理もない…今貴様の前にいるのはこの海全てを掌握する海神である』

 

恐らく下級神が俺の目の前にいる、だが俺は顔を上げれない…ナイフを使い戦うべきなのに…俺は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いや、お前にはこの海を任せるのは不安が多いから私が引き続き海神を名乗らせてもらおうか』

 

その声と共に俺の体は硬直が解けたように自由になった、と言うより動きやすい…?

 

『…今更何しに来た、お前の時代は終わったぞ』

『いやー、信者からお願いされちゃったから…私の部下が好き勝手やってるってね』

 

ペタッと俺の頭の上に何かが乗る、視線を上に向けると…タコが俺の頭の上に乗って足をユラユラと動かしていた

 

『さて、反撃開始だ』




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