ファースト・オブ・バレット   作:パルバール

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第69話『大軍の』

見えない脅威というのは恐ろしいものだ、人間は想像力がありすぎるが故にその見えない脅威に怯えてしまうことが多い

そしてそれが長く続くと…

 

『見えない恐怖』情報屋 久しぶりのタヌキ

 

───────────────────────

 

「柏崎!このまま向かって行ったら袋の鼠じゃねぇか!?」

「まさかこんなに暗いとは思わなかったんだよ!明かりがあるならそこに敵がいるだろ?つまりそれ倒す!はい簡単!」

「適当過ぎだろうが!」

 

俺達は足元が不安定な道を走り明かりが灯っている場所を目指している最中だ、体力がない青葉と芦川を須郷が背負い残りのメンバーは走っている

涼風に先行してもらい安全を確認しつつ進んでいるが…はっきりと感じる『脅威』がまだ俺達の周囲に感じる為に止まることができないのだ

 

「涼風!どうだ!?」

「特に何もなかったよ!」

「青葉何か見えないか!」

「いえ、柏崎さんが言う『脅威』なるものを探してますが…私のカメラには写りませんね」

 

須郷の背に乗っている青葉が手持ちのカメラの暗視機能を使って周囲を見てもらっていたが…何も写らない?

 

「はぁ…はぁ…!戦った方が早いんじゃないか!?」

「ならお前だけ戦え!敵の規模と配置が分からないとジリ貧になる!」

 

誠は変身すれば強いが生身だと不良の喧嘩レベルの力しかない、そろそろ体力の限界が近いのだろう…早く何か作戦を練らないとならない

 

「翔太郎、お前ステルスになって見てこれないか!?」

「流石に見られるだろ…それに音や匂いは普通にあるからバレやすい」

「私としては翔太郎さんを行かせるのは得策ではないと思いますね、翔太郎さんのステルスは逃げる時に必要です」

 

どうする?このまま走り続け敵と戦闘に入るか…今戦闘を仕掛けるか…

こんがらがってしまっている思考を落ち着かせる為に愛用しているナイフを握る、何度も命を救われたナイフを触りどうにか思考を落ち着かせる

 

「…よし、とりあえず広い場所を探すぞ!ここじゃ乱戦になった時全員が邪魔になる!」

 

人の手が入ってた森ならばそれなりの更地があっても良いはずだ、現に道路も植物に侵食されてるが残ってはいる

広い場所なら須郷と誠のコンビで敵を倒し青葉の観察眼で切り抜けられるはずだ

…緋彩の報告を聞くまでは

 

「柏崎ー!この先橋があるよ!」

「げっ、総員止まれ!」

 

急ブレーキをかけるように全身を使って走ってた勢いを殺す、そして他の面々も止まり青葉と芦川は須郷から降りる

 

「おいおい!なんで止まるんだよ!」

 

誠が息切れを起こしながら俺の近くに来て疑問をぶつけてくる

 

「この先に橋があるらしい、ある分には別に構わないんだが…進行方向が限定されるのは困る」

 

今なら道の脇に広がる木々を通るという選択もあるが…橋に辿り着いてしまうと進むか戻るしかない

まぁ橋から川?にダイブする手もあるが流石に高さが分からないのと下が渓谷だったら紐なしバンジージャンプになるのでしない

 

「ちなみにどんぐらいの高さだった?」

「えっとねー、かなりある」

「そうかーかなりかー…」

 

カクロにナイフになってもらい自分達が来た道を見る

 

「…んじゃ戦うか」

「おう、青葉と芦川さんは下がってな」

『わ、私も戦えますが…』

「俺達超人よりもか?」

『…分かりました』

 

芦川はしぶしぶ引き下がったが…不満げだな

 

「よし!いくぜ!」

 

誠がそう意気込み拳を構える、すると誠の体を淡い光が集まり発光する…赤と黒の装甲に身を包ませたその体

超人『ヒーロー』である

 

「俺は遊撃に徹する、接近戦は任せたぞ雅弘」

「おう、翔太郎も気をつけろよ」

「それじゃボクも遊撃するよ!」

「あ、私は応援してますね!」

 

超人達は馴染み始めたのだろう陣形を作りすぐそこまで来ている『脅威』に備える

ちなみに俺も青葉と同じ応援枠だ、え?戦えって?無理だって…あれの戦闘に巻き込まれたくないし…

 

