ファースト・オブ・バレット   作:パルバール

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第73話『足しても足りない』

 

暗い空間…特に何か物があるわけではないこの場所で俺は1人佇んでいる

 

「…なんかいつもの場所とは違うな」

 

周囲を見てみるが本当に何もない…いや、遠くに何か見える…あれは…

 

「…光…?」

 

夜の蛍光灯に飛んでいく羽虫のように俺は目的もなく光に近づいて行く…それなりに歩き、光の元が少しずつ見えてくる

それはランタンのようだ…だがそれよりも気になるのは

 

「…檻か?いや、それにしたって厳重過ぎじゃねぇか?」

 

ランタンの隣にあったもの、それは大きな檻だ…四方八方全てを分厚そうな鉄の壁が覆っており扉と小さな小窓が付いている、小窓は横に開いて中を覗けるタイプのようで少しだけ開いていた

 

「…何もないし…見てみるか」

 

いつもなら、あまり近寄らない…だが何故か中を

『見てみたい』と思っている自分がいる

一歩一歩と近づいて行く度に背中と肩が痛む、そもそも何故痛むのかも思い出せない…あぁ…この感じなんか似たような事あった気がするな…

檻の前に辿り着き少しだけ開いている小窓の取手を掴み全開にする、そして中を覗き込んでみるが…中は暗く何も見えない

 

「見えねぇ…ランタン取るか」

 

地面に置いてあるランタンを取り小窓の近くに持ってきて覗き込む、中は簡素なベット、イス、トイレ…そして

 

「…誰だ…?」

 

奥に誰かが座っている、ランタンの光では奥まで照らせずもどかしい

 

「おい!ここは何なんだ?というかあんた誰だ…?」

 

俺の声に反応してか、奥に座っていた奴はゆっくりと体を起こし顔を下に向けてこちらに歩いてくる

近づいてくる姿は薄汚れた服を着た男だ、金髪に…黒の囚人服のような格好をしておりやせ細っている

 

「…?言葉が通じないのか?」

 

言葉が通じないのは困る、こんな何も無い場所で唯一見つけた人…?なのだから

 

歩いてきていた男は突然足を止め動かなくなる、止まる理由が分からないが何か考えがあるのだろうか?

そう思い顔をさらに小窓に近づけた…が、俺は失敗したと思った

 

 

 

 

男の姿がブレて俺のすぐ目の前に移動してきたのだから

 

「なっ!?」

 

分厚い鉄扉の筈だがまるで紙を突き破るように男は扉を素手で突き破り俺の首を掴む、片腕だけしか出てないがまるで両手で掴まれてるような力で俺を小窓の方に近づける

 

『くくく…まさかお前の方からここに来るとは愚かなものだ』

 

男は顔を上げて小窓越しに俺を見てくる、その顔はどこかで見たような顔だ…というより

 

「お…俺…?」

 

たまに鏡で見る自分が目の前に立っている…突然の事が多過ぎて頭の整理が追いつかなくなってきたが相手は待ってくれなさそうだ

 

『貴様の体、貰い受けるぞ』

 

淀んだ目で俺を見てくる男は腕の力を強め不気味に笑う、俺の顔でそんな笑い方すんなと言いたい所だが声を出すどころか息さえできそうにない

少しずつ意識が遠のいていく、なんで毎回こんな経験しないといけないんだ…そう愚痴りたいと思いながら俺は意識をまた手放す…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はいそこまで、君は何をしてるんだねこのポンコツは』

 

俺を掴んでいた腕は突然崩れ始め俺は力が抜けて地面に座り込む、喉が圧迫されてたせいで何度か咳をして顔を上げる

 

「…またお前か」

『いいから下がりなよ、邪魔だから』

 

黒い人の形をした子供の体型の何かは腕を振り上げると檻の周辺に大小の鳥居が地面から生えて…檻を完全に埋めてしまった

 

『はい封印、これ疲れるからあまりやりたくないんだよね』

「お、おう…」

 

なんかよく分からないが救われたらしい、立ち上がって背中や肩を触るが特に違和感はない…何だったんだ…?

