ファースト・オブ・バレット   作:パルバール

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第78話『薄れる記憶』

 

パチパチと焚き火が燃えている、俺とケイトはそれを眺めながら楽な格好で座っており武器の手入れや考え事をする

芦川とエド少年は硬い地面の上に寝っ転がっており眠っていた、俺とケイトが寝ずの番をして2人は寝てもらっている

 

「…なぁケイト」

「どうしたの?」

 

2人が寝てるからかいつもの口調に戻りカウボーイハットを地面に置き、魔銃の手入れをしていたケイトは不思議そうに俺の方を見る

 

「今回の敵は『6席会』…の1人だと思ってんだがどう思う?」

「6席会…あぁ、少し前に日本であった…」

 

A…あの男も6席会という組織に属してると言っていた

今回の魔術師の名はN…Aとは近い何かを感じる

 

「と言っても確証はない…だが問題はなんでここを狙ったのか、何故こんなにもゾンビがいるのか…この謎がどうもな」

「それは考えてもしかたない、本人に聞いてみない限りね」

 

確かにそうだが…

 

「…ま、泣いても笑っても明日の7時にはここら辺は火の海だからな」

「え?そうなの?」

「あれ、言ってなかったか?実はな…」

 

ケイトに外の情報を伝えながら俺はエド少年を見る、寝ている彼は少しうなされてるのか苦しそうに寝返りを打っていた

 

───────────────────────

 

頭がぼんやりとする…ここはどこだろうか?

周囲を見るが…見えるのは木々や草花と今立ってる地面だけだ

 

「…ここは…」

 

少しずつ思い出していく、ここは町の近くにある森の遊び場だった…友人達と遊んでた記憶が薄らと思い出していくと自分の横を誰かが横切っていく

 

『エド!早く来いよ!』

『ま、待ってよ!』

 

横切ったのは幼い頃のボブと…

 

「ぼ、僕…?」

 

同じく幼い頃の自分だった、見た限りだと10歳そこらだろうか…?2人は走りどこかに向かっていく、何となく追いかけなければならないような気がして足を動かすと景色が突然かわり虫取り等をして遊ぶ2人がいる近くに立っていた

 

「…ね、ねぇ…」

 

幼い頃の自分にどう話しかければいいか分からず掠れた声で肩に手を置こうとして…手はその肩に触れることはなく体を貫通してバランスを崩しかける

 

「っ!?…さ、触れない…?…夢…なのか…?」

 

混乱する思考を整理する為、頭を抱える

自分は確か洞窟の中にいて寝ていた筈…そんな自分をよそに少年達は虫を取りながら雑談を始める

 

『おいエド知ってるか?』

『何が?』

『この森にはな…犬が出るんだぜ!それも人喰い犬がな!』

『え?ははは!ボブ、そんなのいるわけないだろ?それに人喰いなんて…』

 

少年達の会話を聞いて少しずつ思い出していく…当時森には大型犬が野生化しているから入らないように大人達が言っていた事を思い出した

 

『それがよ、どうやら嘘じゃねーみたいなんだよ…大人達は教えてくんねぇけど猟師の爺さんが2週間前から行方不明なんだよ、んで爺さんはその犬に食われたんじゃないか…ってな』

『…こ、怖い事を言うなよボブ…』

 

キョロキョロと周囲を見て何かがいないかを確認する、自分も確認してみるが動物などいる様子はない…大丈夫そうだ

 

『ビビってるのか?』

『び、ビビってなんか!』

 

ない、そう言おうとしていたが突如森に何かが吠える声が聞こえた…それは犬の声に聞こえなくはない

 

『………ぼ、ボブ?』

 

固まって動かなくなる友人に聞こえるように声を絞り出している、足が動かないのか動こうとはしない

 

「…そうだ、犬の吠える声が聞こえて…」

『う、うわあああああああああああ!!!』

 

友人は叫びながら元きた道を走っていく、その顔は恐怖に染っており自分でもかなり怖がっていたようだ

 