俺達がそれぞれ準備をし、待ち構える…このメンツならそんじょそこらの敵なら即撃破だ

茂みから音が聞こえ何かが近づいてるのが分かる…分かるのだが…全員が気づく程の勘違いをしていた事に気づく

今までずっと『脅威が俺達を追い続けてる』と思っていた

だがそういう訳ではなかった

俺達の来た道から、茂みから、左右から黒い影が近づいてきている…『大軍』で

 

それは1つの表現をするなら『ゾンビ』というものだった

体は腐敗し、骨は外から見えるぐらい肉が抉れ…

あるものはほぼ骨の姿で歩いてきている

 

「…B級映画かよ」

 

須郷が少しずつ下がりながら呟く

それぞれの超人達も下がりつつある…そりゃそうか、なんせ死体が歩いてきている場面で恐怖しない方がおかしいのだ

…まぁ俺はおかしい部類に入るのだろう…

他の超人が大軍から遠ざかるように後退してる中、俺はある事に気づいた

 

「…あ」

「どうしました?柏崎さん」

「あそこと、あそこのゾンビ見てくれ」

 

俺がゾンビの集団の1部に指を向ける、そのゾンビには弾痕とエイレーネーの各支部が共通で支給しているナイフが突き刺さっていたのだ

 

「…なるほど、先に来た人達はこれに襲われたんですね」

「保安官達も…だな」

 

よく見ると保安官の制服を着たゾンビも歩いている、そこが原因っぽいな

 

「どうします?このまま戦うのは難しいと思いますが」

「難しいとかそれ以前に無理だ、どんなに須郷と誠が強くても物量で押し負ける」

 

ましてや翔太郎のステルスもほぼ無意味なんじゃないか?フィクションで見るゾンビは音に敏感と聞くが

 

「…では下がります?」

「…左右と後ろは絶たれた、進むしかない…!誠、涼風、翔太郎!下がるぞ!須郷は殿頼む!」

「おう!てめぇら行け!」

「くっ…すまねぇ須郷!」

 

須郷に言われ誠と翔太郎が下がりこちらに来る

 

「涼風、このまま橋に向かってくれ…橋の先に敵がいるかいないかの確認を頼む」

「おっけー!」

「青葉はそこでリバースしてる芦川に肩を貸してやってくれ!このまま橋を目指す!」

 

俺はガスマスクを外して地面に吐瀉物を吐き出していた芦川に水を飲ませ青葉に後は任せ

俺は殿を担当してくれた須郷の所まで行き戦闘に参加する

 

「須郷流…震波拳!」

 

須郷が近づいてきた一体に技をぶつける、だがゾンビはまるで効いてないようで接近して須郷に攻撃を仕掛けてくる

 

「くっ!柏崎か!あいつらは下がったか!!」

「あぁ、あとはお前だけだ!下がるぞ!」

 

強力な一撃を持っているがスピードがない須郷をサポートしつつ俺と須郷は素早く、だが確実に後退していく

 

───────────────────────

 

俺と須郷は囲まれないように下がりつつ戦闘を続けた

分かったことはゾンビにカクロのナイフは効果があるという事だ、だが須郷の打撃はあまり効果がなく須郷の技『震波拳』が不発に終わる事が多くなった

 

「須郷!先に下がれ!体力がもう少ないんだろ?」

「はぁ…はぁ…すまねぇ!」

 

肩で息をする須郷をサポートしつつ下がるがゾンビの大軍の勢いは止まることを知らないのか…先程よりも多くなってる気がしなくもない

 

「はぁ…カクロ、まだいけるか?」

『ニャ!』

 

カクロに魔力を流し身体強化の恩恵を受ける、だがそれでも尚戦況は良くない…

 

「柏崎!」

「っ!緋彩か!なんで戻って…」

 

戦闘に集中し過ぎて気づかなかったが俺はもう橋まで来ていたらしい、そして最悪な状況も知ってしまう

橋はかなりしっかりとした作りの2車線ある橋だった

下は深そうだが川が流れており確かにそれなりの高さがある

そして橋の向こう側には

 

『ゾンビの大軍がこちらに来ていた』

 

「…くそったれ」

 

