魔剣に魅せられて 作:鍛治師
──音声ログより──
「勝った、のか……?」
アリーナに響く歓声、巨大な試合中継に使用されるパネルには自分の名前が勝者としてデカデカと載っていた。
目線を下げると地面に立ってうっとりとした表情のオルコットがこちらをじっと熱い眼差しで見つめていた。
だけど俺はその視線に耐えきれなくなって顔を背けた。
──音声ログより──
「どうなったんだ……? あの時、たしかに意識が飛んでいた」
勝敗が決まるのは一瞬だった。
オルコットのブルーティアーズ本体に接近できたことに喜んだ俺の目の前に迫ったのは隠し球のミサイルユニットの攻撃だった。
──音声ログより──
「正直に言って驚いていますわ。代表候補性であるわたくしに、素人の貴方が接近戦に持ち込むなど到底考えられませんでしたの」
「なっ! 避けれないッ‼︎」
「貴方はよく頑張りましたわ。猿だのなんだと罵っておりましたが撤回させていただきます。貴方は正しく“男”でありますわ」
高々と勝利宣言をされるが、それは敗北が確定していると理解した俺には言い返せようのない言葉の数々だった。
だから諦めて目をつぶったんだ。俺がそのミサイルを回避することも防ぎきることもできるはずがなかったから。
──白式のログより──
[システム:Error]
[リミット強制解除を確認。零落白夜が顕現します]
その時、謎のシステムログが流れたんだ。
訳も分からない事態に戸惑って瞼を上げると雪片弐型の刀身がパックリと割れていて、そこから眩い青い刃みたいなエネルギーが放出されていた。
後から千冬姉に聞いたら、それは現役時代の千冬姉の愛機の単一能力だったらしい。でも、白式に何故そんなものがあるのかは結局わからずじまいだった。
そして、気づけば俺はオルコットに一撃を与えて勝ってしまったんだ。
それで呆然としていた俺の耳に、何処からか少女の悲痛な叫びが聞こえたんだ。
──織斑一夏の証言とノイズ混じりの音声ログより──
やめてぇ‼︎ 私からその人を奪わないでっ‼︎
はっきり言って突然の出来事すぎて何が起きているのかわからなかった。
──織斑一夏の証言とノイズ混じりの音声ログより──
お願いっ! 騎士様を! 私とあの騎士様を助けてッ‼︎
でも、切迫詰まった様子の声に俺は突き動かされたんだ。
この声は俺にしか聞こえないんだと、熱狂する観客席を見ていてそう確信したら俺が助けないと……! って思ったから。
織斑一夏の証言とノイズ混じりの音声ログより──
「何をしたらいいんだ? 俺は、誰を助ければいい?」
助けて……くれるの?
「ああ。何処の誰だか知らないけど、俺にしかできないことみたいだしな」
じゃあ私の言う通りの場所に向かって。そこに悪い人がいて私たちを傷つけるの
その会話は後からログを精査するとコアからのメッセージとして記録に残っていた。
つまり、白式がなんらかの攻撃を受けていたんだ。それが試合中に起きた違和感に繋がってるんじゃないかと俺は思っている。
そして、俺は白式が指示した場所に向かった。
終夜さんが襲われた橋の上だ。そこで白式が助けを求めていたのはボロボロに痛めつけられて血を流している男と刀を握って何処かに電話をかけている人だった。
俺は義憤に駆られたんだ。きっと白式が助けを求めたのは俺と同じ境遇の人が酷い目に遭わされたからだと。
顔も知らないけど(一人目の一夏の時と同じ轍を踏まないようにニュース番組などでも二人目の男性操縦者が見つかったという話は出たが政府の情報操作によって誰かはマスコミも特定できなかった)守る為の力を持った俺が戦わないとって思ったんだ。
それで結果は見ての通りです。
守ろうとしたものを攻撃した馬鹿な奴ですよ。俺は……
以上が織斑一夏の事情徴収とその記録をまとめた報告書です。
追記:5月14日
学園上層部の決定によりこの記録は厳重に保管され持ち出すこともしくはコピーなどの行為を禁じます。