『な、待てよ!待って…』

 

友人が走り去っていくのを眺めている昔の自分を見てると情けない気持ちになる、だがこれが年相応なのかもしれない

突然近くの薮がガサガサと揺れる

 

『ひっ!?』

「ひっ!?」

 

昔の自分と同じリアクションをしてしてしまった、幼い自分にはもう厳しかったのか意識を手放して倒れてしまい目を回している

 

「はは…犬が怖くて気絶って…我ながらビビりというか…あれ…?この後どうなったんだっけ…」

 

薄れていく視界、まさか夢の中の幼い自分と連動しているのだろうか?

閉じていく視界、最後に見えたのは幼い自分に近づく人影だった

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

『…き……起き……て…』

「ん…誰…?」

 

意識が戻る…硬い地面に夕日が僅かに見え夕方だということが分かる

 

『ほら、起きて?お寝坊さん』

「え…?え?き、君誰…?」

 

上半身を勢いよく起こして声がした方を見る、そこに立っていたのはワンピースを着て黒髪の長髪を背中に纏めてる1人の少女…

 

『私は✕✕✕✕…ねぇ、遊びましょ?』

 

少女の声が途中電話が途切れ途切れになるように聞こえずらくなったが後半は聞くことができた、どうやら彼女は遊びたいらしい…というより

 

「…っ!な、なんで僕…」

 

さっきまで第三者の目線から見ていたはず、だが今はまるで幼い自分の視点のような…手を見て全身を見る

どこからどう見ても幼い頃の自分の体だ

 

「一体何が…」

『ちょっと!独り言してないでこっちで遊びましょうよ!』

「え?あ、ちょっ!待って!」

 

腕を掴まれ無理やり立たされ走らされる、触られた瞬間少女の手は凄く冷えており一瞬驚いてしまった

ここは何処なのか?君は誰なのか?どこに行くのか?そんな疑問があったが口にできない…どうやらこれも夢の中でさっき自分で喋れたのは幼い頃の自分が言った言葉らしい

…本当にそうなのだろうか?

 

『さっ!ついたよ!』

「え?…わぁ…凄い」

 

立ち止まり目の前の広がる景色を眺める、辺り一面花畑が広がっている…なんの花だろうか?花の名前を覚える機会なんてそうそうないからどれがなんの花なのか…

 

『行きましょう!』

「うわ?!」

 

やはり無理やり引っ張られ花畑に連れて行かれる

…少しずつ記憶が戻っていく、自分は何の疑問も思わずこの少女と遊んでいた…今思えば疑問くらい思えと言いたいが遊び盛りの子供にはしょうがないのではないだろうか

そこから記憶は飛び飛びになり目の前の景色もそれに合わせて切り替わっていき、もう外は暗く子供は帰らなければならない時間だ

 

「あ…そろそろ帰らないと…」

『…帰っちゃうの?』

 

花の冠を作っていた手を止め少女は悲しそうな表情をする、そうだ…あの頃は申し訳ない気持ちでいっぱいになった記憶がある、あの時はどうしたっけ…

 

「帰らないとお父さんが心配するんだ」

『………大人なんて……』

「え?」

『…なんでもない』

 

何かを呟いた気がするが聞き取れなかった、少女はなんでもないと言った後何か悩んでいる顔をするとすぐに閃いたような顔になる

 

『なら明日も来て、私ずっとここで待ってるから』

「君は帰らないの?」

『…私もちゃんと帰るから、来てくれる?』

 

昔では分からなかった、だが今なら分かる

彼女は一瞬暗い顔をして明るい表情をしている事に

 

「うん、明日も来るよ!…あ…けど…」

『?けど?』

「…犬が出るんだ、人喰い犬ってのが」

 

少女はポカンとした顔でしばらく沈黙してると突然笑い出す、笑われた事に恥ずかしくなった自分は

 

「な、なんで笑うんだよ!人喰いだよ!?吠える声も聞こえたんだ!」

 

