ファースト・オブ・バレット   作:パルバール

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第70話『逃れられない』

 

流れていく柏崎と芦川を見ながら須郷は考えていた

『暴れるな、刺激するな、助けに行く』

柏崎が言ったこの言葉から分かる事は…柏崎は投降しろと言っている、あのNとかいうゾンビを従えてる奴に

 

「いやぁ…助かりましたよ、あの人達に脅されてて無理やりここまで連れて来られてたんです」

 

Nの右手を掴んでいた青葉は右手を離して安堵した表情でNに頭を下げる

 

「やっぱり、もう大丈夫よ?私が貴方達を守ってあげる」

 

Nは嬉しそうに青葉を抱き締めて慈愛に満ちた表情で青葉の頭を撫でる

突然の事で緋彩や誠が混乱するが…探偵の勘か緋彩の口を塞ぐ翔太郎とそれを見て場の空気に合わせようと口を閉じる誠、須郷も青葉の行動が理解できないが柏崎の言葉を思い出し口を閉じる

 

「ずっと飲まず食わずで…何か温かい食べ物と水はありませんか?」

「えぇ、あるわよ?貴方達を歓迎するパーティーがあってそこに沢山」

「わーい、私早速行きたいですね!ね!皆さん!」

 

青葉が他の超人達を見て答えを待つ

 

「おう、腹が減って仕方なかったんだよ」

 

何も言わないのは流石にまずいと思い話を合わせる

 

「誠さんも緋彩さんもそう思いますよね?」

「そ、そうだな」

「ボクもそう思うよ!」

 

誠、緋彩が答え青葉は向き直る

 

「では私達『4人』ご相伴に預かるとしましょう!」

「ふふ、貴方達が主役なのだからもっと堂々としてていいのよ」

 

Nが歩きだし青葉がその隣を歩きNに話しかける、青葉は話のタネが多いのでしばらくは時間が作れそうだ

 

「…翔太郎」

「おう、ここにいるぜ」

 

歩く須郷で死角を作り須郷の背後にいるステルス状態の翔太郎がハット帽を被り直しながら須郷に居場所を伝える

 

「誠と緋彩にもだが…俺にも教えてくれ、青葉は何してんだ…?」

 

恐らく翔太郎も最初は分からなかった筈、だが超人の中でも青葉に次ぐ頭脳を持っている翔太郎ならば何かしら分かるはずだ

 

「…俺の憶測だが、青葉は今を『耐える』時間と考えてるんじゃないかと思ってる」

「耐える?」

「あぁ、あのゾンビの大軍を相手するには俺達と柏崎がいても難しかった…だから青葉は柏崎と何かしらの援軍を待ってるんじゃないかと思う」

「援軍?そんなの…」

 

アメリカ支部が戦力を回せなかったから日本に要請が来ていた、援軍が来れるほどの戦力なんてあったら最初から来てるはず

 

「いるだろ、この空間の何処かに」

「………先に入ったアメリカの超人と特殊部隊か」

 

戦闘中、真新しい傷を負ったゾンビはいた…だがエイレーネーの戦闘服を着ていたゾンビや新しいゾンビはいなかった…つまり

 

「何処かで生きてるってのか?」

「分からないが…何人かは生きてるだろ、そして青葉はそれらを考え『耐える』という選択をしたんじゃないかと俺は思うぜ」

「そうか…すまん、誠と緋彩にも頼む」

「任せろ」

 

そう言って翔太郎の気配が消えていく、どうやらステルスのまま誠と緋彩の近くに行ったようで緋彩と誠が飛び跳ねていた…突然の声で驚いたのだろう

 

「…(…耐える…か…けどよ青葉…一体いつまで耐えるんだ?)」

 

敵の戦力は不透明、Nの実力もまだ分からない…超人と特殊部隊か生きてない可能性もある

 

「…(耐えるしかねぇのか?本当に)」

 

須郷は頭の中で混乱し始める思考をどうにか落ち着かせ先を行く仲間達の後に続く

 

 

───────────────────────

 

激流の中どうにか息を吸うために水面に顔を出す、芦川はまだ混乱してるらしく息を吸おうと必死になってるが上手く泳げていない

 

「(このままじゃそこら辺の岩にぶつかって死ぬっ!)」

 

今は大きな岩等は見えないが底は見えてる、いつかこの勢いのままぶつかってしまうだろう

 

「ごはっ!…カクロ!」

 

川の横、壁になってる部分に近づいていた時…ナイフになっているカクロが無理やりナイフの形態で動いて崖の1部に根元まで深く刃を刺しに行った

一瞬の間、次の瞬間には左肩と芦川を掴んでいた為右肩、肘関節等が悲鳴を上げる

あまりの激痛に手の力を緩めそうになったが能力を使って痛みを一旦保留し何とか耐える

 

