時が過ぎれば季節が変わるわけで
この世界にも冬が到来したらしい、冬将軍が猛威を奮っているこの時期に…俺は夜勤をしていた
「なぁ…天田…」
「なんすか柏崎さん」
夜勤明けの早朝7時、俺はソファに寝転がって死んだ魚のような目で未だにパソコンに向き合って作業をしていてる我らがオペレーターである天田美琴を見る
「俺は…思ったんだ…なんか…俺アメリカにいた気がするんだ」
「気の所為っすね」
「気の所為かぁ…そうか…この部屋暖房効きすぎじゃね?」
「今くらいが丁度いいんすよ」
「そうか…」
頭が働かない状況で大事な事を忘れてる気がするが…まぁ…気の所為だろう
「かしわざき!あまた!おはよう!」
眠い頭にガンガン響く声でエンが部屋に入ってくる、エンの部屋が作られてからここに来るのは珍しい事だ…何かあったのだろうか?
「エンちゃんおはよーっす…あれ?もう時間だったすかね?」
「うん!あまた!早く早く!」
「あぁ、ちょっと待つっす!この資料があと少しなんすよ!」
…なんか天田が慌て始めた、なんだなんだ?2人でお出かけか?…天田夜勤明けだけど
「…エン、天田と買い物か?」
「そうだよ!今日はクリスマスパーティーがあるからプレゼント買うの!」
「はぁ…プレゼント………ん?プレゼント?」
「?プレゼント交換するんだよ!」
そっと、携帯の画面を見て俺は頭を抱えた…なんてこった…
今日はクリスマスイブ、明日はクリスマスで良い子にしてた子供にサンタがプレゼントをあげるというイベントだ
…そして俺はエンにプレゼントを渡すサンタ役をやる予定だったのを忘れてたのだった
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一週間前、エンが珍しく第1特殊部隊の部屋でテレビを見てた日の事…テレビでは気が早い人達がそろそろクリスマスだと準備をしていた場面が映ってた時にエンが言った一言が事の発端だった
「…ねぇやもと」
「何ですか?エンちゃん」
「…サンタさん私の所に来てくれるかな…」
筋トレしてた宮島、眼鏡を拭いてた雨森、メイクをしていた雨宮、任務に行く途中だった宮本、そして仕事をサボってた俺とそれを怒ってた天田とカクロ…全員が空気が凍ったような感覚がしたと後日判明した
「え、えっと…来てくれますよ、きっと」
「ほんと!?やったぁ!」
この時矢本は生きた心地がしなかったと言っていた、俺達はぶっちゃけあまり良い子の組織ではないのでサンタがしっぽ巻いて逃げると思うがエンにそれを知られるのはなんか…困る!
「え、エンちゃんは何が欲しいっすかー?」
さり気なく天田が尋ね全員が良くやったとガッツポーズした、用意するのが誰か決まってないが知るのはいい事だ
「えっとね…24日の日に発売って言ってたウサギさんのぬいぐるみ!」
俺達はアイコンタクトをして雨森に視線が集まる、雨森はパソコンを高速に起動させ検索結果を俺達に見せてくる
矢本と天田がエンの気を引いてる間にパソコンの画面を覗き込む
…確かに24日の正午に販売開始と書いてあるな
集まってる面々で顔を寄せ合い作戦会議を始める
「…(これより第1回クリスマス『エンにプレゼント大作戦』の作戦会議を始める、進行役は雨森で)」
「…(よろしくお願いします、では早速今回の作戦を説明させていただきます…まず『エンにプレゼント大作戦』ですが最重要目標であるウサギのぬいぐるみですが正午に数量限定で売られてます、つまりこの日の正午から数十分しか時間がないかと)」
机の陰に隠れパソコンをこちらに向ける雨森、俺達は頭を悩ませそれぞれ疑問点をあげる
「…(24ってよ、確か一週間後だったよな…誰かその日休みの奴いねぇか?)」
「…(お前はどうなんだ?宮島)」
「…(俺はその日第2特殊部隊の援護に行く予定なんだよなぁ…)」
宮島はその日この町にいないと…
「…(雨森は?)」
「…(申し訳ありませんが私は故郷に戻るよう家から通達が…)」
「…(お前ん家厳しいもんな…)」
雨森は帰省と…
「…(宮本は?)」
「…(すまないがその日は例の連中とパーティーとやらに参加しなければならなくてな、準備の手伝いがあって抜け出せそうにない)」
「…(超人共がぁ…)」
宮本は超人に捕まったと…
「…(雨宮は?)」
「…(私もその日別の隊に要請されてた気がするのよね〜…)」
「…(要請…確か第1か)」
雨宮も駄目か…
「…(隊長はどうなんですか?)」
「…(え?俺?俺は…えーっと…)」
手帳を取り出してパラパラとめくっていく、確か24は…
「…(夜勤明けだな)」
「…(隊長)」
「…(どうした雨森、なんでそんな目で見るの?や、やめろ!そんな頼みました的な哀れみな目をやめろ!)」
「…(隊長以外その日に動けそうなのいないんですよ!)」
「…(ま、待て…確か天田が同じ夜勤明けの筈だ!俺である必要が無い!)」
俺一人であんな可愛い人形とか置いてある場所に行きたくない!