声を荒らげて恥ずかしさを紛らわす

 

『ごめんごめん…そうだ、ならこれを持ってれば大丈夫』

 

そう言ってどこからか1冊の本を出す、それは3cmくらいの紫色の宝石のようなのが一つだけ埋め込まれた黒い本だった

 

「…?これは…?」

『これは私の本、その人喰い犬が襲ってきたら中に書いてある文を読んで…そしたらそんな犬イチコロなんだから』

 

自信満々に本を差し出してくる少女、受け取るか悩んだが受け取らないといけない気がして本を受け取る

手に取ると一瞬何かが自分の中に入ってくるような間隔がしたが…一瞬だった為驚く間もなく違和感はなくなりキョトンとなってしまった

 

『どうしたの?』

「い、いや…ありがとう!そろそろ行くよ」

 

立ち上がり少女を見る、少女も立ち上がってこちらを見る

どうやらお見送りしてくれるようだ

 

『またね』

「うん、また」

 

そう言った直後、さらに記憶は飛び周囲は朝になった

花畑は夜と変わらず咲いており幼い自分が立っている、ただ一つだけ違う事とは…少女がいないことだろう

 

「…そうだ、待っても…待っても…あの子は…」

 

ぐにゃあ…と視界が歪み最後は視界が真っ暗になっていく

あの少女の名前はなんて言っただろうか…?

 

───────────────────────

 

「…………という事なんだ…」

「…それは…本人と話し合ってもらうしか…」

 

俺はパチパチと焚き火が燃えるのを眺めながらケイトに愚痴をこぼしていた、事情を知らない人の方が気楽に言えるが相手が困惑するのであまりしてなかったがケイトなら大丈夫だ

 

「…本人ねぇ…まさか金郎がカクロとエンと超人達でアイドルグループを作ろうとしてるとは…っと、エド少年が起きたっぽいな」

 

話を切り上げ起き上がるエド少年を見る、うなされてる様子だったから心配したがどうやら大丈夫そう…って

 

「おいおい、大丈夫か?」

「…え…?」

「…何か夢に見ちまったのか?ま、ゾンビやら魔術やらを見せられちゃ嫌な夢を見るのも不思議じゃないさ」

 

エド少年は涙を流していた、寝てる時に流してたのか言われて気づいたのか目をゴシゴシを拭き始める

 

「す、すみません…少し…昔の事を思い出して…」

「へぇ、昔話か…話してみな、少しは楽になると思うぜ」

「…そう、ですね…」

 

ぽつりぽつりと話し始めるエド少年、話を聞いていくと少女がいたやら可愛かったやら…てめぇどこの主人公だ?

そして最後に渡された本と少女がいなくなってしまったこと…

恐らく大体の人は少女の方に注目するだろう、だが俺とケイトはそれよりも前に出てきた言葉に驚きが隠せなくなった

 

「な…お、おい!エド!その本の中身は見たのか?!」

「え?は、はい…けど途中気分が悪くなって…」

「…ケイト」

「あぁ、こりゃ…思わぬ所で…」

 

3cmくらいの紫色の宝石…黒い本…そしてエド少年が内容を見て体調不良…間違いない

 

「エド少年!その本は今どこにある!?」

「い、今は家の部屋にありますけど…あの、どうかしたんですか?」

「どうしたも何も、大発見だ…よし!ケイト、ちょっと行ってくる!芦川頼むぞ!」

「任せな!」

「あの…説明を…」

 

エド少年が困惑した顔でオロオロし始める、しょうがない説明するか

 

「エド少年、お前が渡された本はな…『魔導書』だ」

 

それも3cmの魔石となると魔術を連発してもちっとも減らないくらいやべぇもんだ

 

「魔導書があれば形勢逆転できるかもしれない、そんぐらい可能性を秘めてるのさ」

「そ、そんな凄いのが…」

「一刻も早く回収して戻るぞ」

 

俺は寝てるカクロを起こし洞窟の出口を目指す

夜はまだ続く




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