 

『全く、魔術の攻撃の影響でここに来れちゃったのか…早く現実に戻った方がいいよ』

「いや、待てよ!あれは何なんだ!?というかここは?!」

『あーうるさいうるさい、はい帰れ』

 

また腕を振り、俺の足元の地面が消えて俺は重力に従うように下に落ちていく

 

「あああああ?!質問に答えろやこのガキィィィィ!」

 

地面が元に戻り暗くなって俺の意識は本当になくなる

 

────────────────────────

 

 

「このガキ…痛てぇ!?」

「いったああああああああ!?」

 

体を起こして叫ぼうとしたが硬い何かに額をぶつけて俺は地面転がって痛みを和らげようと試みる

 

「うぅ…柏崎さん…私もう20なのでガキじゃないです…」

「…芦川か…ここ何処だ…?」

 

焚き火がパチパチとなっており俺はその近くに寝かされていたようだ、何かを調理してたらしく美味しそうな匂いがする

 

「ここはケイトさんが拠点にしてる洞窟ですよ、それより柏崎さん凄いですね…」

「え?石頭って?」

「違いますよ!?…傷がもう治ってたから驚きました」

「…あぁ、そういう事…」

 

俺の能力は勝手に発動する時がある…というより多分マヨイが勝手に発動させてるのかもしれない、あいつこの前俺の傷を自分に移してたからな…

 

「…んで?件のケイトはどこだ?あいつには聞きたい事が山ほどある」

「多分そろそろエド君と帰ってくるかと…あ、来ましたね」

 

エド君とは…まぁ今は気にしないでおこう、洞窟の…多分入口側だな…そちらから足音が聞こえ姿が見える

 

「お!カシワザキ!起きたか!」

「よ、ケイト…久しぶりだな…てかそこの少年誰だ?あれか?攫った?とうとう」

「HAHAHA!カシワザキの言ってる事よく分からないが町の子らしくてね、保護してんのさ!ほら、挨拶しな!」

「わ、分かってるよケイトさん…」

 

ケイトの後ろでコソコソしてた少年が俺の方を向き姿勢を正す

 

「僕はエドワード、皆からはエドって呼ばれてるんだ」

「よろしくなエド…ちなみに日本の漫画には興味ないか?」

「え?日本ってあれでしょ?…あのオタク達が…」

「ははは!そこまでだエドワード君!それ以上はいけない!」

 

あまり好きじゃないのかな…悲しい…

 

「それより飯だ飯!飯食えば万事解決だ!」

「あ、まだ準備中でして…」

「…そうか」

 

夢…夢?の中の事もあり飯を食って忘れたかったが…タイミングが悪いなぁ…

 

「カシワザキ!話したい事があるから少しいいか?」

 

ケイトが笑いながら俺の二の腕を掴んで強制的に立たせる

 

「いや聞くつもりないよね?これ無理矢理っていうんだぜケイト」

「いいからいいから!アシカワ!こいつ借りていくよ!」

「はいどうぞ…」

「芦川…俺が寝てる間に何があったんだ…」

 

可哀想に…青葉に弱み握られケイトに恐怖を植え付けられたに違いない…俺はケイトに運ばれながらそう思うのであった

 

───────────────────────

 

「なぁケイト〜…どこまで行くんだよ〜」

「少しくらい我慢できないの?」

「突然口調変えるな、驚いたわ」

 

男が多いこの組織、ケイトは女だからと馬鹿にされないように口調を無理やり変えていた…結果はまぁ…うん…いいんじゃないかな?

 

「…カシワザキ、貴方達は増援…と思っていいのよね」

「そうだぞ、と言っても…一緒に来た超人は敵地にいるんだよな…」

 

青葉達ならどうにかするだろうが、放置するわけにもいかない

 

「お前達が協力してくれれば最悪でも敵を倒せる筈だ…と言いたいんだが…ケイト」

「何?」

 

未だに歩き続けているケイトは俺の方を向かない

 

「…お前達は超人3名、特殊部隊8名で侵入したんだよな」

「…えぇ」

「だが超人の1人はさっき俺達と戦った…ゾンビとして」

 

少しずつ洞窟から離れ、少しだけ地面が柔らかい場所に来てるらしい

 

「なぁ…ケイト」

「………」

「…あと何人残ってる…?」

 

ケイトの後に続いて歩き、ある場所に辿り着く

そこは少しだけ広い空間で木々が生い茂ってない場所…そして

 

「…皆勇敢で…守りたい人がいて…帰る場所があった、だけど『生き残ったのは私だった』」

 

立ち並ぶのは手作りの十字架に掘り返した後がある地面…そして武器や持ち物が十字架に立てかけられていた

 

「カシワザキ、私は手伝うわ…1人だけになっちゃったけど」

「…そうか…どうしたもんかね」

 

両手を合わせ黙祷しながら俺は今後について考える

 

「…(最悪な状況だな…これは)」

 

現戦力は

俺、芦川、ケイトのエイレーネー兵士

須郷、青葉、緋彩、誠、翔太郎の超人達

そして一般人のエドワード

 

敵は

ゾンビの大軍、数は不明

N、恐らくかなりの強敵

 

あぁ、これは

 

「…やばいな」

 

そう呟きながら俺は空を見る

 

──────────────────────

 

現在時刻午後10時

爆撃予想時間まで役9時間




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