「…(天田さんはエンさんが近づかないようにする陽動にします)」
「…(お、お前…夜勤明けに容赦ねぇ…)」
こうして俺はプレゼントとついでにサンタ役を、天田はエンを連れてプレゼント交換用のプレゼント確保と誘導となり作戦が開始されたのであった
ちなみに今思えば矢本休日だった…やっちまったな…
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寒くないようにコートとマフラーを身につけ朝の町を歩く、ツリーが立ってたりサンタ服を着た人達がクリスマスイブを祝ったりなんなり…あとカップルが多い、消し炭にしてやろうか
「…うぅ…さむ…どう過ごそう…」
エナジードリンクを飲みながら歩き正午まで何をするか悩む、支部にいても寝てしまいそうだしどうせなら町に行こうという事になったのだが失敗だったかもしれない
カクロは寒いと威嚇して来たので置いてきた、酷いやつだ
「…そうだ、あいつのも付けてやると喜ぶかな」
いい事を思いついたと同時に時間を潰すには丁度いい場所を思い出し俺はある場所を目指す
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「サンタさーん、プレゼント寄越せー」
「残念ながらサンタさんではなくタヌキさんなのだー」
インターホンを全力で連打したら中からタヌキが現れる、というかなんだその寝巻…たぬきか…
「お前確か本出てたよな」
「そうだよー、『恋とサスペンス〜そして突然の死〜』シリーズだねー…全17巻!そしてアフターストーリー8巻!」
「うーん、よく分からないが凄そう」
多分凄いんだろう、多分
「それで、どうかしたのかなー?もしかして読みたくなったのかなー?なら書店にGO!」
「いや、サインが欲しいんだが」
お前の本はこれっぽっちも興味が無い
「えー?どういう事かなー?」
「えっとだな、かくかくしかじか」
「うまうまもぐもぐ…なるほど、エンちゃんが私のフォンと」
「フォンではないがファンだな、あとよく分かったなお前」
情報屋だからこれくらい分かるのだろうか
「別にいいよー、んじゃ中に入って待ってて」
「助かる…ところで亜門達の事なんだが…」
俺は正午までタヌキと無駄話をしながら待つのであった
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「こ、ここが…なんか…入りずらい!」
俺はとあるスーパーの一角にあるぬいぐるみ専門店『銀郎』…ん?なんかデジャブが…
「完全に人選間違えたな…俺が入るには性別が違う」
店の中には大勢の女性や女の子が可愛いだのキモかわだの…男が圧倒的に少ない!中に入ってる恐らく彼氏らしき人物が死んだ目をしている、無理やり連れてこられたのだろうか…
とにかく男の俺が入るには勇気がいるな…
「「どうしたものか…ん?」」
悩んでると隣から全く同じセリフを言う奴が、こいつ人のセリフに被せてきやがって…って
「…須郷じゃないか」
「柏崎…てめぇ…なんでここにいやがるんだ?」
「いるもなにもお前こそなんでいるんだよ?お前ぬいぐるみ大好きっ子だったのか?」
「違ぇよ!…エンのクリスマスプレゼントにぬいぐるみを…って思ってな」
なるほど…こいつも同じ考えだったのか…なんだろう、一種の盟友的なあれだな…同じ目的があるから戦友的な感じがする
「皆さん!本日の目玉商品であるウサギのぬいぐるみ!ウサ男とウサ美の販売開始でございます!」
なんか見た事あるような男がベルを鳴らしながら棚を1つ使って置かれているウサギのオスとメスのぬいぐるみを見せてくる…こいつ錬金術とかしないよね?
そうこう思ってるうちにぬいぐるみに大勢の女性が集まりだしどんどん無くなっていく
「あっ、やっべ!おい須郷!急いで買いに行くぞ!」
「おう!」
1人だと勇気がないが2人だとなんか勇気が湧き出てきそう…だが
「か、硬ぇ!柏崎!これ以上進めそうにねぇぞ!」
「嘘だろお前!それでも超人か!」
「流石に押しのけてまで行くのは人としてどうかと思うぞ!」
あまりにも女性達のガードが硬く俺と須郷は1歩も前に勧めない状況だった、1つ、また1つとぬいぐるみが消えていくのを眺めるしかないのか…!