「ぐっ…カクロ…無茶しやがって…芦川!」

「なんですか!?」

「そのまま俺を経由して壁を登れ!」

「わ、分かりました!」

 

カクロを握ってる手もあまり長くは持たない、ゆっくりとだが芦川が俺の左手から左肩、そして右肩まで移動する

 

「重た…」

「なんですか?」

「あ、いえ何でも…」

 

エイレーネーが支給している耐水と耐衝撃に優れた拳銃を向けてくる芦川、早く登って…

 

途中、芦川に銃を向けられたりしたがどうにか芦川は崖を登り始め俺も崖に手をかける

壁と言ってもかなり凹凸がある為、登るのはそう苦労しない

だが1つ不安があるとしたら…

 

「…(効果時間が…切れる)」

 

一旦保留しているが『一旦』に過ぎない、いつか俺が受けていたダメージは受ける事になっている

ゾンビとの戦闘での疲労、Nによる魔術の攻撃、さっきの衝撃…これら全てのダメージがあと少しで戻ってくる

 

「柏崎さん!」

 

上を見ると芦川が一足先に上に到着したらしく紐のようなものをこちらに垂らしていた、その先端を手に取り一気に登っていく

せめて…せめて上についてからではないと芦川に迷惑をかけてしまう、それだけは避けなければならない

 

「よし、芦川!一気に引き上げ…」

 

後は引っ張られながら登れば数秒もかからない…そう思い上を見る

だが返事は返ってこない…だが違う返事が返ってきた

 

 

乾いた発砲音、これは昔に何度も聞いた音だ

『エイレーネーが支給する拳銃の発砲音』

 

「芦川!おい!芦川!!」

 

何度も呼びかけるが発砲音が響く音でかき消される、発砲音の合間には呻き声のような普通では聞かない声が聞こえる

『ゾンビ』だ

 

「…考えろ、今この状況で1番早く上に行ける方法…」

 

一気に引っ張って行く?駄目だ、芦川が今耐えてるだけで精一杯なのに突然体重をかけたら最悪落ちてくる…良くて転倒だが無防備に…

…これしかない

 

「カクロ、一度に沢山魔力送るがいいか?」

『ニャ?…ニャ!』

「いい返事だ…よし!」

 

残ってるなけなしの魔力をカクロに注ぎ込み身体能力を爆発的に増加させる、そして腰に装備していた愛用のナイフを手に取り壁に突き刺す

 

「くそっ!愛用のナイフがこんな場面でお別れかよ!」

 

片足を上げ、突き刺したナイフに足を乗せ…一気に飛び上がる

その衝撃でナイフは壁から抜け…というか軽く折れて川に落ちていく、その代わりに俺は地面に着地する事に成功し前を見る

ゾンビの数は…3体、倒れているのは2体…支給されている拳銃は微量ながら魔力が込められている、魔術師や異形の者等に対抗する為作られたが…こいつらには魔力が有効なのは確定だな

 

「か、柏崎さん…よかった…」

「安心してる場合か、援護頼む!」

 

じわじわと近づいてくるタイムリミット、急がないと戦闘中に俺は戦闘不能になってしまう

その前に

 

「決着をつける!」

 

まず近くにいたゾンビの足を切り裂き転倒させ頭に突き刺す、カクロには申し訳ないが脳を破壊すれば倒せるという事は芦川が倒したゾンビを見れば分かる

俺の背後から襲おうとしていたゾンビの頭に数発の銃弾が命中する、見ると芦川が訓練で学んだのであろうマニュアル通りの姿勢でゾンビに銃口を向けていた

 

「よし、後は…」

 

最後に残ったゾンビを片付ける為に視線を向けナイフを構える…が、ある異変が起きていたのに気づいた

 

「…帯電してるのか…?」

 

そのゾンビの体は発光していた、電気と電気による火花によって…そして両手をこちらに向け…

 

『放電する』

 

「カクロすまん!」

 

芦川とゾンビの間に飛び込みナイフ状態のカクロを地面に突き刺す、するとカクロを避けるように電気が目に分かるほど左右に別れ虚空に消えていく

僅かに痺れを感じながらカクロを地面から抜き構える

 

「…芦川!頭を狙え!」

「はい!」

 

芦川の拳銃から撃たれた弾丸は真っ直ぐ俺に当たらないようにゾンビに向かっていく、だが弾丸は何かに弾かれるように違う方に飛んでいき地面に着弾する

 

「弾がズレた!?」

「いや、誘導したのか…?」

 

聞いた事がある、アメリカの超人は能力も持ちながら生まれやすいと…うちの翔太郎のように

 

「…超人だ、くそ!」

 

その力で国民を、家族を、愛する人を守っていたであろうアメリカの超人…

今では亡者となり、その力で俺達の道を妨害してくるのであった

 

 

 

 

───────────────────────

 

現在時刻 午後6時

柏崎活動限界まで後2分




本日の後書きはサボり侍
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