I need HERO   作:すおみん

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仮初

日常はつまらない

それに対して「そんなことないよ!日常はかけがえのないものだよ!」と心の底から言える人がいるとしたら、私は尊敬する。

確かにかけがいのないものなんだろうけれど、その重要性は常にわかるわけだはないはずだ

あって当然なんだから。

…だからこうして突然そのあるべきものが亡くなった時、人は私のようになるはずだ

 

「っはー…っはー…っはー……」

 

私が冷静な思考を回す中、私の身体は不自然な震えと荒れた呼吸、受けた傷の痛みと目の前の光景を必死に処理しようとしていた

私が住んでいたアパートは完全に壊れていた

突然現れた大きな男…(ヴィラン)が、その拳でガラス玉を叩き割るように容易くアパートを破壊した。

そしてその男はおもむろに破片を拾い、突然私に投げてきた。コントロールが悪いの豪速球の直撃は免れたけど、私の左腕が弾け飛ぶ様な衝撃の後から感覚を失っている。

次に襲われた二階下のイタズラ好きの子供はその子の身体の半分くらいの大きさの拳を受けて眼球やらを撒き散らしながら私の側まで飛んできた。私の腹の上にはまだその子の眼球がある。

次はすぐに逃げようとした無個性らしきサラリーマンの人だ。背を向けた瞬間男はかっ飛ぶように飛び上がってサラリーマンをべちゃりと邪魔なアリを潰すように踏み潰してしまった。ここからでもあの大きな足に踏まれて地面に垂れているピンク色が見える

あとは…もう、わからない

男は何事かを叫び散らしながら周りの人間を殺して言った

 

『一人残らず消えていく』

 

そんなフレーズが唐突に頭の中に浮かんだ。

 

「っひ、ひーろー…ひーろーは……」

 

そうだ、ヒーロー

ヒーローはどうしてこない?

いいや、今に来てくれる。

ヒーローがいるから、今に助けてくれる

5秒後?10秒後?きっと今に来てくれる

わたしをたすけてくれるはずだ

 

「おかあさん…あかあさん…!」

 

家屋があった場所で小さな子供が瓦礫に頭を潰された亡骸を前にして泣いている

(ヴィラン)はその子供をターゲットに選んだらしい。その子へ向かってズンズンと進んでいく

きっと私が少し声を貼り上げればあの子へ声が届くだろう

でも私にはできない。

だって私はただの人間なんだ

でも、私の声は届く

私が声を張り上げてあの子を逃がすか私にヘイトを向かせればあの子は助かるかもしれない

でも、今私がこうして震えていればあの子が助かる可能性はゼロだ

目の前で救えるかもしれない他人を見殺しにする、きっとこの修羅場を切り抜けた私に重くのしかかるだろう

私がそれに耐えられる保証はない

でも私がヘイトを集めたからって勝てるわけがない。私の個性じゃ精々時間稼ぎしか出来ない

でも未来の私を救う方法はそれしかない

それだけじゃない。きっとこの(ヴィラン)がここで生き延びたら、また別の犯罪を犯すはずだ

そして、もっと多くの人を

そしたら私はきっと『あそこで私が勇気を振り絞れていたら』と後悔するかもしれない

耐えられるかも分からない重圧が、後悔が、責任が増える

だったら私は…私が生き延びれる確率が僅かにでも高い方を選ぶ

 

「今ここには…ヒーローが、必要なんだ……」

 

私はやつに手を向ける

 

「今死んだって構わない…」

 

すると私の手はみるみるうちに変わっていく

材質が変わり、形が変わり、そしてそれは長砲身の銃となった

 

「ヒーローは死なんて恐れない…」

 

銃と変わった腕に力を込める

 

「誰が正しいもののために戦う…?」

 

ヒーロー()が今に助けてくれるんだ!

 

私の想いと共に放たれた弾丸は(ヴィラン)の頭に吸い込まれるように当たった

脳みそが剥き出しという醜悪な体を大きく前のめりにしながら怯んだ隙に私は声を張り上げる

「逃げてっ!!」

 

その声に子供はここから離れていく

ヤツは私を向き完全に補足してきている

大丈夫、今に私が助けてくれる

 

「私はヒーローだっ!!!」

 

さぁ、戦闘開始だ

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