「…須郷」
「なんだ?」
「………人間砲丸投げって、知ってる?」
「…は?」
「いいのか!?投げるぞ!?」
「おぉ!やれ須郷!この際なりふり構わずやらなければゲットできない!」
俺は砲丸投げの投げる状態の須郷の手の平に乗り飛ぶ位置を調節する、ミスったらあの棚の後ろの壁と人の壁にぶち当たって俺が死ぬ…社会的にと物理的に
「おらよっ!」
「あ、やっぱやめ…あああああ!?」
寸前でなんか変なテンションになってる事に気づき止めようとしたが須郷は止まることなく俺は砲丸投げの要領でぶん投げられる
どうにか空中で体勢を立て直し棚の1番上にある2つのぬいぐるみを掴み壁に着地して、体全体を使って飛び人がいない所に着地する
「…ぶねぇ…あんまするもんじゃない……ん?」
俺の着地した目の前に女の子が立っていた、その手にはくまのぬいぐるみが握られておりキラキラした目で俺を見てくる
「…あー、えっと…」
「けいさつのひと!」
「…はいちーちゃん、これあげるからそれ他の人に言っちゃ駄目だよ〜」
あの時は警察手帳を持ってなかったから偽装したが実際には表の職業は警察官である、あまりそれを知られたくないのでウサ男を犠牲に俺はちーちゃんの口封じに成功するのであった
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「せーの…メリークリスマス!」
「メリクリ〜」
「メリクリ」
「メリークリスマスです」
「メリークリスマス!」
「ふん…」
「お前ら元気だな…」
「はは、皆さん今日は楽しんでください」
超人達が集うカフェ、そのカフェを独占してクリスマスパーティーをする面々…エン、緋彩、翔太郎、青葉、誠、宮本、須郷、この7名と店員、須郷雅雄…須郷弟である
計8名がクリスマスパーティーをしていた
「ではプレゼント交換を早速やりましょー!」
「青葉元気だねー…けどやろう!」
某クリスマスソングに合わせプレゼントがグルグルと交換されていき開封
「これなんでしょう…?」
「あ、それボクのだね!パーカー!」
「バカ?」
「パーカーだよ!!!」
「ボクのなんだろうなっ!………これ…」
「お!それ俺のレトルトカレーじゃん!大当たりだな!」
「当たり…?」
「俺はなんだろう……1レフカメラ」
「あ、それは私ですね!ぜひ大事に扱ってください☆」
「中に入ってる写真全部俺のくしゃみした時の写真ってどういう事なんだよ青葉!」
プレゼントがどんどんと開封されていく中、須郷はエンの前に1つの紙袋を置く
「ほらエン、メリークリスマス」
「?私もうプレゼント貰ったよ?」
プレゼント交換のプレゼントだと思ったのだろう、須郷は苦笑しながらもエンの頭を撫でる
「俺からのプレゼントだ、開けてみな」
「?うん………あ!ぬいぐるみ!」
中から出てきたのはウサギのぬいぐるみ、ウサ美である
「ありがとう!すごう!」
「いいってことよ」
余程嬉しいのかぴょんぴょんと跳ねるエンとそれを見てお面の下で笑顔になる須郷
「へぇ、兄さんってそういうの分かるんだ」
「お前俺を馬鹿にしてるのか!?」
「はははは!違うよ、凄いなってね」
「馬鹿にしてねぇか…?」
クリスマスパーティーは滞りなく進み、彼らのパーティーは続く
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暗い廊下、誰もいない廊下を1人の赤い服と白髭の男が小走りに移動していてとある扉の前に止まる…垂れ下がってる看板には『エンの部屋』と書いてある
「こちら柏崎、目標ポイントに到着した…これより潜入ミッションを開始する」
『了解っす、ターゲットはパーティーから帰ってきてクタクタっす、起きることはないでしょう』
「それは好都合だ…いくぞ!」
扉にピッキングを開始した
『…柏崎隊長、例のブツはあるっすよね』
「あぁ!ここにな!」
袋から取り出した物、それは…
「『恋とサスペンス〜そして突然の死〜(作者のサインを添えて)』だな!」
『流石っす!……って馬鹿!ハゲ!』
「禿げてねぇよ!」
ピッキング中にそんな不安になりそうな事言うんじゃない!
…ちょっと写真に撮って確認しよう………よし、大丈夫だ
『…なんでぬいぐるみじゃないんっすか』
「…ゆるせ…俺は頑張った…てか眠い…夜勤明け…」
『私もっす…これ終わったらさっさと寝るっすよ…』
「だな…っよし、開いた」
中に音もなく侵入して、エンのベットへと目指す
寝息と気配を頼りに近づき…本をそっと添える、そしてメリークリスマスのカードと良い子だったカードを
『最後のカード必要っすか?』
「…(とても必要!エンはいい子)」
プレゼントを置いてる最中、エンがウサ美を抱いているのを確認して帰ろうとした時…ある物を見つける
「…(なぁ天田、ここ最近この部屋に入ったの現状俺だけ?)」
『?そうっすよ?』
「…(…そうか、ミッション完了…これより帰る)」
『最後までちゃんと…まぁいいっすけど』
こうして俺達のクリスマスは終わった
ちなみにエンの机の上には『ウサ男のぬいぐるみ』が置いてあった
まぁ良い子にしてればサンタはやって来るってことか
メリークリスマス
どうも、メリークリスマス?私です
皆さんクリスマスいかがお過ごしでしたか?私は、えぇ、大人ですから…えぇ…特に…はい…うん…
では明日、また次の話で会いましょう