橋の真ん中で誠がゾンビの大軍を処理していた、だがどんなに誠の装甲が硬かろうとゾンビの数が多すぎる…少しずつ…だが確実に誠は下がりつつある

翔太郎が戦闘に加わってるが元々戦闘向きじゃない翔太郎には荷が重く体力がギリギリに見える

 

「どうしよう柏崎!このままじゃ挟まれるよ!」

「分かってる!…どうする…?このまま戦うには…」

 

戦力が足りない、そうとしか言えなかった

アメリカの超人も特殊部隊も連絡が来ない筈だ、こんな敵の大軍に襲われたらどんなに個が強くても押し負けてしまう

どうすれば…

 

 

…突然、ゾンビの大軍の進行が止まる

誠と戦っていたゾンビも動きを止め、俺と戦っていたゾンビもその活動を止めてしまった

 

「なんだ…?」

 

ゾンビが止まる理由が分からない、だが止まる理由があるとするならば

 

『…初めまして皆さん』

 

ゾンビの大軍の中から声が聞こえた、声と共にゾンビの大軍は左右に別れ1つの道ができあがり…その道を1人の女性が歩いてきていた

その姿はローブで身を包ませているが大胆に素足を見せるようにしてその美しい顔が俺達を見ていた、紺に近い髪と目をしており優しい表情をしていた

 

「…どちら様でしょうか?」

 

青葉が前に出てきて女性に話しかける、交渉や話し合いで彼女に勝るとは思えないので俺は下がる事に

 

「私?私はN、貴方達を迎えに来たのよ?」

 

と、慈愛に満ちた眼差しで両手を広げる女性…N…N?

 

「私は待ってませんがね?」

「…あら?貴方も耐性があるのかしら…まぁいいわ、貴方が待ってる待ってないじゃなくて私が待ってたのよ」

 

1歩1歩と、青葉に近づくNの目は青葉を見ていたが視線がズレ芦川と俺を見る

 

「……………………あらぁ…駄目よ、あんな『大人』に近づいちゃ」

 

そう言ってNは『右手を上げる』

 

「『酷使せよ、腐敗の弾丸』」

 

 

 

「芦川ぁ!」

 

俺は咄嗟に芦川を庇うように飛ぶ、そして肩と背中に激痛と嫌な匂いが広がる

 

「え…柏崎…さん…?」

 

痛みから察するにはかなりでかい傷になってる、そしてこの匂い…腐敗臭か!

 

「ふふ、庇うなんて優しいのね…偽善で反吐が出そう」

 

そして再度魔術を酷使させるつもりなのだろう、右手を上げ俺と芦川に標準を定める

 

「させませんよ!」

 

青葉がNの右手にしがみついて妨害し始める、そして須郷が俺と芦川を立ち上がらせるが俺の傷が酷い為上手く立てない

 

「くそっ!おい柏崎!」

「騒ぐな…聞こえてんよ」

 

魔術は強力だ、超人といえど当たったら致命傷は避けられない…だが1つ分かった事とこいつらを一時的にだが安全…敵地で安全はないがこの窮地を脱出させる方法がある

 

「…須郷」

「あん?喋るな!傷が…」

「いいか、できるだけ暴れるな…相手を刺激するな…必ず助けに行く…」

「何を言って…」

 

俺は不安そうに見てくる芦川を抱き上げ橋の端に行き…

 

『川に飛び込む』

 

「柏崎!」

「え!?ちょっ!柏崎さん!?」

 

落下していく俺は橋の上にいる誠や涼風の顔を見ながら川に着水する、何故か分からないがNは『大人』に過剰に反応していた…俺と芦川がいなくなれば多分あいつは須郷達に何かする事はない…と思いたい…てかまって

 

「川の流れが早くないか!?ぐぅ!」

 

芦川をできるだけ上に持ち上げ息をさせる、傷が痛むが能力で誤魔化す

 

「絶対仕返ししてやるからな…っ!」

 

川に流されながら俺は必死に泳ぐ、次のチャンスを待つために




どうも、九時頃と言って40分オーバーの私です

違うんだ!手直ししてたら遅れて(言い訳)

と、とりあえず今回の話はNとの初対面でした、ゾンビを従えるNと超人を残し撤退する柏崎+芦川
次回柏崎死す(適当)

では明日、また次の話で会いましょう
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